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Apple、デンソーからスタートアップまでが信頼を寄せる、ハードウエアベンチャーBraveridgeのモノづくり哲学

タグ : Apple, Braveridge, IoT, ウエアラブル, クラウドファンディング, ハードウエア 公開

 
braveridge

世間の注目を集めるさまざまなウエアラブルデバイスにBLE技術、量産設計技術を提供している福岡のハードウエアベンチャーBraveridge。そのモノづくり哲学とは?

IoT、ウエアラブルといったキーワードが飛び交い、ハードウエア開発に今再び注目が集まっている。話題の中心は華やかなスタートアップや異業種から参入してきた“変わり種”だが、その裏側で着実に活躍の場を広げているベンチャー企業がある。

福岡に拠点を置くBraveridgeは2004年の創業。BLEモジュールの製造・販売や、モジュールを搭載した製品の受託開発がメインの会社だ。電気設計3人、機構設計3人、ソフトウエア設計2人の少数精鋭体制ではあるものの、大手企業からスタートアップまで、同社のBLE技術を頼って相談が寄せられるケースが増えてきているという。

パリミキ、間チルダとの共同プロジェクトだったウエアラブルデバイス『雰囲気メガネ』は、その代表的な例。契約上、名前を表に出すことができないが、他にも世間で大きな話題をさらったいくつかのウエアラブルデバイスに、同社のBLE技術、量産設計技術が使われている。

直近では、大手自動車部品メーカーのデンソーとコラボしたプロジェクトが進行中だ。車を運転しながらスマホを操作できる『KKP(くるくるピ)』がそれで、クラウドファンディングサイト『Makuake』で、すでに目標額の150万円を達成している。この設計から製造までをBraveridgeが手掛けている。

開発から製造までを一貫して行うというのは、同社の創業以来のポリシー。さらには、クライアントの企画自体にも同社の開発エンジニアが主体的に関わっていく「受け身ではない受託開発」を強く打ち出している。

「全ては良いモノを世に送り出すため」という、モノづくりを徹底追求する同社の姿勢をひもとくべく、創業者でCEOの吉田剛氏、開発営業担当の内野力氏に話を聞いた。

「受け身でない受託開発」とは何か?

内野さん

「時にはクライアントの要求を超えた提案さえ行うこともある」と開発営業の内野氏

受託開発といえば、一般的にはクライアントが要求する仕様書通りに開発するものだ。しかし、そのやり方で本当にクライアントにとって、あるいはエンドユーザーにとって「良いモノ」が作れるのかについては、疑問を呈する声も少なくない。

Braveridgeではこの問題への解決策として、たとえ受託仕事であっても、機構設計や電気設計のエンジニアが企画段階から首を突っ込み、クライアントと一緒になって討論する。

「自らの経験や培ってきたノウハウに基づいて、時にはクライアントの要求を超えた提案さえ行います。プロジェクトが最終的に成功しなければ、受託する意味はありません。プロジェクトを『自分ごと』として捉えるということです」(内野氏)

『KKP』のプロジェクトの話がデンソー側から持ち込まれたのは、昨年9月。デンソーは当初、中国にある別の会社に委託してプロジェクトを進めていたが、電気設計とソフトウエア設計の問題からでき上がったものは思うように動かず、頓挫していた。

そこで白羽の矢が立ったのが、BLE技術を前面に打ち出し、名前を売り始めていたBraveridgeだった。

デンソーからの最初の依頼は「これを動くようにしてほしい」というものだったが、Braveridgeはリモコンとしての使いやすさを追求するため、デザインをイチからやり直すことを逆提案。結果、アプリ側の開発をデンソーが行った以外は、デザインから製造までの全てをBraveridgeが担当することになった。

完成は当初の予定を大きく過ぎて今年3月までずれ込んだが、結果として、親指だけでシンプルかつ直感的に操作できる、クライアントであるデンソーの満足度も高いリモコンができ上がった。

開発途中には、電気設計担当者の「こだわり」から、試作品を大きく作り直すことも行っている。

「当初の試作品にはデンソーさんも満足していましたし、営業担当である私から見ても問題のないもののように映りました。しかし電波の飛びという点で設計担当者の満足がいかないデキだったということで、作り直すことになりました」

設計自体を見直し、BLEモジュールをサイズの小さいものへと変更。配線も組み替えることで、電波の飛びを向上させたモノを完成させた。

「このように当初予定していた工数を超えてしまうことも少なくないのですが、世に出すからには徹底して良いモノにこだわらなければならない。弊社ではそれがモノづくりのあるべき姿だと考えており、当たり前のように実践しています。もちろん、そうしたこともクライアントありきですから、その辺は十分に話して納得してもらった上で進めています」

