Vol.222

「CTOはキャリアのゴールですか?」藤本真樹氏×えふしん氏×堀内康弘氏に聞く、リーダーになった後の働き方【キャリアごはんvol.5レポ】

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日本でWeb・インターネット産業が勃興してまだ20年弱と歴史は浅い。それゆえ、他の産業に比べて「30代~40代以降のキャリアパス」のモデルケースは決して多いとはいえない。

マネジャーになり、そこから一握りのCTOが生まれ……という流れは一応示されてはいるものの、ではその先は? それ以外の道は? Webエンジニアは今後、どのようなキャリアを歩んでいけばいいのか。

10月27日に弊誌と『typeメンバーズパーク』が開催した第5回『キャリアごはん』では、グリーの最高技術責任者である藤本真樹氏、BASEでCTOを務める“えふしん”こと藤川真一氏、そしてgumiのCTOからAWSのエバンジェリストに転身するなどCTOの「その先」を歩んでいるように見える堀内康弘氏を招いて、「リーダーになった後の働き方とキャリア」をテーマに語ってもらった。

改めて聞く、「結局CTOの役割って何なの?」

(写真左から)BASEのCTO藤川真一(えふしん)氏、堀内康弘氏、グリー最高技術責任者の藤本真樹氏

(写真左から)BASEのCTO藤川真一(えふしん)氏、堀内康弘氏、グリー最高技術責任者の藤本真樹氏

―― お3方とも現役CTO、またはCTO経験者ということで、まずはWeb業界における「CTOって何?」というところから伺いたいと思います。堀内さんはかつてgumiのCTOをされていましたが、当時はCTOの役割をどう位置付けていたんですか?

堀内 あのころの自分は、よく分かっていなかったと思います。CTOって何をやる人なんだ?って。

そもそも僕がgumiのCTOになった経緯は、社員がまだ5人くらいしかいない時に、「他にプログラムを書ける人がいなかったから」なんですよ。それがその後、会社が一気に大きくなっていく過程で、採用やチームビルディングなどをやる人が必要だ、となっていって。

それで直接プログラムを書く権限を徐々に奪われていったんですけど、僕自身はプログラムを書いていたかったので、ソーシャルゲームを作るのとは別のところで解析プログラムを書き続けたりしてました。「CTOには他にやるべき仕事があるでしょ」なんて言われながら(笑)。

―― gumiからAWSへ行き、AWSもお辞めになってからは、複数のベンチャーで技術顧問をしていらっしゃいましたよね? いろんな会社を外から見てみて、改めてCTOは何をする仕事だと?

堀内 結局、会社によってさまざまなんですよ。

gumiでの経験で言うと、國光さん(宏尚氏。同社代表取締役)が掲げた「世界で一番大きいゲーム会社になる」というビジョンがあって、会社としてそこに向かっていくためにエンジニアがやらなければいけないことを噛み砕いていくと、ゲームを拡大再生産して、ヒットするゲームを横展開することでした。

当然、ものすごいスピードと仕事量が同時に求められるので、開発の現場はすごく大変で。今振り返れば、そんな中でもエンジニアたちにどうやって楽しく、やる気を出して働いてもらうかというのをずっと考えていました。

最終的には「(周囲を明るくするために)笑っているのが仕事」みたいな部分もありました(笑)。

―― えふしんさんは、もともと技術顧問をしていたBASEにCTOとしてジョインしたわけですが、技術顧問とCTOの違いとは?

えふしん 経営的な観点を持って、技術で解決できることをやるのがCTOじゃないですか。でも、堀内さんの言う通り、CTOが具体的に何をやるのかは会社のステージとかでも変わりますよね。

一般論として、日本の企業でCTOに求められる役割には、いわゆるテックリード的なCTOと、VP of Engineering(開発チーム責任者。以下、VPOE)的なCTOがあって。両方を1人でやるのか、どちらか得意な方をやるのかも人によりけりです。

僕自身で言うと、まさに今、立ち回り方に悩んでいるところなんです。『BASE』や『PAY.JP』が成長してきた中で、CTOとVPOE、何ならCIO的な役割まで全部を持っちゃっていて。正直、良くない状況だなと。

一番プライオリティが高いのはサービスを維持・成長させることだから、障害が起きたら全部そっちに持ってかれちゃって、他の仕事が何もできなくなってしまう……とか。

僕はもともとギークではないし、できることならもっと技術力でサービスを引っ張っていける人にそういう役割は任せたいなと思っているんですけど。そういう人を採用するのも含めて、CTOの仕事なんですよね。

第5回『キャリアごはん』の様子

第5回『キャリアごはん』の様子

―― グリーで長く最高技術責任者を務めていらっしゃる藤本さんはどうでしょう?

