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ドローンが店員に!?クロックスの「空中ストア」に見る、製品プロモーションとテクノロジーの未来【猿人×BIRDMAN】

タグ : BIRDMAN, norlin, クリエイティブ, クロックス, コバヤシタケル, ドローン, 猿人 公開

 

物流の新しい手法として、または撮影用の機材やアート作品として、さまざまな可能性を見せ始めているドローン(マルチコプター)。

その新たな活用法を示してくれそうな事例が、今年3月に生まれる。商業ビル内に設けた「空中ストア」にスニーカーを陳列し、ドローンを使って顧客の元へ届けるというプロモーションを、クロックス・ジャパンが実施するという。

会場となるのは東京・港区の東京ミッドタウン。敷地内のアトリウムに、高さ5×幅10×奥行6メートルの透明な巨大ディプレイを設け、そこに3月5日発売の新商品『norlin(ノーリン)』約80足を展示する計画だ。

『norlin』のウリである「驚異的な軽さ」を伝えるべく、訪れた顧客がストア内に設置されるiPadで好きなカラーを選ぶと、自動制御されたドローンがピックアップして運んで来てくれるという仕組みになるという。

「ドローンが店員になる」という世界初のコンセプトを構想し、実施へ向けてプロジェクトを進めてきたのは、クリエイティブ・エージェンシーの猿人(ENJIN)と、インタラクティブカンパニーBIRDMANだ。

プロモーション企画は猿人のクリエイティブ・ディレクター/コミュニケーションデザイナー・野村志郎氏が中心となって行い、ドローン開発など技術面での仕掛けはBIRDMANのテクニカルディレクター・コバヤシタケル氏率いるチームが手掛けている。

企画もドローン開発も、今のご時世ならば「どこかでやってそう」なものに思えるかもしれないが、スニーカーを運びながら安定飛行し、かつ建物内で近くに人がいる状態で安全に昇降する自動制御の仕組みづくりは超が付くほど難易度が高い開発だ。しかも、このキャンペーン用にドローンもコバヤシ氏らが開発し、実証実験を繰り返しているというから、技術面のハードルは相当高い。

その企画~実現へのプロセスを取材したところ、最新テクノロジーを各種クリエイティブに活かす際の肝が浮かび上がってきた。

「驚きの軽さの体験」をテクノロジーで演出

(写真左から)BIRDMANのコバヤシタケル氏と、猿人の野村志郎氏

―― スニーカーを空中にディスプレイして、それをドローンがピックアップしてくるという仕組みがキャンペーンの肝になると思いますが、最初に感じたのは「それって可能なんですか?」と(笑)。

野村 空中ストア企画の実現には「BIRDMANさんの力を借りるしかない」と思って相談に行ったところ、即答でした。「えぇ、できますよ」って(笑)。

コバヤシ 理屈としては「やれる」と直感しました。もちろん、ドローン、つまりマルチコプターがスニーカーを運びながら安定飛行できるか?であったり、安全性をどう担保するか?といった面はゼロから考えねばならなかったので、今も実証実験を繰り返しているところです。例えば、マルチコプターは自分が起こす気流でバランスを崩すような場合がありますからね。

野村 面白い企画であっても、リアルな空間でインタラクティブにお客さまとやりとりをする以上、万一のアクシデントは絶対に避けなければなりません。その点は、デジタルだけのキャンペーンにはない部分ですし、ドローンを使った企画としても挑戦的な部分かなと。

「空中ストア」企画の仕掛け人である野村氏

コバヤシ 最近はドローンの部品などのラインナップがかなり充実してきていて、プロペラや制御部分は用途さえ決めれば組み合わせるだけでも使えるものが出来上がります。ただそれを、こちらが意図したとおりに制御するための実証に手間と時間を掛けているんです。

―― ドローンをキャンペーンの表現手法として活用するというのは、最初から意図していたのでしょうか?

野村 いや、そういう風には考えなかったですね。技術はあくまでもソリューションの一つですから。

コバヤシ 今回のプロモーションの主役は『norlin』。だからドローンはあくまでも脇役です。

野村 ドローンの使い方ばかりに執着しないよう、けっこう気を付けて進めていますよね。

クライアントと「共犯関係」を作るのが最初の一歩

コバヤシ それでも、関係者同士で仕掛けを議論している最中は、本来アピールすべき『norlin』ではなくドローンの使い方に話が持っていかれる場面もありました。これはテクノロジーを駆使したキャンペーン企画の“あるある”で、都度、「プロモーションの目的は何だっけ?」と軌道修正するのが大事なんです。

野村 確かに、クライアント側も制作側も欲のようなものが出てきて、「もっとユニークな方へ」、「もっと面白そうな方へ」って目的がブレていくことがよくありますからね。たいていの場合、こういうプロジェクトはうまくいかない。

コバヤシ その点、今回は野村さんがうまく舵取りしてくれたので順調に進みました。

―― 野村さんはいわゆる“プロジェクトリーダー”として何を心掛けていますか?

