Vol.38

SEが知っておくべき、新規プロジェクト「失敗の本質」~成功率8割以上のPMOが語る、炎上させない方法論とは

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マネジメントソリューションズCOOの田口正剛氏と、マネージャーの佐藤直樹氏

(写真左から)マネジメントソリューションズCOOの田口正剛氏と、マネージャーの佐藤直樹氏

企業景気の復活やサービス競争の激化により、国内・海外ともにシステムの新規導入・刷新プロジェクトの需要が高まっている。そこで、SIer・ユーザー側それぞれが人的リソースの確保と並んで取り組んでいるのが、プロジェクトの成功率アップだ。

2014年の『日経コンピュータ』によると、昨今のシステム関連プロジェクト成功率は約7割とのこと。プロジェクトの平均成功率は短期のものほど高く、「3カ月未満」が81%、以下、「3~6カ月未満」が78%、「6カ月~1年未満」が74%、「1年以上」が67%だった(※データの出典元は同誌2014年10月16日号)。

かつて「2~3割成功すれば御の字」と言われた時代があったことを考えると、進行管理や品質改善の取り組みは奏功しているといえる。ただ、巨額が投じられ、企業の命運を握るような新規プロジェクトになればなるほど、平均して「3割も」失敗してしまうという事実は看過できないものだろう。

そこで脚光を集めているのが、プロジェクトマネジメントを包括的に支援し、案件成功に導く「PMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)」だ。

2005年7月設立のマネジメントソリューションズは、PMO専業企業として、主に大手企業のIT関連プロジェクトを300以上成功に導いてきた実績を持つ。

>> マネジメントソリューションズの手掛ける「PMO」とは

マネジメントソリューションズのWebサイト
マネジメントソリューションズのWebサイト

コンサルティングとプロジェクトマネジメント支援を依頼されるのは、規模が大きくステークホルダーも多数いるような難解なプロジェクトが多いにもかかわらず、同社が携わってきた案件の成功率は(納期や品質などゴールはそれぞれだが)80~90%を記録。リピート依頼も約9割に上るそうだ。

彼らはなぜ、平均より高いプロジェクト成功率を叩き出すことができるのか。そして、そもそも新規プロジェクトが失敗する原因はどこにあるのか? その答えを、マネジメントソリューションズのCOO田口正剛氏と、業務系SEからPMOに転身した佐藤直樹氏に聞いた。

正確な「WBS」が策定されていないプロジェクトは失敗する

結論から言うと、新規プロジェクト失敗の要因分析とその回避方法を、マネジメントソリューションズはナレッジとして公表している。その内容が以下のSlideShareだ。

一読すると、失敗するプロジェクトにはWBS(Work Breakdown Structure=詳細スケジュール)の策定ミスという共通点があることが分かる。

そのため、マネジメントソリューションズではプロジェクト参画が決まった時点でWBSの精査を行っているという。

「パッと見では担当者によりWBSをきちんと作成しているように思えても、細かく精査していくと、いくつかの課題が見えてきます」(田口氏)

例えば複数のSIerがアサインされていて、そのうち1社からプロジェクトマネジャー(以下、PM)が抜擢されている場合、各社によってプロジェクトに臨む姿勢や各スタッフの役割分担、責任の所在が曖昧かつ複雑に錯綜してしまう傾向がある。本来はシンプルな行動目標であるはずの「誰が、何のために、何をやっているか」を見失ってしまっているケースが多いのだという。

前職で業務系SEをやっていた当時、自身もそういった課題を痛感していたと話す佐藤氏は、WBS通りに現場が回らなくなるプロセスについてこう付け加える。

「プロジェクトがうまくいかない場合、現場レベルのエンジニアたちは『何が原因で回らなくなっているか』を分かっているものです。でもそれを協力会社のチームのせいにしたり、PMの仕事だと黙っていたりと、誰も責任を取らないままでいることが多い。その小さな積み重ねが、最終的にプロジェクトをクラッシュさせてしまうんです」(佐藤氏)

プロジェクト進行中によく起こる「例外処理」の一例

プロジェクト進行中によく起こる「例外処理」の一例

こうして生まれるさまざまな“ひずみ”を、ロジックと行動(PMOはPMと現場の架け橋となって細かな調整作業を行うことが多い)で埋めていくのが、プロジェクト失敗を回避する最大の打ち手となる。

