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[コラム] 日本屈指のOracle ACE Director「本気で技術を究めたいのなら、一旦会社を辞めるべし」

タグ : IT, Oracle Ace Director, おら!オラ!Oracle, インフラ, エヴァンジェリスト, オラクル, スキルアップ, ソフトウエア, データベース, ハードウエア, 開発 公開

 
株式会社インサイトテクノロジー 代表取締役社長
小幡一郎氏
自ら創業したインサイトテクノロジーを経営者として成長軌道に乗せた後、いったん同社を離れフリーランスに近い立場のコンサルタントに。昨年12月に古巣に戻り現職へ。経営者でありながら、今も技術の最前線に立ち続ける。現在は新たに立ち上げたハードウエア事業の育成に注力しつつ、今秋開催するシンポジウムの準備に忙しい

自ら創業したベンチャー企業をいったん辞めて、再び経営者として復帰する。シリコンバレーではよくありそうな話だが、日本では珍しいかもしれない。株式会社インサイトテクノロジー社長の小幡一郎氏は、そんな人物である。

インサイトテクノロジーは1995年に設立され、小幡氏は経営者としてその成長をリードしてきた。けん引力となったのはデータベースに関する深い知識と技術力である。小幡氏自身、日本オラクルの草創期に参画し、データベースの開発に携わった経験を持っている。

そんな小幡氏がインサイトテクノロジーを離れたのは、2007年8月のこと。どうやら、「経営者としての小幡一郎」と「技術者としての小幡一郎」の間に乖離が生じたようだ。

「今月は必ずこれだけ売らないといけないというプレッシャーの中で、『良いものをつくりたい』と言い続けるのは難しい。経営とものづくりの間でストレスを感じながら仕事をするより、会社を離れて自分の好きな働き方をしてみようと思ったのです」

辞めてからはフリーランスに近い立場になり、1年のうち10カ月だけ働いて2カ月はやりたいことをするという生活。その10カ月は、データベース系のコンサルティングなどを手掛けた。最初の勤務地はインドのバンガロールだ。

「クライアント先での仕事に必要だからということで、インドの人たちと一緒に働きました。彼らとはいまでも友達です」と小幡氏は言う。

帰国してからはインド製パッケージのサポートをしたり、エアラインのSI現場に入り込んでコンサルティングを行ったり。北欧を拠点にシステムコンサルティングを展開しているミラクルグループの日本法人、ミラクル・アジアパシフィックの代表を務めた時期もある。

一方で、オラクル製品に関する知見と貢献が認められたということなのだろう、2009年9月には『Oracle ACE Director』に認定された。「デンマークでの展示会で一緒だった人たちが推薦してくれたみたいです」と小幡氏。実は、日本人で『Oracle ACE Director』の認定を得たのは小幡氏が初めてだ。

復帰後ハードウエア事業を立ち上げ、スーパーマシンを開発

2010年12月、小幡氏は古巣に帰ってきた。社長に就任したのは数カ月後、翌11年4月のことである。

「戻って最初にしたことは、ハードウエア事業の立ち上げです。実は、その前から秋葉原に通って、高速処理能力を持つハードウエア開発を進めていました。今では、秋葉原で売っている部品を集めて組み立てれば、ヨソに負けない高性能マシンをつくるのも夢ではありません。もちろん、それには”名人芸”が必要ですが」

絶対的な性能はともかく、おそらくコスト性能比で世界最高水準のマシンはすでに完成済みだ。それは、インサイトテクノロジー本社のショールームに置かれている。ハードウエア事業を立ち上げ育てること、それは小幡氏が復帰した理由の1つである。

「データベース技術という狭い枠の中でしか考えられないようでは、完全に時代に遅れてしまいます。問われているのは、どんなソリューションを実現できるか。そのソリューションの中に、たまたまデータベース技術が入ることもあるでしょう。しかし、それは使う人にとってはどうでもいいこと。わたしが目指しているのはハードウエアとソフトウエア、あらゆる技術を使って最高のソリューションを生み出すことです」

世界のITの潮流は、おそらく同じ方向に進んでいる。細分化されたレイヤーごとに多数のプレイヤーがしのぎを削る時代から、垂直統合に向かう流れである。多様なソフトウエアの統合もあれば、ハードウエアを含めた統合もある。