野村 1つは、クライアント側で決定権のある方ときちんとコミュニケーションをとって、企画する側と開発する側との3者で共犯関係を作っていくことです。

多数の関係者がいる広告プロモーションの世界で、先鋭的な企画を成功させるための肝を話し合う2人

―― 「共犯関係」ですか。

野村 ええ、企画した本人が、企画に込めた思いなどをひたすら説明するしかない。特に今回のような「前例のない企画」の場合、一般的にクライアントは難色を示すんです。ですから、我々と一緒になって面白がってくれるよう、うまくストーリーを作ることも大事になります。

コバヤシ 広告やプロモーションを1つのストーリーとして構築して、最終的には商品なりサービスなりの最大のアピールにつながるっていうハッピーエンドへと導いていくのも、我々プロのクリエイターの腕の見せどころです。

野村 最近は、コミュニケーション自体がテクノロジー抜きでは語れなくなっています。だから、技術を「企画をジャンプさせる」手段として語り、クライアントを巻き込んでいくんです。クロックスさんにはこのプロセスに前のめりで参加してくださる方々が多かったので、僕ら企画側も非常にやりかやすかったです。

テクノロジーは「Amazing」を演出するための手段

―― コバヤシさんは今回もドローンの機構設計から手掛けるなど、かなりエンジニアに近いクリエイターですよね? 開発側として参加する上で心掛けていることはありますか?

「空中ストア」企画のために作られたドローン

コバヤシ 何らかの最新テクノロジーで広告やプロモーションをやってみよう、という発想では考えないようにしています。

野村 テクノロジーという「手段」から入らない、というのはけっこう大事かもしれません。手段から企画を作ろうとすると、技術的な限界やコストの面で、途中で頓挫してしまうケースもあります。

コバヤシ 大事なのは「最先端」よりも「Amazing」で。

野村 今回もそうですけど、あくまで『norlin』の軽さという驚きをどう表現するかというところから考えて、じゃあ搬送用の小型マルチコプターを作ってみたら「そんなに軽いんだ!」と伝えられるかもしれないよね、と落とし込みます。

―― 先ほども少し話が出ていたように、テクノロジーに精通する人ほど、「こんなこともやってみたい」となりがちだと思いますが、コバヤシさんはそうではない?

コバヤシ ええ。プログラミングスキルや技術的な知識はすべて、必要に迫られて身に付けてきたという感じです。僕は物事が「なぜこうなっているのか」という仕組みを探るのが大好きなので、毎回、ネットサーフィンしながら情報を調べていくうち夜が明けているような感じです。だからけっこうツラい(笑)。

―― テクノロジーは「Amazing」を生み出す手段でしかないから、「すでに持っている自分の技術知識を無理やり使おう」という考え方にはならないわけですね。

コバヤシ 僕がいつも持っているのは、「この仕掛けで子どもたちは驚いてくれるか」という基準で。シビアですよ、子どもは(笑)。最初に興味を持ってくれなかったらもうダメですし、飽きっぽいですから。子どもを惹きつけられるような手法、表現というのは、いつも心掛けていますね。

野村 今回もテストフライトを公園でやっていたら、通りかかった子どもたちが集まってきましたね。

コバヤシ そういう意味で、企画は間違ってなかった。あとはプロモーション開始のギリギリまで、安定性や安全性を追求していかなければなりません。そこにもいろんな技術が必要です。

―― 眠れない日々が続きそうですね。

コバヤシ (苦笑)。

クリエイティブな領域で生きていくには、「職能」が邪魔をする場合も

これまで、幾多の先鋭的なプロモーション企画に携わってきたコバヤシ氏

野村 3月5日の本番までは、2月いっぱいかけて精度を高めていく実験作業を続けていきます。技術面ではコバヤシさんにはおんぶに抱っこの状態ですが、とにかく(課題解決のための)引き出しが豊富なので、安心感があるんですよ。

―― その「引き出しの多さ」は、どのように作ってきたのですか?

コバヤシ ほとんどが仕事を通じた経験の積み重ねです。あとは、できるだけ自分の中に「やれることの縛り」を作らないように心掛けるくらいですかね。

―― 「縛り」を作らないとは?

コバヤシ 例えば、エンジニアリングの世界には「iOSエンジニア」や「機構設計エンジニア」といったような呼び名があるじゃないですか。自分ができることを分かりやすく示す方法としては悪くないと思いますが、僕個人としてはあまり好きではない。いわゆる「職能」が、自分自身の成長を邪魔するケースもあると思うからです。

野村 確かに。それはクリエイティブの企画をする側の人間も同じかもしれません。

コバヤシ だから、あるテクノロジーを使った目新しいプロモーションがあったら、YouTubeなどでムービー視聴を楽しむだけでなく、裏側の仕組みを探って「こうやればできるかもしれない」と調べていくわけです。そういうことの繰り返しが、「引き出し」を作っていくんだと思います。

―― なるほど。では最後に、3月5日のキャンペーン実施へ向けた意気込みを。

野村 企画の承認から始まって、ドローンの開発や倉庫での実証実験など、本当にさまざまな課題を乗り越えてきたので、必ず成功できると確信しています。世界初の「空中ストア」と、『norlin』の驚きの軽さをぜひ多くの人に体験してほしいですね。

コバヤシ そのためにも、実験で出てきた課題をひたすらつぶしていかないと。

野村 そうですね、プロモーション開始まで、あと少し頑張りましょう!

>> クロックス「空中ストアcrocs flying norlin project」の開催概要など詳細はコチラ

取材・文/浦野孝嗣 撮影/竹井俊晴




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