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「スタートアップを育むスタートアップ」blueが採用する、“下意上達”な組織運営術

タグ : Blue, スタートアップ, 組織論, 育成 公開

 

株式会社blueのホームページ

カリスマティックな経営陣によるリーダーシップの下、名うてのエンジニアやクリエイターが集まり、世の中を変えるためチーム一丸となってサービス・プロダクトを育てていく。

スタートアップの仕事といえば、こんなイメージを持つ人が多いだろう。

だが、2012年7月の設立から間もなく1年6カ月を迎えるスタートアップ、株式会社blueの組織運営は、こうしたイメージとは一線を画している。

同社が現時点で手掛けるメイン事業は主に受託開発。クライアントは大手Web企業からメガバンクまでと幅広く、ゲーム開発からカード決済までとさまざまな案件を受託している。その一方で、受託業務を通して個々のスタッフが身に付けたスキルを活かし、自社サービスのファッションスナップサイト『Girls Sense』も立ち上げている(2013年11月)。

ファッションスナップサイト『Girls Sense

『Girls Sense』を立ち上げたのは、同社の経営陣ではなく、メンバー数人からなるチーム。blueが「一線を画している」のはまさにこの点で、上意下達ならぬ“下意上達”で仕事が生まれているのだ。

社員それぞれがやりたいことをやるというボトムアップの組織運営は、同社の利益率にも良い影響を与えている。

取材時の直近の業績は、前年同期比で売上高が約3.5倍、利益は約4倍と好調。利益が売上を超えているのは、受託開発に取り組む社員たちが自ら学びながらスキルを高め、請け負う開発・デザインの範囲が広がっているからだ。

社員数は約40名で、まだまだ少人数とはいえ、なぜこのような“管理しない組織”で成長を続けることができるのか。その秘密を、創業陣の後藤祐太郎氏と、葉倉歩氏、都築崇氏の3人に聞いた。

「管理する限界」を感じた創業陣が採った、ユニット制の導入

(写真左から)blueのChief Executive Officer後藤祐太郎氏と、Executive Officerの都築崇氏、葉倉歩氏

「僕らはもともと、ある営業代理店で管理職を務めていました。そこで感じていたのが、会社がやりたいことを社員に押し付けるスタイルでは、成長に限界があるし、離職率も高まってしまうということ。大雑把に言えば、管理することに限界を感じたのです。なので、blueでは『社員がやりたいことを実現できる組織を作ろう』という思いで起業しました」

CEOの後藤氏がそう話すように、blueは創業当時から「社員のための組織運営」を目指してきた。正確には、「何かをやりたいという社員のための組織運営」だ。

採用はスキルマッチングを前提とした選考をほとんど行っておらず、基本は「こういうサービスを創りたい」、「開発は未経験だけど何か創りたい」という思い・情熱重視で行ってきた。

「開発未経験者には社内で教育カリキュラムを組んでスキルを教えますし、開発経験があるエンジニアには“未来のCTO”として自分のやりたいサービスを形にしてもらう。また、経験者は未経験者への教育にも携わってもらいながら、チームとしての開発力を底上げしていく。このサイクルを回し続けることで、皆がやりたいことを実現してもらうのです」(葉倉氏)

入社後の働き方は、基本は受託先での常駐で開発・デザインの仕事を行いつつ、やりたいことを軸とした4~10名程度のユニットを組み、ユニットごとに葉倉氏が話すようなサイクルを回していく。各々が受託開発をやりながらも、最低でも1日1回はコミュニケーションを取るという。上記した『Girls Sense』も、この一連の流れから生まれたサービスだ。

経営陣から何かを強いることはなく、やることは「マネタイズ手法を考えることと、ユニット運営のサポート」(後藤氏)だという。

「例えば、あるユニットから『こういうサービスを創りたい』、『だからこういう受託の仕事をやりたい』とリクエストがあれば、できるだけ近い内容の案件を僕ら経営陣が獲りにいきます。また、われわれは前職でITチームの立ち上げとエンジニア育成も手掛けていたので、そこで得た育成ノウハウをユニットリーダーに伝え、一緒にメンバーの育成カリキュラムを作成したりもしています。経営陣は、あくまでもアドバイザーなんです」(葉倉氏)

自分なりの目的がある人たちだけが集まれば、会社があれこれ指示しなくても「目標達成に必要なこと」をやってくれる――。その仮説は、今のところ良い方向に影響している。

人事評価までユニットリーダーと決める徹底ぶり

ホームページの「企業理念」には、事業ではなく「仕事」についての考え方が記載されている

彼らがこうした組織運営を行っているのは、前職での苦い経験以外に、飛ぶ鳥を落とす勢いで成長するLINEのチーム運営も参考にしたからとのこと(参考記事はこちら)。

さらに、「各ユニットのリーダーとは、人事制度や給料評価制度の構築まで一緒にやってもらっている」(都築氏)というほど、ボトムアップを徹底している。

「皆が何かしらの開発業務を行っているので、最初はユニットリーダーたちから『何で僕らが会社全体の制度まで作らなきゃいけないのか』という声も挙がりました。でも、実際に人事基準から一緒に作ってもらうことで、ユニットリーダーたちの納得感が高まり、それぞれが行うサービス開発や教育カリキュラムもうまく回るようになりました」(葉倉氏)

「僕ら経営陣が、ユニットリーダーの決めた基準を後からくつがえすようなことは絶対にしないようにしています。だからこそ、ユニットリーダーとのコミュニケーションはすごく密に取っているのですが、こちらの方が上意下達よりもうまくいくと思うんですよね」(都築氏)

とはいっても、業務内容は顧客先への常駐も多い受託が中心。特にこれからスキルを身に付け、キャリアの入り口に立ったばかりの若手をつなぎ止めるのは容易ではない。

それでも、スタートアップならではの自由なルールの下、チームのリーダーを中心とした自主的な組織運営を貫くことで、受託先で「うちに来ないか」と誘われたクリエイターも、誘いに乗らずにblueで働き続けるというケースが多いそうだ。

従来の組織論やコミュニケーション論にとらわれない組織運営こそが、若手中心の組織を活性化させているのかもしれない。

目指すは「若手クリエイターを輩出するプラットフォーム」づくり

そんなユニークな組織運営を導入するblueは、2017年2月までにIPOするというのが当面の目標だ。一方で、ここで培ったキャリアやスキルを活かして起業を目指したいスタッフを、積極的にサポートしていきたいというのも創業メンバー共通の思いだという。

「われわれ3人はいわゆる経営陣ですけど、いざ話し合ってみると価値観も目指す方向性もまったくバラバラです(笑)。ただ1点、同じなのは、blueを『起業のプラットフォーム』にしてほしいっていうことです」(後藤氏)

特にCEOの後藤氏は、営業職で多くの若手に出会ってきた経験から、いずれはエンジニア教育をメインにした事業にも取り組みたいという意欲を持っている。今後、業務を通して身に付けたスキルを活かして、『Girls Sense』以外にも、どんどん新規事業を生み出していけるような環境づくりが今後の取り組みの中心になるという。

「若手が中心ですから、ここを基盤にして起業や独立したいっていう人材が次々に出てくるような会社が理想です。そんな意欲と熱意を持ってジョインしてくれる若手を今後もどんどん受け入れていきたいですね」(都築氏)

取材・文/浦野孝嗣 撮影/伊藤健吾(編集部)




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