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AIの時代が来ても淘汰されない仕事は「非合理」の中で生まれる~村松亮太郎氏×次原悦子氏が語るキャリア論

働き方

    東京ミッドタウンにて、2016年7月30日~8月31日に開催された、花をテーマとした体感型アートイベント『FLOWERS BY NAKED 魅惑の楽園』。当イベント内の特別企画として、8月24日にサニーサイドアップの次原悦子氏とNAKED Inc.の村松亮太郎氏によるトークイベント『「考えて」「形にする」これからの時代のキャリア形成に必要な能力とは?』が行われた。

    エンジニアtypeでもたびたび取り上げているように、AIやロボットの技術が急速に発達を遂げている今、“これから消えていく仕事”と、”これからも残っていく仕事”が注目されるようになってきた。一般的に、事務業務や仕様書通りのプログラミングなど単純作業はコンピュータにとって代わると言われているが、これからも残っていく仕事に求められるものとは何なのだろうか。

    コンピュータに真似することのできない「コミュニケーション」と「クリエイティブ」の分野の第一人者である2人のセッションから、その答えのヒントが見えてきた。

    FLOWERS BY NAKED

     

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    NAKED Inc.代表
    村松亮太郎氏

    TV/広告/MV/空間演出などジャンルを問わず活動。 長編/短編作品と合わせて国際映画祭で48ノミネート&受賞している。代表作として、東京駅3Dプロジェクションマッピング『TOKYO HIKARI VISION』、「東京国立博物館特別展「京都-洛中洛外図と障壁画の美」『KARAKURI』」の演出、NHK大河ドラマ『軍師官兵衛』タイトルバックなど。2016年5月には、市川染五郎主演の歌舞伎ラスベガス公演『Panasonic presents Wonder KABUKI Spectacle'KABUKI LION’』の空間創造を手掛ける。2016年12月、表参道ヒルズにて『SWEETS BY NAKED』開催決定

    プロフィール画像

    株式会社サニーサイドアップ 代表取締役社長
    次原悦子氏

    “たのしいさわぎをおこしたい”をスローガンに、PR業務を主軸に多面的なビジネスを展開する。PRノウハウを活かしたアスリートマネジメントも手掛け、中田英寿、前園真聖、北島康介などのアスリートを世に送り出したことでも知られる。近年では『世界一の朝食』を提供するレストラン『bills』の展開など、数多くのムーブメントを作っている

    今後のビジネスに必須のスキルは「人にしかできないこと」に変わっていく

    花を五感で楽しむ体験型イベント『FLOWERS BY NAKED 魅惑の楽園』。最新のプロジェクションマッピング技術や、オリジナルのアロマミストを香らせる演出、会場内を自由に撮影しSNSで自分が加工した画像をアップできるなどの仕掛けが施されている。

    体験型アートイベントとして話題を呼んでいる当イベントについて、次原氏が自身の感想を述べるところから、2人のセッションは始まった。

    FLOWERS BY NAKED

    FLOWERS BY NAKED イベント会場

    次原 今回のイベント、『FLOWERS BY NAKED』は、最新技術の集大成ですよね。ですが、村松さんを中心としたNAKEDが、クリエイティブの要素を加えていなければ、ただの技術の発表会になっていたと思うんです。最新技術にクリエイティブがあって、かつテーマ性と物語を加えて初めて、FLOWERS BY NAKEDは人に感動を与えるんだと感じました。

    村松 そう、単に技術がすごいだとか、お金をたくさん使って宣伝をする、というだけではなくて、どうやってクリエイティブし、見に来てくれる人たちとのコミュニケーションを取っていくか。すごくあいまいな定義ではあるのですけど、そういうことこそが、今後の世の中には求められるのではないかと思っています。

    次原 過去20年間くらいは、ビジネスは合理的で、資金も豊かで、作業者となる人もたくさんいる、という時代が続いていました。でも最近になってやっと、そこにアイデアやクリエイティブが求められる時代になってきましたよね。

    村松 まさに「失われた20年」ですよ。合理性やマネジメント性を追い求めすぎて、クリエイティブや創造性が鍛えられてこなかったからこそ、よりニーズが高まっていると思います。

    次原 我々のようなクリエイティブ、コミュニケーションの仕事って、どんな時代もなくならないスキルだとも思います。

    村松 その通りですね。これから先、多くの仕事がAIにリプレイスされていきます。人間がやる意味はない仕事も増えていますし、それはもう止められないこと。

    だけどそれって、決して切ない話ではないと思うんです。そこで「では、人には何ができるのか?」という風に、ポジティブに考えられるようになるはずです。

    クリエイティビティを育むために~NAKEDが組織を「縦割り」にしない理由

    次原 ではその「クリエイティブ」って、具体的にどうやって磨いていけばいいのでしょうか?

