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「最初のユーザーを伝道師に」Hulu、Airbnb日本立ち上げに見る、新サービスを根付かせる方法【特集:New Order】

タグ : Airbnb, Hulu, シェアリングエコノミー, 田邉泰之 公開

 

サービスを海を越えて世界に広めるためには、国や地域によって異なる文化、言葉、インフラ、法制度などの諸条件を正確に把握し、適切に対応することが求められる(あるいは、最初からそうした違いを超え得るサービスとして設計する必要がある)だろう。

こうした前提に立てば、日本でサービスを普及させるためには、日本市場および日本人について深く理解する必要がある。

ある土地に住む人が、旅行者によってもたらされた新たな視点によって自国の良さを再発見させられることがあるように、日本市場をターゲットとする海外サービスの担い手に話を聞くことは、日本市場を理解する手助けとなるかもしれない。

そこで今回取り上げるのが、Airbnb日本法人代表の田邉泰之氏である。

Airbnbは、個人宅などの空き部屋を有料で貸し借りできる、世界で利用者が急増している米国発のサービス。いわゆるシェアリングエコノミーにカテゴライズされるもので、世界191カ国34000都市に約100万件の登録物件がある。

昨年からはアジア圏での普及に注力。日本でも前年比3倍のペースで物件数が伸び、2015年4月時点で8000件を超えたという。

田邉氏はAirbnbへの転職する前、米国の人気動画配信サイトHuluの日本法人プロダクトマネジメント部長を務めていた。同サービスの日本版立ち上げに深く関わった人物だ。

複数の海外サービスを日本で立ち上げた同氏が考える、新サービスを広く普及させるためのポイントとは? そこに日本市場ならではの難しさはあるのか? 田邉氏に聞いた。

最大のポイントは「誤解なく」伝えること

—— 今の田邉さんの役割を教えてください。

現在の『Airbnb』のトップ画面

宿泊のシェアリングエコノミーサービス『Airbnb

2013年10月にAirbnbに入社し、当初はシンガポール採用でしたが、2014年5月の日本法人立ち上げのタイミングで代表に就任しました。メインの仕事は、Airbnbというサービスを日本に広めることです。

その際に一番大切だと考えているのは、日本に入ってくる際に「ロスト・イン・トランスレーション」がないようにすること。つまり、本国の創業メンバーがすごく良い思想をもって始めたサービスを、誤解なく、正しい形で広めるということです。

ユーザーの「期待値」と提供する「サービス」との間にギャップがあると、不満を覚える人が生まれてしまいます。だからまずは慎重さをもって、サービスを正しく伝えることが重要だと思います。

Airbnbのケースで言えば、私が創業メンバーの思想で特に共感しているのは、旅行者がサービスを通じて満足を得るだけでなく、ホストを務める現地の方々にも良い影響を与え、その土地に経済効果などの恩恵をもたらすものであろうとしているところです。

そうした思想を正確に伝えることで、日本がこのプラットフォームを通じてきちんと恩恵を受けられるようにすることが、私の役割だと感じています。

―― そうした思想を広く普及させるために必要なこととは?

最初のユーザーになっていただける方がどういう人であるかが、サービスの発展にかなり影響を与えると思います。思想を正しく伝えることで、このサービスを本当に好きな人たちに最初のユーザーになってもらうことが大切です。

というのも、Airbnbは今年で創業7年目を迎え、世界191カ国で利用されていますが、実は2013年の後半までは、本格的なマーケティングは行ってきませんでした。それまでは基本的に、口コミで広がっていったんです。

Airbnbのユーザーの方にはサービスの性質上、いろんなカルチャーを知りたい、いろんな人と話したいという欲求の強い人が多いので、非常に伝播力があったのだと思います。

—— どうすれば口コミが広がりやすくなりますか?

これさえやればいいという方法はありませんが、Airbnbではコミュニティを非常に大切にしています。「コミュニティマネジャー」という役職を各地域に置いて、ホストと情報交換するミートアップの機会を頻繁に設けているのです。

「Groups」というオフラインで情報交換できる機能もありますが、コミュニティを育むためには対面のコミュニケーションのチャンネルが非常に重要であると考えています。大規模なものですと、世界各国のホストを6000人規模で今年はパリに招くものもあります。

多くの場合、ミートアップをリードするのはコミュニティマネジャーではなく、ホストの方々です。日本でも、「Airbnbのエバンジェリストになりたい」と言ってくれていたり、ホスト同士が自主的に集まるランチ会を開いていたりと、非常に積極的なホストが増えています。むしろこちら側が勉強をさせていただくことも多いです。

ユーザーの方がAirbnbについて話したくて仕方がないという状態になってもらうには、情報をたくさん持っているということが一つのモチベーションになる。こちらはその手助けをするために、情報を提供させていただくというスタンスです。

信頼を得るまでのハードルが高い日本市場

—— 田邉さんはHuluの日本での普及にも深く関わっていらっしゃいます。日本市場ならではの難しさも感じてらっしゃいますか?

