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社長は「敏腕プログラマー」より「アンテナの多いエンジニア」と出会いたい【ベンチャーCEO座談会】

ITニュース

    2010年代に入ってから、引き続き高まり続けているスタートアップ熱。若き起業家たちの隆盛は頼もしい限りだが、他方でささやかれ始めているのが「長続きできる会社はいくつあるのか」という懸念だ。

    だが、起業家がそうした懸念を突き付けられるのは、今に限ったことではない。ここに、3人の創業経営者が集った。

    2000年代前半~中盤に相次いで起業を果たし、今日もなお成長と拡大を継続させているアラフォーCEOトリオである。エンジニアtype連載でおなじみの高橋信也氏をファシリテーターに、存分の本音トークをしてもらった。

    はたして、この「先輩」たちは、いかにして起業後の困難と立ち向かったのか。そして、そのプロセスで痛感した「頼れるエンジニア像」とは何なのか。

    旧知の仲である3人が本音で語るトークから、そのポイントをつかみ取ってほしい。

    (写真左から)マネジメントソリューションズ の代表取締役・高橋信也氏

    (写真左から)マネジメントソリューションズ の代表取締役・高橋信也氏、ブレインパッドの代表取締役社長・草野隆史氏、アイビーシーの代表取締役社長・加藤裕之氏

    ―― 本日は多忙を極める3人の創業社長にお集まりいただけたということで、ぜひ伺いたいテーマがあります。ズバリ「成長期のベンチャー企業におけるエンジニアのあり方」というところなんですが、まずは皆さんの起業当初の状況から教えてください。

    高橋 もともと、僕らは世界的な起業家組織『EO(アントレプレナーズ・オーガニゼーション)』の日本での勉強会が縁で知り合ったんですが、こうして3人がそろうのは久しぶりなんです。それに、起業当時の話って、長い付き合いなのにそんなに詳しく話していなかったかもしれませんね。

    草野 ブレインパッドは、とにかくエンジニアの採用に苦労しましたよ。たぶん、高橋さんや加藤さんも似たような経験をお持ちでしょうけれど、創業当時は求人広告を出しても、スカウトメールを送っても、そもそも企業の知名度がないから反応がない。ようやく返事が来た、と思っても、応募じゃなく激励メールだったり(笑)。

    加藤 うちの会社(アイビーシー/以下、IBC)も、やはり起業してから2~3年は、人材採用で苦労しました。

    草野 結局、その時は激励メールのような返答をくれたエンジニアに「一緒にやろう」と迫り、口説き落とすような形で3人のエンジニアを獲得しました。データマイニングによってクライアントのビジネスを活性化する、というビジネスモデルは頭の中で確立できていたけれど、彼らがいなければそれを形にすることもできなかった。彼らのおかげで今があると思っています。

    加藤 わたしのところでも一期目からいろいろあって、一時はわたし一人しかいない状態になってしまった。IBCも「ネットワーク監視アプライアンス」を企画し、開発も進めていたので、途方に暮れましたよ。

    高橋 じゃあ、加藤さんも激励メール頼み?

    加藤 いえいえ(笑)、ただ、強引に口説き落としたという意味では草野さんと似ていましたね。別の会社でネットワーク構築の設計をしていた4人を見つけて、最初は「独立採算で協業を」という話だったのを、何とか引き込んだ感じです。

    ―― ちなみに、草野さんや加藤さんのおっしゃった創業期のエンジニアの皆さんは、今どうされているんですか?

    草野 うちの場合、3人のうち2人は今も在籍して活躍してくれていますよ。

    加藤 うちも4人の内2人は幹部になってチームをまとめていますし、1人は開発責任者として、もう1人はコンサルティング部隊の責任者として活躍してくれています。

    高難易度の課題を仕事のインセンティブにするエンジニアは頼もしい

    「エンジニアが働きやすい環境づくり」についての苦労を話す3人

    「エンジニアが働きやすい環境づくり」についての苦労を話す3人

    高橋 素晴らしいですね。当社でも二期目からソフトウエア開発の事業をスタートするため、エンジニアを1人採用したのですが、数年後に会社を去ることになってしまいました。技術面では非常に優れていたので、残念だったのですが……。そこで2人に聞きたいのは、エンジニアとのつき合い方で気を付けていることは何か、です。

    草野 僕も最初はいろいろ考えました。やっぱりほかの社員とは仕事の内容そのものが違いますし、どうしても就労時間も不規則になりがち。だったらスーパーフレキシブルにしよう、ということで4期目くらいまでは実際フレックス勤務にしていました。

    高橋 エンジニアは営業やバックオフィスとは働き方が違いますからね。

    草野 興味の対象も独特ですよね。自分でPCを作ってみたいと言われれば、「やったらいいじゃないか」と(笑)。仕事で使うツールについても、好きなものを選んでもらったり。とにかく、エンジニアならではのモチベーション維持のやり方をいろいろ考えていました。

    加藤 当社の場合、ちょっと特殊かもしれませんね。ビジネス上、マルチベンダーのネットワーク環境に対応することで差別化してきましたから、技術者は開発もするし運用もしなければいけない。メジャーなベンダーすべてに精通しながらネットワークのことも、データベースもセキュリティもある程度知っていなければいけない。

    草野 そうですよね。

    加藤 だから、うちは最初のハードルが非常に高くて、入社して間もないエンジニアはたいてい戸惑います。

    高橋 もともとレベルの高い技術力が問われるから、要求も多そうですね。

    加藤 でも、これって逆に言うと、技術者にとってモチベーションの上がる状態でもあると考えていて。優秀な技術者は、難しいこと、先進性のあることをやれるとなると、もう自然とやる気を感じてくれるものなんです。

    草野 それ、ブレインパッドでもありますね。会社がうまく回り始めて、クライアントが扱うデータの量もどんどん増えていった時期に、アーキテクチャを変えないと高負荷に耐えられない場面が出始めたんですね。非エンジニアのわたしから見れば、そうした高負荷対応は大変そうに見えましたし、地道な作業の繰り返しで飽きないのかな、と思ったりもしたんですが……。

    加藤 「面白い」って言うでしょ?

    草野 そうなんです。高度な課題があれば、優秀なエンジニアは放っておいてもやる気を出してくれる。これは発見でしたね。高橋さんのところはどうなんですか? 今はインド人エンジニアがすごく活躍しているって聞きましたけど。

    高橋 まずラッキーだったのが、彼の父親が日本という国を尊敬してくれている人だったんです。「あんなに小さな極東の国が戦争に負けて何もなくなったところから復興した」とね。そんな父親に育てられた人だから、日本で働けるというだけで誇りに思ってくれた。ただ、今の2人の話を聞いて、別のことにも思い当たりましたよ。

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