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「DeNAは小さなチームでゼロイチを繰り返す」守安功氏が貫く、強いエンジニア部隊を作る方法【特集:1を100にする開発戦略】

タグ : DeNA, ベンチャー, 守安功, 開発体制 公開

 

任天堂との資本・業務提携に続き、今度は自動運転車を開発するベンチャーZMPとロボットタクシーに関する新会社を設立。業界の枠を超えてさまざまな方面へと業容を拡大するDeNAの動きが活発だ。

思えばDeNAは創業以来、「新しいことに挑戦し続けること」を旗印に、オークション、ショッピング、ゲームなど、特定の分野にとらわれずに、幅広いインターネットサービスを世に送り出してきた。

DeNAの業容拡大はどのような考えの基に行われているのか。それを実現するために敷かれている開発体制は、どのようなものなのか。

エンジニア出身の2代目社長・守安功氏へのインタビューから見えてきたのは、今なお続く極限まで少人数に絞られたチームでの開発体制。成長の本質は「イチヒャク」以上に、繰り返される「ゼロイチ」にあった。

ギリギリまで人は増やさない

―― 約4年前に社長というお立場になられて以降、会社やサービスを成長させていくために、守安さんが大切にしてきたのはどういったことですか?

社長になる以前から考えていたことですが、インターネットのサービスを作る上で最も重要なのは、エンジニアが自分でサービスを考えて作ることだと思っています。それが一番速いし、サービスのコンセプトが一貫性をもってユーザーに伝わるので、一番うまくいくのです。

また、最初から多くの人が参画すると、議論やコミュニケーションに時間が割かれることになるなど、開発スピードの面でもマイナスになることがあります。

だからこそ、エンジニアは誰かに指示されたものを作るのではなく、自分自身でターゲットをイメージし、場合によってはヒアリングも自分で行い、それに基づいてサービスを設計し、コードも書く。リリース後はログの解析も自分で行い、改善ポイントを自分で見つけて改善する。

インターネットのサービスはそうあるべきだと思っています。

―― そうした考えに至った転換点はあったのでしょうか?

『DeNAショッピング』の前身『ビッターズ』の成功が、現在の少人数開発体制に移行する転換点となった

『DeNAショッピング』の前身『ビッターズ』の成功が、現在の少人数開発体制に移行する転換点となった

自分がDeNAに入社した当時、社員はまだ6人しかいませんでした。作っていたのは『ビッターズ(現DeNAショッピング)』というオークションやショッピングのサービスでしたが、次第にサービスは複雑になり、社員も増えて事業全体が重くなっていきました。

オークションはヤフー、ショッピングは楽天という圧倒的なナンバーワンがいて、厳しい状況。そこで2003年から04年にかけて、モバイルで完結するオークションサービスを事業化しようと考えたのですが、その際に、5人10人の重い体制で作るのではなく、いっそ1人で作らせてみたら面白いのではないかと考えたのが転換点でした。

そこで当時アルバイトだった川崎(修平氏。現・取締役最高技術責任者)に1人で任せてみたら、3カ月でその全てを作り上げた。オークションサービスは非常に複雑でさまざまなトラフィックに気を付けなければならないにもかかわらず、です。

タイミングも良かったのかもしれませんが、その後、サービスが一気にスケールしました。

次に取り組んだMobageも同様の体制で成功した。これはゼロイチに近いフェーズの話ではありますが、サービスがスケールするにはコンセプトが一貫していることが前提になります。エンジニアがサービス全体に関わるようにしているのは、そのためです。

―― 組織が大きくなってなお、その姿勢を貫くのは難しくないですか?

もちろん容易ではないですが、そのために、会社が大きくなって以降も、なるべくミッションを細かく分け、小さいチームで動けるようにしています。特にインターネットで完結するようなサービスは、エンジニアと企画職の社員が1対1で組んで企画・開発するケースが多いです。

自分はもともと、人を増やすのが嫌いなんです。現場からは人が足りないという声が後を絶ちませんが、ギリギリまで人は増やさない。筋肉質な体制であることを強く意識しています。よっぽどでない限りは、足りない分は一人二役こなすなどして解決してもらっています。

―― それでもサービスがさらにスケールしていくと、別の体制が必要になりますよね?

