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グラフィック初心者からトップランナーへ~『アイマス』チーフプログラマ・前澤圭一氏の10年史【連載:Coding POP!】

タグ : View追従光源, アイドルマスター, グラフィックプログラミング, セルフシャドウ, 前澤圭一 公開

 
Coding POP!は、映画や音楽、アニメ、ゲームなどのポップカルチャーにおいて、革新的なコンテンツのテクノロジーを支えるエンジニアの仕事術を探っていく新連載。第1回は、大人気コンテンツ『アイドルマスター』シリーズの特徴的なグラフィックを作り上げたチーフプログラマにフォーカス。10年間に渡り人気を伸ばし続ける作品を支えた知られざる努力とは?

芸能プロダクションの新人プロデューサーとして、アイドルの卵をトップアイドルへと導く「アイドルプロデュースゲーム」という他に類のないジャンルで人気を獲得した『アイドルマスター』シリーズが、今年で10周年を迎える。

2005年にアーケードゲームの稼働がスタート。アイドルのプロデュースや衣装のコーディネートなどのゲームシステムやアイドルたちが歌い踊るステージシーンはもとより、セルアニメ調のグラフィックを3DCGに落としこむ「トゥーンシェーディング」の高い完成度から話題を呼び、家庭用ソフトやテレビアニメも次々とブレイクした。

今や幅広いクロスメディア展開をする一大エンタメコンテンツに成長した『アイドルマスター』シリーズ

さらに、2011年サービス開始のモバイルコンテンツ『アイドルマスター シンデレラガールズ』は登録会員数が500万人を突破する大ヒット。

2014年夏に東名阪の3都市で開催されたライブツアー『THE IDOLM@STER 9th ANNIVERSARY WE ARE M@STERPIECE!!』は、ライブビューイングの入場者を合わせて約6万人が来場し大盛況を博した。

ゲームの枠を超えた一大エンターテインメントコンテンツ『アイドルマスター』シリーズの開発にまつわるエピソードやアイドルたちの魅力の源泉について、チーフプログラマの前澤圭一氏に聞いた。

前澤氏は、2007年発売のXbox 360版『アイドルマスター』よりハイエンド機タイトルのグラフィックプログラミングを足かけ10年に渡って手掛けている。

作品内で影がキャラクター自身に落ちる「セルフシャドウ」や、光源が常にカメラ視点について回る「View追従光源」などの技法は、前澤氏が導入したものだ。

今でこそグラフィックエンジニアのトップランナーとして活躍する前澤氏だが、驚くことにアイドルマスターに関わるまでは本格的なグラフィックス業務は未経験だったという。

そんな前澤氏が語ってくれた、ゲーム開発を通した自身の成長物語には、エンジニアが自らのスキルを磨き、これからのゲーム開発において生き残っていくためのヒントが詰まっていた。

「門外漢」から「スペシャリスト」へ

今ではバンダイナムコスタジオを代表するタイトルの一つとなった『アイドルマスター』

まずは、前澤氏の経歴を追ってみよう。

株式会社ナムコ(当時)に入社したのは2003年。学生時代にCGIやJavaを使ったWeb系のプログラミングをしていたこともあり、入社当時は、ネットワーク関連の業務に携わっていたという。

「今なら、そのままソーシャルゲームの部署に配属されていそうな経歴ですが、当時はソーシャルゲームというジャンルも確立していなかったので……。ちょうど外部委託先で開発されていたアーケード版『アイドルマスター』を、当時としては最新鋭のゲーム機、Xbox 360でリメイクするという話があり、強く興味をそそられて、自ら手を上げ参加することにしました」

しかし、前澤氏が「当時は社内でもここまでのヒットになるとは思われていなかった」と語るように、初期のエンジニアチームのスタッフは、家庭用ゲーム開発経験の浅いメンバーがほとんど。開発過程は茨の道だった。

「1年半ほどの開発期間は苦労の連続で、その過程はとても順調とは言えませんでした。新世代ハードで可能になったグラフィック技術を盛り込むだけでなく、当然ながら、アーケードの膨大な仕様をブラッシュアップして再現する必要もあったわけです」

グラフィック担当だった前澤氏も、手が空けば担当外のインターフェイス開発などを手伝っていたという。

「当時は少人数でしたし、担当外の仕事もこなさないとプロジェクトが回りませんでした。ほんと、よく完成しましたよね(笑)。完成したモノを見てようやく、『グラフィックの初心者だった自分でも、これだけのことができたんだ』という実感を得ることができました。日々の業務をこなすうちに知らず知らずスキルアップしていたんでしょうね」