ただし、このロジックの面において、田口氏は「そもそも優秀なPMが不足している」こともプロジェクト失敗の一因だと指摘する。

かつて隆盛していた製造業の世界では、プロジェクト成功の方法論やマネジメント手法が先達から後輩へ伝承されていた。が、ことIT業界の場合、ベテランPMの定年退職や過度な分業体制、人材流動性の高まり、技術進化が早い点などから、PMに必要なノウハウが伝承されないまま若手が苦労している。

そこでマネジメントソリューションズでは、PMOの専業会社として培ってきた独自のPMOフレームワークとプロジェクト運営ナレッジを社内で体系化。これを社員のみならずクライアントにも伝えていくことで、PM経験のない若手SEなどをPMOのスペシャリストとして育成することも行っている。

時にはフレキシブルに「成功の定義を変える」決断も必要

一方で、彼らのようなプロジェクト成功請負人の力を持ってしても、炎上プロジェクトの“火消し”が困難な場合もあるという。その原因として最も多いのは、「ユーザー側の経営陣やSI側の役員など、意思決定権を持つキーパーソンとプロジェクト参画メンバーの間に物理的・意識面での距離がある」場合だと田口氏は明かす。

この距離が、最終ゴールに対する認識のズレを生み、例えば「SIは納期を死守したが、システム導入後にユーザー側から『使えない』というクレームが来る」ような事態が発生してしまう。

こういった課題を根本的に解消すべく、PMOがクライアントに提案するのは「成功の再定義」だという。

成功の再定義を行うことで、「小さな成功」を積み重ねるのが重要と語る田口氏
成功の再定義を行うことで、「小さな成功」を積み重ねるのが重要と語る田口氏

大抵のプロジェクトでは、意思決定者やPM・チームリーダーといったステークホルダーそれぞれにプロジェクトの「成功の定義」を確認すると、全員が一致するケースは、ほぼないという。

「我々が意思決定者とPMの間に入り、クオリティ、予算、スケジュールこの3つの中でどの点を優先すべきか議論を重ねた上で、プロジェクト成功の定義をプロジェクト関係者全員に周知するのです。多少クオリティが低くてもスケジュールを守るべきなのか、それとも品質を担保するために納期を遅らせるのか。プロジェクトのスコープを設定し直すことで、本質的な失敗を防ぐことができます」(田口氏)

多くのSIerにとって、ゴールの変更はご法度とされてきた。しかし、失敗を「小さな成功」に変化させることでしか、収拾できない炎上ケースもあるとのことだ。

その「小さな成功」を事例として積み重ねることで、顧客との信頼関係を築き、次の課題解決もサポートしていく。このサイクルによって継続受注を得て、担当のPMOがプロジェクトの初期から参画できるようになっていくそうだ。

そして、この「初期から参画できるようになる」ことこそが、成功率を劇的に改善すると佐藤氏は話す。

「場合によっては、クライアントの経営会議にPMとともに同席することもあります。SEをやっていた時に比べれば、こうやってプロジェクトの上流から携わりながら問題解決に当たれる点が大きな違いです」(佐藤氏)

仕事は「プロジェクトのバグ取り」。SEがPMOの専門家になる利点とは?

佐藤氏はSEとして約4年の経験を経て、マネジメントソリューションズに転職した。現在、入社4年目だが、20代のうちからPMOとして複数のプロジェクトを成功に導いてきた。

「従来のIT業界のキャリアだと、SEからPMになるまでに数多くの現場を経験するだけでなく、業務知識も身に付けなければなりません。また、(職位上)上の世代が詰まっていて、昇格できないということもあるでしょう。しかし、PMOという立場であれば、PMや意思決定者と仕事を進めることができるため、年齢や職位に関係なくプロジェクトの成功に寄与でき、視点が高くなると感じています」(佐藤氏)

SE時代の経験がPMOとして働く中でも活きているそう
SE時代の経験がPMOとして働く中でも活きているそう

規模の大小にかかわらず、プロジェクトの現場でジレンマを抱えているSEは数多いと佐藤氏は語った。しかし、前述のように現場レベルで解決できることには限界がある。

「プログラムのバグをつぶすよりも、プロジェクトのバグをつぶす。この発想が、プロジェクトを成功させる最大の近道だと思っています」(佐藤氏)

PMOは、プロジェクトの成功率を劇的に高める存在として注目を集め、多くの現場で定着しつつある。

同じプロジェクトに参画してゴールを目指すなら、ジレンマやストレスを抱える現場ではなく、若手のうちから俯瞰的な視点でプロジェクトに参加し、「疑似PM体験」を得ることができるPMOというキャリアも、多くのSEにとって選択肢の1つになるのではないだろうか。

取材・文/浦野孝嗣 撮影/小林 正

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