田邉氏はHuluの日本立ち上げにも深くかかわった

田邉氏はHuluの日本立ち上げにも深くかかわった

日本もアメリカもサービスの広がり方というものは基本的には一緒だと思いますが、アメリカ本国でサービスの魅力を伝えるのよりも、理解してもらうために必要な情報量が多いということはあるかもしれません。

というのも、まずAirbnbの場合で言えば、アメリカには他にもシェアリングエコノミーのサービスがあるので、「Airbnbは宿泊する際のシェアリングエコノミーです」と言えば大体理解してもらえます。が、日本ではそこまでスムーズにはいきません。

Airbnbのようなサービスに限らず、より一般的に言っても、日本では新しいサービスが信頼を得るのに必要な情報量が、アメリカにおいてよりも多いというところがあるようです。

これはいろいろなところで調査してみて分かったことですが、日本ではフォーカスグループから5、6人を抽出してサービスの説明をしてみると、「なるほど、説明を聞けば欧米で流行るのは分かります。でも、日本でも流行っているんですか? 流行っているのなら試してみたいですが……」という反応が多いんです。

これは他の国ではあまり見られない傾向のようです。欧米であれば多くの場合、「それは面白そうだね。じゃあ使ってみよう」となる。日本の方がより慎重なようです。

—— そうした慎重な日本で有効な打ち手はありますか?

Airbnbはユーザーとホストの相互評価制度など、信頼を得るための機能が充実していると思いますが、ランディングページには現状、サービス概要に関する説明が一切なく、いきなり物件を検索するUIになっています。

でも、「もしかしたらアジアではもう1枚ページをかませる必要があるのではないか」という話を、今まさに本国との間でしているところです。

Huluの時は実際、信頼を得るために1枚ページを設けて、FOXやNBCユニバーサルといった有名企業と提携していることを強く押し出すようにしました。

—— Airbnbについても、Hulu同様、日本でも受け入れられるという感触がありますか?

まだ始まったばかりのサービスなので、どれくらい伸びると言い切るのは難しいですが、実際に物件数は前年比3倍というすごい勢いで伸びており、正しく伝えさえすれば広まるという潜在的なニーズは感じています。

そもそも、古くから「民泊」という概念があったり、『田舎にとまろう』という番組があれだけ人気だったりするのは、現地に溶け込むことで、普通に車で流すだけでは味わえない感動を得るという旅のスタイルやニーズが日本にもあったということ。

全く新しいものを持ち込んだというわけではなく、インターネットやテクノロジーを使うことによって、これまでもあったものを、もっと身近に、もっと簡単にしているということです。

「シェアリングエコノミーはどうこう……」と説明するより、そういった伝え方の方が良い。

つまり、「簡単である」ということは、普及させる上で大事なポイントかもしれません。

Huluの場合で言えば、テレビが大好きな人に向けて、さまざまなデバイスでシームレスに視聴できるということを売りにしたわけですが、いくらシームレスというメリットがあっても、普段視聴しているテレビと比べて非常にめんどくさいものだとしたら、誰も使ってくれません。

ですから日本に持ち込むにあたっては、テレビのスイッチを付けて見始めるよりもプロセスを短くできないかということに非常にこだわりました。

シームレスに続きから見るためには「視聴履歴」が非常に重要なので、もともとはユーザープロフィールの深くにあった視聴履歴をトップ画面に表示するよう、開発部門のある北京に通い詰めて、UIを改善しました。

ややこしくない。そこを意識することで、新しいサービスを受け入れてもらうためのハードルを低くできるということもあると思います。

前提にあるのは、自分が第一のファンであるということ

HuluもAirbnbも、自分が第一のファンであることが大きいと田邉氏は言う

HuluもAirbnbも、自分が「第一のファン」であることが大きいと田邉氏は言う

—— ところで、田邉さんご自身がHuluやAirbnbを選ばれたのはどういった理由からですか? 日本で普及しやすいサービスであるというところが見えていたからでしょうか?

AirbnbにしてもHuluにしても、前提として一番重要なのは、私自身が大好きなサービスを担当させてもらっているということです。

私自身、空いている時間があったらすぐにでもテレビを付ける人間ですし、Airbnbを実際に使ってみて、サンフランシスコや隠岐島で、これまでに味わったことのないような感動を味わいました。

サービスを取り扱う上では、まず自分がヘビーユーザーになる、第一のファンであるということが大切だと思います。

自分が好きなことをやるということは、同じように好きになっていただけるだろうお客さまのことがイメージしやすいということですから、それをマーケティングに活かすことができます。もちろん、多少の苦労を「苦労」と思わず乗り越えられる気持ちにもなりますしね。

逆に興味のないサービスを持ち込めと言われたら、そこが難しいかもしれません。最初のユーザーになる人がどういう人なのかが分からないので、どう届ければいいのか、どこが使いにくいのかということもなかなか見えてこない。

—— とすると、サービスを普及させる立場にある人たちへアドバイスをするとすれば、やはり「そのサービスを大好きになる」ということになりますか?

そうですね。私自身もまだそんなに経験があるわけではないので、偉そうなことは言えませんが、私にとってのモチベーションは間違いなくそこにあります。人によってはそれが、成功に結び付くものになるかもしれません。

>> 特集「New Order~現代のゲームチェンジャーたち」記事一覧

取材・文/鈴木陸夫(ともに編集部) 撮影/竹井俊晴




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