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米スタートアップも注目のDesign Sprint入門~プロダクトを「そもそも論」で改善する最新手法をエンジニアも学ぶべき理由

タグ : Blue Bottle Coffee, Design Sprint, 坪田朋, 大塚敏章, 新明智, 深津貴之, 鈴木健一, 馬田隆明 公開

 

Google Venturesでスタートアップ支援のために開発・実践され、日本では2014年の秋ごろからじわじわと認知度を高めてきた「Design Sprint」。

これは5日間という短期間で、デザイナーやエンジニア、カスタマーサポート、意思決定者が集まり、プロダクトのデザイン課題を解決する、というもの。アイデアソンのようなブレインストーミングと言ってしまえばイメージしやすいかもしれない。

日本にも出店したことで記憶に新しい『Blue Bottle Coffee』のUS版WebサイトがDesign Sprintを実践し、売り上げと滞在時間を約2倍にまで引き上げたという事例が発表されている通り、すでに実績も出始めている。

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『Blue Bottle Coffee』のUS版サイトでも「Design Sprint」が実践されたという

その時流を受け、2015年3月5日に「Design Sprint Night!」がDeNAで開催された。Design Sprintを日本国内でも普及させるべく行われた本イベントのテーマは、「先駆者たちから聞くDesign Sprint の実際」というもの。日本でもまだ体験者が少ないDesign Sprintだけに、会場には200人を超えるデザイナーとエンジニアが詰め掛けた。

当日はDesign Sprintの魅力や体験談を以下の6名が提唱した。

(写真左上から時計回り)
馬田隆明氏(Microsoft Ventures Evangelist)
鈴木健一氏(株式会社Standard CEO / Designer)
大塚敏章氏(株式会社サイバーエージェント UX デザイナー)
新明智氏(株式会社ココナラ 共同創業者 / 取締役 / UI Designer)
深津貴之氏(fladdict
坪田朋氏(株式会社ディー・エヌ・エー デザイン戦略室 室長 / UI Designer)

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以下では「Design Sprint」の説明と魅力、そしてエンジニアが取り組むべき理由を紹介しよう。

作り手を動かす力学を持つ、「Design Sprint」とは

まずDesign Sprintの概要について、「Design Sprint Night!」でトップバッターを飾った馬田氏のスライドを見ていただきたい。

http://www.slideshare.net/takaumada/design-sprint

今、アメリカを中心にデザインがもたらす価値が再定義されており、多くのベンチャーキャピタルがデザイナーを雇用していると馬田氏は語る。

「Google Venturesはデザインパートナーと呼ばれる専門部隊があり、300社以上の情報技術・バイオテクノロジー会社に出資してきたKPCB(クライナー・パーキンス・コーフィールド・アンド・バイヤーズ)にはロードアイランド・スクール・オブ・デザインの学長を務めたジョン・マエダ氏が加わり、投資先に対してデザインのコンサルティングを行っています。このように、海外ではデザインへの注目が高まっているのです」(馬田氏)

その背景には、質の高いプロダクトを構築するためにはプロセスを改善する必要があるためだと馬田氏は続ける。そして、Design Sprintが優れたプロダクトを生み出すことに起因する点について、2つの理由があると考察している。

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Design Sprintを活用することで、質の高いアウトプットが生まれると語る馬田氏

「1つはレナード・バーンスタイン(アメリカの指揮者)が提言した、『偉大なことを成し遂げるには、2つのことが必要だ。それは、計画と、あまり十分でない時間である』という言葉がある、と私は考えます。Design Sprintはタイムボックスを切って、次々とアイデアを生み出しては検証、意思決定を重ねるフレームワークです。締め切りがなければ動かない人を動かすことにつながりますし、制限の中でこそ、生み出されるクリエイティビリティを最大限発揮できる、と思いますね。

2つ目は集団の力です。一般的に、アプリケーションやサービスはエンジニアやデザイナーが集まって作るもの。一方で、集団は時に創造性を殺してしまう側面もあり、ブレストはアイデアを出すという点では効果的でないという研究発表があります。そこで、アイデアは個人で出しつつ、意思決定は集団で行うようにすることで、適切な時間の使い方ができるだけでなく、質の高いアウトプットが生まれるのでは、と考えています」(馬田氏)

例えば、締め切りを長期に設けてサービス改善を行うとする。スタートの時点で“悪いアイデア”が採用されてしまった場合、後戻りすることができない。

これはスタートアップには致命傷になりかねない問題だ。こうした状況を回避すべく、短期間で課題を抽出し、プロトタイプを作り、検証するDesign Sprintは非常に理に叶っているとのことだ。

