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『ボケて』が4年間の空白期間を経て、人気サービスになるまで【対談:法林浩之×和田裕介】

タグ : Perl, YAPC, ボケて, 和田裕介, 法林浩之 公開

 
お酒を片手に「一流エンジニアの人生論」を紐解くトークイベント『TechLION』のファシリテーター・法林浩之氏が旬のエンジニアを招き、ゲストの「オン(仕事)とオフ(プライベート)の考え方」からキャリア形成のヒントを掘り起こす連載企画。今回は『YAPC::Asia Tokyo 2014』の実行委員長を務める和田裕介氏をゲストに招き、『ボケて』が人気サービスとなるまでの開発秘話や、一緒に起業した実父との関係性などについて聞いた。
法林浩之のトップエンジニア交遊録

法林浩之

大阪大学大学院修士課程修了後、1992年、ソニーに入社。社内ネットワークの管理などを担当。同時に、日本UNIX ユーザ会の中心メンバーとして勉強会・イベントの運営に携わった。ソニー退社後、インターネット総合研究所を経て、2008年に独立。現在は、フリーランスエンジニアとしての活動と並行して、多彩なITイベントの企画・運営も行っている

法林浩之のトップエンジニア交遊録

和田裕介氏

慶應義塾大学在学中に未踏ユース準スーパークリエーター認定を受ける。卒業後、就職することなく父親と一緒にワディットを起業。2007年から『ボケて』を運営するオモロキのCTOを務める。YAPC::Asia Tokyo 2014 実行委員長。アダルトサイトを作るエロギークとしても知られ、『ゆーすけべー』というあだ名が有名。2014年6月の『TechLION vol.17』にも登壇予定

YAPC実行委員長の和田氏が相手ということで、過去のYAPCのTシャツを着て対談に臨む法林氏

YAPC実行委員長の和田氏が相手ということで、過去のYAPCのTシャツを着て対談に臨む法林氏

法林 ゆーすけべーさんこと和田裕介さんにはまず、『ボケて』の話を聞きたいんですが、あれはどういう経緯で生まれたものなんですか。

和田 そもそもは、鎌田(武俊氏)と焼肉を食べている時に、鎌田がPCを取り出してプレゼンを始めたんです。それが、松本人志の『一人ごっつ』の『写真で一言』というコーナーみたいなことを、Webでできないかというものだったんです。それが発端です。

法林 TVからアイデアが来てるのか。その時すでに、オモロキは立ち上がっていた?

和田 登記は終わってました。『ボケて』自体は、鎌田がデザインとHTMLコーディング、僕がシステムの中身担当で、2人で2カ月くらいかけて作りました。

法林 それは、テストまで含めて?

和田 そうですね。

法林 公開は2008年夏でしたよね。反応はどうでした?

和田 瞬間的にはよかったです。出したニュースリリースが、いろんなニュースサイトにも取上げてもらえましたから。でも、アクセス数は最初にキュッと上がったあと下がって、鳴かず飛ばずの時期が続きました。2012年5月12日まで、その状態が続きました。

法林 4年近く経ってますね。

和田 そうですね。その4年間は基本、放置していましたが、唯一、鎌田がエログロ系の画像が投稿されていないか監視をしてくれていました。なので2012年5月のアクセス数の急増は、サーバからのアラートで初めて気付いたのです。その日はやたらとアラートが飛ぶな、と。

アクセス負荷に対応するため、フレームワークから作り直し

法林 4年近く経ってからのアクセス数の急増って、何があったんですか?

和田 NAVERまとめや、2chまとめにほぼ同時期に紹介されたんです。それで、それまでユーザーが蓄積してきたものが一気に表に出ました。

法林 まとめサイトっていうことは、選抜されたものばかりが並んでいるわけですよね。

和田 そうです。でも正直なところ、僕は『ボケて』をしばらく放置して頭の中から消えていたんです。それが、サーバがヒーヒー言うようになって、対策が必要になりました。で、借りていたサーバから別のところに動かそうとしたんですが、ほかのサーバ環境では動かないことに気が付きました。

フレームワークからの作り直しはかなり勇気が要った、と話す和田氏

フレームワークからの作り直しはかなり勇気が要った、と当時を振り返る和田氏

法林 Perlの環境依存性がもろに出たんですね。

和田 そうです。で、それを解決するよりも、新しく作り直した方がいいんじゃないかと思ったんです。けっこうな決心でしたが、Perlの場合、2008年と2012年では、ライブラリもだいぶ変わりましたから。インストーラもだいぶ変わっていて、それを使ってみたいというのもありました。

法林 確かに2008年と2012年では、サーバOSのバージョンも違うはずですよね。

和田 そうなんですよ。で、6月末から1カ月くらいかけて、何とか形にしました。と同時にですね、鎌田と僕の共通の友人である、ハロという会社のイセ(オサム氏)から、iPhoneアプリ版も出さないかという提案があったんです。それで、ブレイブソフトとも組んで、三つどもえで開発をして、10月にiOS版をリリースしました。

スマホ特化でユーザー数が加速

法林 オモロキとハロとブレイブソフトは、どんな風に役割分担をしたんですか?