ギリギリまで最小限の人数でやっていると、どこかで本当に回らなくなるところが来ます。トラフィックにどう耐えるか、分析はどう組織立って行うのか、マネタイズを考えた機能追加はどうするかなど、専門的な知識を必要とするフェーズが来る。その時が、エキスパートで組んだチームに体制を移行するタイミングです。

安定的にトラフィックをどうさばくかというだけでも、ネットワーク、データベース、サーバサイドと、さまざまなところにボトルネックが出てきます。分析を行うのにも、少量のデータと大量のデータを扱うのでは、求められるレベルが違う。そこでは、大規模なトラフィックやデータを扱った経験のあるエンジニアが必要になります。

DeNAには、Mobageのようにすでにスケールしているサービスがあるので、そこで経験を積んだ後、それぞれの領域におけるエキスパートとしての道を選んだエンジニアがそれらを担います。

全体の8割がサービスリードエンジニア

―― サービスを考えることができて、かつ全て作れるエンジニアは限られているのではないですか?

そうです。自分でサービスを考えて、1人でモノを作れるという人は、世の中にあまりにも少ない。だから採用は非常に重要になります。

一定のエンジニアリングスキルを持っていることはもちろん前提条件ではありますが、それ以上に重視するのは、サービスを作ること、考えることに興味を持っているかどうか。経験や飛び抜けたスキルの有無以上に大切だと考えています。

サービスを考えるのが好きかどうかは、何かサービスを使い倒しているかどうかで分かる。本当にサービスを考えるのが好きな人であれば、こちらから聞く前から、自分だったらこうするという改善案や新しいアイデアを持っているものです。

―― 新しく入った人は、すぐに新しいサービスに挑戦できる環境にあるのですか?

まずは既存サービスに入って、小さな改善を担当する。その中にも、自分で改善策を提案して、実際にコードを書いてみて、効果を検証して……というPDCAのサイクルがあります。

ここで実績を積むことで、より大きなことが任せられるようになり、そうしているうちにゼロベースでサービスを企画できる立場になります。

いずれにしろ、重要なのはサービスを主体的に考えていくマインドです。このマインドは、後から植え付けるのが難しい。逆に言えば、そうしたマインドを持つエンジニアは、自分がサービスを実現するために不足しているスキルや知識を主体的に学んでいきます。

DeNAの基本的な考え方は、「仕事が人を育てる」というものです。会社に求められるのは、手取り足取り何かを教えることではなく、本人にとってチャレンジングな仕事をアサインすることだと考えています。

どんなキャリアを歩むことを望んでいるのか本人の意思を聞きながら、アサインする仕事を決めていきます。

―― DeNAでは、エンジニアのキャリアパスにはどのようなものがあるのでしょう?

大きく4種類に分類できます。

先ほどから最も重要視している、サービスを自分で考え、その上で1人でモノを作れる「サービスリード」エンジニア。

ネットワーク、データベース、プログラミング言語など特定の技術領域で日本トップクラスを目指す「エキスパート」。

技術者のマネジメントに特化した「マネジメント」。

そして、エンジニアのバックグラウンドを活かしつつ、事業全体を設計する「ビジネスリード」です。

各エンジニアは4つの道から必ずしもどれか1つを選ぶというわけではなく、どの方向にどれくらいの比重を置くかを決めることができます。仕事のアサインはもちろん、人事評価もその方向性に基づいて行われます。

とはいえ、サービスリードに最も比重を置いているエンジニアが、全体の8割を占めています。確かに私の哲学が数字に表れていると言えるのかもしれないですね。

異業種参入を可能にする3つのポイント

DeNAは異業種参入成功のための3つのポイントを抑えたユニークな立ち位置にあるという

DeNAは異業種参入成功のための3つのポイントを抑えたユニークな立ち位置にあるという

―― 最近では、任天堂との提携、自動運転車事業への参入と、異業種絡みの大きな発表が続いていますね。

スマートフォンの普及、IoT技術の発展により、これまではマニアックなものだったインターネットは、あらゆる産業にどう活用するかというフェーズに入っています。

なおかつ、インターネットと比較的親和性の高かったゲームなどのデジタルコンテンツから、ヘルスケアや自動車など、これまで全く関係がないと思われていた産業にも広がりつつある。そこに、大きなチャンスがあると考えています。

―― こうした事業も、小さなチームとして立ち上がるのですか?

