Vol.168

プロダクトマネジャーは「チーム開発の時代」に必要不可欠な職種~Increments・グッドパッチ・DeNA Games Tokyo・freee・FiNCのPMが議論【白熱プロダクト教室】

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最近では日本でも注目されつつあるものの、未だ社会に浸透しているとは言い難い『プロダクトマネジャー』という仕事。それもそのはず、エンジニアリングの方向性を決めるような役割から、売れる商品に育て上げる仕事、経営判断をする人……といったように、その定義は企業によってあいまいなのである。実際に、プロダクトマネジャー(以下、PM)とはどんな役割を持ち、どのような成果を生み出すべき仕事なのだろうか。また、PMを目指す際にはどのようなスキルが必要なのだろう。そんな疑問に、有名企業で活躍する5人のPMが答えてくれた。

過去には米GoogleでPMを勤めた経歴を持つ、Incrementsの及川卓也氏をモデレータに、グッドパッチ土屋尚史氏、DeNA Games Tokyo田川啓介氏、freee坂本登史文氏、FiNC犬飼敏貴氏といった有名PMが参加したミートアップ『白熱プロダクト教室』の様子から紹介する。

有楽町FiNC本社にて行われた『白熱プロダクト教室』の様子

有楽町FiNC本社にて行われた『白熱プロダクト教室』の様子

PMの仕事内容は、組織規模や事業フェーズによって変化する

――各社のPMはどのような役割を持っているのでしょうか。

土屋 フェーズによって、その時々でPMの役割が変わってくるというのは大前提で話しますね。基本は、プロダクトオーナーが描いたビジョンに沿って、実現していくのがグッドパッチのPMです。僕の場合ですと、その時々によって関わりの大小はあるものの、エンジニアリングとデザイン以外は全て担当していました。

田川 DeNA Games Tokyoでは、PMと、ディレクターとの役割を区切っています。モノづくりの責任者がディレクター。商品化とモノづくりの折衷を見つけるのがPMの役割です。なので、当社ではPMがガントチャートを見たりもしますよ。

犬飼 FiNCにおいては、「ユーザー視点でモノを見る人」という定義ですね。ユーザーに一番寄り添っていなければならないので、サービスを作るエンジニアに対してダメ出しをしなくてはいけない立場なんです。

坂本 freeeの場合は、「世の中の課題を発見できる人」。何を作るべきかではなく、なぜ作るのかに責任を持っている人という定義です。プロダクトマーケティングマネジャーのような役割もしていますが、プロジェクト管理のようなことはやりませんね。

――プロジェクト管理の有無は各社で異なるんですね。プロダクトマネジメントとプロジェクト管理は分けた方が良いのでしょうか?

土屋 事業の最初のフェーズであれば、仕事内容を問わずに何でもやるべきですが、プロダクトが成長していく過程で切り分けた方がいいかもしれません。

犬飼 私も、分けた方がいいと思います。そうでないと、プロダクトのビジョンを語る上で、無理難題を言いたくなっちゃいますから。プロジェクト管理をしていると、どうしても現場の視点が入ってしまう。良いプロダクトが生まれない危険性が出てきますよね。

坂本 そうですよね。そういうこともあって、freeeでは、エンジニア自身がガントチャートを作ったりしていますよ。エンジニアがプロジェクト管理をすると、スケジュールが緩くなったりしないのかとはよく聞かれます(笑)。でもfreeeの場合は、モノづくりに貪欲な“とんがったエンジニア”が多いので、そういうことはないですね。

田川 DeNA Games Tokyoは、始めの頃はPM・プロデューサーなどの役割を分けていませんでした。でも規模が大きくなってきたら、どうしても分業化しなくてはいけなくなりますから。規模拡大に応じて役職を作ったという感じですね。

――米国企業の場合だと「PM」と一口に言っても、プロダクトマネジャーのみならず「プログラムマネジャー」まであるくらい、たくさんの役職がありますもんね。大規模組織だと、そのくらい専門的な役職が必要になるように思います。

