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「現場かマネジメントか」で悩むのはもう古い?エンジニアのキャリアパスを再定義する新人事制度をビズリーチが導入

タグ : ビズリーチ, 竹内真, 評価制度 公開

 

ビズリーチCTOの竹内真氏

開発現場に留まり続けるか、それとも一線から退き組織のまとめ役に徹するか。

いまだ多くの日本企業には、一定の年齢に差し掛かったエンジニアに、「スペシャリストかマネジャー」かという二者択一を迫る風潮がある。そして評価の面でも、現場エンジニアよりマネジメント側に回った方が年収が高くなるように設定されているなど、「生涯現場」を貫きにくい環境が一般的だ。

だが、本当にエンジニアが組織で生きていく道はこの2つしかないのか?

ビズリーチ』や『careertrek(キャリアトレック)』といった転職サービスや、学習暗記帳アプリ『zuknow(ズノウ)』などを開発・運営しているビズリーチのCTO竹内真氏は、日本におけるエンジニアのキャリアパスのあり方に対して長年疑問を感じていたという。

「そもそも突出したスキルを武器に開発を突き詰められる人間は限られていますし、マネジャーとして組織を束ねていくのは技術開発とはまったく別の筋肉を必要とします。私自身、この2つの選択肢しかない現状にモヤモヤした思いを抱えていたのですが、具体的な解決策を見いだせずにいました」

ただ、おぼろげながらイメージはあった。エンジニアが開発そのものの成果できちんと評価される仕組みを作ることと、「現場か管理か」の2軸ではない昇進・昇格基準を作ることができれば、エンジニア=ビジネスを推進する人として生きていけるのではないか?

その仮説を検証する意味も込めて、ビズリーチでは今秋から、エンジニアほかクリエイティブ関連職種に対する新たな人事評価制度を採用した。

特徴は、竹内氏の言葉を借りると「マーケティングの観点で職人的価値を測る」という点になる。

事業貢献度とPDCAを回す力を問う評価制度

2014年11月の時点で、ビズリーチにはエンジニア、デザイナー、ライターなどクリエイター職として働く社員が100名弱いる。今回、竹内氏が改変した人事評価制度は全員に適用されるという。

なぜ、クリエイターの仕事を「マーケティング」の視点で評価することにしたのか、竹内氏は理由をこう語る。

「エンジニアの組織には徒弟制に近い部分があるので、個人の技量は一緒に仕事をしている人間であればある程度分かります。ですから、人事評価に単位時間あたりの生産性やチケット消化率といった定量的な指標を組み込んだり、開発に臨む姿勢やソースコードの美しさのような定性的な指標を加味したところで、従来の評価の補強にしかなりません。そこで、一定のレベルに達した人には、新たに『事業貢献度』にフォーカスした評価を行うことにしたのです」

どう事業に貢献しているかを、竹内氏は「マーケティング的な視点」と呼ぶ。つまり、各クリエイターはかかわるサービスの持つさまざまなKPIに対して、クリアするには何をするべきか? から考え、施策を打つことが求められるというわけだ。

「この考え方であれば、エンジニアは技術を捨てずにステップアップしていくことが可能になります。ほかのクリエイター職も同様です。その代わり、サービスの成長を示す何かしらのKPIにフォーカスした上で、改善に向けた仮説を立て、実際に改善策を“開発する”ことで貢献していくことが求められるようになります」

サービスが掲げるKPIには、ページ遷移率のような短期的な施策で改善できるものから、DAUやMAUの向上、利用者拡大など一朝一夕では改善できない数値までさまざまある。エンジニアをはじめとするクリエイターは、仮説立て~施策実行~検証のプロセスにおいて、サービス運営におけるインパクトが大きい課題に着手すればするほど、職位が上がっていく仕組みだ。

それを図解したのが、この職位表となる(※画像クリックで拡大表示)。

ビズリーチが導入した職位表

ビズリーチのクリエイター階級ごとに求められること(画像クリックで拡大)

それぞれの階級に応じて、課題に対してどんなアプローチを取ってほしいのか、また、事業や経営に対してどうコミットをしてほしいかがまとめられている。

「ビジネス上のロジックを理解した上で、一通りの開発ができるレベルがS3です。S4以降は、そのランクに応じて、技術力と共にマーケティング的な視点や行動が求められる構成にしました。特にS5以上になると、携わるサービスに対する『ミニCTO』的な視点で、中長期の成長まで考えて打ち手を開発していくことが求められるようになります」

