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「絶対無理!」からはじまったCerevoの『DOMINATOR MAXI(仮)』開発~モノの完成度を高める良い意味での“割り切り”とは?

タグ : CEREVO, DOMINATOR MAXI(仮), 岩佐琢磨 公開

 
(写真左から)狐塚聖治氏、岩佐琢磨氏、石井剛太氏

(写真左から)狐塚聖治氏、岩佐琢磨氏、石井剛太氏

家電スタートアップのCerevoがアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』に登場する武器を精巧に再現したスマート玩具、『DOMINATOR MAXI(仮)』が世界のアニメファンなどを中心に大きな話題を呼んでいる。

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2015年7月18日にCerevoが発表した『DOMINATOR MAXI(仮)

PSYCHO-PASS サイコパス』は2012年10月に第1期が放送された、近未来の日本を描いたアニメ。このほどCerevoが手掛けた『DOMINATOR MAXI(仮)』は、作中の執行官と監視官が使用する携帯型心理診断鎮圧執行システム『ドミネーター』を再現したものだ。

『DOMINATOR MAXI(仮)』は作中同様、銃が自動で変形する機構を備えているだけでなく、音声再生や本体を向けた相手の顔を認証して“犯罪係数”を数値化、連動したスマホ上に表示することもできる。『PSYCHO-PASS サイコパス』の世界観を忠実に表現した、ファン垂涎のIoTデバイスとして開発された。

Jrock Radioのドミネーター動画は、3日間で約400万再生を記録。Cerevo代表取締役の岩佐琢磨氏も「ここまで反響があるとは思わなかった」というほど、日本のみならず世界中のメディアを賑わせている。

『DOMINATOR MAXI(仮)』はなぜ、そしてどのようにしてアニメの世界を飛び出し、現実のものとなったのか。その開発秘話を聞くため、東京・秋葉原のDMM.make AKIBAにCerevo開発陣を訪ねた。

『タケコプター』を作るつもりはなかった

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Cerevoが『ドミネーター』開発に取り組んだ理由とは

岩佐氏によれば、『ドミネーター』開発の発端は、DMM.comからの依頼だった。

「DMM.comは現在、各コンテンツとIoTをつなぐという動きをしていて、その一環として一緒に何かやろうと声をかけてもらいました。私が元々アニメのコンテンツに興味があったということもあり、多くのアニメを対象にディスカッションを重ねる中で、『ドミネーター』の話題が出たんです」

アニメに登場したモノを再現する。ユニークな取り組みだが、開発に取り組む上で、岩佐氏は1つのこだわりを持っていた。それは、「再現度」の低いモノでは意味がないということだ。

例えば、ドラえもんの『タケコプター』。機能を無視すれば形状が似たモノは作れるだろうが、実際に空を飛ぶことを優先して考えると、かけ離れたカタチにならざるをえない。数ある候補の中からこうした観点で選び、白羽の矢が立ったのが『ドミネーター』だった。

「『PSYCHO-PASS サイコパス』の舞台は近未来で少し現実的。そして、『ドミネーター』はインターネットとつながって動くモノ。この点が、Cerevoが方針として掲げている『少し先の未来』を作るという文脈とマッチしていると判断し、開発に踏み切りました」(岩佐氏)

アニメの再現ならではの難しさをどう克服するか

最初に企画書を作ったのが2015年2月。実際に開発がスタートしたのは4月で、約3カ月ほどという短期間で、発表までこぎつけている。

開発を担当したデザインエンジニアの石井剛太氏、狐塚聖治氏は、「アニメに登場するモノを作ってほしい」と依頼された当初、どう感じたのか。

「最初の印象は無理でしょという感じです(笑)。開発の話を聞いたのが4月で、発表が7月ということがすでに決まっていた。それまでに動くモノを作るなんて間に合うのか?ということを考えましたね」(石井氏)

「僕はこれがCerevoに入社して初めてのプロジェクトでした。ですので、『PSYCHO-PASS サイコパス』のアニメを全て見て分析することが初仕事だったわけですが、アニメを見ての感想は、厳しいだろうというものでした」(狐塚氏)

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2015年3月に入社して初仕事は『PSYCHO-PASS サイコパス』を見ることだった

アニメを基にモノを作るという開発には、やはり特別な難しさがあったという。

アニメの中で描かれる『ドミネーター』の変形シーンは、そもそも立体化を意図して考えられていない。『PSYCHO-PASS サイコパス』制作委員会から届いた変形シーンの3DデータをPC上で再生してみると、現実的には再現不可能な動きが存在していた。

「『ドミネーター』の横にはエラのようなパーツが片側に3つずつ付いているんですが、変形時、そのエラのようなパーツは銃から離れて、一度空中で数センチ移動した後、角度を変えながら回って戻ってくる。往年のロボットアニメではよくあるシーンなワケですが、これを再現しようとすると、反重力物質でもなければ無理でしょう(笑)」(岩佐氏)

『ドミネーター』の変形シーンをそっくりそのまま再現することは不可能と判断し、アニメの動きと離れすぎないギリギリのラインでデフォルメするという方針が固まった。

実際に開発するにあたっては、形状のみを早期に作成するラピッドプロトタイピングが非常に有効だったという。

「普段の家電開発でも1~2回程度なのですが、『DOMINATOR MAXI(仮)』の開発ではプロトタイプを3度作りました。内部のギアやスムーズな動き方など、今までにない取り組みも詰まっていましたので。3Dプリンタを使って、部品も少しずつ変更しながら、作っては動きを見るという工程を繰り返しましたね」(石井氏)

