Vol.45

“戦士”になりたい新卒向けの企業選び【連載:えふしん】

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藤川真一(えふしん)FA装置メーカー、Web制作のベンチャーを経て、2006年にpaperboy&co.へ。ショッピングモールサービスにプロデューサーとして携わるかたわら、2007年からモバイル端末向けのTwitterウェブサービス型クライアント『モバツイ』の開発・運営を個人で開始。2010年、想創社(現・マインドスコープ)を設立し、2012年4月30日まで代表取締役社長を務める。その後しばらくフリーランスエンジニアとして活躍し、2012年11月6日に想創社(version2)設立

この時期は、現役学生から就職の進路の話を相談されることがあるのですが、その際に大切にしているのは、その人の未来志向がどこに向いているかを聞くことです。

今、幸いにも世間から優秀と呼ばれる大学院に通っていることもあり、周りにいる学生の選択肢はたくさんあります。それがゆえに、この先、得られるものに対しレバレッジを重視するのは当然のことです。具体的には、大企業に入り込んで活躍するか、スタートアップで組織そのものを自分たちで築いていくかのどちらかの選択になります。

既存の企業に就職したい人に対してのアドバイスとしては、企業のタイプと、本人のキャリアパスをどう整合していくかを意識してアドバイスします。ざっくり以下のような企業分類をイメージしています。

1、安定したビジネスモデルで好調。この先も現状維持でいけそう。
2、儲かっているしポテンシャルも高そうだけど、この先、変化していけないと10年以内に社名がなくなっている可能性が高い。
3、まだ儲かっていないけど、これから大きくなる期待ができる。
4、今後の成長が期待できる。しかし成功してもビジネスは大きくならなそう。
5、この会社はどんな変化にも追従していきそうだけど、その都度リストラしていたりして社員としては安心してオススメできないなぁ。

などなど。これがすべてではないでしょうが、皆さんはどういう会社がよいですか?

おそらく、ご両親が薦めてくるのは圧倒的に「1番」だと思います。株式投資もこのような会社に投資して安定的に資産を増やせというのが定説です。間違いのない選択です。「4番」も良いですね。スモールビジネス、中小企業という枠になるかもしれませんが、そういうところで活躍するのもいい経験になります。

こういう話をする時には、学生の側が、

「あわよくば、そこで一生働きたい」
「具体的な将来イメージがあって、3年で辞めるつもり」
「今はまだイメージないけど、10年同じ会社を続けられるイメージはない」

など、今は漠然としていても、キャリアに対する志向がうっすらとでもあるならば、それを一番大切にすべきだと思っています。そう思っていることは、ほぼ間違いなく実現可能ですし、実現する前提で動くべきです。

by Ran Yaniv Hartstein “戦士型”社会人は最前線でガリガリと経験値を稼ぎ、自分の実力で勝負したいタイプ
by Ran Yaniv Hartstein “戦士型”社会人は最前線でガリガリと経験値を稼ぎ、自分の実力で勝負したいタイプ

今の時代は、「10年同じ会社にはいない」と思っている人が多いようです。当然、そういう人は成長志向が強いわけです。RPGで言うならば戦士としての経験を仕事に求めるタイプと言えるでしょう。

それならば安定した会社よりも、「当座のお金はあるけど10年後存在していない可能性のある会社」を薦めます。もちろん、具体的な相談の場では、実際の社名を前提として、未来へのポテンシャルが期待できそうな会社であるかは考えて話していますよ。

企業のフェーズが社員の成長を阻害することも

今、安定していて、優れたビジネスモデルの会社に対して思うことは、会社が維持、成長する要因には良い半面、その成功体験が思いのほか社員の日常の仕事に制約を与えることを懸念します。

「選択と集中」という言葉がある通り、儲かるビジネスに集中すればよいというフェーズでは、儲かるビジネスを中心に動いていくのが原則です。それが社員の成長につながるか、とはまた別の話である可能性もあります。

一言で言うと、すぐれたビジネスモデルがゆえに「ぬるま湯」になってないかどうかが重要だと言えるでしょう。

こういうことを書くと、そんなに甘くないって怒られてしまうかもしれませんが、優れたビジネスモデルで、会社も大きくなってブランドを得た会社は、同類のライバルよりは有利に仕事が進められるハズです。それこそが「会社が安定する」という意味ですから。

