Vol.237

KDDIエボルバが行う「必要とされ続けるエンジニア」になるための研修制度『エボルバカレッジ』とは?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

どんな業界でも“変化への即応”が最優先とされる時代。

特に、IT業界は新しいテクノロジーが“最先端”と言われるのはほんの一瞬に過ぎず、またたく間に次のイノベーションへと上位互換されていく。そのため、そこで働くエンジニアが中・長期のキャリアパスを描く上で、常に新しい技術動向やトレンドを踏まえてスキルアップを続けることが求められる。

そんな業界にあって、独自の研修制度をスタートし、約4年にわたって定着させてきた企業がある。KDDIエボルバだ。

同社の研修制度『エボルバカレッジ』の大きな特徴は、組織が義務づけている研修制度ではなく、エンジニアたちスタッフ自身が企画・立案し、自主的に実施されていることにある。開始から約4年、現在は5つの講座を1期6カ月のカリキュラムで開講している。

「研修」と聞くと、知識や技術などのノウハウを学ぶもの、と思われがちだが、この『エボルバカレッジ』に至ってはそれだけではない。KDDIエボルバの大江辰徳氏に言わせれば、“エンジニアとしての価値向上に直結する”研修なのだという。

事実、アサインするエンジニアについて『エボルバカレッジ』を受講したかどうかを、クライアント側から尋ねられることもあるのだという。

なぜこの研修を受けたことで“求められるエンジニア”になれるのか。その秘密を、『エボルバカレッジ』を企画・運営しているスタッフと受講経験者にそれぞれ聞いた。

『エボルバカレッジ』の様子

2017年3月に開催された『エボルバカレッジ』の様子

急速な需要増で顧客のニーズに応えるエンジニアのキャリアアップが急務に

現在の『エボルバカレッジ』の原形は、約4年前の自主的な勉強会だったと話す大江氏。彼は当時、上流エンジニアのマネジメントをする立場にいた。

KDDIエボルバの大江辰徳氏
大江氏は『エボルバカレッジ』について「知識やスキルよりも“実践的な働き方”を教えることに重きを置いている」と話す

「当時のKDDIエボルバでは、設計・構築・プリセールスといった上流工程を担当できるエンジニアの数が少なく、私がマネジメントしていたエンジニアたちにそれらの業務が集中している状況にありました。また、クライアントのニーズも高まってきていたため、後進を育てるのは急務。そんな危機感を抱いた上流工程エンジニアからの発信で生まれたのが『エボルバカレッジ』でした」(大江氏)

同社でエンジニアの事業を開始したのは2009年から。初年度20名程度で始まったエンジニアの事業は現在では450名規模まで急拡大した。その中で教育の仕組みを構築していく必要性があり、生まれたのが『エボルバカレッジ』だ。

「どの企業でも同じだと思いますが、インフラ系エンジニアであれば、まずは運用や保守の仕事からスタートするのが常。ただ、日々の業務に勤しんでいると、上流へのキャリアアップを考えるきっかけがなかなか得られなかったりもします。また、知識として必要な情報は理解できても実際の働き方、現場で求められるスキルをイメージすることは難しい。だから、『エボルバカレッジ』できっかけづくり+ノウハウ伝授を行っているのです」(大江氏)

現在でも、『エボルバカレッジ』の講師を務めるのは同社で実際に上流工程を担当するベテランエンジニアたち。彼らが実際に現場で体験したことを講座の内容に反映させることで、“使える業務知識”が学べる仕組みになっている。

“学ぶ側”から“教える側”に。立場が変わって学べることもある

そんな『エボルバカレッジ』は現在、「ネットワーク(プレ・ポスト)」「プロジェクトマネジメント」「英語力育成」「サーバ構築」「社内SE講座」の5講座が1期6カ月ずつ実施されている。

受講するエンジニアの中には、自身の専門分野以外の講座を選ぶ人が多いという。ネットワークを専門とする石井敏之氏もその1人だ。

KDDIエボルバの石井敏之氏
同僚に薦められて参加したという石井氏。取材当日も「サーバ構築」の講座に参加していた

「日々業務に取り組んでいると、ネットワーク専門と言えど、どうしてもシステムやサーバに関する知識やスキルが必要になる場面があります。理論じゃなくて、毎日の仕事にも役立つ実践的な内容と聞いて受講を決めました」(石井氏)

「サーバ構築」講座の開講は1カ月に1回で全5回。石井氏が受講した2016年9月期は5人が受講した。あえて約10人までの少人数制で1回あたり約2時間という密度高く開講するのも『エボルバカレッジ』の大きな特徴の1つだ。

「常駐先の現場で日々経験していることの“意味”が学べたのが収穫でした。人数が少ないので、分からないことや疑問に感じたことをその場ですぐ質問できるのもよかったですね」(石井氏)

Windows環境、Linux環境のサーバ構築に関する基礎的な知識やスキルが身に付くだけでなく、現場の業務改善のためのヒントなど仕事に役立つ内容だったと石井氏は振り返る。