インターネットで完結するようなサービスと、アライアンスを組んで進めるケースとではやり方が異なります。先方と要件を詰めながら進めていくので、事業を企画する人やプロマネ的な人がいなければ話が進みません。

例えば昨年リリースした遺伝子検査サービスの『MYCODE』でいえば、セキュリティー面に非常に気を使わなければならない性質上、着手したタイミングからそれなりの人数を割いて体制を作る必要がありました。

―― 次々と大きなアライアンスを組めるのはなぜでしょうか? 新たな産業にインターネットを持ち込む際のコツとは?

ポイントは3つあります。

一つ目は、我々がこれまで培ってきたインターネットサービスを作るノウハウです。これまでインターネットに関わってこなかった産業にいる人たちにとっては、インターネットの活用は我々が考える以上に難しい、と言われます。そのため、我々が持つノウハウを非常に重宝してくださっています。

二つ目は、我々のビジネスモデルやブランドに対する考え方が柔軟だということ。任天堂さんと協業するメンバーシップサービスでいえば、ブランドは任天堂さんのものになり、我々はその裏側を作る。それで構わないという考え方があります。

最後に挙げられるのは、ある程度の事業規模を持った会社だということ。ヘルスケアのKenCoMは住友商事さんとの合弁会社ですが、大きな会社から見たら、社員が数十人しかいない会社に基幹システムを任せるのは心許ない、と思われることもあるかもしれません。我々は比較的人数がおり、体力があるので信頼感を持たれやすい。

インターネットサービスのノウハウ、柔軟性、事業規模。この3つがそろっている会社はあまりないので、我々はユニークなポジションにあると言えるのです。

また、最近ではインバウンドで話が持ち込まれるケースも増えてきています。これまでにさまざまな大きな会社と一緒に事業を作ってきた経験があり、意思決定のプロトコルや、彼らがどこを気にするのかが分かっている人間が内部にいるのも大きいですね。

―― 新たな産業領域に踏み込むと、中のエンジニアに求められることも変わりますよね? すぐに対応できるものですか?

DeNAはもともと、単一の事業だけをやっている会社ではありません。社員はエンジニアに限らず、世の中に大きなインパクトを与えるような事業を作りたいという考えの下に集まっているので、新しい分野に行くことにそもそも抵抗感がない。

入社後も部署異動が多く、さまざまなサービスを担当することになるので、いろいろなことをやるということに慣れています。だからあまり混乱せず、面白いと思って取り組めているのだろうと思います。

もちろん、意思決定のスピードなどは組む会社ごとに違いますから、我々のやり方を押し付けるのではダメ。相手に合わせたチームを作れるよう、メンバーのアサインも工夫して柔軟にやっています。

イチヒャクは経験がものをいうフェーズ

―― DeNAが1から100になれたのは、どこに理由があったと思いますか?

思うにイチヒャクは、ゼロイチと比べて経験が活きやすいフェーズだと思います。どこがボトルネックになるのか、得られたデータをどう分析してどう反映するのか、マネタイズの手法はどれが向いているかなど、これまでにやってきたことが活かしやすい。

DeNAは、いろんな事業をゼロから立ち上げ、それを伸ばしてきたので、そのノウハウがたまっている。なおかつ、大きなサービスを抱えているからこそ積める経験もある。

それがなかったとしたら、おそらく全てが新しいことだらけでつまずくだろうと思います。経験がない会社はまずはつまずいて、その経験を次に活かしていくしかないのではないのではないでしょうか。

―― 今が100であるとすると、DeNAが今後200、1000と拡大していくために、守安さんが考えていることはどんなことですか?

考え方は基本的には今までと変わらないでしょうね。

エンジニアにはゼロイチを頑張ってもらい、非エンジニアの社員がパートナーシップでいろんな実績のある会社をつなぎ、ベンチャー技術を引き入れた会社と組む。その中から1が出たものをチームでグロースさせ、さらに成長させていくということです。

インターネットの影響力は日に日に増しているので、チャンスは大きいと思っています。今後も世の中に大きな影響力を与えるようなものをどんどん生み出していきたいですね。

取材・文/鈴木陸夫(編集部) 撮影/竹井俊晴

>>特集:1を100にする開発戦略




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