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[津田大介からの質問状] 富士通編(1/2) 被災地支援『つなプロ クラウド』開発に見る、SEの新しい役割

タグ : API, SE, つなプロ, クラウド, コミュニケーション, ジャーナリスト, スキルアップ, マネタイズ, 地震, 富士通, 業界有名人, 津田大介, 開発 公開

 

3・11の震災直後からこれまでの間、ITを駆使した各種支援マッチングサービスは星の数ほど立ちあがり、復旧や支援マッチングの際に大きな役割を担ってきた。

だが、震災から5カ月が経とうとしている今、中にはその役目を終えるものも出始めている。背景にあるのは、被災地域のニーズが、市町村ごと、避難所ごと、さらには個々人で異なってきているという実態だ。

そんな中、富士通の災害支援特別チームが構築支援した『つなプロ クラウド』は、震災直後からこれまで、この「多様な被災地ニーズ」に対応し、支援マッチングをサポートし続けている。

仙台・東京・関西を中心としたNPOネットワークが立ち上げた「被災地とNPOをつないで支える合同プロジェクト(通称『つなプロ』)」の活動を支援すべく、有志のSEたちが作り上げたこのシステムは、クラウドならではの特長である情報管理の簡単さや柔軟性などを存分に活かしたもの。

富士通・災害支援特別チームの生川慎二氏(左)と、吉無田護氏(右)

富士通・災害支援特別チームの生川慎二氏(左)と、吉無田護氏(右)

ただし、『つなプロ クラウド』が被災地で重宝されてきた理由は、こうしたクラウドの優位性だけにあるのではない。むしろ、大規模業務システムの開発経験が豊富なシステムエンジニアだからこそ実現できた、圧倒的な「ニーズ対応力」にある。震災支援の枠にとどまらない新しいSIerのあり方、新しいSE像を示唆する活動ともいえる。

まさに、メディアジャーナリスト改めメディア・アクティビストの津田大介氏(@tsuda)が[津田大介責任編集①] 3.11後に見えたネットの未来。そして「進化」への提言で語った「ユーザーとのコミュニケ―ター的な役割をこなせるエンジニア」像を体現する『つなプロ クラウド』の開発陣。そこで、構築プロジェクトを主導した生川慎二氏と、開発メンバーである吉無田護氏に、開発時の苦労や今後の展望について聞いた。

単なる「クラウド無償提供」以上の動きが必要と判断した

津田大介氏からの質問 その1

『つなプロ クラウド』を活用した支援活動を企画することになったいきさつと、

実現までの課題だったことを教えてください。

生川 今回開発したシステムは、もともと宮崎県で起きた口蹄疫への対応や、鳥インフルエンザ発生時のサーベランスなどで使われていたものを応用したものです。

われわれはそこで得た災害時の緊急対応ノウハウを持っていたので、3・11の地震が起きた直後から「何か役に立てるかもしれない」と思い、12日にはチームメンバーでクラウド環境の準備や「災害支援特別チーム」の編成、活動費用の承認を得るための企画を開始しました。

動き出す前に決めていたのは、単なる「クラウド無償提供」ではなく、被災現場のニーズを確認しながら、本当に必要とされるサービスを提供しようということ。

From 湯川伸矢(しんじょん)高齢者比率では、阪神淡路大震災よりも3・11震災の被災地の方が高いというデータも

From 湯川伸矢(しんじょん)

高齢者比率では、阪神淡路大震災よりも3・11震災の被災地の方が高いというデータもあるという

震災直後に、多くの方が避難所に避難をされました。震災による直接被害への対応も重要でしたが、長引くであろう避難所生活での医療・介護・障碍者・外国人・難病患者など、支援を必要とする人の実態把握が二次災害防止のためにも急務でした。

特に、今回の地震発生地域では高齢者比率が高く、阪神淡路大震災では10%程度であった高齢者比率が25%を超えていたため、高齢者の避難環境の実態把握が必要でした。

本来は行政による避難所運営が求められますが、未曽有の大震災と津波被害で、行政側も対応に追われ、各避難所の実態把握までは手が回りませんでした。震災前に予定していた避難所が津波で流され、最寄りのお寺や民家なども避難所として使っていたような状況であり、そういった避難所は物資・情報ともに「孤立状態」にありました。

