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ドローンが産業化するのに必要な4つのポイントとは?“足踏み”を続けてきたロボット業界の専門家が語る

タグ : JUIDA, デジタルハリウッド, トーマツ, ドローン, ロボット 公開

 

安倍内閣は7月14日、ドローンの夜間飛行などを規制する航空法改正案を閣議決定。今国会中にも成立する見込みだ。

日本にはこれまで、ドローンの飛行に関する法律的規制が存在しなかった。改正後は、ドローンが空港周辺や家屋密集地の上空を飛行する際には、事業者が国土交通大臣の許可を受けなければならなくなる。また、夜間や目視できない状況での飛行も原則禁止となる。

ドローンをめぐっては、今年4月に首相官邸の屋上で墜落している機体が見つかるなどトラブルが相次いでおり、世間的にはネガティブな論調も少なくない。期待される新たな産業創出につなげるためには、適切なルールづくりや活用実績の積み上げが喫緊の課題だ。

こうした流れの中で、ドローンの産業分野における利活用やコンテンツ開発、人材育成をテーマにしたシンポジウム「ドローンとデジタルコンテンツの未来像」が7月21日、デジタルハリウッド大学大学院・駿河台キャンパスで開かれた。

関連省庁とともにドローン利用の安全ガイドライン策定を進めている一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)デジタルハリウッドの共催で、JUIDA理事長の鈴木真二氏をキーノートに、先駆的にドローンを活用しているコンテンツクリエイターらが登壇した。

ここでは、登壇者の一人であるトーマツベンチャーサポートの瀬川友史氏の講演内容をレポートしたい。

トーマツベンチャーサポートの瀬川友史氏。ロボット業界から見たドローン産業化のポイントとは?

トーマツベンチャーサポートの瀬川友史氏。ロボット業界から見たドローン産業化のポイントとは?

瀬川氏は同社に入社する以前から、シンクタンクの研究員として、また日本ロボット学会や日本ロボット工業会の委員として、10年にわたってロボットの産業化を支援してきた経歴を持つ。

大きな可能性を期待されながらいまだ産業化しているとは言いがたいロボット業界から見て、現在ドローンが置かれている状況は「うらやましい」と瀬川氏は言う。

ロボット業界から見たドローンの持つ産業化の可能性とは? 逆にドローンがロボットの歴史から学ぶべきポイントとは?

ドローンがロボットから学ぶべき理由

瀬川氏によれば、ロボットとは「センサ、知能・制御系、駆動系の3つの技術要素を有する、知能化した機械システム」のことを指す。ロボットといえば古くは『AIBO』や『ASIMO』、最近では掃除ロボット『ルンバ』といった分かりやすいものをイメージしがちだが、「ちょっと賢くなった洗濯機や冷蔵庫」程度であってもロボット研究の成果は活かされており、広い意味ではロボットの一種と見なすことができるという。

「この観点から言えば、ドローンもロボットの一部」と瀬川氏は言う。実際、安倍首相が「ロボットで産業を創出していく」と発言したことがきっかけで発足した「ロボット革命実現会議」では、昨年9月の第1回会合でドローンが首相官邸の中を飛び、大きな話題を呼んだ。

同会議が今年1月に出した「ロボット新戦略」で、ロボットの活用が期待される産業分野として挙げられたのは、「ものづくり」、「介護」、「インフラ・災害対応・建設」、「サービス(バックヤード)」、「医療」、「農林水産業・食品産業」といった領域。これらは瀬川氏の講演に先立って鈴木真二氏が指摘していた、「ドローンの活躍が期待される産業分野」とそっくりだ。

「ロボットの話をしようとすれば、必ずといっていいほどドローンが登場する」。逆にドローンのこれからを考える上では、ロボットのこれまでを振り返ることに意義があるというわけだ。

ドローンがこれまでのロボットと違うと言える根拠

ロボット業界に携わる人であれば誰もが知る、有名な市場予測の数値があるという。

経済産業省発表のこの予測によれば、2035年のロボット業界の市場規模は9.7兆円にまで膨らむと見込まれていた。だが、2015年時点で5兆円まで育つとされていたものが、現実にはたかだか600億円にとどまっている。非常に大きな期待が寄せられ続けてきたものの、産業化するには至っていないというのがロボット業界の現実だ。

ドローンは、なかなか産業化が進まないロボット業界の救世主となる可能性を秘めているという

ドローンは、なかなか産業化が進まないロボット業界の救世主となる可能性を秘めているという

しかし、この予測の曲線は今後、大きく変わる可能性があると瀬川氏は言う。その根拠となるのがドローンの存在だ。

「この市場予測は2010年ごろに行われたもの。つまり、ドローンの話は織り込まれていません。ドローンは利用用途が非常にイメージしやすく、産業として大きな可能性を秘めている。この曲線を大きく引き上げて、新たな産業を創出する存在となり得るはずです」

