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思考を深めるプロセスがあるからこそ、「伝わる言葉」が生まれる

働き方

    著者の梅田悟司氏は、私たちが聞いたことのあるコピーばかりを生み出している、注目のコピーライターです。本書は、彼の「仕事術」がただシンプルに掲載されているのではなく、「読みながら考えさせられる内容」であることが人気となっている理由のひとつです。特に、企画やアイデア、ビジネスモデルを毎日のように考えなくてはいけないビジネスパーソンが手に取る傾向が高くなっています。

    「考えや思いを伝えて、人を動かす」こと。それは重要だと分かってはいても、なかなかそう簡単にはできません。ほとんどのビジネスパーソンが直面する「言葉で伝えることの難しさ」と真剣に向き合った本書は、その「難しさ」をどのように解消してくれるのでしょうか? 今回は、本書の読みどころを探っていきます。

    丸善・ジュンク堂「マーケティング・宣伝」書籍 2016年9月ランキング(2016年8月26日~2016年9月25日までのデータ)

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    「言葉の磨き方」を一流コピーライターが伝授

    著者である梅田氏は、電通のトップコピーライターとして活躍している人物です。梅田氏がこれまで手がけてきた作品は、私たちに馴染みのあるものばかり。缶コーヒージョージア「世界は誰かの仕事でできている」や、リクルートのタウンワーク「バイトするならタウンワーク。」などのコピーを一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

    そんな「言葉のプロ」である梅田氏は本書で、自分のなかにあるビジョンを上手に言語化できない人のために、「自らが意識している独自の手法」を公開しています。「言葉」についてここまで深く具体的に語れるのは、一流コピーライターとして「心に響く言葉を考え続けてきた」梅田氏だからこそです。

    梅田氏はまず、言葉には「内なる言葉」と「外に向かう言葉」がある、と言います。次いでそれらを「メッセージとしての明確性」「そこにいかに自分を投影するか」「伝えたい想いをいかに生み出すか」などの切り口で、解説していきます。そのとき、自らが生み出した具体的な広告コピーや有名事例、あるいは身近な例を使いながら具体的に説明していくため、読者は説明の概念が腑に落ちていくのです。

    では、本書の一部を垣間見てみましょう。梅田氏の考える「内なる言葉」と「外に向かう言葉」とは、一体どのようなものなのでしょうか? 

    「外に向かう言葉」ではなく、「内なる言葉」に目を向ける

    写真提供:「hontoビジネス書分析チーム」元記事より

    写真提供:「hontoビジネス書分析チーム」元記事より

    今では、メールやSNSなど自分の考えを伝える場所がたくさんあるのにもかかわらず、「自分の考えが伝わらない」と悩む人も少なくはありません。たとえば、SNSで投稿しても読者が増えない、「いいね!」などの共感を得られないなどの悩みがあるようです。

    コピーライターである梅田氏は、「どのように”伝わる言葉”を生み出しているのか?」と尋ねられることが多いと言います。その問いに対して梅田氏は、言葉という「道具」を使うために、「まずは自分の意見を育てることが重要」だと説きます。これが梅田氏の考える「内なる言葉」です。

    「言葉が意見を伝える道具ならば、まず、意見を育てる必要があるのではないか?」
    (『「言葉にできる」は武器になる。』より)

    いわば、「外に向かう言葉」が言葉として認識できるものだとすれば、「内なる言葉」とは表には出ない私たちの頭の中に生まれる「感情」や「考え」などです。類書の多くは、「外に向かう言葉」を磨くためのハウツー本が目立ちますが、本書はそれらとは一線を画し、「内なる言葉」に目を向け、その解像度を上げていくことに重点が置かれているのです。

    「より正確に表現するならば、『人が動きたくなる』ようにしたり、『自ら進んで動いてしまう』空気をつくることしかできないのだ」
    (『「言葉にできる」は武器になる。』より)

    梅田氏によれば、「人を動かすこと」とは自分の意図したとおりに人を動かすこと。しかしそうすると、動くことを強制しているため、相手は受動的になりがちです。一方で「人が動きたくなる」状態をつくれば、相手は能動的に自分の意志で動き出してくれます。

    梅田氏が唱えるように、人を動かすことが不可能であるならば、人が動きたくなるような空気をつくること。そのために言葉を道具として使いながら、どうしたら相手をワクワクさせたり、ときめかせたりすることができるのかを考えていく必要があります。

    梅田氏が「言葉は思考の上澄みに過ぎない」と唱えるように、私たちは考えていないことを言葉にはできません。これまで、言葉と頭の中で考えていることがなかなか合致しなかった読者も、本書を読むことで「言葉を生み出す前の思考の深め方」を知れるようになるでしょう。

    本書はいわゆるハウツー本とは一線を画しており、何回もページを繰りながら実践することで、自分の言葉を創造することができる秀逸な一冊です。一見すると、「伝え方」や「言葉の磨き方」を鍛えるためのように思える本書ですが、その本質とは、「考え方」を深められることにあります。

    「言葉にできない」ことは、「考えていない」のと同じである。
    (『「言葉にできる」は武器になる。』より)

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    本と電子書籍のハイブリッド書店
    hontoビジネス書分析チーム

    本と電子書籍のハイブリッド書店「honto」による、注目の書籍を見つけるための分析チーム。 ビジネスパーソン向けの注目書籍を見つける本チームは、ビジネス書にとどまらず、社会課題、自然科学、人文科学、教養、スポーツ・芸術などの分野から、注目の書籍をご紹介します。 丸善・ジュンク堂も同グループであるため、この2書店の売れ筋(ランキング)から注目の書籍を見つけることも。小説などフィクションよりもノンフィクションを好むメンバーが揃っています。

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