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レベルファイブ日野晃博氏が語る、『妖怪ウォッチ』を生んだ数々のセッション~『CEDEC2015』レポ

タグ : CEDEC, ゲーム開発, レベルファイブ, 妖怪ウォッチ, 日野晃博 公開

 

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2014年よりゲームソフトやアニメ、漫画、玩具、映画と軒並みブレイク。いまや社会現象とも呼べる売り上げを記録している『妖怪ウォッチ』。生み出したのは、『レイトン教授』、『イナズマイレブン』、『ダンボール戦機』と、立て続けにヒットを飛ばし、一躍トップゲームメーカーの仲間入りを果たした株式会社レベルファイブだ。

続々と新商品がリリースされる人気商品。配布店舗では5時間待ちになったケースも。

続々と新商品がリリースされる人気タイトルに。配布店舗では5時間待ちになったケースも

これまでもゲームの枠にとどまらず、クロスメディアで人気を獲得してきた同社だが、特に『妖怪ウォッチ』の爆発的なヒットの鍵は、ゲーム内でも登場し、リアル玩具としても発売された「妖怪メダル」と呼ばれるアイテムにあったという。

この「妖怪メダル」は、3DSソフトやアーケード機、玩具など、各コンテンツで共通して使うことのできるアイテム。それ自体も販売店舗やネットショップでも完売が相次ぐ人気商品だが、これを手に入れることで、3DSソフトでもレアな妖怪のガシャが引けたり、本やCDの付録として購買意欲を高めたりと、コンテンツ間をまたいで『妖怪ウォッチ』シリーズ全体を盛り上げる要素となっている。

この「妖怪メダル」が生まれたのは、決してとっさの思い付きなどではなく、レベルファイブ、および社長の日野晃博氏がこれまで経験してきた、クリエイターたちとのセッションによる賜物だという。

そんな『妖怪ウォッチ』を生み出すまでの過程を語った、『CEDEC2015』での日野氏の基調講演をレポートする。

【1】アニメクリエイターとのセッション~アプローチの違いから衝突も

2007年のヒット作『レイトン教授と不思議な町』以降、さまざまな業種とのクロスメディアに挑戦してきた日野氏。まずはクロスメディアの王道ともいうべきアニメ業界とのセッションについて語った。

『レイトン教授』シリーズでは、ニンテンドーDSの小さな画面内に映画レベルのアニメーションを挿入したいというコンセプトに対し、アニメ制作会社もそれに本気で応じた。結果、作品として高い完成度が得られ、大きなインパクトを残すことができた。

これを経て「ゲームとアニメの融合」に自信を持ち、本格的なクロスメディアに乗り出していった。

次に別の制作会社と手掛けた『イナズマイレブン』のTVアニメでは、ゲーム制作者側とアニメ制作者側で一緒に作品を制作する事にこだわり、シナリオや映像制作などの行程にも徹底的にかかわったという。

その中で、アニメ制作サイドと少なからず衝突もあったそうだ。

「衝突の大きな原因は、ゲーム製作者とアニメ制作者とのクリエイティブの違いです。ゲームではとにかく派手に、自由な発想で斬新なアイデアを作品に入れ込むことを目指しますが、アニメではよりやキャラクター設定や世界観の設定が重視されるので、キャラクターの行動原理を深く追求します。そうした発想の違いからハードな会議も多かったですね(笑)」

作品の作り方の違いをはじめ、一筋縄ではいかない制作が続いた『イナズマイレブン』だったが、クリエイティブにこだわりを持つ者同士のぶつかり合いはレベルファイブに大きな経験値を与えることになる。

「お互い違うポリシーがあったとしても、一緒にものを作っていくには、話し合いを密にして、“同志になる”ことが何よりも先決なんです」

【2】漫画家・編集部とのセッション~漫画家は「先生」ではなく「仲間」

アニメに続いて漫画作品でも、制作工程に深く介入した日野氏。批判ではないが、これまで各メディアのクリエイターと対等に付き合ってきたため、「先生」と呼ばれて敬われる傾向にある漫画家に違和感があり、「モノづくりの仲間」として対等な立場で接してきたという。

「特に漫画の世界にいえることですが、『漫画は漫画家に一任』というスタンスが強い。もちろん漫画作品として面白くするためにオリジナリティーも重視しますが、ほかのメディア連携のバランスも大事だと思っています。」

『妖怪ウォッチ』に関しては、いまだに意見がぶつかることもあるが、結果として作品の持つ魅力を引き出すことに成功し、ヒットが続いている。

【3】玩具メーカーとのセッション~アイテム具現化で世界観を拡張

子ども向けのコンテンツにとって、玩具業界とのセッションは最重要項目の一つ。

タカラトミーと作った『イナズマイレブン』のカードゲームなどに関しては、サッカーを題材にしたため、「人間をベースにしたキャラクタ―の商品化の制約」という課題が残った反面、売れる玩具作りのノウハウも得られたという。