そこで『つなプロ』のようなNPOネットワークが宮城県内443カ所の避難所を巡回訪問し、アセスメントを開始。NPOが”情報のハブ”を担っていたのですが、次なる課題は情報の管理でした。『つなプロ』では、当初Excelや独自開発のツールなどで情報の管理を考えていたようですが、相当な情報量になるためデータベース化が必要になります。

そこでわれわれは、ITのプロとして現地に同行し、クラウドの開発・提供を申し出て、文字通り「そばにいる」ことで日々刻々と変化するシステムに対するニーズを拾い上げ、随時カスタマイズを加えていきました。

現地では課題の連続。NPOの現地本部に詰めながら、課題を一つ一つつぶし、3月28日から『つなプロ クラウド』の稼働にこぎつけました。その後、SNS連携や高速集計システムの追加といった拡張作業も、4月中には完了できました。

「ニーズ」を待っていてはITの価値を提供できない 

津田大介氏からの質問 その2

僕は今後、エンジニアには最新技術とユーザーニーズを”つなぐ”役割が

よりいっそう求められると考えているのですが、この「ニーズマッチング力」を

高めるために何が必要だとお考えですか?

生川 第一に行うべきなのは、やはり現場の活きたニーズを把握することじゃないでしょうか。

今回の震災では、「補聴器が無くなり、聴覚障がい者と同じようなケアが必要」、「高齢者にとって和式の仮設トイレは介助が必要にもかかわらず、狭くて入れない」、「仮設トイレはあるものの汲み取りが機能していない」など、現地で確認しないと知り得ない課題やニーズがたくさん収集されました。

被災地に赴いた際の生川氏と吉無田氏。あくまでも「システムを使う方々の隣で作る」ことにこだわった

被災地に赴いた際の生川氏と吉無田氏。あくまでも「システムを使う方々の隣で作る」ことにこだわった

これらの課題やニーズに対しては、現場では専門性を持つNPOとマッチングすることで解決が進められていきました。「ニーズ」を集めるためには、刻々と変化する収集項目や収集状況に対応した現場の状況を把握してシステムに反映しなければなりません。

鮮度の高い「ニーズ」のデータベースがあるからこそ、適切な「マッチング」が機能し、迅速な「デリバリ」につながります。

管理画面やデータベースが現場の業務に対応できていなければ、ミスや遅れにつながってしまいます。だからこそ、現場の活きたニーズを把握することが、ITのプロとしてやるべき第一歩ではないかと考えています。

ただし、ITは平時には優れた道具であっても、大震災直後の究極の環境下で貢献できることは本当に一部分でしかありませんでした。結局は、人間によるコミュニケーションが核です。それを理解した上で本当に役に立つツールを作っていくには、システムの都合を利用者に押し付けず、現場の状況を把握し、解決策を積極的に提示する姿勢が欠かせないと改めて感じました。

吉無田 開発メンバーの立場から見ても、実際にシステムを使う人たちの近くにいることは、とても重要なことでした。『つなプロ クラウド』構築時も、現地に乗り込み、その場で設計し、システム要件を支援者の方々の隣でアレンジしながらシステムに反映していきました。

現地で情報収集しているNPOの方々や支援者は、ITについて詳しい方ばかりではありません。生川もお話ししたように、NPOの方々は最初Excelで情報管理を行おうとしていたくらいでしたから、ただクラウドシステムを”お渡し”するだけでは機能しなかったと思っています。

管理画面を使いやすくするため、途中でJavaScriptを入れ込んで対応したりする一方、入力された情報の管理・出力時に混乱をきたさないよう最初からマスタをきちんと構造立てて構築していったり、ネットワーク回線が細いことを考慮して機能を絞り込むなど……。こうしてあらゆるシチュエーションを加味しながらシステムの「全体設計」をしていけるのは、現場に存在しているSEならではの強みだと思います。

生川 現在、『つなプロ』は避難所から仮設住宅に移った方々への支援活動を地元NPOと展開しています。「震災直後の使い道」から進化したシステムの利用法になっても対応し続けられるよう、『つなプロ クラウド』はリモートでカスタマイズできる機能もあります。

これも、クラウドだから可能だったというよりも、吉無田の言う「全体設計」がしっかりとできていたからこそ可能だったと説明するのが正しいと自負しています。

(次ページに続く)

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>>[津田大介からの質問状] 富士通編(2/2) 「経済的価値と社会的価値の同時実現は可能だ」




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