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月商4億円到達のスマホゲーム『ぼくとドラゴン』開発陣が、“空白の6カ月”で学んだヒットを生む組織学

タグ : CTO, ゲーム開発, チームマネジメント 公開

 

新規リリースしたタイトルが半年以内に200以上も終了するという調査結果があるように、年々競争が激しくなっているスマホゲームの世界。

そんな中、各種スマホアプリの企画・開発・運営を行うベンチャー企業イグニスが初めてリリースした3Dゲーム『ぼくとドラゴン』(※)は、2015年2月のリリースからおよそ1年で月商3~4億円を稼ぎ続ける人気タイトルに成長している(※開発・運営はイグニスの100%子会社となる株式会社スタジオキングが行っている)。

同社は2014年に上場するまで、エンタメやツール系のネイティブアプリを量産することで幅広く広告収入を得てきた。その驚異的なヒット率については以前弊誌でも取り上げたが(以下参照)、現在は中長期的に安定した収益源を確保すべくスマホゲーム事業も拡大中。その最初の一手としてリリースしたのが『ぼくとドラゴン』である。

>> 過去17回「App Storeで1位」を獲得したイグニスがやっている、勝率7割でTOP10アプリを生み出す4つの秘策

売上だけを見れば、これまでの歩みは上々と言えるかもしれない。だが、イグニスのCTOでスタジオキング代表も兼務する鈴木貴明氏は、「リリースまでの道のりは想像以上に大変だった」と明かす。

2013年12月から企画・構想を始めたものの、納得のいくモノづくりができず、「約6カ月を経た後にすべてを見直した」そう。開発はもちろん、20数名いるチームの体制、中途エンジニアの採用基準まであらゆるものを変更したという。

この“空白の6カ月”に何があったのか。その後に鈴木氏が取った善後策も含めて話を聞いた。

スキルベースの分業制&納期優先のマネジメントが仇に

イグニス代表取締役CTOの鈴木貴明氏

イグニス代表取締役CTOの鈴木貴明氏

『ぼくとドラゴン』の開発コンセプトは、「スマホネイティブなユーザー層に、戦略性とソーシャル性の高いゲーム体験を提供する」というもの。

このコンセプト自体はリリースまで変わらずに持ち続けていたが、いざ開発を始めてみると、どこが面白いのかが分からない状況のまま約半年が過ぎていったという。

「3Dの使い方はヘタだったし、UIもイケてない。まるでガラケー時代のソーシャルゲームを3D化しただけのような出来で、このゲームならではのコアなユーザー体験は何なのか?をチームみんなが模索しているような感覚でした」

今振り返ると、最初の6カ月間で犯した失敗は以下が原因だったと鈴木氏は言う。

・トップダウンのチーム運営
・メンバーの保有スキルで役割を決め、分業制に
・納期を優先したマネジメント

イグニスにとって『ぼくとドラゴン』は初の大規模なゲーム開発。チームには「3D技術に詳しい人」、「エフェクトが得意な人」など開発に必要なスキルを持つエンジニア・デザイナーがそろっていたものの、本格的なスマホゲームをゼロイチで作ったことのある人は鈴木氏を含めてほぼ皆無だったという。

また、中途採用したエンジニアの中には前職で受託開発に従事していた人が多く、「ゲームの面白さを詰めるより、決められた納期に間に合わせるような開発スタイルになってしまっていた」そうだ。

「最初は僕がタスクの優先順位付けまで入り込んで開発を進めてきましたが、クライアントサイド、サーバサイド、イラスト、デザインとすべてがバラバラに動いている状況を変えられずにいました。僕自身、猛烈に反省したのを覚えています」