田川 でも完全に分業化してしまうと、お互いの領域に踏み込めなくなってしまうという危惧もありますよ。企画待ちをしてしまうとか。もしやるなら、踏み込め合える人たちをアサインしないといけないと危険だと思います。

――小規模な企業なら、リソースが足りないわけだから1人で何でもやるべきだけど、ある程度の会社なら「職種」も大事ですよね。コードを書いてナンボの人が、いろいろ手を出しちゃうっていうのも違うと思いますし。

土屋 はい、まさにそうだと思います。

新卒でもなれる!? PMの魅力は「ミニCEO」

Incrementsの及川卓也氏をモデレータに迎えた

Incrementsの及川卓也氏をモデレータに迎えた

――そもそも、PMってどうやってなるんですかね。

犬飼 PMになることが、「PMに上がっていく」という意味なら「ステークホルダーの数」が関係するのではないでしょうか。人数が増えるとマネジメントが難しくなる。徐々に増えていくステークホルダーをマネジメントしていくと、自然にPMへと上がっていくのでは。

土屋 犬飼さん自身はどういうキャリアパスなの?

犬飼 僕は最初、深夜番組のディレクターをやっていて、最初はメンバーが2人。その後グリーに入社して、メンバーが5人になり、30人になり、ネイティブ開発をやり始めると50人になりました。

――まずはメンバーの規模、それが大きくなるにつれてプロダクトにもコミットする立場になっていく、ということですね。

犬飼 はい、私の場合はそうでしたね。

田川 私も、開発費とステークホルダーの数が、プロダクトマネジメントの難易度を左右すると思うんです。DeNAで扱うゲームで大規模なプロダクトだと、予算を500億円くらい使ったりするんですよ。もちろん関係者もすごく多いので、そこで仕事のできるPMは、視野を広く持って各所のフォローすることができます。プロダクト成功に向けた引き出しの多さと、きちんと設計ができるかどうかのスキルにかかってくると思います。

土屋 DeNAだと、どんなPMが活躍しているんですか?

田川 どんなプロジェクトでもまとめられる人ですね。何も分からないところに入っても「ここが弱いからフォローしよう」とすぐ行動できるんです。そして、「自分ができる」というよりも、「できる人をうまく連れてくる」ことが得意。例えば、ビジョンを作る時には、PMが完璧なものを作るのではなく、ビジョンを組むのが上手い人を持ってくるというようにね。コーディネーターに近いと思います。

――足りないところをコーディネートできる人、というと分かりやすいですね。僕は、PMは映画のプロデューサーと同じだと思っているので、その感覚と似ています。では、他社はどうでしょうか。

坂本 僕は「上がっていく」というイメージはなくて、あくまで役割の一つだと思っています。だから新卒でも教育すればなれるのではないかと。エンジニアリングというよりも、「何を作っていくか」を突きつめればなれるものだと思います。

土屋 グッドパッチでは、一人は僕が抜擢した新卒がPMをやっています。もう一人はUIデザイナー出身。二人とも20代半ばなので、これからどうなっていくかは正直、分かりませんけど。

――PMに新卒を抜擢した、ってすごいですね。どういった基準で選定したのでしょう。

土屋 ほとんど感覚に近いと思います。まず、根がマジメ。そしてチームの信頼を勝ち取ることができているか。新卒だと技術力がないので、助けてあげたいと思える人間力・パーソナリティが大事だと思いました。また、彼女はインターンでカスタマーサポートをやっていたので、ユーザーの気持ちも一番分かること、そして何よりプロダクトのことをずっと考えているというところですね。

坂本 freeeでも、コミットメントが高いことはもちろん、「プロダクトのことをずっと考えている人」は大事だと考えていますよ。

――例えば今、新卒などPMのバックグラウンドを持っていない人に、「PMにならないか?」って口説くとしたら、皆さんどうしますか?

