Vol.275

エンジニアが人事分野で掴む新たなキャリア【人事 to ITカイギ:イベントレポート】

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最近ではキャリアの一つとして、エンジニアリングの知識を活用しながら人事の分野で活躍するエンジニアが増えている。2017年2月17日、ITと人事の可能性をテーマとして開催された『人事 to ITカイギ』には、エンジニアや人事担当者など150名を越える来場者が集い、その関心の高さを明らかにした。

イベントに登壇したグリーの藤本真樹氏とクックパッドの庄司嘉織氏は、エンジニアの経験を持つ人事として、エンジニアリングを活かした人事の未来を語った。「エンジニア不足が叫ばれている中、エンジニアリングの視点を持った人事となることで、ゴールドラッシュで言う“つるはしを売る人”として活躍できる」と、キャリアの可能性を二人は示した。

実際にエンジニアが人事になることで、どのような変化が生まれるのか。
そして、人事はエンジニアにとっての新たなキャリアのひとつになり得るのだろうか。

(左から)クックパッド庄司嘉織氏、グリー藤本真樹氏

(写真左から)クックパッド庄司嘉織氏、グリー藤本真樹氏

グリー株式会社 取締役 執行役員常務 CTO 藤本真樹氏2001年、上智大学文学部を卒業後、アストラザスタジオを経て、03年1月テューンビズに入社。PHP等のオープンソースプロジェクトに参画しており、オープンソースソフトウェアシステムのコンサルティング等を担当。05年6月、グリー取締役、最高技術責任者に就任。16年10月より取締役として人事も管掌

クックパッド株式会社 技術部長 兼 人事部長 庄司嘉織氏25歳から本格的にプログラミングを勉強。ドワンゴで電子書籍の立ちあげ開発リーダーなどを行った後、クックパッドに転職。投稿部門の部長を経て、動画配信基盤の開発、サービスの マイクロサービス化などに従事したあと、現在は技術部長兼人事部長を担う

人事を変える“当事者”であることの重要性

まず、業界を牽引していた二人のエンジニアは、どのような経緯で人事に携わることになったのか。

グリーの藤本氏

「今の時代、ソフトウェアの応用範囲は日に日に広がっていると認識しいて、なので僕たちエンジニアができることも多くなっていくっていうのは前々から感じていたんです。エンジニアリングでさらに作業を効率化したり、今までにできなかったことができるようになる、とかですね。それは人事に関しても同じで、エンジニアリングの視点を入れるのはすごくいいことだと思ったんです。それに、ソフトウェアで物事を変えていけるのであれば、それは絶対に楽しいなと」(藤本氏)

エンジニアが人事を行うということについて、すぐに可能性を見出した藤本氏。その一方で、庄司氏は人事部長に就くことに、最初は前向きではなかったという。

「僕がエンジニアだった時、エンジニアのことが分からない人が僕らの人事を行うことに疑問を抱いていたんです。今回僕に人事部長の話が来た時に、人事を分からない人に人事部長に立たれる部下の気持ちを考えたり、さまざまな摩擦が起こるんじゃないかってことを考えて、はじめは躊躇しました。でもある日、任天堂の岩田社長の取材記事を読んで、“当事者”になることを決意したんです」(庄司氏)

“誰かのお役に立ったり、誰かが喜んでくれたり、お客さんが嬉しいと思ったり、それはなんでもいいんですが、当事者になれるチャンスがあるのに、それを見過ごして、「手を出せば状況がよくできるし、何かを足してあげられるけど、大変になるからやめておこう」と、当事者にならないままでいるのは、私は嫌いというか、私はそうしないで生きてきたんです”(岩田氏)
(出典:ほぼ日刊イトイ新聞

エンジニアとしての知見を活かし、人事の分野で“当事者”として新たな試みに挑戦することを決めた二人。実際に彼らが人事となったことで、企業にはどのような変化が生まれたのだろうか?