藤本 これ、真面目に話せばそれだけで3時間くらい話せるテーマですが、現実問題としてCTOが何をすべきかと言えば、エンジニアリングのバックグラウンドを活かして自分が解決できそうな問題を見つけ、頑張って解決するということだと思います。

「CXO」の肩書きが付いている以上経営をするチームの一員なんで、会社にとって一番大事だと思うことを、考えて考えて考え続けるってことです。

だから必然的に、真っ当なCTOの人はみんな悩みます。「これだけをやればいい」っていう決まった仕事はないですから。

―― えふしんさんのおっしゃるように、CTOの役割はフェーズによっても変わるわけですしね。

藤本 もっと言えば、フェーズどころかメンバーの性格やタイプ一つでも変わりますよ。変わって然るべきなんです。会社が小さいうちは、それこそ人事だってやらなければならないこともあるでしょうし。

だから僕は、他社の経営者に「どんな人にCTOを任せたらいいですか?」と聞かれた時、たいていはこう答えているんです。「CTOになりたいということが目的じゃない人がいいですよ」って。

―― なぜですか?

藤本 会社にとって、あるいはチームのみんなにとって何が一番良いのかを考え続けるということは、その中には当然、自分がCTOじゃない方がいいという選択肢も入ってくるわけで。

エンジニアとしてある程度の経験を積んだから「次はCTOになりたい」という人より、会社のため、あるいは会社のビジョンに向かって進むためには何が一番大事なのかと考えられる人をCTOにしておいた方が、ずっといいと思うんです。

もちろん、テクノロジーのバックグラウンドがあるのは前提ですが。

―― 藤本さんが今お話されようなことを自覚されたのはいつごろですか?

「CTOの役割とは?」という難しい質問に対して答える藤本氏(写真中央)

「CTOの役割とは?」という難しい質問に対して答える藤本氏(写真中央)

藤本 何となく分かったようなことを言いましたけど、いまだに正解なんて分からないですよ。ずっと考え続けてます。もう開き直ったという意味では、ここ2、3年のことですかね。

―― めちゃくちゃ最近ですね。

藤本 僕は25、26歳くらいでCTOの役割をするようになったので、当時は何をすればいいか本当に分かりませんでした。

同じ業界には上の人もほとんどいなかったので、それこそ吉岡さん(弘隆氏。現・楽天技術理事)とか、直也さん(伊藤氏。現在は一休CTO)とか、あとはDeNAの川崎さん(修平氏)とか、楽天の安武さん(弘晃氏。元・楽天取締役)とか諸先輩方に「CTOって何するんですか?」って聞いて回って、だいたい飲んで終わるっていうのを繰り返していました(笑)。

ただ、そうやって話を聞いて、自分でも目の前の仕事をこなしながら何となく分かったのは、みんなやってることが全然違うということ。それこそシリコンバレーへ行っても、あるCTOは「仕事の半分は採用とブランディングだ」と言うし、また別のCTOは「そうじゃないんだよ」と言うわけです。

最近はちょっとずつ「型」のようなものができているかな?とは感じていますが、やっぱり会社のフェーズ、性質、チームのメンバーによって役割が変わってくるんだと思いますよ。

―― 「メンバーによってもやるべきことが変わる」というのは案外盲点かもしれません。僕らメディアのせいかもしれませんが、「CTOとはこういう人」というジョブディスクリプションを作りがちというか。

藤本 もちろん、役割を固定して、それに当てはまる人をそろえていくというやり方もあるとは思いますよ。ただ、スタートアップに限定するなら、人を採用するのも大変ですからメンバーを選んでいられないじゃないですか。

だからえふしんさんのように、CTOがそのギャップを埋めることに走り回ることになるわけで。

3人が考える「CTOの先」とは?

―― ちなみに、藤本さんはなぜその大変な仕事をやり続けてるんですか?

藤本 CTOにこだわりがあるわけではないんですけどね(笑)。まぁ、日々問題は起こり続けるので。問題解決という意味では、なかなか面白い仕事なんだと思います。

―― えふしんさんはこの先もずっとCTOをやりたいですか?