和田 オモロキが情報提供、ハロが運用、ブレイブソフトがプログラミングです。12月にはAndroid版もリリースしました。

法林 スマートフォン用『ボケて』の反響はどうでした?

和田 よかったですよ。『ボケて』はスマホとの親和性が高いんでしょうね。手のひらに収まっている感が面白くて。そのころ、Web版もスマホに特化させて、モバイル版は閉じました。

法林 投稿もしやすいしね。ユーザー数が増えるとボケの質が下がる気がするんですが、そんなことはないんですか?

和田 懸念してはいましたが、実際はそんなことなかったですね。かえってレベルは上がっています。パイが増えた分、優れたものが増えました。

法林 へぇ、それは意外ですね。『ボケて』はビジネスとしてはどうでなんですか? 軌道に乗ってきた感じかなと思っているのですが。

和田 乗ってきましたね。

法林 どうやってマネタイズしているんですか。

和田 1つは広告、2つ目はコラボという方法でマネタイズしています。

法林 コラボ、というと?

自治体とのコラボ賞品の意外さに思わず笑みがこぼれる法林氏

和田 例えば、写真の提供を企業にお願いするというものです。すでに、中古車のガリバーとか、リクルートの婚活サイト『TwinCue』とか、缶コーヒーの『FIRE』とかと組んでいます。それから、日南市。

法林 日南市? 宮崎県の?

和田 そうです。優れた作品に対して賞品が鰹なんです。

法林 ハハハ(笑)。自治体と組むのは面白いね。

「作らない人」と組むから生まれる面白いアイデア

和田 ただ、こういうのってエンジニアには思いつかないんですよ。そこらへんのサービスの商品化やクライアント対応は、さっきも名前の出たハロのイセと、それからキャッチボールという会社の新甚(智志氏)が強いので、やってもらっています。

法林 そこもコラボなんですね。

和田 新甚と2人で打ち合わせに行ったときに彼が「僕は作らない人になることに決めた」と言っていたのが、すごく印象に残っているんですよ。それはつまり、作る人に何かを提供したいということだと思います。『ボケて』がここまで来たのも、いろんな座組みの中で、いろんなメンバーに助けられて来たからだと思います。

法林 オモロキは今、社員は何人ですか?

和田 社員という言い方はしていなくて、メンバーと呼んでいます。メンバーは、鎌田と僕とイセと新甚と、あと2人とで6人です。何か作る時には、ほかの会社と組むことを前提にしています。

「父は頼れる同僚であり、興味分野が似ている友達」

法林 メンバーと言えば、ゆーすけべーさんはもともと、お父さんと2人でアプリ開発やシステムコンサルをする会社を立ち上げたんですよね?

和田 ワディットはそうです。大学を卒業しても、特に行きたい会社がないので「自分でやるかな」とか言っていたら、僕が知らないうちに会社ができていて……。電話がかかってきて「お前の実印はどこにあるんだ」と言われて「上から2番目の引き出し」と答えて、それでいつの間にか登記が終わってました。

法林 お父さんはもともと、コンピュータ系のエンジニアなんですか?

和田 ガチガチのエンジニア、というわけではないですが、化学系の会社の情シスにいたため、上流のシステム設計などはしていました。

法林 お父さんと一緒に仕事をするってどんな感じなんだろう。

和田 会社は同じですけど、それぞれが仕事をとってきて、それぞれがやるというので、一緒という感じではないんですよ。ただ、やっぱり契約書を読むのとかは上手いですね。「これでいいかな」と見せると、「いや、こことココは……」と鋭い指摘をしてきます。

父の会社員としての経験から学ぶことは非常に多い、と和田氏は話す

父の会社員としての経験から学ぶことは非常に多い、と和田氏は話す

法林 それは、カタい業界を経験していることの強みですね。同じ世代だと、そういうことができる人は少ないでしょう。

和田 そうなんです。もちろん法務のプロではないんですが、相談できる相手としては最適な存在です。今回、僕がYAPCの運営をやることになりましたけど、それもなぜかSkypeのチャットで相談したりしてます。「サイトできたから見て」とか。

法林 ということは、普通の人がお父さんに対して抱くのとは違う感情があるのかな。

和田 興味分野が似ている友だちに近いですね。YAPCに2人で出たこともあるんですよ。

法林 え、そうなんですか?

和田 スポンサートークみたいな形で、2009年に出ました。

法林 親子で言語系のイベントに参加する、というのは珍しいですね。今回、運営側として参加することになったのはどうしてですか?

和田 去年、それまで運営をされていた牧(大輔)さんと、櫛井(優介)さんが引退を発表して、もう終わりなんだなと思ってました。色々大変だろうと思っていたので、去年のYAPC::Asiaが終わった直後は「俺がやる」とは言えなかったんです。でも、1週間くらいしてから「やるなら俺かな」と。

法林 ということは、8月の開催に向けて今は引き継ぎの最中なのかな。このあたりは、次回のTechLIONでも伺いたいと思ってます。

和田 承知しました!

取材・文/片瀬京子 撮影/佐藤健太(編集部)

>> 法林氏、和田氏が登壇するトークライブ『TechLION vol.17』はこちら
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