問題は、その環境をテコにして、より大きな仕事が得られればよいのですが、そうでなく、「目の前の仕事をこなすだけで十分、生きていける」という仕事に安住してしまうケースです。

自社のビジネスが安定していて、個々の成長の機会が仕事の中ではなかなか得られないからこそ、社員の育成のための評価制度を取り入れようとしたり、福利厚生のような取り組みを始めたりするという考え方もできます。

by Carlos Luna GmailやGoogle AdSenseといった有名サービスを生んだGoogleの「20%ルール」だが、現在は終了している
by Carlos Luna GmailやGoogle AdSenseといった有名サービスを生んだGoogleの「20%ルール」だが、現在は終了している

昔、Googleが20%ルール(編集部注:勤務時間のうち、20%を本来の業務とは別に、自分独自のプロジェクトに費やしていいというルール)というのをやっていて、多くの人にうらやましがられていました。

しかし、見方を変えると、知的好奇心旺盛で優秀な技術者の気持ちを維持させるためには、メインの業務以外に時間を与えないと退屈だったのだろうか!? と考えることも可能です。(20%ルールは、Facebookの台頭や、モバイルシフトの流れの中で、なくなりましたよね)

戦士タイプの人にとっては、そのような環境がもの足りず、外に飛び出してしまうケースも少なくないようです。

苦難を乗り越える覚悟が成長につながる

それに対して、この先ヤバイと思っていて、それが現実の元に晒されている会社は、本気で変化を求めます。

具体的に言うと、ネットサービスの場合、中期的にダウントレンドに陥っている場合は、経営者は間違いなくサービスの死までの時間を意識しています。1つの山を超えたサービスが復活するケースは過去にあまり存在せず、次の新しい山を作る方向にシフトするのが通常の選択です。

そういう時だからこそ、社員の底力に期待し、できることであれば、あらゆることをやらせたいわけです(できない人に、できないことをやらせる余裕は、どの会社にもありません)。

この山を乗り越えていく力がある会社は、本当に強い会社です。

社員の立場としては、そういう荒波を乗りこなして、次なるキャリアを志向するもよし、そこで活躍して、抜擢されるもよし、それは入った会社に残る価値を感じるかどうかで決めれば良いのですが、いずれにせよ当人のキャリアにとって、非常に前向きな選択権を得ることができると思うのです。

ただ、労働環境的には世間一般で言うブラックという基準にあてはまる可能性があるので、そういう言葉をついつい使ってしまう人にはオススメできない選択かもしれませんね。あくまでも、働く時間を自身の成長に直結させたい人に向けた考え方だと思います。

多様な価値観を知っていることがマネジメントのポイント

なお、明らかに儲かっていて、この先生きていけるのに、現状に甘えず変化を求めていく代表例としては、楽天の英語公用化が挙げられると思います。

by priceminister 楽天はグローバル戦略の一環として、2012年から社内公用語を英語にした
by priceminister 楽天はグローバル戦略の一環として、2012年から社内公用語を英語にした

英語の話せない日本人に英語を強制して業務効率が下がりそうだなんてことは、誰だって分かっていることです。

会社の安定や利益を重視しつつ英語化したいのであれば、現状の社員には何もせず、どんどん英語ができる人を雇って、ある段階で、英語ができない人にやめてもらえば良いのです。

なのに、そこであえて会社としてリスクを取り、英語を公用化した決断は素晴らしいと思います。

社員の立場からすると、IT系の社員が、お給料をもらいながら英語を勉強することに何も損はないハズなので、本当に楽天の社員の人はうらやましいと思っています。

ところが、楽天の英語公用化には批判が多い。皆さんが戦士になることを求めているわけではないという表れではないかと思います。

もちろん、それもまた人生の選択ですので、決して非難することではないと思っています。ただ、そういう世論があるということは、戦士になりたい人は知っておくべきことでしょう。

これはマネジメント職に就く時には、大切なポイントになります。多様な価値観の中で組織を大きくしていることを求められるわけですから。

あ、ちなみになぜかはまったく知りませんが三木谷さんからTwitterでブロックされていますので、楽天信者ではありませんので念のため(自慢です)。

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