えふしん そうですね……先ほどの藤本さんのお話を聞いていて思ったんですけど、僕は「炎上している状況」が好きなんです、たぶん。トラブルをいかに解決するか、この問題を最小限のリソースで解決するためにはどうすればいいかっていうのを考えるのが大好きで。その意味で、CTOの役割は合っているのかなと。

「考えて考えて考え続ける」ってお話がありましたけど、うちの開発メンバーにも日々、「ビジネスのことを考え続けろ」と言っているんですよ。やっぱり、そういう仕事がしたいんでしょうね。

えふしん氏が考える「仕事のやりやすさ」とは?

えふしん氏が考える「仕事のやりやすさ」とは?

―― でも、その志向であれば、極論、CTOじゃなくてもよいわけですよね?

えふしん ですね。ただ強いて言うなら、自分が(会社内で)お伺いを立てる立場にいる人は尊敬できる人間であってほしいので、CEOの直下で仕事ができる立場がいいかもしれません。それがCTO以外のポジションだとしても。

―― 堀内さんはgumiのCTOをお辞めになった後AWSへ行き、現在もいろんなお仕事をやっていますよね?

堀内 ええ。世界中を旅しながら(笑)。最近は、グローバルナレッジさんが実施しているAWS公式トレーニングの講師をやっていたりもします。僕はArchitecting on AWSの認定資格対策のコースを担当していて。

―― gumiをお辞めになった後はどうなりたいと思っていたんですか?

堀内 会社が急拡大していく中で、組織マネジメントはあまり得意じゃないと自覚したので、「自分にとってもっと楽しい仕事って何だろう」と考えていました。そこに偶然、AWSのエバンジェリストという仕事があって、「何か日本中を旅できそうだし楽しそうだぞ」と。

―― では、志向面での不一致がCTOを辞めた理由だったと?

堀内 そうですね。当時はそれで迷惑をかけた人がいたかもしれませんが。

―― 藤本さんは、今後やりたいお仕事とかあるんですか? それともこのままCTOとして目の前の課題を解決し続ける?

藤本 それはそれで悪くはないと思っていますけど、僕も今年で37歳になって、最近老後が不安なんですよ。生活がどうとかじゃなくて、「20年後の日本も、今と同じくらい暮らしやすいと思いますか?」って話です。

真面目な話、日本のソフトウエア産業、このままだと厳しいんじゃないかと思うんですよね。日本で作られたけど、海外からのサービスで置き換えられちゃったものも多いし、例えばRubyのように世界で使われるものをいろんなレイヤでもっともっと増やさなきゃなーとは思います。

だからこれを何とかするべく頑張るのも、残り半分の人生の使い方としては悪くないんじゃないか、と。そして、そういう問題に対して、自分1人じゃなくみんなで何ができるかな? と考えるのは、楽しそうだなと思っていたりはします。

―― 壮大ですね。

藤本 まぁ、こんな話も、若いエンジニアが何かすごいサービスを作って世界を席巻してしまえば一発でひっくり返るので、おっさんは黙ってろ的な話かもしれませんが(笑)。

専門家として食っていく上で大事なのは「今いる環境に新しい挑戦があるかどうか」

『キャリアごはん』では毎回、パネルトーク終了後に参加者とゲストでワークショップを開催しているが、この日はパネルの最中から会場を巻き込んだ議論に

『キャリアごはん』では毎回、パネルトーク終了後に参加者とゲストでワークショップを開催しているが、この日はパネルの最中から会場を巻き込んだ議論に

―― ここまでお3方個人のお話を中心に伺ってきましたが、次は各社の事例も伺いながら、もう少し一般的な「リーダーになってからの働き方とキャリア」について聞いていきたいと思います。

藤本 そのテーマに関連して告白すると、実は今日、会場にもともとグリーのリードエンジニアをやっていた人が来ているんですよ。今はもう転職しているんですけど。

―― (その方に向かって)今は何をされているのか、お聞きしてもいいですか?

上村 スマートニュースで役職なしのエンジニアをやってます上村宏紀です。割となし崩し的に何かしらの「リード」をやっている部分もありますが。

えふしん ぜひ上村さんにお聞きしたいのですが、グリーでリードエンジニアまでやった後、そこから転職される時のモチベーションって何だったんでしょう?