エンジニアとしてのスキルだけではなく“視点”を活かす

藤本氏によると、人事の世界を覗いた時に意外だったのは“人事が人事らしいことをしている時間は案外少ない”ことだったと語る。

「データを集計したり、整理したり、『これは人がやらなくてもいいのでは?』という作業に結構な時間を使っていた。だから3回同じことをやっていたら、それは機械にやってもらおう、っていうことを言って少しずつそういう意識を持ってもらえるようにしています。それでシステムを自分でも作って、少しずつ機械がやる領域を増やそうということを企んでいます」(藤本氏)

また、藤本氏によると、それまでに蓄積された人事データを一元化するのも、元エンジニアである人事が活躍できる場面だという。

「例えば長く同じチームにいるひとを抽出してローテーションをしよう、ということを考えたとき、『その人が同じチームに何日間居続けたか』みたいなものをデータとして管理するのが意外と難しかったりするんですよね。プログラムに置き換えられるところはなるべく置き換えて、人事が人間にしかできない仕事に時間を使えるようにするのが、僕みたいなエンジニア出身の人事がやるべきことだと思っています」(藤本氏)

一方庄司氏は「これは僕だけの力でやったことではないんですが」と前置きした上で、人事部で行った施策を挙げた。

・コアタイム廃止
・リモートワーク制の導入(トライアル)
・海外スタッフの採用体制づくり
・エンジニアの面接官を拡充
・Rubyコミッターの採用

クックパッドの庄司氏

「オペレーション面でもエンジニア視点での見直しをしました。例えば新卒採用選考では、Githubでポートフォリオを公開してもらっています。まず、ポートフォリオを作るための構造と、YAMLをこちらで用意します。その2つを使ってHTMLを吐き出すプログラムを書いて、gistで提出してもらうんです。そうすることでみんなのプロフィールやコードも分かる。1ページ見るだけでかなり具体的な実力がわかります。こういったアイデアって、エンジニアが人事部にいなければなかなか思い浮かばないんですよね」(庄司氏)

また、庄司氏は人事とエンジニアの隔たりをなくすためにも、人事部に在籍するエンジニアの存在が重要だと語る。

「エンジニアがいない状態でいろんな制度を決めるとなると、エンジニアに遠慮しすぎるんですよね。『もしこうしたらエンジニアさん、嫌がるのでは?』みたいな。 変にエンジニアを特別視しないようにするためにも、エンジニアが人事部に入るのが大事だと思います」(庄司氏)

エンジニアのキャリアのひとつとしての人事

当初は人事というキャリアについて後ろ向きの姿勢を見せていた庄司氏だが、今では人事に携われていることに感謝していると語る。

「エンジニアの採用を手伝ってくださいって言われることが多かったんですけど、これまでは文字通り“手伝い”しかできなかったんですよね。面接や書類審査には対応できても、今みたいに選考フロー自体の見直しなどはできなかった。それが今は当事者としてすべてに関わることができています。それに、当事者になれたからこそ、なにか失敗をしたら『人事部ふざけんなよ、何やってるんだよ』って言われる。そういう意味ではつらいけど、人事部長になってよかったなって思ってるんですよ」(庄司氏)

「実際に人事をエンジニアの視点で見ると『こんなのすぐにできるじゃん!』みたいなことがゴロゴロしてる。エンジニアが人事になることでやりがいを感じて楽しめることはたくさんあるので、トライしてみると大なり小なり楽しいと思います」(藤本氏)

そして庄司氏は最後に、現在売り手市場であるエンジニア業界において、“エンジニアの知見を持った人事”が活躍できる可能性を提示した。

「昔、ゴールドラッシュの時に一番稼いだのは採掘者にツルハシを売っていた人だと言う話があります。優秀なエンジニアをゴールドラッシュのときの金塊だと考えると、エンジニアをちゃんと見極めて採用できる人事って、すごく重宝されるんです。エンジニア経験を持つ人事は、そんなツルハシを売る人になれる。そんなスキルを持っておくのも、キャリアパスとしていいんじゃないかなって思うんですよね」(庄司氏)

取材・文/羽田智行(編集部) 撮影/大場光一郎(クラウドワークス)

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