Design Sprintの魅力と課題

米Google本社でDesign Sprintを体験した深津氏は、このフレームワークを活用する長所として、プロダクトにかかわるメンバー全員を巻き込むことで共通認識が生まれる点にあると語った。

「クライアントワークではプランナーやプロデューサーと打ち合わせをして終了、というケースがあります。また、社内でも同様に、努力を重ねて作ったプランを営業サイドや経営層に弾かれてしまうことがあります。Design Sprintで推奨されているのは、社長からアルバイトまで全員が参加することです。そのため、Design Sprintが終了した時点で共通認識が生まれます。また、ビジネス、マーケティング、ユーザーの声など多角的なアイデアを詰め込むことができる点が長所だと思っています」(深津氏)

短いスパンで関係者全員を巻き込みながら行うDesign Sprintには、チームビルディング、全方位からの俯瞰的な目線、意思決定の明確化など、大きな魅力があると深津氏は言う。デザイナーやエンジニアのみが参加し、意思決定者が不在の場合は、Design Sprintの魅力は半減してしまうと付け加えた。

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意思決定者が圧倒的な力を持つ組織には、Design Sprintは不向きだと話す深津氏

そして、Design Sprintを行うには、不向きな組織もあるとのことだ。

「正直、チームの中にスティーブ・ジョブズ氏や孫正義氏が居た場合、わざわざ開催する必要がないと思います。仮にDesign Sprintを行ったとしても意見が強すぎる方がいると、全員が同じアイデアに投票して終わり、ということにつながってしまいます。5日間無駄に使うよりも、そういった方に1日任せて、アイデアを採用した方がいいと考えます」(深津氏)

また、5日間スケジュールを空ける難易度の高さについても、深津氏は課題があると付け加える。「全員そろうのが3カ月後では意味がない」とのことだ。

意思決定者不在のままDesign Sprintを開催してしまっても意味がない。成果を挙げるために、割り切るといった発想を持つことが重要だ。

エンジニアもDesign Sprintに参加すべき理由

Design Sprintを行う上で、チームメンバー全員が参加する必要があるのは前途した通りだが、エンジニアは必須レベルで参加した方がいいとDeNAの坪田氏は提言する。

「Design Sprintに参加したエンジニアはとても良い印象を受けているようです。私が感じたエンジニアが参加すべき理由は大きく2つあります。一つはデザインの理由やサービスの背景を知ることができるコミュニケーションツールの役割を果たすこと。

2つ目にUIの設計プロセスを共有できる点です。デザイナー以外には伝わりにくいUI設計の、共通認識をエンジニアとシェアすることで、『考え方が変わった』、『今までコードを書くことが専門だったんだけど、動きを含めて意識するようになった』などの声が届いています」(坪田氏)

また、サイバーエージェントでDesign Sprintを実践した大塚氏も同様に、エンジニアの参加を推奨する。

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エンジニアが「Design Sprint」に取り組むべき理由を語る(左から)大塚氏、坪田氏

「UIのデザインやプロセスはエンジニアサイドから見た際、疑問を感じることも多いそうです。例えば、自分ならこういうUI設計の方がいいと思う、という発想ですね。そうした裏側のメッセージを、Design Sprintでは『作る前』に言うことができる。この点は特に良いと思いますね」(大塚氏)

一方で、体験者全員が「とにかく疲れた」というように、最大5日間で行われる「Design Sprint」は非常にハードな内容になっている。

ココナラの新明氏はDesign Sprintを体験した際、SNSを活用するだけでなく、スターバックスの店前や公園などを歩き回りながら、レビュアーを探し回ったという。そうして集めたユーザーの声を反映したサービスが近日中にローンチされるようで、「期待してほしい」と強く語っていた。

スダンダードの鈴木氏はDesign Sprintを行う際に、同じレベル感の人と進めた方がいいとアドバイスした。ある「中小企業向けの勤怠管理アプリ開発」に取り組んだ際の経験から、個人レベルでのサービスに対する前提認識に差が開いてしまっていると円滑な運営にならない可能性を危惧したからだ。

Design Sprintの手法は、だまだ日本で普及していない。開催ノウハウが不足しているため、取り組みたいと考えたとしても、参加者から理解を得ることすら難しいのが現状だろう。

しかし、自身が携わっているサービスについてやUIの設計意図、プロセスなどを知る機会となるDesign Sprintは、エンジニアにコードを書くだけでは知り得ない、デザインやサービス、ユーザーの声を知るチャンスになるのかもしれない。

もし機会があれば、あなたも現在のチームで体験してみてはどうだろう。

取材・文・撮影/川野優希(編集部)




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