上村 誤解のないように話すと、前提として、グリーは良い会社だったと思っています。エンジニアとして得るものが大きかったですし。その上で、なぜ辞めたかと言うと、ひと言でいえば会社のフェーズと合わなくなったというか。

僕が勤めていたころのグリーにとって大事だったのは、良いゲームを作って世界に認められるということで。そう考えた時に注力しなければならないのは、クライアントサイドの強化です。

一方で僕はサーバサイド、インフラ寄りのエンジニアなので、あの当時のプライマリーではありませんでした。僕はガツガツやりたいけれど、会社は今そこにリソースを割ける状況じゃないというのもあって。だから転職を考えた、という感じです。

えふしん ありがとうございます。ある程度経験を積んだエンジニアのキャリアパスをどう考えるかって、本当にそこだと思うんですよ。

―― 「そこ」とは?

えふしん 要は、今いる環境に「新しいチャレンジをする余地」があるかどうかというか。

転職について言うと、採用する側がリードエンジニアやそれ以上の経験を持っている人に対して期待するのは「ウチでもリードをやってほしい」ってことじゃないですか。でも、転職を考えている側の人にとっては、単純に横スライド的なキャリアだと面白くないわけで。

堀内さんの転職話なんかもそうですけど、 やっぱり各自新しいチャレンジをしたいと思うから、何らかの行動をすると思うんです。

―― ある程度の経験を積んでいる人は、「何でもやります」とはならないですしね。

えふしん ということは、会社側は今いるメンバーに対しても、「新しいことができそうだよね」というその人のチャレンジフェーズを普段の仕事の中で見つけていきつつ、「じゃあこれやってみようよ」と引き上げていく必要があるよなぁと。そして、それが非常に難しいというのを、現在進行形で感じているところです。

前提として会社が成長し続けないとダメですし、僕個人の反省として、BASEで言うほどうまくメンバーを引き上げられているわけじゃないですし。

―― グリーさんはBASEさんに比べて会社の歴史が長く、規模も大きな組織ですが、ある程度の経験を積んだエンジニアのキャリアパスはどうなっていますか?

藤本 職制としては、例えばリードエンジニアというタイトルが入っているエンジニアはスペシャリストのラインで、マネジャーとは別になっています。リードエンジニアからマネジャーに行く人もいますが、そんなに多くはない。

スペシャリストのキャリアパスとしては、まずシニアエンジニアがあって、次にリードエンジニアになり、その上にシニアリードというポジションがあり……となっています。ただ、仕組みがあればシニアリードが育つわけではないので、会社としてどう育成していくか? についてはまだまだ難しいところが多いですね。

メンバー育成の話になり、苦労話をシェアし合う3人

メンバー育成の話になり、苦労話をシェアし合う3人

―― なぜでしょう?

藤本 理由は2つあって。1つは、さっき上村さんも言っていたように、どんな仕事が求められるかは、外的要因によって変わるからです。それが個人のキャリアにとって合う・合わないというのが当然出てきてしまいます。

もう1つの理由は、プロダクトのアーキテクチャに絶対の正解なんてないからです。コーディングにしたって同じことで。

皆さんは、自分が書くコードの1行1行を、自信を持って決められていますか? 僕はいまだに自信ないです。その瞬間、どんなに良いコードが書けたと思っても、3年経ってもイケてると思えるコードなんてほとんどないですよね? 3年前の自分のコードが全てイケてると思えるって、本当にメチャクチャ素晴らしいか、ちょっとヤバい人かのどっちかだと思う(笑)。

テクノロジーはどんどん進化するので、本当に全部分かったぞ、みたいになることって基本的にはない職業なんです、エンジニアは。突き詰めようと思えばどこまでも延々と突き詰められるわけで、そういった多様性についてオープンじゃないと「100%会社が育成する」のは難しい。

―― 確かに。

藤本 まぁ、スペシャリストとしてひたすら突き詰めていけるタイプの人が、それで給料が上がるかどうかは、会社によるわけですが。今話したように、会社の状況とか、外的環境によっても変わるので。

ミドルマネジャーの適性は手掛けるプロダクトへの「愛の深さ」で見極める

―― では、将来のVPOE候補というか、ミドルマネジャーの育成はどうでしょうか?

