Vol.335

えっ、設立5年目ベンチャーが!? 世界最先端の「クラウド型次世代セキュリティー製品」日本独占販売権を勝ち取るまで

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マイクロネットワークテクノロジーズ

多くの企業がサイバーセキュリティー対策など、新たな課題を抱える中、次世代技術の積極活用による独自ソリューションで世界に名を馳せるパロアルトネットワークス。同社のエンドポイントセキュリティー製品『Traps(トラップス)』は、日本でも多数の導入実績を築いてきた。企業のみならず産学官のさまざまなフィールドで導入されていることからも、信頼度の高さが分かる。

その『Traps』のクラウド版サービスの提供が同社パートナー企業のエンドポイント アーマー社からアナウンスされると、多くのIT企業が日本での独占販売権をめぐって競争を繰り広げた。名立たる大手企業も参戦した中、選ばれたのは何と設立5年目のベンチャー、マイクロネットワークテクノロジーズ(以下、MNT)だった。

品質保証型開発など、従来の型にはまらない姿勢と思想で話題を呼び、エンジニアtypeにも度々登場したMNTではあるが、セキュリティー領域での実績はほぼゼロに等しい。果たして彼らは、いかにして強力な大手ライバルを退け、グローバル企業に選ばれたのだろうか?

ライバルは超大手の有名どころばかり――
確かな勝算がなくても挑んだ理由とは?

MNT創業社長の藤方裕伸氏の耳に、最初の情報が届いたのは2017年5月のこと。「Trapsのクラウド版をリリースするにあたり、エンドポイント アーマー社が日本での販売とサービス提供を担える会社を探している」。そう聞いて、藤方氏は迷うことなく販売権獲得に乗り出すことを決めたという。

「私自身はセキュリティー領域の専門家ではありませんが、Trapsをはじめとするパロアルト社のソリューションがクオリティーの高さで支持されていることはもちろん知っていました。ただ、これまでのTrapsは原則的にオンプレミス型。導入しようとすれば数億円のコストがかかる製品です。ごく限られた大手企業向けの大規模開発案件でしか取り扱えない、と正直縁遠い製品だという認識でいました」(藤方氏)

藤方裕伸氏
株式会社マイクロネットワークテクノロジーズ 代表取締役社長/CEO 藤方裕伸氏

しかし、そのTrapsの機能がクラウドを通じて利用できるとなれば、これまでコストの問題で導入をあきらめてきた中小規模の企業でも検討ができるようになる。またMNTとしても、よりセキュアなプラットフォームを提供していくためにも、セキュリティー領域に力を入れ、経営の新しい柱にしていきたいというビジョンをかねてから持っていた。それゆえに名乗りを上げることを即断即決したのだという。では、現場はどんな反応を見せたのだろうか?

「突然の話で驚きました。もちろん、当社が選ばれたらうれしいですけれども、MNTにはこれまでセキュリティー領域の実績がないので、やるとなったら大仕事ですから(笑)」

そう語るのは、エンドポイント アーマー社との契約締結プロジェクトの中核メンバーとして駆り出されたSEの吉國隆行氏。契約獲得までの折衝において、藤方氏はこの吉國氏のほか、技術部門やセールス部門のリーダーたちを招集した。

「とんでもなくビッグな名前が競争相手として挙がっていましたから、販売権を獲得できるかどうかは分かりませんでした。それでもチームを編成して、彼らに任せたのは新規事業を立ち上げていくプロセスを経験してほしかったからなんです」(藤方氏)

もちろん、経営の新たな柱にしていくためには是が非でも勝ち取りたい。しかし、どんな結果になろうと、こうしたチャレンジを現場のメンバーが経験していければ、必ず会社としての成長につながる。そんな思いもあったのだという。

吉國隆行氏
社長室 ゼネラルマネージャー 営業本部 本部長補佐 吉國隆行氏

「私は前職の頃からずっとSEとして働いてきましたから、未経験の技術領域を短期間で勉強し、キャッチアップすること自体は、覚悟して臨めば何とかなるとある程度腹が決まっていました。が、それに加えて今回は新規事業立ち上げも同時に推進していかなければならない。ビジネスモデルの構築や社内体制の整備などは、私にとっては本当に未知の領域ですから、正直なところうまくできないことばかりでした。けれども、任せてもらったことの喜びや、新しいことにトライするワクワク感の方が圧倒的に大きかったですね」(吉國氏)

技術面も業務面も未知の領域。さらに、交渉相手は米国企業の面々。吉國氏は英語によるコミュニケーションの難しさも痛感したという。藤方氏は任せた後も、吉國氏らのチームが悪戦苦闘する様子を見守っていたが、「良い経験になっただろう」と言って笑う。

「私自身は、以前勤めていたUSEN時代に巨大な外資系企業と渡り合って契約を結んだ経験もあり、メンバーたちを見ていて『ビクビクしないでぶつかっていけばいいのに』というような気持ちにもなりました(笑)。それでも、成長のための課題発見の機会になったようですから、任せて良かったと思っています。本当に努力を求められるのはこれからですし」(藤方氏)

そう、吉國氏たちの奮闘は実を結び、最終的にMNTは強力なライバルを退けて、Trapsのクラウド型サービス『Palo Alto Networks Traps (Cloud) Model』の独占販売権を勝ち取った。現在、吉國氏らは2018年からのサービス本稼働に向けて、事業部立ち上げ準備を進めているのである。それにしても、なぜMNTが選ばれたのだろうか?