土屋 いや、新卒を抜擢したとはいったものの、まずは新卒でエンジニアやデザイナーなどの専門職から始めた方がいいと思います。チームの中でプロフェッショナルとして認めてもらえないから。

――チームの中で認められるかどうか、は大切ですよね。

犬飼 影響範囲の広さってPMの魅力であり、難しさだと思うんです。自分以外の能力を使う必要があるので、そこに魅力を感じる人がいいですね。

――人を動かす魅力、のようなものがないとだめですよね。

田川 そうだと思います。私が新卒を口説くとしたら、「PMって社長だよ」というかな。

――PMって「ミニCEO」と言われますもんね。私の前職のGoogleでは、起業したい人が多かったんですが、プロダクトマネジャーのそういうところに魅力を感じる人も多かったです。

田川 僕自身も、先輩に「一つのスキルでグローバルナンバー1になれると思っているのか? 誰ともコミュニケーションを取らずにそれができるなら、それはそれでいい。できないなら、おすそ分けをもらいながら、できることを増やしていくんだ。それがPMだ」と言われたのがすごく印象的で。

「走る」で世界ナンバー1になれるのはウサイン・ボルトだけ。それで勝てないなら、その能力に匹敵する何かを集める必要があるんだと。

――PMもそうですし、それってエンジニアにも言える話ですよね。今や、一人でコードをもくもくと書いていたらいい時代ではないですから。必ずチームで動いていく必要があります。そういう意味では、どの職種にも同じことが言えて、その最たるものがPMなのでしょう。

土屋 そうですね。なので、PMを口説こうと思ったら、優秀なデザイナーやエンジニアがうちにいるという話はします。モチベーションの高い人材がそろっているチームで、グローバルに向けてプロダクトを出していくというのに魅力を感じてもらいたいです。

PMに、必要以上の技術力は要らない!?

――ぶっちゃけ、PMにはどのくらいの技術力が必要だと思います?

田川 PMが持っているべき技術力のポイントは2つだと思っています。PMは意思決定が必要なので、意思決定に必要な最低限の技術知識。あとは、メンバーとの信頼関係を築く上で必要な技術力。それさえあれば、スキルレベルは関係ないと思います。逆に言うと、それ以上の技術力を増やしているような人がPMとして目立つのは、少し気になりますね。

土屋 私も田川さんに同感。PMは意思決定をしていく仕事だから、そのレベルでいい。

坂本 自分のアイデアに昇華できるくらいの技術力はほしいですね。深く知る必要はないけど、これはどう動いているか、本質は何なのかを考えられるくらいまでは知っている必要がありますよね。

犬飼 僕も大体一緒なんですけど、概念理解と実現難易度の把握ができて、正しい判断ができるかどうかですね。

――では皆さん、技術力はそんなに必要ないという意見なんですかね。今日イベントに来ている人の中には「PMの技術力が高くないと、現場エンジニアになめられるのでは」と考えている人もいるようですよ。

犬飼 私はバックグラウンドにエンジニアがないのですが、技術や言語ではなくて「エンジニアの人ってどういう思考回路で動いているのか」を把握することが何より必要だと思っています。個人的には、細かいところではなくて「話せる」というのが大事ではないのかと。

坂本 エンジニアと話せる、というのは大事ですね。だから絶対的な技術力がなくても、相手のことを理解しようとする姿勢があることが最重要なのでは、と思っています。

田川 僕のファーストキャリアは営業だったんですけど、エンジニアになって新規事業を担当した時に全然理解ができなかった。そういった「やってみないと難易度が分からない」という考えをもとに、難易度を図る意味でも自分で経験してみることは大事だと思います。技術レベルが高くなくても、工数や難易度が分かるレベルまで。世の中の全ての技術は知らなくてもいいと思っています。

――私も、PMのベースはエンジニアと会話ができるか、コミュニケーションがとれるかだと思うんです。共通言語は知っておくべきではあるものの、結局は、人を動かす人間力が大事なんですね。

取材・文・撮影/大室倫子(編集部)

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