えふしん そこは本当にどの会社も困っていますよね。外から取ってこれるのであれば、それが一番簡単な解決方法でしょうが。問題は、中の人たちにどうやってなってもらうかで。

これが正しい考え方かどうかは分からないんですが、ソフトウエアって基本的に、誰かがずっと見ていないと死ぬものだと思うんです。不具合も出るし、負債の解消とかいろいろあるわけですよ。

そこを飽きずにずっと見続けられる人の中には、プロダクトを維持してちゃんと伸ばすためにも、他の人に「一緒に働いてね」とアプローチできる人がいると思うんですね。

1人ではどうしようもない局面が必ず来ますから、時には厳しいことも言わなきゃいけなくなるし、さらにチームを拡大するとなると、2段階下のメンバーにどうやって伝達するか?とかも考えるようになる。エンジニア組織の中であれば、そういう形のリーダーシップというか、マネジメントの形があってもいいのかなと。

CTOとして言うと、そういう悩みが一つ一つ覆いかぶさっても負けないようなエンジニアを見つけるのが、ミドルマネジャーの育成で大事なんじゃないかと思います。

―― 堀内さんはいかがですか? gumiが急拡大した時は、一気にチームマネジメントをする人材が必要になったのではないかと思いますが?

堀内 ええ。

堀内氏(写真中央)がCTO時代に感じた、「チームマネジャー向きな人」の傾向とは?

堀内氏(写真中央)がCTO時代に感じた、「チームマネジャー向きな人」の傾向とは?

えふしん 無理してでも急激に人を増やしていく中で、マネジャーとして頭角を現した人っていました?

堀内 いましたね。僕がそう仕向けたわけではないので、素質を持っていたんでしょう。例えば真面目に黙々とやるタイプの若手が、ちゃんと求められていることを理解して、かつ手も動かせて……ということで周りから信頼されるようになり、チームを束ねていく役割で頭角を現したり。

ちなみに、そういう人は技術うんぬんより「ゲームへの愛」が強かったですね。逆にダメだったのは、プログラムを書いて食べていきたい、という人で。

―― 手掛けるプロダクトやサービスに愛着が持てるかどうかが、一つの分かれ目だと。グリーさんではどうですか?

藤本 おっしゃる通り、チームマネジメントにも向き・不向きはありますよね。だからミドルマネジャーも一定のスペシャリスト的なスキルが必要なんだと思います。「何となくチームをリードしている人」ではなく、マネジメントの専門職として確立されるべきでしょう。

とはいえ、チームマネジメントって才能でも何でもなくて、やり方を学べばある程度まではできるようになるもので。人間を相手にする分、すごく難しいですけど。

―― リーダーになった後のキャリアというテーマから少し話が逸れますが、「エンジニアあるある」としてそもそもマネジャーにはなりたくないという傾向がありますよね? そういう人は、スペシャリストコースでやっていく方がいいんでしょうか?

藤本 やりたい・やりたくないの判断はその人の自由ですけど、じゃあ自分はプログラミングで一生食っていける自信ありますか?というのは考えなきゃいけないと思います。

例えば今後さらにグローバルな開発競争にさらされて、それで50歳とか60歳までコードを書き続ける自信がありますか? 若い人よりも常に上を行き続ける自信がありますか?って。

そう考えた時に、テクノロジーのバックグラウンドを持ちつつ、チームマネジメントのスペシャリティも持っているというのは、単純に他の人との差別化になるし、その人の市場価値に直結します。

それと、これがけっこう大事だと思うんですけど、エンジニアリングの勉強は基本1人でもできるけれど、チームマネジメントって会社じゃないと体験できない。だから、やれる環境とチャンスがあるなら、一回やってみたらいいじゃんとも思うわけです。まぁ、絶対というよりはあくまで一つの選択肢ですけど。

―― なるほど。

藤本 「そうは言っても……」というエンジニアの気持ちも分かるので、グリーではマネジャーの職制にだけ「アソシエイトマネジャー」というポジションを設けています。

えふしん 課長補佐や部長補佐のような役割ですか?

藤本 いえ、そうじゃなくて、単純にマネジャーになる人、する人の心理障壁を下げるのが割と大きな目的です。会社としても、誰がマネジャーに向いているかなんて本質的には分からないものなので。

えふしんさんの言うように、「ひとまずマネジャーやってみますか?」みたいな機会ができればいいかも、と思ってやっています。

―― 今は“交換留学”という形で他社で一時的に働けるような取り組みをしている会社も出てきていますし(参考記事1参考記事2)、そうやって自分に何が向いているのかを試してみる環境があるというのは大事かもしれません。

えふしん シニアなリードエンジニアにせよ、マネジャーにせよ、会社として「いずれはこっちに進んでほしい」と期待している部分があるんだけど、当の本人はそれより手前の段階で別の道に行きたくなっちゃって転職するというケースがあるじゃないですか?