ユーザー企業の規模を選ばないクラウド型サービス。
だからこそ意思決定の「スピード」が鍵に

「MNTが大手と違うのは、何といっても意思決定スピードです。エンドポイント アーマー社はそこを評価してくれたのだと私は考えています」(藤方氏)

クラウドを通じて企業にサイバーセキュリティーのソリューションを提供する、という手法は日本ではまだ新しい。今後主流になることは予想できるものの、サービスを販売し、ソリューションを運用する段階では、必ずスピーディーな意思決定が問われることになる。つまりスピードは、エンドポイント アーマー社がビジネスパートナーに求める最優先事項。その部分においてMNTは他社よりも抜きんでていたのだ。

MNT調印式
エンドポイント アーマー社のEarl E. Ford社長とMNT・藤方社長による、クラウド型次世代エンドポイントセキュリティー製品『Palo Alto Networks Traps (Cloud) Model』事業提携調印式風景(2017年9月29日、ハワイにて)

さらに藤方氏は「どうしてもやりたい」という熱意がMNTのメンバーに溢れていたこともまた大きかったはずだと語る。そこはやはり、若手が活躍するベンチャーならではの強みかと思いきや、「いや、今回のプロジェクトを牽引した連中は決して若くないんですよ」と藤方氏は笑う。

もちろん、現在は社内総出で事業部立ち上げを進めている最中だが、当初の契約までの道のりを支えたチームのメンバーは40代や50代の社員たちだったという。

「今回の事業を稼働させ、自社の柱へと育てていくために、当社では改めてエンジニアの採用を強化しています。中心になる層として20代や30代を想定してはいるものの、年齢や性別などといった属性情報にこだわる発想はMNTにはないんですよ」(藤方氏)

「当社は年齢も経験年数も専門領域も、バラバラな人間がチームを組んでチャレンジする体制が浸透しています。私自身も実感していますが、多様なバックグラウンドを持つベテラン層と若手層とが知見を持ち寄るからこそ、今回のプロジェクトのような新たなチャレンジを成し遂げていけるのだと思っています」(吉國氏)

同社の人材採用を統括する副社長の菅原健太氏も以下のように明言する。

「重視しているのは技術的な探究心がどれほどあるか、そして吉國も言っていた通り、チームでコミュニケーションを取りながら仕事を進めるスタイルに共感し、適合できる人なのかどうか。この2つを備えている方であれば、年齢も性別も問いません」(菅原氏)

「当社は2020年に上場することを目指していますから、Trapsの事業の他にも少なくとも2つの新規事業を立ち上げようと準備しています。そのためには今ある多様性を維持しながら人材採用を進めていき、バランスの取れた組織にしていきたいんです」(藤方氏)

菅原健太氏
取締役副社長 COO 名古屋支社長 菅原健太氏

さらにTrapsの事業をリードする吉國氏も、「これからこの新規事業に参画するメンバーについても、専門性は特に問わない」と話す。もちろん、パロアルト社製品を扱う次世代セキュリティーサービスに携わることに魅力を感じ、MNTの門戸を叩くエンジニアも増え始めているとのこと。そこにはセキュリティー領域での開発経験が豊富な候補者もいるというが……。

「大切なのは、あくまでも技術的な向上心とチームプレイの意識です。常に世の中の流れやテクノロジートレンドをキャッチアップしてビジネスチャンスを見いだし、新しいことへチャレンジし続けるのが当社の持ち味ですから、過去の実績よりもこれからどれだけ能動的、自律的に挑戦を続けていけるかの方がずっと大事だと思っています」(菅原氏)

上場を目指す、と公言していながら守りの姿勢に入るどころか、どんどんチャレンジングなアプローチを繰り返す。まさにそれこそがMNTの強みなのだと藤方氏も強調する。

「今回のTrapsの事業にしても、当社が日本のIT業界の固定概念を覆すような姿勢で臨んだからこそ認められたのだと自負しています。ですから今後もどんどん攻めていきますよ(笑)」(藤方氏)

業界にサプライズな話題を提供し続ける設立5年目ベンチャー。今後はどんな打ち手を見せてくれるのだろうか。

取材・文/森川直樹 撮影/小林 正(スポック)

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