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注目集まるロボティクス分野で異彩を放つ大和ハウス工業は、なぜロボット事業に参入したのか?

タグ : HAL, minelet爽, moogle, パロ, ロボット, ロボット事業, ロボティクス, 大和ハウス工業 公開

 

先日、米ラスベガスで開催されたCES2014で、ウエアラブルやデジタルヘルスと並び、大きく注目を集めた分野がある。ロボティクス分野である。特に掃除ロボットや見守りロボットなど、人との共生を前提としたロボットも多く出展されていた。

日本でもロボットとの共生を目指し、2008年から精力的に学会やイベントなどに出展している企業がある。その頻度は、2013年は月に最低1回、多い月だと10回に上る。

大和ハウス工業のロボット事業ホームページ

脚力・歩行機能をサポートする自立動作支援ロボット『ロボットスーツHAL®福祉用』に、精神的な安らぎやセラピー効果を目的にしたロボット『メンタルコミットロボット パロ』、自動排泄処理ロボット『minelet爽(マインレットさわやか)』それに、床下などの狭小空間を点検するロボット『moogle(モーグル)』。

これは全部、住宅メーカーである大和ハウス工業が販売しているロボットだ。

なぜ、住宅メーカーがロボットを販売しているのか。そして、今後、ロボット事業をどう育てていこうとしているのか。2つの疑問を、同社の理事で、ヒューマン・ケア事業推進部長兼ロボット事業推進室長の田中一正氏に聞いた。

高齢者と身近な事業部門に異動したことで気付いたニーズ

ヒューマン・ケア事業推進部長兼ロボット事業推進室長の田中一正理事

現在、大和ハウス工業は4種類のロボットを販売している。うち3つは、医療・福祉分野に向けたもので、社外の専門家が中心となって開発をしたものだ。

HAL®』といえば、筑波大学大学院の山海嘉之教授の名前が思い浮かぶ人もいるだろう。『パロ』の開発者は産業技術総合研究所の柴田崇徳主任研究員だ。『minelet爽』は、仙台にある株式会社エヌウィックが開発・製造するものだ。これらの3つのロボットについては、現在、大和ハウス工業が、販売を代行するような形になっている。

大和ハウス工業がロボット事業を始めるきっかけは、当時産学連携分野を担当していた田中氏が『HAL®』と出会った時にさかのぼる。

「増えていく高齢者の住まい方をずっと考えていく中で、さまざまな課題が出ていたのですが、『HAL®』を初めて見た時、こういう課題解決の方法もあると感じました。そして、これを何とか世の中に普及させられないかと考えました」

その田中氏の発想が、ロボット事業推進室の設立につながった。

もともとは建築営業の仕事をしていた田中氏

大学では土木工学を専攻する一方、入社以来一貫して建築営業畑を歩いていた田中氏は、シルバーエイジ研究所に1989年の設立後に異動する。

おりしも、厚生省(現・厚生労働省)が「高齢者保健福祉推進10カ年戦略(通称・ゴールドプラン)」を制定し、建築業界での老人保健施設(老健施設)への注目が高まった時期だった。

当時は、自治体にもゼネコンにも、老健施設に関する知識が十分になかった。そこで、同社は「しっかり勉強してこの分野に特化すれば、シェア日本一になれるのではないか」と考えた。

その読みは的中し、いつの間にか「この手の話は大和ハウスのシルバーエイジ研究所に聞けばいい」という風潮ができあがっていた。それと同時に、田中氏の中では、老人や障がいを持つ人など、弱者を救う技術を広めていくことを強く意識するようになった。

『HAL®』との出会いはその後だ。現在販売しているロボットのバリエーションにも、その考え方が色濃く反映されている。

経営陣を動かした不可能を可能にする『HAL®』のインパクト

田中氏が事業立ち上げを認めてもらうきっかけとなった『HAL®』(写真:Prof. Sankai University of Tsukuba/CYBERDYNE Inc.)

しかし、ロボットといえば、ソニーの『AIBO』やホンダの『ASIMO』など、家電や自動車メーカーが取り組む印象が強い。住宅メーカーがロボット事業に取り組むことについて、社内に反対者はいなかったのだろうか。

「いなかったんですね、それが」

田中氏はそう振り返る。『HAL®』に感銘を受けた田中氏は、同社の樋口武男代表取締役会長兼CEOや、現在代表取締役副社長兼CFOを務める小川哲司氏に、『HAL®』を紹介するDVDを見てもらった。

それまで動かなかった人の足が、『HAL®』の装着によって動く。その映像が与えるインパクトは強かった。経営陣からはすぐにゴーサインが出た。

現在のロボット事業推進室の前身である“準備室”が設置されたのは2008年。それから5年が過ぎた今、『HAL®』は約170施設に導入され、パロも3000体以上が使われているが、爆発的に売れているとは言えない。

「その点も、将来的に大きくなる事業だと経営陣は理解をしてくれています。今は、市場を作っていく段階です」

リスクを恐れないベンチャー精神がロボット事業を推進する

いわゆる「一人事業部」として立ち上げたロボット事業だが、今後はもっと拡大していく予定だ

一度は民生用ロボットを手掛けながらも、撤退する企業が多い中、なぜ同社がリスクを背負ってまで市場拡大を担うのか。

「誰かがやらないといけないですよね」と田中氏は言う。

大学や研究所には、研究の成果を事業化できる資金も営業力もない。そのままでは、成果は埋もれてしまう。新しい技術は世に出して初めて評価されることになる。

「誰かがリスクを背負って世の中に出していかないと、普及はもちろん、進化もしません。大企業は『ロボットが暴走したらどうするのか』などと考えて、身動きが取れなくなってしまうのかもしれませんが、われわれは創業者(チャレンジ)精神が脈々とつながっている企業ですから、誰かがやらないといけないのなら、最初にやろうと考えたのです」

現在、ロボット事業推進室のメンバーは50名ほど。ほとんどが社内公募で集まった。英語に堪能な社員も所属するのは、今後の世界展開を見据えてのことである。日本から高齢者の課題を解決したいし、できると思っている人間ばかりだという。

こうしたロボットは普及価格帯での製品製造が求められることから、今後は商品開発にも参画できる体制を整備する必要があり、ロボット事業推進室にもさまざまな専門分野を持つ技術者に加わってほしいという。

今後の同社のロボット事業の方向性は3つある。

1つは、高齢者や障がいを持つ人の自立を支援するもの。2つめは、家事のサポートなど女性や高齢者の社会進出を後押しするもの。そして3つめは、居住空間に健康管理や見守りを取り込むものだ。

スマートハウスと呼ばれる居住空間では、エネルギーの需給の様子が可視化され、集中管理が可能になるものが多いが、同社の目指すスマートハウスは、前述の機能に加え、居住者の健康状態までをも把握するものだ。

「どのロボットも、在宅で多くの方に使っていただくためにはまだまだ進化が必要です。いただいた評価をフィードバックしながら、世の中の人のためになるものを、出していきたいと考えています」

取材・文/片瀬京子 撮影/竹井俊晴




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