それはそれでしょうがない面もありますけど、でも実は、もともといた道でも結局同じところに行き着くんじゃないの? みたいなこともけっこうあると思うんですよ。そうした時に、辞めるより前に気付ける仕組みがあると、話が手っ取り早くていいですよね。

僕は昔、Web制作会社で受託の仕事をやっていて、このまま続けようかどうしようか迷った時に一度、とある勉強会を開催したら「受託における僕のお悩み相談会」みたいになったことがあって。そこでいろんな会社の人たちと話したら、どこも抱えている問題が変わらないということが分かったんですね。

だったらこの世界に居続けるよりも、自分たちで作るモノを自由に決められる会社へ行こうと思って、paperboy&co.(現・GMOペパボ)に転職したんです。

僕の場合は最終的に転職しましたけれど、他社のことも知った上で「どこへ行ってもあんまり変わんないんだね」と分かったら、その問題を解決するために今いる会社でシニアなポジションを目指すという選択肢も出てきますよね?

だから、例えば「実は上の人はこういうことを期待しているんですよ」という話が気軽にできると、お互いにとってうまくいくケースが増えるかもしれないですね。

50歳になっても求められるエンジニアで居続けるためには?

『キャリアごはん』終了後に撮影したワンショット

『キャリアごはん』終了後に撮影した、ゲストパネラー同士のワンショット

―― 最後に、今後40歳、50歳になるWebエンジニアの人が増えていった時に、組織内・業界内でどういう役割をする人が求められるでしょうか?

藤本 とりあえず年齢関係なくね?と思いますけど。少なくてもウチでは、「40歳だからこう」、「50代になったらこう」というキャリアパスを会社側から提示することもないですよ。

グリーでは、最年長のエンジニアだと40代後半くらいでシニアリードをやっている人がいます。ちゃんと経験を積み重ねてきた人なので、彼にしかできないことをやってくれていると思います。

それに、例えばUSとかを見てみたら、ベテランエンジニアでもガンガン転職してたし、年齢はそこまで意識していないと思います。エンジニアとして50歳、60歳まで勉強し続けて、仕事をやり続けられる人は、当然それに見合った場所が見つかるよね、と。

逆に、30代とか40代でそもそも勉強すること、成長することが止まってしまえば、普通に価値が相対的には減っていきますよね。

―― 年齢うんぬんではなく、要は決めた道で腹を据えてやり続けるかどうかだと。えふしんさんはどう考えていますか?

えふしん 一般論を話すのは難しいですけど、僕自身は今42歳なんですね。なので今後、少なくともネット界隈で、僕よりも年上の人が出てくることってほとんどないだろうと思うんです。

ビジョナリーな起業家とか、スターエンジニアが出てくるとしたら、たぶん、僕より20歳くらい下の人間になる。だからこれは単なる生存戦略みたいな話ですけど、「今後もそういう若手たちと一緒に仕事ができるか?」は意識しています。

彼らは自分が年を取った時のことが分からないので、当然、自分より20歳も上の人を扱う術を持っていない。だから「ちょっと怖い人」扱いをされたりするんですけど、本当は40代~50代の人の方が「いかに20歳、25歳下の人たちと一緒に仕事できるか?」を考えなきゃならないんだろうなと。

ちょうど、BASEのCEOである鶴岡(裕太氏)は26歳なんですね。彼はおっさん転がしがすごくうまいので(笑)、僕としても気楽にやれてるんですけど、鶴岡のような年代の人たちに認められるのも、ある種の能力だと思っています。

―― 具体的には何をしてるんですか?

えふしん いや、特に何もしてないですよ(笑)。媚びるとか、そういう話でもなくて。

ただ、「何でBASEのCTOになったの?」みたいな話で言うと、きっかけとしては自分がもともとWebサービスを作っていて、ブログなどで情報発信もしていたので、一緒に仕事をする前から知ってもらっていたし、それが信頼関係を作る上での「入り口」にはなったと感じています。

要は僕がどんなヤツなのかを知ってもらえていた、ということだと思うんですよね。全然知らない人で、かつ年上で近寄りがたいと思われたら、一緒に仕事をやろうとなる機会すらないはずですから。

―― なるほど。皆さん、お話ありがとうございました!

取材・文/鈴木陸夫 撮影/大室倫子(編集部)

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