エンジニアtype - エンジニアのシゴト人生を考えるWebマガジン
  • TOP
  • キーパーソン
  • 旬ネタ
  • コラボ
  • ノウハウ
  • 女子部
  • キャリア

作ってみたらこうだった。サードパーティデベロッパーに聞く「AppleWatchアプリ開発」の舞台裏

タグ : AppleWatch, ino, Moneytree, インフォテリア, グノシー 公開

 
apple-watch-meeting_4

(写真左から)マネーツリーのポール・チャップマン氏、Gunosyの川邉雄介氏、インフォテリアの中村智史氏

2014年9月10日日本時間午前2時に発表され、2015年4月24日発売されたApple Watch。6月8日から開催されたWWDC15では、今秋公開予定の次期OS『watchOS 2』β版が登場するなど、Apple Watchを取り巻く状況がにわかに活気づいている。

そこで今回、エンジニアtype編集部は、いちはやくAppleWatchアプリをリリースしたベンダー各社に声をかけ「Apple Watch開発者座談会」を企画。WWDC15が閉幕した翌週に開催した。

当日会場に集まってくれたのは、情報キュレーションアプリ『グノシー』と、資産管理アプリの『Moneytree』、オンライン付箋アプリ『lino』の開発責任者の面々。話は『watchOS 2』への期待感、Apple Watchがもたらす未来のモバイルにまで及んだ。

会場提供:株式会社Gunosy

プロフィール

Gunosy 開発本部
川邉雄介氏

アメリカに憧れ渡米し、カリフォルニア大学デービス校・材料工学科大学院を卒業。その後、ソフトウエアの可能性に魅了され、大手IT企業に入社。主にiOSアプリの新機能開発に携わる。2015年、Gunosyに参画。開発本部に配属

プロフィール

マネーツリー チーフエグゼクティブ
ポール・チャップマン氏

10年間日本在中のアントレプレナー。日本の高校と埼玉大学に進学。2000年に母国でSaaSスタートアップ『cvMail』を起ち上げる。en worldのIT部長などを経て、2012年にマネーツリーを設立。代表取締役に就任

プロフィール

インフォテリア 東京R&Dセンター第2研究開発部長
中村智史氏

子供の頃からソフトウエアを作ることに惹かれ、東京大学工学部を卒業後、外資系ソフトウエア会社を経て、世界中で使われるソフトウエアを日本から発信することを目指し1999年イ ンフォテリアに参加。linoなどのコンシューマ向けアプリケーションの開発で得た知見やノウハウを、エンタープライズ系ソフトウエアの開発に活かすべく活動中

未体験のデバイスには、必要最小限の開発体制があっている

―― そもそも皆さんの会社では、どういった経緯でApple Watch対応アプリの開発に踏み切られたのですか?

川邉 Gunosyの場合「まず挑戦してみて、そこからどんな戦略が立てられるか考える」っていう開発アプローチを取ることが多いのですが、Apple Watchへの対応も、まさにそんな感じで始めました。

検討を始めたのは、Apple Watchの話が公表された直後のことでしたね。

apple-watch-meeting_9

3社がApple Watchアプリ開発で感じたこととは

チャップマン Apple Watchは iOSの延長線上にある最先端のデバイスです。

以前からiOS向けに開発してきたデベロッパーとしては、話を聞いた時からすごくやってみたいと思っていました。新しいカテゴリーのデバイスが出た時は、アプリ開発者にとっては大変大きなチャンスなので、iPadが出た時と同じようなワクワク感も感じましたしね。

中村 インフォテリアは、XML技術をベースにデータ連携やコンテンツ配信など、ビジネスの現場で使われるツールの開発をメインに行っています。

その一方で、iPhoneやAndroid向けのコンシューマーアプリの開発にも力を入れているのは、ビジネスツールを変革する「きっかけ」や「走り」が、コンシューマーの世界からやって来ると考えてからです。

Apple Watchはまさにその典型。そこで、まずは手持ちのアプリの中で、実装しやすそうな付箋アプリの『lino』を対応させることに決めました。

―― 開発のコンセプトやターゲットはどのように設定されましたか?