全員面談の末に見出した、4つの打ち手

そこで、鈴木氏はいったん過去の積み上げをすべて捨て、改めて「面白さ」を作り込むためにチームを再編する。具体的に、採った施策はこうだ。

【1】約2週間かけて、全メンバーと面談
【2】各メンバーの意見、嗜好を踏まえた上で役割を変更
【3】鈴木氏を含めた選抜メンバー4人でコンセプト合宿を実施
【4】目標を再設定し、「放置ゲーム×リアルタイムバトル」のコアとなる体験づくりを追求

まず、【1】の面談と【2】の役割変更を行った理由は、「スキルで役割を分担するのではなく、各要素を一番考え抜いている人にリーダーを任せるやり方に変更するため」(鈴木氏)。

結果、クライアントサイド担当のエンジニアが企画にも一過言持っている、3D技術の担当者がストア内のトップセールスゲームのトレンドに精通しているなど、異なる仕事領域に適性があることが分かった。

約1カ月かけて行った1on1では「チームが抱えている課題について腹を割って話し合った」と言う

1カ月かけて行った1on1では「チームが抱えている課題について腹を割って話し合った」と言う

この面談内容を踏まえ、【3】のように『ぼくとドラゴン』の魅力を“再開発”するための選抜メンバーを絞り、開発計画を再考。彼らを企画やアートディレクションのリーダーに据えることで、20数名いた開発チームの一体感を高めていったのだ。

ちなみにこの時に決めた目標の一つが、「月商3億円を達成することで、ネイティブで一番面白いリアルタイムバトルゲームを目指す」というもの。冒頭で記したように、数字の上では無事に達成した形だ。

「結局は、チームメンバーそれぞれが本気になれるポイントを探って適材適所でチームを再編成することが、単なる3Dゲームから面白い3Dゲームにするためのカギでした。この経験もあって、今は中途採用も『チームに足りないスキルを持つ人を採る』のではなく、『チーム内で担ってほしい責任とスタンス』を明確化してから募集を出すようにしています」

フェーズに応じてリーダーは変わる。多様な経歴の人が活躍中

なお、『ぼくとドラゴン』の開発中にリーダーを務めてもらった選抜メンバーは、リリース後新たな顔ぶれに刷新したと鈴木氏。その理由を尋ねると、「フェーズに応じて活躍できる人が変わるから」という答えが返ってきた。

「ゲームを作り込んでいる最中は、ユーザーテストやUXテストなどの結果を踏まえながらユーザーの『感情』を探ることが大切です。でも、アプリをDLしてもらった後は、ユーザーのプレイ結果という『数字』から次の打ち手を考えることも必要になります。そこで運用フェーズに強そうなメンバーをチーム内で選出してもらい、彼らをリーダーにすることで、改善のPDCAが高速で回るようにしたのです」

いわば【0→1】と【1→10】のフェーズそれぞれに適した人を選んだ形だが、「今回の経験を通して、新規開発にはゼネラリスト気質な人が、運用フェーズは専門職気質な人がリーダーを務めた方がうまくチームが回るということも分かった」と鈴木氏は語る。

『ぼくとドラゴン』開発中の“空白の6カ月”は、「僕自身の修業期間だった」と明かす鈴木氏

『ぼくとドラゴン』開発中の“空白の6カ月”は、「僕自身の修業期間だった」と明かす鈴木氏

こうした経験知を基に、イグニスでは今後、『ぼくとドラゴン』の海外展開や新規タイトルの開発に着手していく予定だ。それに伴い、開発チームの拡充にも取り組んでいる最中だが、スキル以上に「フェーズと役割にマッチするかどうか」を重要視していく姿勢に変わりはないという。

「当社は前職でBtoBサービスの開発に従事していたエンジニアが多いのですが、彼らは要件定義やスケジュール管理の経験が豊富だし、現在の選抜メンバーの1人も元・受託開発エンジニアが務めていたりします。いろんなバックボーンの人を一つのチームにしていく手法は、『空白の6カ月』を経て僕自身が学んだ点でもあるので、いろんな経歴の人にジョインしてほしいと思っています」

取材・文・撮影/伊藤健吾(編集部)




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