Vol.222

イシューから考える、チームコラボレーションの極意! ヤフーCSOが語る、データ分析が秘める可能性【連載:コラボlab】

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【連載】コラボlab

エンジニアが異業種、異職種の人同士の集まる混成チームにアサインされた時、どのようにコラボレーションして新たなイノベーションを創出していくのかに焦点を当て、その極意を発見・発掘していく。

異業種、異職種の人が集まる混成チームをうまく舵取りしている、さまざまな分野のリーダーを取材してその極意を見出し、コラボレーションの本質に迫る本連載。

第五回となる今回は、『イシューからはじめよ』の著者としても知られる安宅和人氏に話を聞いた。日本最大級のポータルサイトおよびビッグデータを保有しているヤフーのCSOとしても敏腕を振るう安宅氏。そんな彼が異職種混合のプロジェクトにおいて、チームパフォーマンスを最大限に引き出す為に行っている手法とは?

ヤフー CSO(チーフストラテジーオフィサー) 安宅和人(あたか・かずと)氏データサイエンティスト協会理事。慶應義塾大学SFC特任教授。応用統計学会理事。東京大学大学院生物化学専攻にて修士課程修了後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。4年半の勤務後、イェール大学脳神経化学プログラムに入学。2001年春、学位(Ph.D.)取得。ポスドクを経て01年末、マッキンゼー復帰に伴い帰国。マーケティング研究グループのアジア太平洋地域における中心メンバーの一人として、飲料・小売り・ハイテクなど幅広い分野におけるブランド立て直し、商品・事業開発に関わる。08年9月ヤフーへ移り、12年7月より現職。途中データ及び研究開発部門も統括。経済産業省 産業構造審議会 新産業構造部会 委員、人工知能技術戦略会議 産業化ロードマップTF 副主査、内閣官房 第4次産業革命 人材育成推進会議 委員なども務める。著書に『イシューからはじめよ』(英治出版、2010)

(左から)筆者とヤフー CSOの安宅和人氏

(左から)筆者とヤフー CSOの安宅和人氏

イシューを見抜く力でプロジェクトをリードせよ

安宅氏は、知的生産系のプロジェクトの場合、立ち上げ時におけるイシュー、つまり問題のコンテキストを踏まえた解決すべき課題の見極めが特に重要であると語る。

「私が直接見る案件の場合、常に、まず最初に、プロジェクトを進めるにあたって課題のコンテキストを整理し、その上で、イシューを洗い出し、見極めます。そして、イシューと検討結果は週に1回程度のミーティングを行いながらチェックしています。そこで、イシューズレやイシュー視点で見てアプローチに課題があると分かった時には、随時方向修正をかけていきます」

イシューの洗い出しや見極めには多くの知見と経験、判断力を必要とするため、安宅氏が関わるプロジェクトの初めには必ず直接議論に参加し、ディレクションを行っているという。

精度の高いイシュー選定ができれば、異職種で構成されているチームでもわずかなディレクションタイムでプロジェクトを動かすことが可能となり、さらに、最小限の補正で成功に至ると安宅氏は語る。実際、直接統括されるプロジェクトでは、大半が計画通りに進行しているという。

「こういった、常にイシューの見極めに立ち返り、その視点で進捗やクオリティを管理し、すべてを回していくものごとの進め方が『イシュードリブン』なアプローチです。」

さらに実際に進めていく上で具体的な押さえどころがあるという。

「イシュードリブンなやりかたでプロジェクトを進めようとするのであれば、それぞれのミーティングで誰かがホワイトボードの前に立つことが重要です。その人が、その場をファシリテートしつつ、議論を可視化し、仕切っていくのです。通常仕切る人はプロジェクト、チャンクのリーダーです。それができない人はリーダーとはいえませんし、できる人は実質的にリーダーといえます。」