その経験が活きたのが、『ダンボール戦機』だ。作品中のスケールと同じ、1/1サイズのプラモデルをバンダイより発売。ゲームにプラモデルを同梱するなどの珍しい販売形態がヒットに繋がり、プラモデルの歴史の中でも記録的な売り上げを残した。

「ゲームに出てくるアイテムと同じものを現実で再現することで、作品の世界にリアリズムが生まれる。ただの関連グッズにとどまらず、世界観を拡張するアイテムとして玩具として出すことで作品に魅力を与える大きな要素になると考えます」

【4】芸能界・音楽業界とのセッション~非ゲーマー層を巻き込む導火線

芸能界とのセッションは、『レイトン教授』シリーズの声優に有名俳優を起用したことから始まった。

電車内などで音声をオフにして遊ぶプレイヤーも多い中、結果が予測できないままでの挑戦だったという。

「『レイトン教授』シリーズは『脳トレ』の次の作品になるように、普段ゲームをやらない人たちが遊ぶゲームを念頭に制作を始めました。そうした人たちが“カジュアルに、面白そう”と思うようなキャッチーな引っ掛かりを押し出すことにしたのです」

『レイトン教授』シリーズでは、俳優の顔写真を用い、パッケージ裏を女性誌の記事のようにデザインした。

ゲームパッケージらしからぬそのデザインは、一般の人の目を引き、国内外で大きなヒットを記録。この手法が有効だったため、その後も同社のタイトルに取り入れられるようになった。

作中音楽については、タイトプロとエイベックスと制作を進めた。ここでも日野氏は制作段階で深く介入。既成の楽曲とのタイアップはキッパリと断ったという。

「たとえ松任谷由実さんが相手であっても、『この作品のために楽曲を』と依頼をして、イチから作っていただきました。2社からは最初『何言ってんの』と思われていたかもしれませんが、今ではよく理解してくれていて、一緒に新レーベルを設立することに。最終的には、なんと念願の紅白歌合戦にも行くことができました(笑)」

【5】映画業界とのセッション~公開タイミングが肝

映画『レイトン教授と永遠の歌姫』以降、数々の作品をともに手掛けてきた東宝とは、回を重ねるごとに強い信頼関係を築いていった。

映画「 妖怪ウォッチ」誕生の秘密だニャン!』の大ヒットは、その信頼関係の賜物だったと日野氏は語る。

「当時、『妖怪ウォッチ』はクロスメディア展開が成熟する前でジワジワと売れ始めていた段階でした。東宝さんは、その時点で『これは “来る”から、今から準備して来年には映画を公開できるようにしましょう』と言ってくれたんです。これまで培った我々のコンテンツへの信頼をもとに決断してくれたのだと思います」

結果、人気のピーク時に映画を公開することができ、記録的なヒットが生まれた。このことで、作品発表のタイミングや、それに際する仕掛けがいかに重要かが学べたという。

【6】広告代理店とのセッション~専門家の知恵には耳を傾ける

「僕は広告代理店に対して、『我々をサポートしてくれる存在』、『思い通りに動いてくれる』という、すごく穿った見方をしていました。しかし、一緒に仕事をして認識が大きく変わりました」

『レイトン教授』のパブリッシングに際しては、広告を博報堂に一任。クロスメディアの戦略に関しては電通に協力を仰いだ。そこでも深く議論を重ねるうちに、宣伝のノウハウを多く吸収した。

「一緒になってものを考えてくれて、さまざまなことを教えてもらえました。プロ意識を持って常に宣伝のことを考えている人のスキルを活かすのは面白かった。そこで感じたのは、『思い通りに動かす』ようなディレクションをすると、そのクリエイティブが活かされなくなってしまうということです」

夢は「ディズニーに匹敵するクリエイター日本代表の結成」

ゲーム最新作『妖怪ウォッチバスターズ 赤猫団/白犬隊』も好評発売中。2016年夏には『妖怪ウォッチ3』も発売を控えている

ゲーム最新作『妖怪ウォッチバスターズ 赤猫団/白犬隊』も好評発売中。2016年夏には『妖怪ウォッチ3』も発売を控えている

こうして経験してきた数々の濃密なセッションで得たものを結集して、『妖怪ウォッチ』の大ヒットが生まれた。

それまでのコンテンツが触れてこなかった部分に挑戦し、各分野のクリエイターの発想を活かしながら、思想をしっかりと共有する「コンテンツ全体を通した作品プロデュース」を、今後も広げていきたいと語る。

「よく『この大ヒットはどうやって生まれたんですか?』と聞かれますが、その鍵となった『妖怪メダル』を含め、これは決して突然変異的なヒットなどではなく、こうやって重ねてきた経験値の集成なんです。ゲームづくり自体はもちろん、それ以外のクリエイターとやってきたことが本当に楽しかった。これからもどんどんやっていきたいと思います」

最後に、いつか「クリエイター日本代表」を組織し、ディズニーなどの世界のトップチームと戦ってみたい、という野望を語った日野氏。その活躍の場は、どこまで広がるのだろうか。

取材・文・撮影/高木マーカス孝志(東京ピストル




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