サービスマーケティングを入り口として事業経営に近い部分までかかわることで、クリエイターとしての価値を高めていってほしいという考えからだ。

実際の評価は、評価期間中に各人が出した結果を基に、事業部側からの評価と竹内氏率いる開発チーム内での評価をミックスして出すという。ビジネスサイドと開発サイドの両方から評価することで、「仮にエンジニアやデザイナーとしてのスキルが高くても、事業に貢献できていない場合は高く評価されなくなる」(竹内氏)のだ。

逆に、ある評価期間では数字としての結果が出ていなくても、事業推進の立場から中長期的に価値のある施策を進めている場合は、一定の評価が得られるようになる。

「これは、『作る』ことが何の価値を生んでいるのかを可視化する作業とも言えます。私個人として、技術力やクリエイティブ力はビジネスに貢献してこそ価値があると考えているので、その信念を盛り込んだ制度なのです」

マネジメントを担ってくれるクリエイターは加点評価に

エンジニアとして作り続けることで昇進・昇格していくことができ、人によっては「生涯現場」を貫くのも可能になるビズリーチの新制度。しかし、いくつかの疑問も浮かぶ。

【1】クリエイターたちを管理するマネジャーは置かないのか?
【2】また、マネジメントを担うクリエイターはどう評価するのか?
【3】既存サービスの改善ではなく、新規サービスを“ゼロイチ”で立ち上げるようなクリエイターはどう評価するのか?

という3つの疑問である。

連載『BizHack』でも、ビジネスを創ることのできる技術屋になる必要性を何度も話していた竹内氏

【1】【2】について、竹内氏は「S4以上のクリエイターの中から『マネジメントをやりたい』という人を募り、別途研修を受けてもらいながらマネジメントを覚えてもらう」と話す。

「場合によっては、会社からリクエストして研修を受けてもらう場合もありますが、基本的には本人の意思と適性を鑑みて決めます。そして、チームマネジメントを担ってくれるクリエイターには、先に述べた評価に給与を上乗せする形で報いていく方針です」

そうすることで、いやいやマネジメントサイドに回る人を減らせる上に、加点評価によって「マネジメント志向のクリエイター」も一定数育てていくことを念頭に置いている。

そして、【3】のクリエイターにはCTOである竹内氏の直下で「スペシャリスト」待遇を提供していくそう。エンジニアとして、企画~実装、フロント~バックエンド開発までを1人でこなせるような人は「スーパーな人のみ」で、「そういう人の評価は枠に当てはめるべきではない」という考えからだ。

当然、こうしたスペシャリストへの道はごくわずかなクリエイターのみに開かれる。

「エンジニアやクリエイターは、スペシャリストという響きに憧れを抱くものです。しかし、自社サービスを運営している企業にとっては、1人の天才のひらめきより、事業数字に対してコミットできる100人の有能なエンジニアの働きの方が有益な場面が多々あります。こうした現実を踏まえた上で、エンジニアには、目の前の課題に対して技術的なバックグランドを背景に仮説を考え、形にし、自ら進んでPDCAを回せる人材になってほしいのです」

先日ノーベル物理学賞を受賞した中村修二氏の言葉を借りるまでもなく、これまで日本の多くの企業は、エンジニアを正しく評価する方法論づくりにそれほど力を注いでこなかった。

それは、サーゲイ・ブリンやイーロン・マスクのような、技術力とマーケティング力を兼ね備えたテクノロジー起業家が育たない要因にもなっているかもしれない。

「海外企業の中には、50代~60代になっても、エンジニアリングの価値を最大限に発揮して活躍している人が大勢います。日本でも、己の技術力を通して一生価値を提供し続けるようなキャリアパスは確立できるはずです。ビズリーチはそうした人材を1人でも多く育成することで、日本のエンジニアのあり方を変えていきたい。また、いずれビズリーチ以外にもこういった取り組みが広まり、各社から優れたエンジニアが輩出されるようになれば、この制度はさらに大きな意味を持つようになるでしょう」

ちなみに、ビズリーチではこの制度を「人事制度1.0」と呼んでいる。制度の末尾に「1.0」と付けたのは、人事制度はどんどん変えていくべきだという考えからだ。

竹内氏の言葉通り、「各社から優れたエンジニアを輩出する制度」として他社でも活用されていけば、クリエイターにとっての新しいキャリアパスが生まれるかもしれない。

取材・文/武田敏則(グレタケ) 撮影/高梨 茂




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