安宅氏はその理由を続ける。

「アジェンダ、つまり議題と議論のポイントを明快にするだけでなく、誰か一人がホワイトボードを用いて、議論を書き落とし、その場でビジュアルに整理していくことで、混沌としたあらゆる議論が可視化されていきます。あれを言ったとか言っていないとか、その意味合いなどの議論に曖昧さが生まれないようになるのです。結果、参加者全員が同じベクトルに向かうことができるようになります。また、その場であとは各自が作業すればいいというぐらいまで明確にすることも大切。持ち帰った上での逆行がなくなり、プロジェクトの生産性が劇的に上がるからです」

以上のようにホワイトボードを死守し、ボードライティングスキルを磨くことは是非、読者のエンジニアにもやってみる価値があると氏は語る。

“数えること”がフラットに考える基本

続いて、職種が入り交じった一定規模以上のチームでプロジェクトを進めるためには、ファクトベースの議論、これを支える分析力が必要だと安宅氏は語る。データによる揺るぎない事実、思い込みではない分析的なインサイトがあるからこそ、バックグラウンドを共有していないチームメンバー同士でも、同じ目標に向かって歩幅を合わせることができるからだ。

このデータ分析力は異職種混合チームを回していくうえで重要となる力ではあるものの、残念ながらその力は生来の素質と、ここまでの人生の中で培ってきたセンスによるところが大きいという。しかし、強いセンスを持ち合わせていない人であっても、以下の3つの基礎力を意識的に鍛えることで分析力は格段に身に付くという。

■価値を見極める力―――そもそもその対象はどのような意味があるのか
■第三者の視点を持つ力―――自分がこう感じるではなく本当のところどうなのか
■異質を切り分ける力―――どれが同質でどれは異質なのか

安宅氏はこれらを鍛えるための第一歩として、“定量的に考える事、数えること”を習慣づけることを勧める。

「例えばビルの階数。ぱっと見た時に、いくらぐらいかなと当たりをつけて実際に数えることをある程度繰り返すと、見ただけで、一瞬で何階建てのビルなのか概ね分かるようになります。これに限らず、人の話すスピードであったり、街の歩く人の数であっても、普段から数えることを意識することで、事象をフラットに受け止める力が高まります。」

また、自身が感じているデータ分析の可能性とその課題について、以下のように続けた。

筆者と安宅氏

「データのパワーや面白さは、まだまだ世の中に理解されていません。『データというものは面白くて、すごいね、インパクトがある』ということがもっと世の中に伝わっていくことが我々の未来にとって大切だなと思っています。」

仕事への情熱が、高いバリューを生み出す

安宅氏のチームはそのようなデータの面白さを伝える活動の一環としてYahoo! JAPANビッグデータレポートを発表している。ここでは、国政選挙結果や景気指標の予測、国より1週間以上早いインフルエンザの蔓延状況や県庁所在地から日本の各地に行くまでの時間キョリの可視化など、Yahoo! JAPANが持つ独自のビッグデータを使ったさまざまなレポートを公開している。

「いずれも我々データ界隈では話題になることが多いですが、2015年春に出した東京駅から日本全国への距離を可視化した動画『到達所要時間マップ』や、リニア中央新幹線開通前後を比較した『到達所要時間マップ』などは一般の方からもかなり大きな反響がありました」(参考:どちらもhttps://about.yahoo.co.jp/info/bigdata/special/2015/01/に掲載)

これらの取り組みは、普通の事業活動のアプローチではカタチにするのは困難だったと安宅氏は語る。

「インフルの予測もそうですし、時間距離の可視化もそうですが、どうしてもやりたいという人がいたので、それをサポートして進めてもらったものです。私はこういう直接、売上とか利益につながらない、通常業務の隙間で行う活動の場合、熱狂できないことはやらないほうがマシだと考えています。逆に、各人が熱狂できることであれば、適切なサポートさえすれば、それがすばらしいバリューにつながることが多い」

あなたも安宅氏の言う「イシュードリブンでのプロジェクト進行」と「データの分析力」を主眼に置いた、バイタリティー溢れる仕事への取組み方を身に付けてみてはいかがだろうか?

取材・文・撮影/田中千晶

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