Vol.207

LINE砂金信一郎氏が考えるChatbotの可能性!新たなビジネスモデルで広がるIoT/UXエンジニアのキャリア【バズワードから紐解くエンジニアのキャリア 〜Chatbot編〜】

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【連載】バズワードから紐解くエンジニアのキャリア

IT業界で注目される次世代技術は、常に“バズワード化”する。AI、ロボティクス、IoT、ブロックチェーン、FinTech、オムニチャネル……一過性の“Buzz”で終わらずに普及・定着していく次の注目技術は、エンジニアの働き方をどう変えるのか? この連載は、そんなバズワードの1つにフォーカスして現役SEをはじめとするエンジニアがめざすキャリアと将来展望について考察していく。

連載第二回目となる今回ピックアップしたのは、AI技術の一つとして一気に認知度を高めている『Chatbot』だ。

現代を代表するコミュニケーションツール、『LINE』。それを提供するLINE株式会社ではニュースサービス『LINE NEWS』や定額制オンデマンド型音楽配信サービス『LINE MUSIC』など、幅広いサービスを展開している。そんなLINEが今注目している技術が『Chatbot』だという。

LINEは昨年『Messaging API』を公開し、それを活用したChatbotを公募する『LINE BOT AWARDS』を開催。優秀作品には一千万円が贈られるなど、その期待の高さが伺える。個人・法人、また国内・海外問わず多くのチームが参加し、盛り上がりを見せた同イベントだが、その主催者として舵を取っていたのが砂金信一郎氏である。

8年間マイクロソフトに在籍し、直近の4年間でLINEと協業しながら、女子高生モデルの会話bot、『りんな』のプロジェクトに関わってきた砂金氏。現在はマイクロソフトからLINEへと拠点を移し、Chatbotの開発を進めている。まずはその経緯から聞いた。

Chatbotの新たな可能性を見いだし続けている砂金信一郎氏

LINE株式会社 LINE Biz センター 広告・ビジネスプラットフォーム室 カスマターコネクト事業企画チーム マネージャー 砂金 信一郎(いさご・しんいちろう)氏東京工業大学工学部卒。卒業後は日本オラクルにおいて、ERPから情報系ポータル、新規事業立ち上げまで幅広く経験。ローランド・ベルガーにて、自動車メーカーを中心に、各種戦略立案プロジェクトに従事。リアルコムにてマーケティング責任者を務めた後、2016年9月までマイクロソフトでクラウドコンピューティングやWebサービスを中心とした啓蒙活動を行うエバンジェリストとして活躍。現在、LINE Biz センターの広告・ビジネスプラットフォーム室でマネジャーを務める

Chatbotへの期待とビジネスシーンへの進出

「マイクロソフト在籍時に立ち上げに関わった『りんな』には膨大な“会話データ”が必要だったんです。日本でもっとも会話データを蓄積しやすいLINEとの協業は必然でした。その後、ChatbotやAIの発展にはアルゴリズムよりデータが重要であるとの結論に至り、LINEへの転職に繋がりました。ちょうど転職のタイミングに合わせるようにLINEでは、APIの公開が進められており、『LINE BOT AWARDS』を開催するなど、もっとChatbotの可能性を広げる取り組みを推進することになりました」

エンターテインメントの世界で注目を集めてきたChatbotだが、進化を続け、新たなビジネスモデルを作るまでに成長しているという。

Chatbotの可能性について語る砂金氏

「『りんな』は実験的なChatbotだったので、直接ビジネスやサービスの提供に結びつくものではありませんでした。しかし最近ではローソンが『りんな』の仕組みを活用した、あきこちゃんchatbotでファンを集めるなど、新しいビジネスが生み出される兆しが出てきています。今回の『LINE BOT AWARDS』でも、すでにタイで多くのユーザーを獲得しているBotnoiのようなサービスが対話エンジン部門賞を受賞したり、従来難しいとされていた自然言語による対話Chatbotが世界中で広まりつつあります」