川邉 Gunosyは本来、マス向けのサービスなのですが、Apple Watchの初期ユーザーはおそらくアーリーアダプター(革新的プロダクトの初期採用者)で、しかも経済的に余裕があり流行に敏感な男性が多いと考えました。

apple-watch-meeting_8

グノシー/国内1,000万ダウンロードを誇る日本有数の情報キュレーションアプリ。Apple Watchでは、最新ニュースの通知や記事の一部の閲覧、クリップなどができる。ユニークなGlance画面のUIが話題に

ですから開発にあたっては、彼らをメインターゲットに、使っていて自慢したくなるような機能やUIを取り入れることに決めたんです。

チャップマン なるほど。確かに最初のApple Watchユーザーは、アーリーアダプターでしょうね。実はぼくらも川邉さんと同じように考えて、アーリーアダプター向けに開発すべきか検討していた時期がありました。

でも1回作ったアプリを作り直すのって大変でしょう? ですからターゲットをアーリーアダプターに絞るのは止めたんです。最初から「ベストショット」を狙うつもりで設計しました。

中村 我々の場合は、どちらかというと今後アプリを展開するにあたって、どのような可能性があるかを探ることが開発の動機の一つだったので、なるべく既存ユーザーの中で、フィードバックを返してくれそうな人を念頭に開発を進めました。

ご存じないと思いますが、『lino』は海外ユーザーが多く、とくに教育現場で使われる機会が多いアプリなんです。以前からSNS経由で建設的な意見を寄せてくれるユーザーがいらっしゃるので、彼らの使い勝手を想定しながら開発に取り組みました。

―― どのような体制で開発に臨まれました?

中村 デザイナーとエンジニアの2人ペアですね。これは、今回に限らず、他のコンシューマー向けのアプリ開発と同じ体制です。

チャップマン ぼくらも常日頃から小規模なチームで活動しているので、Apple Watchも2~3人のチームで開発しています。

apple-watch-meeting_9

Moneytree(マネーツリー)/銀行口座、クレジットカード、電子マネー、ポイントを一元管理できるアプリ。Apple Watchからは、前月と今月の支出状況の比較グラフや資産内容を閲覧できる。App Store Best of 2013、2014連続受賞

川邉 私たちも皆さんたちと一緒です。普段と違うのは、企画を担当する人間を間に入れず、私とデザイナーの2人で開発したことでした。

技術的にもデザイン的にもできることは限られているのですが、作っては直し、作っては直しを繰り返しながら、開発を進めていきました。いわゆるデザインスプリントです。開発者ドリブンで作ってる実感が強くてとても楽しかったですね。

チャップマン 同感です。

―― watchOS 1には、開発に際してかなり制約があると聞きました。開発に苦労した点は?

中村 実機で試して初めて分かったことは、BLE(Bluetooth Low Energy)の通信速度がとても遅いこと。シミュレーターだとサクサクと動いてくれるんで、最初は「こんなに動くんだ」って思っていたんですが、現実はぜんぜんそうじゃなかった(笑)。

チャップマン 僕もApple Watchにも「これくらいパワーがあれば」って思いましたよ。

中村 そう思いますよね(笑)。Watch側で凝った画面は作れませんし、作り始めてみて、付箋らしいデザインにこだわると、レスポンスが遅くなりかえってユーザー体験が悪くしてしまうと感じました。

apple-watch-meeting_10

lino(リノ)/2008年以来、全世界で100万人以上のユーザーに使われているオンライン付箋アプリ。iPhoneなどで登録した付箋情報が、Apple Watch上で管理・確認できるようになる

それで今回の開発では機能をかなり絞り込むことにしたんです。

川邉 iOSなら座標指定できるのに、Apple Watchは上から順に詰めていくようなレイアウトしかできません。この制約の中でどうすべきかについては私たちずいぶんも悩みました。

新しい体験を設計する上で足かせになったと思うのは、皆さんが感じているように、通信速度とアニメーション表現の制約。最適化するのがすごく難しかったですね。

チャップマン 作り始めたころは実機に触れられなかったし、使用体験がないデバイスですから推測しながら作った部分がどうしても多くなってしまいます。ですから、今となっては「もっとこうすればよかった」と思う部分がたくさんありますよ。

たとえばGunosyさんのように、Glance画面を作ればよかったとかね。当時はWatch側から資産情報にアクセスできるのはプライバシーの観点から問題がありそうだし、そもそもWatchで見たい項目は限られていると思ったので、限られた項目しか出さないようにしたんです。でもそれはユーザーの使い方次第。自分で使ってみてはじめて分かりました。

―― 使い続けることで、分かることも多そうですね。

川邉 画面がすぐ暗くなるじゃないですか? あれって省電力という意味以上に、Appleからのメッセージが込められていると思うんですよ。ちらっと見て一瞬で済むインスタントな行動をApple Watchで促したいという意図があるからこそ、ああいった仕様になったんだと思います。

でも実際には、Watch上で作業を完結したいというユーザーが多いのは確かです。「どうして記事全文が読めないのか」という問い合わせはよく耳にします。

チャップマン 確かに僕も時間がある時は、Apple Watchをいじっていることが多い。意外と見てしまいますね。

中村 ユーザーの皆さんにとっては、それなりに高いお金を支払ったんだから、もっと使いたいという要望があるんだと思います。スマホばっかり見ている状態が、Watchが主体になるとは思っていませんでしたが、意外にWatchばかり見ているようになるのかもしれませんね。

