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元Googleトップマーケターからカフェオーナーへ! ITとコーヒーの融合から紐解くエンジニアのセカンドキャリアとは?

働き方

    2017年4月22日、東京・目黒区自由が丘に新しいスタイルのカフェ「ALPHA BETA COFFEE CLUB」がオープンし、注目を集めている。

    店舗をオープンさせたのは、2014年からスペシャリティコーヒーの販売を手がけてきたECサイト「ABC Coffee Club」だ。大きな特徴は厳選・焙煎されたコーヒー豆3種類が毎月、登録会員(メンバー)に届くという月額料金制であること。ALPHA BETA COFFEE CLUBも同じシステムで、会員になれば店舗おすすめのコーヒーがいつでも味わえるサブスクリプション型だ。

    白を基調とした開放的なスペースに、樹を使った温かみのあるテーブルが並ぶ店内。テラス席では自由が丘の町並みを眺めながら、ゆったりとコーヒーを楽しむことができる。自由が丘という土地柄と見事にマッチしたスタイリッシュな同店だが、コンセプトとして挙げるのは“ITとコーヒーの融合”だという。

    メンバーが好みの豆の種類や焙煎度合いなどを選んでおくとそれをデータベースとして管理。いつでもベストな味わいのコーヒーが楽しめるという。メンバーのカードにはICチップも内蔵されている。

    前身であるECサイト「ABC Coffee Club」、そしてALPHA BETA COFFEE CLUB開店の仕掛け人は大塚ケビン氏。ハワイ出身の彼はスタンフォード大を経て米Googleに入社後、2012年に日本へ移ってアジア太平洋地域のマーケティング部門の責任者を務めていた経歴を持つ。

    Googleでトップマーケタ―として活躍したキャリアは“ITとコーヒーの融合”というコンセプトづくりや実店舗のオープンと運営にどう活かされているのか? 大塚氏へのインタビューを通してエンジニアのセカンドキャリアに役立つヒントを探る。

    コーヒーショップのオープンというセカンドキャリアをスタートさせた、元Googleマーケターの大塚ケビン氏

    コーヒーへの興味から始まったセカンドキャリアのスタート

    大塚氏がスペシャリティコーヒーの販売に続いて実店舗のオープンを目指したきっかけは、米サンフランシスコで盛んとなっているカフェを日本でも作りたい、そして本当においしいコーヒーを日本でも提供したいという思いだ。

    「本当にコーヒーが好きで、サンフランシスコではかなりカフェ巡りをしました。ところが日本に住んで働いてみると、アメリカのように自分が好きなカフェやコーヒーに巡り合う機会がなかなかない。それなら、自分の趣味と仕事で培った知識やスキルを活かして新しいビジネスを立ち上げようと考えました」

    今だから明かせるが、店舗の前身となるECサイト「ABC Coffee Club」を開設した時、大塚氏はまだ現役のGoogle社員だった。アジア太平洋地域のマーケティング責任者として活躍するかたわらスペシャリティコーヒーを販売するビジネスをスタートしたのだ。

    「Googleのマーケタ―として学んだのは、アイデアを思いついたらまずチャレンジし、問題や課題があったら改善していくという“トライアル・アンド・エラー”の重要性。リサーチやシミュレーションに時間をかけるよりも、まず始めてみようという思いでこのビジネスを始めましたね」

    ECサイトを開設したのは2014年。広告や宣伝は使わず、ネットやSNSなど口コミでも十分評判が広まったことから店舗のオープンへ向けて準備を始めたという。では、ECサイトでの小規模なビジネスから実店舗のオープンというプロセスで、彼のマーケタ―としてのキャリアはどう活かされたのだろう。

    「長所」を生かし合える仲間との連携が重要

    大塚氏がECサイトを通じての販売だけでなく、実店舗のオープンへとビジネスを広げることを決意したもう1つのきっかけは、「コーヒーを通した人と人のコミュニケーションの場」を創りたいと考えたことだ。

    開放感のある店内では、バリスタが丁寧にコーヒーを入れてくれる。

    開放感のある店内では、バリスタが丁寧にコーヒーを入れてくれる

    「私たちとバリスタがおすすめのコーヒーを提供することで、ユーザーやお客さまからは具体的なフィードバックが寄せられます。そのフィードバックから新しい味わいの開発や提案が生まれると考えています。双方向のコミュニケーションが取れる場として店舗を展開し、将来は新しいコミュニティづくりにも結びつけたい。そういった思いが実店舗オープンの強いモチベーションになりました」

    専用のカードリーダーで会員の情報を読み込むことで、いつでも会員の好みのコーヒーを提供することができる

    専用をカードリーダーで会員の情報を読み込むことで、いつでも会員の好みのコーヒーを提供することができる

    とはいうものの、東京で、しかも人気のある目黒区自由が丘でカフェの開店をめざすには資金調達をはじめ物件探し、店舗や設備の施工や設置などハードルの高い課題がいくつもある。その店舗づくりは、プロダクトマネージャー兼デザイナーでパートナーのアルヴィン・チャン氏が手がけた。彼は米サンフランシスコでフードデリバリーサービス事業を展開する「Zestly」の創業者だ。

    「店舗づくりの経験とノウハウを持ったクリエイターであるアルヴィンと、数字が得意な私で、役割を分担しながら企業としての形を整えていきました。アルヴィンがいてくれたから、私は収益や利益予想から店舗や設備にかかるコスト、メニューの価格設定など経営や運営面だけに集中できたんです」

    セカンドキャリアを成功させるヒントは?

    大塚氏は自身の経験から、キャリアチェンジを成功できる人の特性について、以下のように述べる。

    【1】ゼロからイチを作り出すことに楽しみを感じる
    【2】興味があることについて深く学ぶことを苦と感じない
    【3】現状に不満を持っており、それを自ら打破していきたいと考えている

    大塚氏によると、この3つの特性を持っているのは、エンジニアに多いという。実際に、同店でバリスタとして働くスタッフの中にも元エンジニアが在籍している。

    「エンジニアとして働いていると、設計書通りの開発を求められるケースは多い。でも、それぞれ『もっとこうしたほうがいい』というアイデアもあると思います。そういった不満を抱えた時、そのアイデアをひとまず形にすることがセカンドキャリアを構築するうえで大事だと思うんです。スモールスタートだったとしても、何かをスタートさせればキャリアは自然と付いてきます」

    そして大塚氏は、自身の経験をふまえ、「新しいことを始める」にあたり大切だと考えていることを語った。

    「新しいことにチャレンジしている時、私はつらさや苦しさは感じない。むしろ新しいことを学んで、どんどん身についていくことにワクワクします。やっぱり自分の好きなこと、もっと追求したいことを“かたち”にしたいという意欲や熱意が問題や課題の解決へと結びついていくんだと思います」

    元エンジニアのスタッフと談笑するケビン氏

    取材・文/浦野 孝嗣 撮影・羽田智行(編集部)

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