自社工場での製造にこだわるワケ

Braveridgeでは創業当初、製造を中国の工場に委託していたが、コストや将来性などの理由から2007年に国内工場への委託に切り替えた。総合的に見ればその決断に間違いはなかったが、同時に、あるもどかしさを感じることになったという。

「工場側の姿勢が“受託製造”でしかなかった。こちらから見て『作ってもらっている』、『作らせている』という状態は非常にもどかしく、やはり自分たちでやる、自分たちで改善するという信念を貫くしかないという思いを強くするようになりました」(吉田氏)

AppleとMFi契約を結び生産しているBraveridgeの『くまモンライトニングケーブル』

AppleとMFi契約を結び生産しているBraveridgeの『くまモンライトニングケーブル

そこで2013年、Braveridgeは福岡に自社製造施設を稼働。Appleと日本国内では珍しいMFi(Made for iPhone)契約を締結し、オリジナルのライトニングケーブルの製造なども行うようになった。

設計と製造というと、どうしても“主従”の関係をイメージしてしまうが、Braveridgeはクライアントとの関係同様、ここでもフラットな関係を築いている。

例えば製造側から「この部品の形では接着剤が載りにくい」という改善要望があれば、設計から再検討することもある。

全ての要望を受け入れることができるわけではないが、替わりに接着剤の載りやすい治具に変えることを逆提案するなど、より良いモノを作るための議論が交わされる。

「新しく入社した設計担当には、設計者がここまでやるのかと驚かれることもありました。でも、それが良いモノを作る一番の方法だと信じてやっているので。また、こうしたノウハウは蓄積されていくので、次のプロジェクトの際には製造工程がさらに効率化する、といった効果も望めます」(内野氏)

ハードウエアベンチャーの課題は流通にある

吉田さん

創業社長の吉田氏は全て「自分でやる」ことが課題解決の最初の一歩になると強調する

Bravridgeを創業したCEOの吉田氏とCTOの小橋泰成氏は、それぞれ機構設計、電気設計担当としてパナソニックに務めていたエンジニア。今でも経営的な仕事と並行して、最前線に立って開発にあたっている。

創業から現在に至るまでを振り返り、吉田氏は次のように話す。

「創業当時は(誰の助けもない)海外を主戦場としていたこともあり、いろいろな場面で『何でも自分たちでやらなければ生き残れない』と痛感させられました。企画、デザイン、設計、調達、配達と、仕事に限らずあらゆることを『自分でやる』ことを実践してきたのは、そのためです。

『自分でやる』ことは課題解決の最初の一歩だと思っています。『やる』ことで初めて、次のステップに進むことができる。それを継続し、訓練し、『もうこれ以上はない』と思えるところまで考え、行動する。

もし、創業当初からこの意識を持っていなかったら、現在まで生き残ることはできていなかっただろうと思います」(吉田氏)

今では、BLEモジュールの会社として名前が売れ、ベンチャーから大手企業までさまざまな案件が寄せられるようになった。

持ち寄られる案件は大まかに【1】アイデアだけあって資金もモノもないパターン、【2】アイデアと資金はあるがモノはないパターン、【3】自ら手を動かしてみたが、量産化に課題を抱えているパターン——に分けられるが、圧倒的にうまくいくのは、今回のKKPのような【3】のパターンだそうだ。

これは、必ずしも資金力の問題だけを意味しているのではなく、クライアント側もどれだけ「自分ごと」として、「良いモノ」を作ることを徹底追求できているか、ということが問われているといえるのかも知れない。

Braveridgeやこうしたベンチャーにとって、目下の課題は流通にあると内野氏は言う。

「ウエアラブルデバイスなどは既存の流通網を持たない会社がほとんどですから、現状ではクラウドファンディングを使うぐらいしかない。BLEモジュールの会社としてブランディングし、名前を売っているのは、独自の流通網を築くための試行錯誤の一環でもあるんです」

技術の進展スピードがものすごい業界であるから、今後何年にもわたってBLEを主力としてやっていけるとは考えていない。しかし、設計から製造までを一貫して行うモノづくりの会社であるという方向性自体は、今までもこれからも絶対に変わらないだろうと内野氏は言う。

「結局、どんなに良いモノを作っても、世の中に届かなければ良いモノにはなり切れない。いずれはこの企業文化を流通のところまで発展させることができればと考えています」

取材・文/鈴木陸夫(編集部)




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