ただ、そのようなソリューションを実現するためには、あらゆる技術分野にまたがる広範かつ深い知識が求められる。部品を集めて組み立てればできるというようなものではない。ハードルは相当に高いが、小幡氏はその名人芸を駆使してやり遂げようとしている。

「何年か後には、世界最速のマシンを送り出せるでしょう」と言う小幡氏にとって、チャレンジし続けることはエンジニアとしての本能なのだろう。あるいは、義務のようなものかもしれない。

「『週刊アスキー』は素晴らしい雑誌です。毎週あれだけハイクオリティな記事が見られるなんて、他の国にはない」

「アキバのギークに人気の『週刊アスキー』は素晴らしい雑誌です。毎週あれだけハイクオリティな技術記事が見られるなんて、他の国にはない」

「日本の技術者が欧米と伍して戦えるか?少なくとも、現状ではとても無理。世界レベルのエンジニアが毎日のように濃密な議論をしているような、そんなコミュニティーは残念ながら日本にはありません。もっとも、技術だけの問題でもない。

技術の発展を阻害する法規制など、日本が抱えている問題は多いと思います。勝ち目があるとすればアキバでしょう。あんな場所は、世界のどこにもありません」

秋葉原にはソフトウエアもハードウエアもそろっている。エンタテインメントやカルチャーの発信地であり、多くの人々に対してジャストフィットのソリューションを提供してくれる街である。

必要な部品を探している間に、すっかりアキバ好きになったというだけではなかろう。秋葉原は、小幡氏の思い描くスーパーマシンのメタファーでもある。

小幡氏のチャレンジはほかにもある。今年10月に、やはり秋葉原で開催予定の「INSIGHT OUT」である。データベース分野のシンポジウムには、小幡氏の呼び掛けに応じて世界トップクラスの技術者が参集する。

「これまでデータベースをやってきて、いろいろなことを学び、多くのスーパーエンジニアに会ってきました。そういう人たちを日本に招いて、日本の若いエンジニアに紹介したい。ビジネスとしては何の利益にもならないけれど、会社の存在理由としてやるべきことだと思っています」と小幡氏。

日本の技術レベルが物足りないなら、世界のコミュニティーにつながればいい。このシンポジウムは、そのためのスプリングボードでもある。

土日で身につく程技術は甘くない。会社員である前に技術者であれ

 47人の社員を率いる社長を務めながら、いまも技術の最前線に立ち続ける小幡氏。技術進化のスピードにキャッチアップするだけでも、容易なことではない。しかも、ITの世界ではときどき、メインフレームからオープンシステムへの転換のような断絶が起こることがある。

「自分の技術が古いと感じたとき、どうすればいいか。わたしの場合、答えは単純です。一回、サラリーマンを辞めて勉強する。この会社を辞めてから、1年に10カ月しか働かない生活をしたのも、2カ月間勉強するためです。サラリーマンとして給料をもらいながら、新しい技術を学ぶことができる人もいるかもしれませんが、それは例外でしょう」

小幡氏自身、新しいコンピュータ言語を身につけるためには200時間ほどかかるそうだ。

「英会話と同じ。会社を辞めて2、3カ月必死で勉強すればきっとモノになる。その技術が土日の勉強だけで身につくかというと、そんな甘いものではない」と小幡氏は考えている。

技術者であり続けたいなら、サラリーマンである前に技術者であれ、ということなのだろう。ただ、小幡氏のような道を選択する技術者は日本では少数派だ。それは、日本のIT産業が抱える本質的な課題でもあるだろう。

とはいえ、小幡氏は悲観しているわけではない。長期的に見れば高い技術を持つ者が勝つし、いいものが選ばれる。そう確信しているように見える。

「当社に、『Performance Insight』という人気製品があります。データベースのパフォーマンス管理をする製品ですが、大手が同じようなモノをつくろうと思えばつくれるし、実際に類似の製品もあります。じゃあ、なぜウチのように小さな会社のPerformance Insightが選ばれるのかというと、この分野に命を賭けている開発者たちがいるから。そして、ユーザー側にもそれを分かっている人たちがいるからです」

スーパーマシンの開発もまた、ユーザーとマーケットを信じているからこそできる挑戦である。経営とものづくりの二律背反は、小幡氏の中ではどうやら止揚されつつあるようだ。

取材・文/津田浩司




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