    村松 今までの時代ではムダだと言われていたところに、そのヒントがあるのではないかと思っています。“重要な非合理”とでも言いましょうか。

    例えば、NAKEDの組織図は少し変わっているんです。普通だったら、課長がいて部長がいて、という縦割りの構造。ですが、NAKEDでは、色彩図のように役割や立場があいまいになるような組織図にしています。

    次原 面白い取り組みですね。そうやって、それぞれの個性や才能が入り組んで、クリエイティブの化学反応を起こしていくと。

    村松 組織は、野球ではなくサッカーなんですよ。ポジションチェンジも自由にしていいですし、誰が何をしなければという決まりはない。だからこそマネジメントも大変で、一見非合理ではあるんですけど、その中に化学反応が隠されているかと。

    次原 最近の話だと、リオオリンピックで日本人が400mリレーで銀メダルを取りました。1人1人の短距離走では上位入賞できない、いわゆる非凡ではない4人が世界で2位になったのは感動しましたよね。

    村松 日本チームのリレー銀メダル、すごいケミストリーだと思いました。

    次原 私たちの業界でも同じことが言えると思いませんか?

    村松 まさにそうで、僕たちNAKEDも、僕だけが考えているのではなくて、チームでクリエイティブしているんです。仲間と一緒に考えて、お互いに化学反応を起こし合っています。

    次原 サニーサイドアップのコミュニケーションの仕事も、まさにそれの最たるもの。アイデアを生み出す人、アイデアを出すための環境を支える人など、多くのさまざま人が関わって世の中にムーブメントを作っているんです。

    村松 全員が点取り屋になってしまったら、ゲームにならないですしね。

    FLOWERS BY NAKED

    体感型アートイベントとしても注目を集めたFLOWERS BY NAKED

    単一スキルで一流ではなくても、組み合わせで「自分だけのクリエイティビティー」を確立すればいい

    次原 サニーサイドアップがスポーツ選手のマネジメントを始めた、一番最初がトライアスロンの選手だったんです。トライアスロンって、水泳・自転車ロードレース・長距離走の3種目で競い合うんですけど、それぞれの競技では二流だった選手でも、トライアスロンとなると一流選手になれたりするんですよね。コミュニケーションの世界でも、そういった生き方ができると思うんです。

    村松 世の中にはあらゆる必要性というものがありますから、1人だけで一流である必要はありません。それよりも自分のいいところ、そしてそこに化学反応を起こすことで「自分だけのクリエイティビティ―」を育む、という考えが大事なのではないでしょうか。

    次原 あとは、とても単純ではあるけど、大切なのは情熱。そして、それを継続することだと思います。

    村松 次原さんのように、情熱を持って継続するためにはどうすればいいんでしょうか。

    次原 好きなことを仕事にできればそれは最高ですが、なかなか難しいですよね。なので、私の場合は「楽しいことを仕事にできなくても、仕事自体を楽しむことはできる」と思うようにしています。

    村松 仕事に対する考え方次第ということですね。そもそも仕事の定義、というのも今後は変わってくるのでしょうね。生きることと仕事がイコールになってくるのではないでしょうか。

    ただ役割を与えられてそれをこなせばいい、という仕事はいずれAIが取って代わります。その時に自分たちができることって、クリエイティブやコミュニケーションの分野なのだろうと思います。そしてそれはきっと、今後どんな仕事にも関係してくる要素になってくるでしょうね。

    「結局、仕事は楽しんだもの勝ち。ほどほどにやっていいという仕事は、今後なくなってしまうのだから」、そう笑ってキャリア観を語った村松氏と次原氏。

    「作業」と認識している仕事が衰退の一途をたどる一方で、今後重要視されるクリエイティビティを磨き、仕事を楽しむこと。それこそが、「今後残っていく仕事」に必要な要素なのかもしれない。

    取材・文/大室倫子 撮影/伊藤健吾(ともに編集部)

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