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[特集:ユーザー視点向上チェックシート 2/2] 「デカいイノベーション」は一長一短。ユーザーの迷惑になることも

タグ : CMS, GitHub, MT, Twitter, UI, Unity, UX, Webサービス, エンジン, ゲーム, ノウハウ, プラットフォーム, ユーザビリティー, 山本裕介 公開

 

 << [1/2] Twitter・Unity・Movable Typeに聞く、利用者が離れるNG開発パターン


その問いを解決するのが、組織が持っている「哲学」だと山本氏は言う。

少し前に、Twitterの共同創業者である
ジャック・ドーシーと話をする機会があったんです。

彼は、日本の「ワビサビ」に代表されるような、
「機能を追求した先にあるシンプルな美」の考え方に
大きな影響を受けていると話していました。
Twitterの持つシンプルさも、
そうした彼の考えを具現化したものだということです。
(ちなみに彼としては、今のTwitterも
まだまだ理想のシンプルの極地には至ってないそうです)

Twitterは、そんな「シンプルさ」に対する
徹底した哲学を持っているため、
社員がミーティングしている時にはいつも
「Simplify」(シンプルに)という言葉が飛び交います。

新しい機能を追加したり、インターフェイスを変えたりするときは、
シンプルかどうかが判断の最初の判断基準になりますし、
どんなに優れた機能であっても、ユーザーを
迷わせる可能性のある「Complicated」なアイデアは採用しません。

すべての判断はシンプルかどうかを軸に行われるため、
世界中のエンジニアがTwitterという
一つのサービスを作り上げているにもかかわらず、
方向性がブレないんです。

(山本裕介氏)

人や組織が迷うのは複数の選択肢がある時ではなく、判断基準が曖昧な時だと話す山本氏。大前氏も同じ考えだ。

Unityの信念は「誰でも使えるゲームエンジンを提供する」ということ。

ここで言う「誰でも」というのは、
初心者からプロフェッショナルまですべてのゲーム開発者を指します。
彼らに優れたワークフローを提供するのが
われわれの行動規範であり、哲学です。

だからUnity自身が自分たちのゲームを作ることを
目標にすることはありませんし、 
お客さまの1/3がゲーム以外の用途で使っている今日でも、
「ゲームを作る人のための開発環境を作っている」という
姿勢を崩すことはありません。
自分たちが進むべき道をまっすぐ歩むと決めているから、
表面的な改善要求に振り回されることはないんだと思います。

(大前広樹氏)

明快な哲学や理念を社員間に浸透していれば、組織として間違った方向に進む前に抑制機能が働く。守られた一貫性はユーザーからの信頼を得る上でも大いに役に立つはずだ。

技術者たるもの、自分が携わったサービスを通し、世の中にインパクトを与えるデカいイノベーションを起こしたいと考えるのは当然だ。

しかしちょっと待ってほしい。「ユーザー視点」を損なう危険は、ここにも潜んでいる。

大規模なプラットフォームの場合、
イノベーションには2通りの方法があります。

一つは全く新しいプラットフォームに切り替えてしまう方法。
これが成功すれば、過去あった負の遺産を切り捨てられるし、
それまでとは異なる新たなパラダイムに移行することができます。

ただ、このやり方って、ユーザーの方向を全然向いてないんですよね。
だから僕は、ユーザーが気付かないくらいの小さな改善を
少しずつ積み上げていくことで、
「いつのまにか新しい機能が増えて使ってしまっている」
形のイノベーションの方が、よりユーザー視点に立っていると考えています。

Googleの提供する検索サービスやGmailなんて、
そういうのがうまいですよね。

(金子順氏)

「ユーザビリティーのよし悪しを決めるのは、新機能の自体の評価もさることながら、今までの操作感を失わずに実装されていることだったりする」と話す金子氏。だとすれば、小さな積み重ねによる進化は、APIレベルでもできるはずだ。

山本氏も、Twitterの事例を引き合いに、メジャーアップデート マイナーアップデートを戦略的に使い分けることが大事だと強調する。

Twitterでは例年、年一回ぐらいのペースで
大きなリリースを行っています。
最近で言うと去年の12月に大掛かりなアップデートを実施し、
UIが大きく変わりました。