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『DOMINATOR MAXI(仮)』初期段階のプロトタイプ

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『DOMINATOR MAXI(仮)』の試作品。表面にザラザラ感があり、削りだしの必要性を痛感したという。ギアも全て3Dプリンタでの開発を試みなかったが全く動かなかったそうだ

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石井氏と狐塚氏が担当したのは、『DOMINATOR MAXI(仮)』内部の構造設計。上部を狐塚氏、下部を石井氏が担当した

2人の肩書きにあるデザインエンジニアという職種は、モノの外観のデザインだけでは完結しない。日ごろの家電製品の開発においても、内部で基板と部品が当たらない構造を設計したり、電波を使うのであれば、遮蔽しない仕組みを考えたりするのも、彼らの仕事だ。

今回のケースにおいては、アニメで描かれるのは当然、外側のみ。内部構造は完全に彼らの頭脳に委ねられている。

「開発にあたってフジテレビからCGデータを提供いただきましたが、そこには表面上の情報しかないわけです。現実世界で表現することを考えると、内部の仕組みが必要になる。ギアやモジュールをどこに載せるのか、外側のデータをガイドにしながら、イチから内部構造を考える必要がありました」(狐塚氏)

変形し、発光するだけではなく、スマホと連動し、音声も出力される製品。各技術者と連携しながら、回路設計などの内部構造を作り上げていった。

開発の最終局面、発表会の1週間前には冷や汗を流す場面もあった。

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かなりの短期間で進められた『ドミネーター』の開発。発表会直前には思わぬ落とし穴もあった

「発表直前になって、変形時の回転がアニメと逆回転していることに気づき、『これはマズい』と。歯車の数とサイズを調整して、新たに1枚ギアを挟む。

そうすることで何とか逆回転を実現することができました。変形のスピードを考慮した計算からモデリングまで、全てをひと晩で対応しなければいけない状況でしたが、何とか乗り越えることができました」(石井氏)

なぜ、“2段変形”に留めたのか

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割り切ることでモノの完成度を高めることが重要

こうしてアニメの世界観を徹底して再現することにこだわった『DOMINATOR MAXI(仮)』の開発だが、原作の熱心なファンであれば、1つの疑問が残るかもしれない。『ドミネーター』がパラライザー、エリミネーター、デコンポーザーの3段階変形であるのに対し、『DOMINATOR MAXI(仮)』ではパラライザー、エリミネーターの2段階変形構造のみに留まっているということだ。

この点については必要な「割り切り」だったと岩佐氏はいう。

「デコンポーザーに関しては、少なくとも現代においては人知の域を超えた変形をしていました。変形シーンを改めてコマ送りで見ていただくと分かるのですが、パーツが空中を浮遊し、その後、腕に巻き付く。これはさすがに再現不可能です。この形態も踏まえた開発にしなかったことは、良い意味での割り切りができたと思っています。デコンポーザー形態がないことへの指摘はあるかもしれませんが、再現できるギリギリの範囲で開発できたと思いますね」(岩佐氏)

デコンポーザーにこだわったとしても、現実的には「デコンポーザーっぽい何か」で終わってしまう。つまり、前述した『タケコプター』と同義になってしまうということだ。

Cerevoがスマート玩具開発で考える完成度基準は、次のようなものだ。

「劇中の完全再現を“100”だとすると、今回の『DOMINATOR MAXI(仮)』で、僕たちは“50”の再現ができたと思っています。世の中の多くの人にはおそらく、“30”ほどの再現性があれば『これはホンモノだ』といって満足してもらえます。デコンポーザーの場合はどんなに努力したとしても“30”の域に達しない。『こんなのデコンポーザーじゃない』という声が届いていたはずです」(岩佐氏)

誰が見てもホンモノだと感じる“30”という基準。この値に達しないと感じたものは、いさぎよく割り切って捨てる。そしてその分、実際に作る部分に関してはとことんこだわる。この考え方の下に開発を進めたからこそ、『DOMINATOR MAXI(仮)』は無事、この世に生み出されたのだ。

世界に誇る日本の玩具が、また新たな領域に

その反響は世界レベル。海外メディアからの問い合わせも相当数届いているという

今回の『DOMINATOR MAXI(仮)』開発は、家電メーカーとしてのCerevoが新たな一歩を踏み出したことを意味している。

『DOMINATOR MAXI(仮)』の発表当日、Twitterの人気ワードには『ドミネーター』だけではなく、Cerevoの名前も上がっていた。日本が誇るオーバーテクノロジーな玩具と家電のスタートアップメーカーの名が、世界にとどろいたのだ。

「今回の発表は次のビジネスの可能性を大きく広げてくれたと感じています。『DOMINATOR MAXI(仮)』の動画を見たハリウッドから声が掛かる。そんなことが起こると良いなって期待しています」(岩佐氏)

日本の玩具は以前から、世界でも類を見ないほど高い完成度を誇ってきたが、Cerevoのようなスタートアップが加わることで、また新たな領域に突入したといえるかもしれない。

そんな期待感とともに、まずは『DOMINATOR MAXI(仮)』を手に取れる日を楽しみにしてほしい。

『DOMINATOR MAXI(仮)』に関する先行情報はこちらから

取材・文/川野優希(編集部) 撮影/竹井俊晴




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