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[連載:ひがやすを④] 一流のエンジニアになるために、「努力をする」という才能をどう身に付けるか?

タグ : SE, SI, ひがやすを, アプリ, アーキテクト, スキルアップ, スペシャリスト, スーパーギーク, プログラマー, プログラミング, ワイン, 勉強会, 業界有名人 公開

 
OSSの先駆者・ひが やすをのSE進化論
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株式会社電通国際情報サービス  シニアITプロフェッショナル
比嘉康雄(ひが やすを)

国産OSS『Seasar』シリーズの開発などを主導してきた、SI業界を代表するアルファギークの一人。電通国際情報サービスに勤めるかたわら、さまざまな技術カンファレンス、コミュニティーに招かれて講演活動も行っている。個人ブログ『ひがやすをblog』で、SI業界や各種エンジニアへの提言も行っている

会社に習ったことしかできない「リーマンプログラマー」のままでは、これからのIT業界をサバイブしていけない――。前回の連載で、わたしはこう指摘しました。自分が本気で面白いと思えるものを見つけて、それを極めようと努力しなければ、とね。

そんなことは分かっているけど、本気で努力したいと思うものは見つからない……。そう思った方は多いことでしょう。実際に、わたしの学生時代がそうでしたから。

じゃあ、「努力」なんて言葉は辞書になかったわたしが、なぜ努力できるようになったのか。今回はその辺の話をしましょう。

事の発端は、小学6年生の時、塾の先生に言われた言葉。

「あなたはちょっと頭が良いわ」、「一生懸命勉強すれば、東大に行けるかもしれない」

その言葉とともに、知能指数に関してのレポートをもらいました。そこには140と書かれていました。何という中途半端な数字。天才でも神童でもない。普通よりは「ちょっと頭が良い」んだけど、努力しないと何にも始まらないってレベルです。

小学生時代から塾に通っていたが、「勉強というより友だちに会いに行っていた感じ」とのこと(※写真はイメージ)

小学生時代から塾に通っていたが、「勉強というより友だちに会いに行っていた感じ」とのこと(※写真はイメージ)

人よりも「ちょっと頭が良い」ので、最初のうちは成績が良いんだけど、努力をしないのでそのうち努力するヤツに抜かれてしまう。わたしの学生時代はその繰り返しでした。今でも思い出すのが、中学1年の時、塾の先生に言われた言葉です。

「比嘉は要領が良いから最初は成績もトップだけど、このまま努力しないでいるといずれ地道に努力する奴に抜かれるよ」

その予言は現実のものとなります。最初は塾でトップだったんだけど、秀康ってヤツに抜かれました。彼はその後、京大の理学部に入ります。実は小学校6年生の時も、最初は塾でトップだったのに、湧川ってヤツに抜かれていました。彼は、ラサール中にいって、その後東大の法学部に入りました。

ただ、トップを奪われても別に悔しくなかったんですね。「努力してトップになるより、楽して二番の方が得じゃね?」みたいな感覚。まぁ、ナメた中学生だったわけです。

「必死に頑張る楽しさ」を教えてくれた、ワインとの出合い

こんなわたしが、決定的につまずいたのは高校に入ってから。特に高2になって麻雀を覚えると、毎日を麻雀と漫画だけで過ごすようになっていました。授業中は寝てて、午後は学校を抜け出し麻雀、家に帰ったら漫画を読むみたいな生活。この時期はほんと勉強しなかった。

人間、ここまで怠けると身体に出ます。高3になって、受験もあるから勉強しようとしても、集中力が30分も持たない。自分ってこんなに頭悪かったっけと思うくらい頭が回転しない。そんな状態で受けた大学入試は、見事に不合格。地元のエリートコースだった琉球大学の医学部を受けたのですが、中学時代はわたしよりも成績が下だった友だちが続々と受かっている中、わたしは落ちた。

From ラスボス&エンディング 学生時代がファミコンブームの真っ只中だったひが氏は、ご他聞ももれずゲームにはまり......

From ラスボス&エンディング 

学生時代がファミコンブームの真っ只中だったひが氏は、ご他聞ももれずゲームにハマり……

さすがに悔しい思いをしましたが、まぁ当然の結果でしょう。センター試験の直後に、あの『ドラクエII』が出て、そっちに掛かりっきりでしたから(笑)。過去の失敗から何も学ばず、楽しそうなことにフラフラ釣られるダメ人間でした。

浪人時代も『セガマークⅢ』や『PCエンジン』にハマっていました。親が家にいないときはずっとゲームばっかりしてたものです。予備校には一日しか行かなかったし、模試も全然受けなかった。さすがに親が家にいる夜は勉強してましたが。特にヤバかったのは、年末に『ファミテニ』というテニスのゲームが発売されたことです。これが超面白くって。年末年始はこれに掛かりっきりで、センター試験の勉強ができなかった。

皆さんが予想するとおり、センター試験の出来は良くなかったのですが、「琉球大を落ちて浪人したんだから、もっと上の大学に入らなければ気が済まない」という理由から、京都大の理学部、慶應大の医学部、早稲田大の政経学部、東工大の理学部と有名校を受験しました。医学部だったり政経だったりと脈絡なく感じるかもしれませんが、実際その通りで、有名校であれば良かったんです。幸いにして、東工大に受かりました。