大きなアップデートをリリースする際には、
必ずA/Bテストを行い、 ユーザーの動向を科学的・統計的分析します。
その上で機能の善し悪しを判断し、
全ユーザーに展開するのか、修正を加えるのか、
または機能そのもののリリースをやめる。

一方、マイナーなアップデートは毎日しています。
ほとんどのユーザーは気付いていないでしょうが(笑)、
それこそが僕たちの狙いです。

じゃあなぜ年に一回、大規模なアップデートをするのか。
理由は明快で、日々作り上げてきた機能を見直し、
「よりシンプルでユーザーにとって使いやすいものに
ステップアップしたいから」です。

日々マイナーなアップデートを続けていると、
どうしても機能やシステム、コードなどが膨らみ、
複雑化してしまいがちです。
そこで年に一回、それまで膨らんできたものを整理し、
シンプルに調整し直すことが必要なんです。

(山本裕介氏)

派手なイノベーションは地味で目立たないカイゼンの上に成り立つもの。一朝一夕で作り上げた「革新」でユーザーをだますことは難しいのだろう。

最後のチェック項目は「楽しんでいるか?」だ。

当たり前に思うかもしれないが、開発者自身、意識的に「楽しむ環境」を作るようにしなければ、すぐに「作るだけの人」になってしまい、自分もユーザーの一人であることを忘れてしまうという。

この「作るだけの人」になってしまう弊害を、大前氏はこう説明する。

アップル社の製品群がまさにそうだと思うのですが、
素晴らしいソフトウエアや面白いプロダクトとは、
総じて「ウェットである」というのがわたしの印象です。

ここで言う「ウェット」とは、作り手の理念や経験、
思いや性格が反映されたものという意味です。
精神論に聞こえるかもしれませんが、
作った人の顔や性格がソフトウエアやサービスの間から
垣間見えるようなものには、必ずユニークな価値が生まれます。

そうした価値を持つ製品というのは、
ユーザーからも愛され、代替品も生まれにくいのです。
少々乱暴な意見ですが、
そうやって自分たち自身を投影できるものを作るのは、
そうでないものを作るより何十倍も楽しいし、
いいものができる可能性が高いのです。

エンジニアにとって楽しむ環境を作るということは、
僕にとっては自分たちを投影できる製品や
サービスを作っていく環境を作る事だと思います。

逆に「作るだけ」の人になってしまうと、
表面的には仕事ができていても、
「こういう人が使うんだったら、
そもそもこうした方が良いんじゃないか」とか、
そういう、自分だけが持っている葛藤や経験が盛り込まれないので、
誰が作っても同じようなものになっていってしまいます。

誰が作っても同じなら、それを作る事にもワクワクしないし、
自分自身をもっと投入しようという気も起こらない。
さらには競争力も生まれませんし、
悪循環ができやすくなってしまいますよね。

(大前広樹氏)

Twitterの山本氏は「楽しむ」ことがもたらす効果をこう説明する。

ユーザーの声を聞くことと同じくらい、
エンジニアがワクワクすることも大事です。
そういう意味では、Twitterは「ワクワク」を感じやすいサービスですよね。

使い手の声が聞きやすいし、
プラットフォームがすごくシンプルなおかげで、
何か大きな枠の中のごく一部にアプリを乗っけるのではなく、
Twitter本体にAPIで新しい機能をつなげられる。

しかも、自分が少しでもかかわった部分が、
全世界の何億人ものユーザーにリーチするわけです。
こうした環境は創造力を刺激されます。何かできそうだぞ?と。

ほかにも社内には、ハックウィークっていうものがあります。
この期間は社内のプロジェクトを全て止めた上、
個人で、またはチームを組んで1週間かけて好きな物を作ります。

最終日の金曜日にデモをするのですが、
お蔵入りになるアイデアもあれば
評判が良くて即座に製品に反映されることも。

たっぷりと時間を使えるこの"ガス抜き"期間は
実装だけでなく魅力あるデモに仕上げることも重要視されています。

普段意識しやすいハック能力や合い言葉であるSimplifyだけでなく
「ユーザー視点」をバランス良く持ち合わせた開発に
役立っているのではないでしょうか。

(山本裕介氏)

 

取材・文/武田敏則(グレタケ)、撮影/桜井 祐(編集部)

※本特集に登場した山本氏、大前氏が登壇予定の『Developers Summit 2012』は2012年2月16日(木)・17日(金)に開催! 詳しくは上記リンクにて。

 

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