一方、講座の受講をきっかけに、自ら教える側として“サブ講師”を経験したのがサーバエンジニアの岩村裕輝氏だ。

「僕はネットワーク関連が学びたくて講座を選びました。ネットワークは『プレ講座』と『ポスト講座』とに分かれていて、でしたね」(岩村氏)

KDDIエボルバの岩村裕輝氏
「受講生としてインプットしたことを人に教えるために復習することで、知識が固まる」と、話す岩村氏

行程表や提案書づくりまでプロジェクトマネジメントやコンサルティングといった上流工程が学べる実践的な講座の受講がきっかけになって、岩村氏は講師をサポートするサブ講師として講座を担当。学ぶ立場から教える側になったことで、自身も逆に学ぶことが多かったと話す。

「サブ講師とはいえ教える立場になるので、質問される機会もあります。その際、ちゃんと回答できるように自主的に講義の予習を行ったことが新しい知識やスキル獲得につながりました。システムを運用・保守することだけでなく、その先の『顧客にどんな価値を提供できるのか』というワンランク上の意識が身に付きましたね」(岩村氏)

受講者から思いがけない質問や疑問を受けて、同じ職場で働く仲間のエンジニアたちがどんな課題に直面しているかを知るきっかけにもなったという。

「学び続ける」文化・風土がエンジニアのキャリアパスを描く

『エボルバカレッジ』の目指すところは、キャリアアップ意識を持ったエンジニアの育成だ。

ITの分野・業界では、いま最新・最先端のテクノロジーと言われているものが明日にはすでに過去のものとして淘汰されていく。すでにシステムの設計・開発の分野でもテスト行程の自動化やAIの導入などが進んでおり、ルーティンワークだけを担当するエンジニアにとってはキャリアパスを描きにくい時代になっている。

「常に新しいエンジニアリングで顧客に価値を提供していくためにも、優秀な人材を教育・育成していかなくてはならない。業界全体で“上流工程のエンジニアの人材不足”という課題があります。当社の中ではその課題を『エボルバカレッジ』を通じ、プロジェクトマネジメントやコンサルティング、プレ・セールス、ポスト・セールスなど、上流の行程で活躍できる人材を育てることで、解決しているのです」(大江氏)

エンジニアたちは日々の業務が忙しいのが普通。個人だけで明確なキャリアパスを描こうとするのはなかなか難しいのが現状だ。だからこそ『エボルバカレッジ』がいいきっかけになっている、と大江氏は考える。

「エンジニア自身から始まったこの取り組みがきっかけとなり、『学び続けることがあたりまえ』になってきています。働く環境の雰囲気も変わりましたし、エンジニア1人1人も常に向上しよう、成長しようという意識を持って業務に取り組むようになりました。その高いモチベーションと身に付けた業務に直結する知識が、結果として、クライアントに求められるエンジニアを生むのです」(大江氏)

エンジニア事業立ち上げメンバーたちの声から始まった『エボルバカレッジ』。今はある1社の取り組みに過ぎない。しかし、このような“使える業務知識”を身に付けさせる取り組みが波及し、エンジニアが主体的に自身のキャリアを考えるきっかけを作れれば、業界全体が抱える課題を解決するかもしれない。

取材・文/浦野孝嗣 撮影/佐藤健太(編集部)

この記事が気に入ったらいいね!しよう

エンジニアtypeの最新情報をお届けします
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

RELATED POSTS関連記事

JOB BOARD編集部おすすめ求人

この記事に関連する求人・キャリア特集

  
Bsizeの求人を見る エンジニア転職フェア開催 IT&モノづくりエンジニアを求める優良企業が大集結! アプリケーション・パフォーマンス 2017 typeメンバーズパーク

日本マイクロソフト株式会社 【マイクロソフトサポートエンジニア】トップ…

CLINKS株式会社 テレワークエンジニア(SE・PG・デザイン)在宅勤務で社員…

株式会社エーアイエル ITエヴァンジェリスト/IT未経験者の育成担当…

株式会社エーアイエル インフラエンジニア/40代・50代エンジニアが…

LINE株式会社 サーバサイドエンジニア

株式会社ワット・コンサルティング 【グローバルエンジニア】海外と日本を…

市光工業株式会社 【生産技術エンジニア】創業110年以上の老舗メーカー◆…

ファロージャパン株式会社 セールスエンジニア◆自宅勤務前提(SOHO)◆フ…

市光工業株式会社 【機械設計】創業110年以上の老舗メーカー◆自動車のラ…

ネッチ・ジャパン 株式会社 機械設計エンジニア/熱分析装置でトップクラス…

モノのBoTが語るコトは、ヒトの人生を変えるか。Bsize八...

今度こそ克服するAutoLayoutの使い方・基礎編~Swi...

データアナリストになる方法~コンサル型かエンジニア型か?ビッ...

Xcodeの使い方を基礎から学ぼう~Swiftからはじめるi...

なぜ、いまだ7割のITプロジェクトが失敗するのか? 「再生人...

>>過去のエンジニアtypeのページはこちら