瀬川氏がロボット産業と関わることになった10年前。日本では初めてのロボットの安全基準が設定され、「愛・地球博」内のプロトタイプロボット展では、実際に使うことを想定されたロボットが多数展示された。

しかしその後、ロボット産業がたどった歩みは前述の通り。

今回の安倍内閣の「ロボット革命」もその繰り返しという声は少なくないが、そうはならないというのが瀬川氏の立場だ。ドローンに象徴されるように、モーターや小型のバッテリーといった技術は格段に進んでおり、クラウドやITが当たり前の環境は当時とは大きく異なると主張する。

「昔はコミュニケーションロボット一つ作るといっても、クラウドとつながっていないため、そのロボットに載せられる程度の振る舞いしかさせられなかった。それでは早晩飽きられてしまうし、限界がある。今はそういう時代ではありません」

ロボットの歴史から学ぶべき4つの課題とその解決策

ロボットの過去の歴史を踏まえると、ドローンを産業として成立させるにあたっても押さえておくべき課題が見えると瀬川氏は言う。それは以下の4点だ。

【課題1】ロボットありき、技術開発ありきの発想にとらわれること

【課題2】一方で、ユーザー・現場の「現状」に合わせすぎてしまうこと

【課題3】既存の法制度の規制や、逆に、ルールが未整備であること

【課題4】サービスロボ市場は大企業に向かないが、国の支援は大企業に集中

以上のような課題に対して、瀬川氏は打つべき4つの解決策も合わせて提示していた。

【解決策1】サービス・ソリューションからの発想。そのためのシステムインテグレーションの重要性

【解決策2】ロボットを使ったオペレーションは、ユーザーにも未知の世界であり、ユーザー側も変革する必要性

【解決策3】適切な規制による産業振興。規制が正しくあるからこそ、産業として使われていく

【解決策4】数十億規模の市場で戦えるベンチャーと、それが花開いて数兆円規模になった時に後押しできる大企業の連携

以上はロボットが過去10年で経験してきた“反省”から導き出されたものだが、逆に成功例から学べることもある。

例えば病院内でモノを運ぶ搬送ロボット。こうしたロボットが導入されたと聞くと、病院内のあらゆるモノをロボットが運んでいる世界を想像しがちだが、実際の利用は臨時搬送に限られていて、ルーチンの搬送を行っているのは相変わらず人間なのだという。

「人間が臨時の搬送までやってしまうと、ルーチンの仕事の流れが崩れてしまう。そこをロボットに代替することに効果があったのです」

介護現場におけるリハビリロボットについてもそうで、大事だったのは「ロボットがあることではなく、ロボットを使ったリハビリ手法があるということ」。これらは、前述の【課題1】や【2】をクリアした好例と見ることができ、ドローンの産業化を目指す上でも役立つ考え方だろうと瀬川氏は言う。

こうした考え方はロボット産業に限ったものではなく、新たなテクノロジーを用いたあらゆるビジネスにも通じるものではないだろうか。

ビジネスとして確立するために

趣味の世界に始まり、配送や点検など、従来のロボット業界からしたら「うらやましい」くらいに利用シーンが具体的に描かれてきているドローン。「今後は単体性能を追求する時代から、群として考える時代に移っていくだろう」と瀬川氏は指摘する。

活用と対策の2軸で進めることが産業化のポイントという

「活用」と「対策」はドローン産業化に向けた両輪だ

「1台が飛ぶのではなく、視界の範囲内に何十台も飛んだらどうなるかと考えると、クルマと一緒で、全く違う世界が描けるはずです。そうなったら、事故防止のために速度規制の話が出てくるかもしれないし、検知追跡は重要になり、ITがさらに入り込めばハッキングの心配も出てくる。産業として健全に育つためには、活用と対策の両輪で進めていくことが何より重要だと思います」

JUIDAが進めている安全ガイドラインの策定はそうした考えの表れだし、デジタルハリウッドは人材育成の観点から、将来的な免許の制定も見据えて社会人向けの専門スクール「ドローン操縦技能士コース」をこの秋に開講する。

また、来年3月には日本初の大規模な民間ドローン専門カンファレンス「ジャパン・ドローン2016」の開催も決まっている。

瀬川氏は講演の最後に、全世界の「夜」を映した1枚の衛星写真を紹介し、次のように話した。

「世の中に機械があふれているといっても、自動車や人工物の光で光っているのは地球上のほんの一部でしかない。ドローンのような新しい方法を使えば、できることはまだまだあるということです。ネガティブな話題も少なくないけれど、それだけ注目を集めるのはみんなが使いたがっていることの裏返し。ポジティブにとらえることが、産業としての可能性を広げていくことにつながるのではないでしょうか」

取材・文・撮影/鈴木陸夫(編集部)




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