とはいえ、日々ハードな業務をこなしながら、目標とする技術を磨くのは容易ではないはず。前澤氏の成長の陰には、日ごとの地道な努力があった。

「勤務時間はタスクをこなしていると概ね潰れてしまいます。なので、勉強するのは帰ってから。寝るまでの間に、本を読んだり、ネットで情報を調べたりしていました。続けるコツは、勉強のための勉強はしない。作りたいモノのために勉強すること。『アイドルマスター』という作品を十分納得のいく形で世に出すことが、当時の原動力だったと記憶しています」

伝わりにくいアイデアは、とにかく「作って見せる」

日々の努力の積み重ねにより、でき上がった1作目だが、完成後に見えてきた課題も多くあった。

『アイドルマスター2』でのグラフィック面での大きな進化は、改善点を一つ一つクリアしていくことで実現されていったという。

「でき得る限り最善を尽くした1作目でしたが、髪のハイライトや照り返し、グラデーションなど、盛り込めなかった表現技術やアイデアがたくさん残っていたことも事実です。それらをちゃんと形にしたいという気持ちが『2』で結実したわけです」

こうした新しい技術やアイデアを盛り込むために、ある開発ポリシーをチームで共有していた。

「 『アイマス』の製作現場では、エンジニア自ら積極的に発案し、実際にプロトタイプを作って見せることがよくありました。説明だけでは伝わりにくいアイデアも、実際にモノを見せてしまえば一目瞭然ですから」

加えて、エンジニアチームのみならず、ゲームデザイナーやサウンド関連など他チームもアイデアを積極的にぶつけ合うことで、1作目を超えるクオリティを目指していったという。

チーム全体で臆せずに新しい技術に挑戦していく熱意こそが、10年にわたって人気を伸ばし続ける作品づくりの秘訣なのかもしれない。

ゲーム業界で活躍できるのは器用貧乏よりスペシャリスト

未経験からゲームグラフィック分野のトップランナーに上り詰めた前澤氏のモノづくり論とは?

現在もハイエンド機ゲーム業界の最前線でグラフィック開発に携わっている前澤氏に、昨今のゲーム開発事情について聞いてみた。

「まず挙げられるのが、良くも悪くも、必要なスキルが多様化してきていることです。スピード優先で作られていくソーシャルゲームの台頭によって、昔ながらのじっくり作りこむハイエンド機のゲーム開発が、相対的に限られてきているように感じています。それに伴ってか、高度なグラフィック技術を駆使して活躍する場も以前に比べると限られてきており、若いグラフィックエンジニアがあまり育っていないように思いますね」

では、若手エンジニアが日本のハイエンド機ゲーム業界で活躍するためにはどうすればいいのだろうか?  “器用貧乏”では生き残ることが難しいと、前澤氏は語る。

「人手が足りない状況では、広範な業務をこなす能力も必要ですが、 埋没し、鳴かず飛ばずで終わってしまう可能性もある。なので、まずはひとつ、得意分野を見つけるのがいいでしょう。スペシャルワンの技術を持つことは自信にもつながるし、存在を知ってもらうきっかけにもなる。そういった意味で、ハイエンド機ゲームの開発はうってつけの環境といえます。長い時間をかける分、得意分野を磨きやすい。私自身、当初は初心者同然だったグラフィックが、今では立派な得意分野ですから」

最後に、ゲーム開発においてどこにモチベーションを感じるか聞いてみたところ、スペシャリストとしての矜持が伺える返答が返ってきた。

「SNSが普及した今、ユーザーの反応はインターネット経由でダイレクトに返ってきます。いいことが書かれていれば『よし!』と思いますし、悪いことが書かれていれば『ナニクソ!』と奮起できます。ゲームをプレイしてくれている人の意見や感想はどれもが活力になるし、やりがいにもつながるんです。これこそ、ゲーム開発の醍醐味ですよね」

着実にファンを増やしていった『アイドルマスター』の裏には、共に歩みを揃えるかのように、グラフィックエンジニアのスペシャリストとして成長した前澤氏の存在があった。活躍の場が減少しつつあるという日本のハイエンド機ゲーム業界だが、前澤氏のような存在は若いエンジニアにとっても希望となることだろう。

取材/長瀬光弘 文・撮影/高木マーカス孝志(ともに東京ピストル




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