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[連載:高橋信也⑩] ジョブズ、千利休、ドラッカーに学ぶ、ITビジネスに今必要な「美意識」とは

タグ : Apple, PMO, SE, コミュニケーション, スキルアップ, スティーブ・ジョブズ, ドラッガー, プロジェクトマネジメント, 業界有名人, 漫画, 起業, 開発, 高橋信也 公開

 
PMOの達人・高橋信也のプロジェクト最前線
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株式会社マネジメントソリューションズ  代表取締役/CEO
高橋信也

外資系コンサルティングファーム2社を経て、大手メーカー系システム会社へ転職。PMとしてグローバル案件などを手掛けた後、2005年に各種プロジェクトマネジメント支援を行うマネジメントソリューションズを設立。著書に『PMO導入フレームワーク』(生産性出版/税込2310円)がある

わたしは今年で40歳になります。「不惑の歳」となる新年を迎えるにあたり、わたしは起業家として、マネジメントの専門家として、例年よりも強く1年の誓いを立てました。

「これまで学んできたもの、経験してきたことを、ブレない美意識として昇華する」

そう誓った背景には、昨年スティーブ・ジョブズが亡くなった影響もあります。彼が残していってくれたもの、それはアップルという会社であったり、革新的な製品群であったり、たくさんあるでしょう。でも、わたしがとりわけ大きかったと感じているのは、彼独自の価値観、美意識です。

おそらく、スティーブ・ジョブズならではの美意識が、アップルの製品群に投影され、その価値が社内はもちろん、世の中にもキチンと伝わっていた。だから、iPhoneやiPadは、類似するライバル製品と一線を画す圧倒的評価と支持を得たのだと思います。

「技術面の先進性だけでは説明のつかない愛され方をした理由は、ジョブズのブレない美意識にこそあった」

こう書くと、抽象論だと感じる方も多いかもしれませんが、経営や組織マネジメントでは、この抽象的な判断軸がとても大切になってきます。ビジネスには、ロジックでは説明できないシーンがたくさんあるからです。そこで決断を下す際、周囲の人たちが納得できる美意識を示せるかどうかが、マネジメントリーダーには問われます。

少年ジャンプとソーシャルゲームブームの大きな違いとは?

そしてこの美意識は、ものづくりでも必要不可欠なものだと考えています。

つい先日、商社に勤める友人と久しぶりに会った時、今ブレイクしているソーシャルゲームビジネスの話題が出ました。彼は、このムーブメントを「まるで少年ジャンプみたいだ」という風に表現していました。次々にいろいろなものがヒットしていて、「何でもありっぽい」から、という理由だそうです。

ただ、漫画好きなわたしは、聞き捨てならない気分になって反論しました。ジャンプには「友情・努力・勝利」というポリシー、つまり美意識があって、それが長年貫かれているけれども、そうしたブレない美意識を感じられないソーシャルゲームも多いじゃないかと。

もちろん、ソーシャルゲームの中にも、しっかりとした美意識のもとで開発され、長く愛されるものがあるでしょう。おそらく、そういうゲームを開発している会社は、”ソーシャルゲームバブル”がはじけても生き残っていくと思います。

けれども、現在のムーブメント全体を眺めると、美意識やこだわりがなく、ヒットゲームの類似品を作っているようなケースも見受けられます。それらは瞬間的には売り上げを上げるかもしれませんが、決して長続きはしないはずです。

NHK BSプレミアムで放送される『へうげもの』ホームページ

NHK BSプレミアム放送のアニメ『へうげもの』ホームページ

では、そもそも「美意識」とは何なんだ? と自分に問いかけてみました。そこで思い出したのが、BSでアニメ化もされている漫画『へうげもの』です。

武力だけが優劣を決めると思われていた戦国時代ですが、実は「好き者(すきしゃ)」と呼ばれる存在が各地の戦国大名や武将の中に多数おり、影響力を持っていました。『へうげもの』は、その事実にスポットを当て、史実を織り込みながらフィクションに仕立てた、異色の歴史物語です。

「好き者」の「好き」とは、要するに武士のたしなみ、文化として広がった茶道にまつわる茶器や掛け軸、あるいは建築や造園に対する好みや美的センスを指す言葉だと思えばいいでしょう。当時、この「好き」の頂点に君臨したのが千利休。戦国の世を統一した織田信長や豊臣秀吉でさえ、利休には一目を置き、時に恐れてもいたという話は有名ですよね。

漫画では、当初「武こそがすべて」と考えていた徳川家康も、徐々に「好き」の重要性に気付き、変わっていく姿が描かれています。なぜか? 人々を惹きつけ、率いていくには、武力だけでなく美意識を持ち、それを伝えていくことが重要だと気付いたからです。

ビジネスでいえば、武力とは売り上げや企業規模にあたります。でも、「儲かればそれで良い」というマネジメントでは、人は長くはついてきてくれません。少なくともわたしはそう信じています。

エンジニアの仕事も同じことが言えるはずで、旬なマーケットばかり追いかけている人や企業より、自分の信念で「こういうサービスを作りたい」、「この技術で勝負したい」と動く人の方が、結果として信望が集まっていきます。

そう考えると、自分なりの美意識を作っていくためには、「好きこそものの上手なれ」を貫く方が良いのでしょうね。

ドラッカーの「3人の石切り工」が教えてくれること

さて、ここまで美意識の大切さを述べてきましたが、話を起業や組織マネジメントに戻すと、こうした美意識を持つだけでは成功を得られないのも事実です。けっこう良いサービス・製品を提供している、もしくはすばらしい技術力を有しているのに、ビジネスとして泣かず飛ばずで終わってしまうケースが多いのは、これが理由かもしれません。

では、プラスαの要素として、何が必要なのか。マネジメントの大家であるドラッカーが名著『マネジメント』内で用いた例え話に、「3人の石切り工」の話がありますが、まさにこれがヒントになるでしょう。

「3人の石切り工」とは、石切り場で作業する人に何をしているのかと尋ねると、1人は「これで稼いでいます」と答え、1人は「石工の技術を磨いています」と答え、1人は「国で一番の教会を作っています。できあがったらぜひ来てください」と答えた、というもの。

もちろん、3人目の石切り工が最も仕事に誇りを持っていると言えますが、それだけでなく「何のためにしているのか」、「どう使われるものなのか」、「誰のためのものなのか」といった視点の違いも、3者3様で分かりやすいと思います。

つまり、美意識の向かう先が、2人目の石切り工のように自分個人の向上で終わるか、3人目のように世の中に貢献するところへ向かっていくかによって、人を惹きつけるパワーに違いが出てくるのです。これは、企業経営であろうと、プロジェクトマネジメントであろうと、ソフトウエア開発であろうと、ジャンルを問わず同じことが言えるはずです。

せっかくの年の初めです。皆さんも、今の仕事や、将来目指すもの、そこでこだわりたい独自の美意識というものについて考えてみてはどうでしょうか?

撮影/外川孝(人物のみ)




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