今、砂金氏を中心にLINEが注力しているのが、Chatbotを活用したコールセンターの効率化とコスト削減を実現するLINE Customer Connectという新しいサービスだ。ユーザーからの問い合わせの多い内容にAIが応答することによって、貴重なリソースを他の事業へと振り向かせることが狙いだという。

「コールセンターに寄せられる問い合わせを分析すると、FAQ化できるものが多い。こうした“よくある質問”を、AIをベースにしたChatbotで回答することができれば、サービスの質を落とすことなく業務の効率化やコスト削減に大きく貢献できると考えています」

コールセンターのChatbotは『りんな』のようなエンターテイメント要素の強いサービスと方向性は異なるものの、膨大な会話のやりとりをAIに学習させながら対話の精度を高めてゆくアプローチは同じである。一般的にChatbotのような新しい技術でマネタイズの方法をつくりだし、新しいビジネスを立ち上げるのは容易ではない。コールセンターにはChatbotで解決できる課題と、市場がすでに存在しており、Chatbotがビジネスベースで世の中に最初に浸透する分野であると考え、注力しているという。

それではChatbotが新たなビジネスモデルとして台頭したとき、その開発の中心を担うのは、一体どのようなエンジニアなのだろうか。

ChatbotがAIとIoTの架け橋となる

今年4月、新たに渋谷に移転したLINEオフィス。

砂金氏は、『LINE BOT AWARDS』の決勝イベントで最終候補に残った24作品の傾向から、ChatbotとIoTデバイスとの連携に大きな期待を寄せている。

「『LINE BOT AWARDS』で最終的にグランプリに選ばれたのは『&HAND』というサービスだったんですが、これはLINE Beacon(※)対応端末とセットで目や耳が不自由な人と周囲の人とをつなぐ試みです。LINE Beaconだけでなく、すでに幅広い分野で実用化が進んでいるIoTデバイスと組み合わせて活用していくことで、大きく普及・定着していく可能性があるものだという印象を受けました」

(※)店などに設置されたビーコン(Bluetooth発信機)から配信されるクーポンやセール情報、特別なメッセージなど様々なコンテンツを、公式アカウントを経由してLINEで受信できるサービス。

また、LINEは『LINE BOT AWARDS』の決勝イベント終了後もエントリーした個人を対象にPush APIを無償提供している。さらに3月2日にはクラウドAIプラットフォームの『Clova(クローバ)』やスマートスピーカー『WAVE』を発表していることからもIoT分野への期待が見てとれる。

Chatbotは、フレームワークを使うことでスマホやWebのフロントアプリ開発と比較して手軽に開発することが出来る。その特徴を生かし、これまでフロントアプリ開発にスキルや興味がなかった「クラウド側」「デバイス側」のエンジニアが活躍するのではないかと、砂金氏は推測する。

開発はチームから個人へ。UXデザイナーの参入に期待

「これまでさまざまな技術が注目されるたびに『○○元年』と言われてきましたが、まさに2017年は『Chatbot元年』になると思います」

そしてその中心となるのが、新たに参入したIoTエンジニアたちに加え、今までUXなどを担当していたエンジニアたちだと砂金氏は語る。

「ChatbotはUIとしてLINEのようなアプリを、SDKを介して利用するので、デザインや高度なフロントアプリ開発はそこまで重要視されません。APIやSDKで開発が効率化されることもあり、アイデアがあればサーバー側、デバイス側のエンジニアでも一人で実装できてしまうんですよ。これまでのように、それぞれ専門分野を持ったエンジニアやデザイナーを集めたチームで開発する必要がない。そういう意味で、画期的なUX(ユーザー体験)さえ発想できればChatbotの発展に大きなブレイクスルーが生まれる可能性があります」

これまでIoT分野で活躍していたデバイス開発やクラウド構築を得意とするエンジニアや、単なるUIデザインではなく新しいユーザー体験を生み出せるUXデザイナーにとって新しいマーケット開拓のチャンスがあると言えそうだ。

取材・文/浦野孝嗣 撮影/羽田智行(編集部)

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