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なぜ、サイバーエージェントは次々に新事業を量産できるのか? 藤田晋氏が明かす「プロジェクト編成の科学」

タグ : Ameba, サイバーエージェント, ネイティブアプリ, プロジェクトマネジメント, 新規事業, 藤田晋 公開

 

サイバーエージェント代表の藤田晋氏

昨年末から始まった「Amebaスマホ」の大攻勢に続き、今年もクラウドファンディング事業への参入発表や、小学生向けプログラミング教育事業を行う新会社「CA Tech Kids」の設立など、グループ全体で新事業を生み続けているサイバーエージェント。

【インターネット×テクノロジー】に関するビジネス領域で、ほぼ毎月と言っていいほどの頻度で新サービスのリリースを行っている同社グループの、「尋常じゃない創造量」を支える組織とはどんなものか?

そこに興味を覚え、社長の藤田晋氏にインタビューを申し込んだところ、忙しい合間を縫って快諾してくれた。

読者に伝えたいのは「新規事業を生み続けるプロジェクト編成の科学」だと伝えると、藤田氏は開口一番、「科学というより“仕組み化”なんです。だから驚くような秘密もない」とさらり。

その仕組みとはどんなものなのか? また、藤田氏が語る仕組みを支える組織運営のやり方は、他社と何が違うのか? 編集長の伊藤健吾が尋ねた。
(文中で「※」が付いている制度の解説は、ページ末尾にて)

毎回数百の新規アイデアが出る背景に、「撤退のルール決め」がある

すべての新規事業でプロデュースにかかわるという藤田氏。膨大な数の事業を動かす秘けつが仕組み化だ

すべての新規事業でプロデュースにかかわるという藤田氏。膨大な数の事業を動かす秘けつが仕組み化だ

―― 本日は貴重なお時間をいただきありがとうございます。まず伺いたいのは、CAグループはなぜ、短期間にこれだけの新規事業・新サービスを生み出せるようになったのか?です。

簡潔に言えば、グループ内でアイデアを集め、実行するための仕組みができ上がったからです。

最初に仕組み化を行ったのは、2004年から始めた「CAJJプログラム(※1)」という制度でした。当時は今の制度と少し内容が違いましたが、この時から「黒字化までの期間」と「赤字の上限」、そして「事業撤退のルール」を明確に定めたんですね。それが、今も続く仕組み化の始まりです。

新規事業を始める時は、どのチームも「J5」からスタートして、粗利や営業利益の額によって「J4」、「J3」と昇格し、最終的に「J1」を目指すというものです。逆に基準を満たせなかったら降格となり、決められた期限内に黒字化できなかったら撤退もしくは事業責任者の交代を検討します。

昇格ルールと合わせて撤退のルールも明示したことによって、グループとして新規事業を始めることに躊躇がなくなりました。

そうしないと、ダメなバクチ打ちのように「次のこの手を打ったら回収できるかもしれない」と思いながらズルズルと継続し、投資額がかさんでしまいます。

―― なるほど。では、新サービスの承認プロセスは?

新規事業や新規サービスのほとんどが、四半期に一回行っている「詰め切りセンター試験(※2)」という合宿会議を経て決まります。

新規事業プランコンテストの「ジギョつく(※3)」や、エンジニア向けの「モックプランコンテスト(※4)」などで出てきたアイデアの中から、目のつけどころが良いものを選び、「詰め切りセンター試験」で内容を詰め切る、という流れです。

現在Ameba内で動いている50~60のサービスも、半分以上が1泊2日の「詰め切りセンター試験」で決まったものになります。

―― コンテストでは、毎回どのくらいの新規アイデアが出てくるのですか?

最近は、毎回数百単位でプランが集まりますよ。でも、こうした試みを開始してしばらくは、なかなか数が集まらない時期もありました。

限られた候補の中から筋の良さそうなプランを見つけて事業化したり、アイデアを出した社員を抜擢したりすることを地道に繰り返すことで、やっと社員全員がアイデアをためらわずに出す文化ができ上がったんだと思います。

最初に手を挙げるのはなかなか勇気がいるものですし、CAグループは年齢不問でサービスや事業の責任者を選ぶので、「何であの人が?」と思う社員もいたかもしれません。でも、上の人間がそういう抜擢人事を繰り返すと、やがてそれが企業文化になる。

その企業文化づくりを会社としてやり切った、という証だと思っています。

―― 出てくるプランのクオリティは、年々上昇していますか?