チャップマン アプリの用途にもよるでしょうが、最近は一瞬で情報が取得できる即時モードと、より深い体験ができるモードの2つを使い分けられる方が、ユーザーの使い勝手が向上するのではないかと思うようになりました。

川邉 なるほど。問題はそれをApple Watchの小さな画面でどう最適化するかですよね。

チャップマン ええ。だからwatchOS 2には期待しているんです。

究極のモバイルは、Watchデバイスひとつで完結すること

―― watchOS 2にはどんなことを期待していますか?

チャップマン 通信速度の改善!

一同 笑

中村 私も同感です(笑)。あとはApple Watch単体で処理できることが増えるようなので、今よりもパフォーマスが上がって、よりリッチなアプリが作れるという期待があります。

チャップマン 守秘義務があるので、現時点で話せる範囲は限られていますけど、スピード的にiPhone並みの体験が作れるのは本当に嬉しい。感覚的にはiPhone2Gから3Gにアップデートする感じ。それぐらいの差があるのではないかと思っています。デベロッパーにとっては、これからが本番という感じじゃないですか?

川邉 そう思います。従来のスマートウォッチと比べると、Apple Watchは、次のアクションに結びつきやすいデバイスという印象があります。まわりを見ても通知が来たらすぐiMessageですぐ返信、という人は多いですからね。

watchOS2の登場で、通信速度が上がったり単体で動いたりできるようなれば、その傾向は加速すると思います。

―― 最後に今回の開発経験を踏まえて、未来のモバイルはどのように変わっていくとお考えですか?

川邉 結局ポケットが空になると思うんです。財布もなくなるし、鍵もスマートロックのAkerunみたいにBluetoothを使って開けるようになるでしょう。今はまだ、Wi-FiやBluetooth通信しかできなくても、そのうち3GやLTEが使えるようになれば、もう何も持たないで電車に乗れるようになる世界が来るんじゃないかって思っています。

apple-watch-meeting_7

watchOS2の登場でキラーアプリは誕生するのか?

チャップマン 僕が待ちわびているのはApple Payの日本上陸。これが実現すれば「Apple Watch=お金」という図式が成り立ちます。その管理に『Moneytree』を使ってもらえたらとても嬉しいですね。

中村 最近気付いたのは、iPhoneに対する通知とApple Watchに対する通知は似て非なるものだということ。腕につけたWatchへの通知は、ユーザーによりダイレクトな反応をもたらすということです。

ユーザーをリアル店舗に誘導するO2O(Online to Offline)への取り組みは今も行われていますが、スマホが前提だと、ユーザー側が通知を受ける気がないとなかなか機能しません。

そこをApple Watchが代替することができれば、状況は大きく変わるとことになるのではないでしょうか。川邉さんが指摘されたように、すべてがWatch一つで済む時代になったら、スマホは逆に大型化していくことになるかも知れませんね。

取材・文/武田敏則(グレタケ) 撮影/川野優希(編集部)




人気のタグ
業界有名人 スタートアップ 開発 SE 転職 エンジニア プログラマー Web スキルアップ ソーシャル アプリ シリコンバレー キャリア プログラミング Android 起業 えふしん スマートフォン アプリ開発 SIer 技術者 UI btrax Webサービス クラウド Apple スペシャリスト CTO Twitter Brandon K. Hill ギーク 英語 村上福之 Facebook Google デザイン IoT SNS ツイキャス 世良耕太 モイめし IT 30代 採用 赤松洋介 コーディング 20代 UX 勉強会 プロジェクトマネジメント Ruby ITイベント Webエンジニア 中島聡 ビッグデータ 法林浩之 ウエアラブル iOS 五十嵐悠紀 LINE ドワンゴ ひがやすを ロボット 受託開発 モノづくり IT業界 コミュニケーション イノベーション ハードウエア MAKERS tips ゲーム 女性 ソーシャルゲーム Webアプリ SI インフラ iPhone 女性技術者 高須正和 マイクロソフト 研究者 UI/UX トヨタ 自動車 ノウハウ チームラボ 息抜き システム ソニー プラットフォーム Java メイカームーブメント オープンソース 和田卓人 エンジン グローバル 開発者 教育 イベント サイバーエージェント ソフトウェア 女子会 コミュニティ メーカー 家入一真 スーパーギーク 増井雄一郎 GitHub 人工知能 IPA 40代 日産 テスト駆動開発 ソフトウエア 音楽 TDD ニュース モバイル PHP TechLION

タグ一覧を見る