なぜ受かったかというと、センター試験の出来が良くなかったのに危機感を持ち、『ドラクエⅢ』を買わずに二次試験の勉強をしたから。東工大理学部の化学は当時マークシート式だったので、絶対的に勉強量の足りない自分でも、勘で答えられたというのもあるかもしれません。

そんな状態だったから、大学に入ってからもロクに授業に出ず、雀荘に通い詰めていましたよ。が、ある時、転機が訪れます。

きっかけは、漫画の『美味しんぼ』でした。ある巻で、こういうシーンがあったんです。

(うろ覚えなので、間違っていたらスミマセン)

山岡士郎:「生牡蠣にはシャブリ(ワイン)が合う。特にシャブリの香りが生牡蠣と相乗効果がある」
海原雄山:「士郎、やはり分かっとらんな。シャブリは生牡蠣を生臭くする。生牡蠣に合うのは日本酒だ」

なぜかこのシーンが心に残り、ワイン学校に行こうと思い立った。これまでの「ひがやすを」なら、最初は成績良いけど、努力せずに後から追い抜かれるのが関の山ですが、ワインは違いました。ブラインドティスティングが超面白かったからです。

From Keo101 (Away for period)ワインテイスティングの奥深さを知ったひが氏は、人生で初めて「没頭する感覚を知った」という

From Keo101 (Away for period)

ワインテイスティングの奥深さを知ったひが氏は、人生で初めて「没頭する感覚を知った」という

ブラインドティスティングというのは、グラスにワインの銘柄は伏せたままワインが注がれ、そのワインの品種、生産された年、地域などを当てていくもの。ソムリエとかの漫画に出てくるアレです。ワイン学校に入ったばかりのころは、当然ブラインドティスティングではほとんど当たらない。それが悔しくて、ティスティング能力を上げようと必死で頑張りました。

ワインのテイスティングというのは、記憶と味覚を言語化(文字で表現できるようにすること)して、「過去にテイスティングした経験のデータベース」を作らないと上達していきません。それがわたしにはとても面白かった。このデータベースを作るために、時間を見つけては植物園やハーブ園に足を運んで、さまざまな花やハーブの香りを覚えていきました。

また、スパイスを大量に買い込んで、その香りを覚えたりもしましたね。その上で、いろんなワインをテイスティングした時に、香りの印象を過去の記憶と関連づけて言語化する訓練を繰り返しました。

それをやり抜いた結果、半年単位の学期の最後のテストでは、TOP3に入って優秀賞をもらいました。

……うれしかったなぁ。あんなにうれしかったのは、生まれて初めてだったかもしれない。これまでどんなに良い成績をとってもうれしいと思ったことがなかったのに、あの時は本当にうれしかった。一生懸命努力したことが報われたのが、うれしさにつながったんだと思います。

人生で初めて、努力することの価値に気付きました。「情熱を持てるものであればオレにも努力できるんだ」と実感できた瞬間でもあります。その後、大学の3年間(大学2年の時にワインを始めたので)はワインに費やされることになります。

「それなりの愛着」では、不完全燃焼のまま終わってしまう

その後の基本路線はずっと同じ。エンジニアになって、取り組むものはどんどん変わりましたけれど、情熱を傾けられそうなものを常に探して、見つけたら食いついて、徹底的に楽しみながら努力していく。その繰り返しです。

なぜ長々とこんな話を書いたかというと、大多数のエンジニアが、不完全燃焼な状態のまま、仕事をしていると感じるからです。

目の前にあるプロジェクトやプログラムに、本気で情熱を感じている人って案外少ないんじゃないかな。だから、徹底的に努力できないまま、いつのまにか「リーマンプログラマー」に成り下がってしまう。

日々の仕事に情熱を感じられないなら、技術勉強会などに参加して刺激を受けてみるのも一考の余地ありだ(※写真はイメージ)

日々の仕事に情熱を感じられないなら、技術勉強会などに参加して刺激を受けてみるのも手だ(※写真はイメージ)

どんな努力もいとわないくらい情熱を傾けられるものがそこにないなら、なぜ探そうとしないのか。方法は幾通りもあると思います。

転職しちゃう、というのも一つの方法ですし、今の仕事をちょっと違う角度から見つめて、実は情熱を感じるモノがあるじゃないか、と気付く方法もあるでしょう。技術勉強会に参加してみるのも良いかもしれない。私見では、東京は世界一勉強会が行われている都市です。

前回の連載で書いたファッションのオートコーディネートアプリ開発にしても、最初からファッションが好きだったから情熱を感じたのではありません。「働く女性の役に立つ」ということがとても素敵な気がしたし、オートコーディネートのロジックを考えるのもチャレンジのしがいがある。そう考えたら、一気に情熱が湧いてきたんです。

わたしが言いたいのは、「努力しましょう」でも「好きなことだけをやりましょう」でもなくて、「情熱を駆り立てるものの見つけ方を考えよう」ってこと。そうしたら、誰かから努力を強要されなくても、自ら夢中になって努力するはずです。わたしだって、変われたんだから。

撮影/小林 正(人物のみ)




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