ええ。ただし、たいていの事業プランは「目の付けどころはいいけど、一味足りない」というものです。だからこそ、そういうプランを、先ほど挙げた「詰め切りセンター試験」の場に持ってきて、精度を高めます。

さまざまな切り口で実施するコンテストでネタを集め、「詰め切りセンター試験」で内容を吟味し、新たに立ち上げるサービスを決定するというのが、新サービス立ち上げの基本的なプロセスなんです。

また、新規事業や新サービスのアイデアを、社員から出るものに頼らず経営陣も頭をひねるべきという考えから、役員とドラフトで選ばれた社員が新規事業を提案する「あした会議(※5)」もあります。

「あした会議」で生まれた新事業の一つである『Tech Kids CAMP』(CA Tech Kidsが運営)

「あした会議」で生まれた新事業の一つである『Tech Kids CAMP』(CA Tech Kidsが運営)

CAグループで培ったノウハウを活かした新事業、最近の例で言うとビジネスパーソン向けイベント事業の「SHAKE 100」や、子育て中のママ向け事業を展開する「ママ事業部」、小学生向けプログラミング教育事業の「CA Tech Kids」などは、この「あした会議」から生まれています。

わたしを含めて役員全員がこの合宿に集まるので、決議の場にもなっており、新規事業の立ち上げをスピーディーに行うことができます。これらの仕組みが普通に回るようになってからは、ベルトコンベアの上で次々と新規事業が生まれるようになった印象です。

失敗も資産と見なして行われる「チームビルド」の妙

―― とてもシンプルで分かりやすい仕組みですが、一方、事業開発・サービス開発を行う際のプロジェクト編成はどのように行われるのでしょう?

いくつかパターンはあるのですが、基本的にはプロジェクト責任者と技術責任者、デザイン責任者の3人でチームを形成し、彼らがプロジェクトの規模に応じてメンバーを集める、という形が多いですね。

すでにほかのプロジェクトにかかわっているメンバーを召集したい場合の調整は、人事が行います。

―― 撤退したサービスに携わっていた人たちはどうなるのでしょう?
(次ページへ続く)

◆CAグループの新事業創出を支える制度解説【1】

※1 CAJJプログラム
各事業を粗利益や営業利益の額によってJ1からJ5までに分類。それぞれの事業は2年以内の黒字化を目指し、四半期ごとに規準を満たせば昇格、満たさなければ降格となる。期限内に黒字化できなければ撤退対象になるなど、明確なルールが定められている。
※2 詰め切りセンター試験
有望さが感じられるものの、事業化するまでにはまだ「詰め切る」べき課題が残っているアイデアやプランを、チームごとに提案・解決していく合宿。センター試験問題のように詰め切るべきアイデアが出題されるため、この名称となった。提案されたプランは、事業化にあたっての実現性の高さで点数化され、最も多くの点数を獲得したチームが優勝となる。この場で致命的な課題を解決し、事業化されたサービスも多い。
※3 ジギョつく
社員参加型の新規事業プランコンテスト。一年に一度開催され、最近では毎回300~400を超えるプランが集まる。優れたアイデアを出した社員には、入社年次や現在のポジションに関係なく、子会社の社長や事業責任者となる道が拓かれる。
※4 モックプランコンテスト
スマートフォン向けのサービスアイデアをモックアップで競うコンテスト。モックアップを制作することが必須条件となっており、エンジニア個人か、エンジニアも含むチームでの応募を対象としている。
※5 あした会議
藤田氏をはじめとする8名の取締役と、役員のドラフトにより召集された社員が集まり、新規事業や組織課題の解決案などを提案する合宿。役員がリーダーとなってチームを作り、チームごとの提案・対決となる。

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