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購買ビッグデータで家計簿アプリを進化させる『Dr.Wallet』が、1億円増資に成功した背景【連載:NEOジェネ!】

タグ : BearTail, Dr.Wallet, アプリ, スタートアップ, ビッグデータ, 家計簿, 高専 公開

 
世間をアッと言わせるユニークなアイデアと技術力で勝負しているニュージェネレーションを応援するこの連載。今回紹介するのは、家計簿アプリの真打ち『Dr.Wallet』を開発する株式会社BearTail。2013年12月には1億円の増資にも成功。資金獲得成功の背景に迫る。
(左から)COO 宮田昌輝氏
CTO 西平基志氏
CEO 黒崎賢一氏
CIO 原澤友輝氏

2013年12月27日、ニッセイ・キャピタル、インキュベイドファンド、SMBCベンチャーキャピタルの3社から1億円の増資に成功した家計簿アプリ『Dr.Wallet』。

アプリを起動してレシートを撮影するだけで、自動でデータ化し、クラウド上の家計簿に記録していくアプリだ。

レシートを撮る・送る。たった2つのステップで、収支のデータはもちろん、購入品のカテゴリ・購入店の住所などレシートから読み取れる詳細な情報を、自動でグラフ化。文字認識の精度は非常に高く、99%の確率(※BearTailの調査)で読み取ることができるという。

アイデアの出発点:ビッグデータ活用の切り口として「家計簿」に注目

『Dr.Wallet』を手掛けるのは、茨城県つくば市にある株式会社BearTail。CEOの黒崎賢一氏、CTOの西平基志氏、CIOの原澤友輝氏、COOの宮田昌輝氏、4人を中心としたスタートアップだ。

4人全員がエンジニアで、筑波大学や高専などで情報工学や理工学を専攻した経験を持つ。黒崎氏が経営面を、西平氏、原澤氏が開発を、宮田氏が入力スタッフの管理を担当している。

「Googleのようにビッグデータを活用して、ユーザーにメリットをもたらすことができるサービスを目指して、2013年4月から開発をスタートしました。とはいえ、既存のサービスと同じようなやり方で戦っても勝つことはできない。ビッグデータ活用方法のニッチな切り口を探す中で、着目したのが購買データでした」(黒崎氏)

クックパッドの出資で話題となった『Zaim』をはじめ、OCR(自動文字認識技術)を使い、レシートをスキャンするタイプの家計簿アプリは、当時すでに何種類かリリースされていた。

しかし、どのサービスも1回で正確なデータを取得することは難しく、結局手で打ち込まなくてはならないといった、入力へのストレスと無縁ではなかった。

「毎月家計簿にかける100分近い時間を、5分ほどに圧縮できれば」と黒崎氏

「ユニークなデータを持つだけでなく、それを元にどのようにユーザーに価値を提供するかが重要だと考えています。世の中には数千万人の家計簿ユーザーがいます。でも、そのほとんどが、レシートを書き写したり、集計したりと、かなりの時間を非効率的に使っている。そこで、インターネットを使い時間を短縮することで、ユーザーにメリットをもたらすために、着目したのが、家計簿アプリでした」(黒崎氏)

開発のポイント:壁にぶつかれば人に聞く。既存技術を組み合わせて開発

『Dr.Wallet』は、ユーザーから送られてくるレシートの画像データを1商品ごとに分解して、オペレーターに送信し、記された文字情報を人力で打ち込むというシステムを搭載している。

「レシートを分散処理する仕組みを持っています。送られてきたレシートは、一度画像処理技術を使って文字列を認識させ、1商品ごとにバラバラにした上で、オペレーターへ渡す。人力で解読した後、データ化したものをRuby on RailsとJavaScriptによる処理で再度一つにまとめてユーザーへフィードバックしているのです」(原澤氏)

さらに、分割された文字列は、別々のオペレーターへと振り分けられる。単独の文字列は個人情報を含まないため、セキュリティ性を高める役割も兼ねているのだ。

これらのシステムは、既存技術を組み合わせ、『Dr.Wallet』専用に開発したもの。ただ、開発時、周りにサンプルとなる事例が足りず、壁にぶつかることもたびたびあったという。

ユーザーのレシートは、分割され複数のオペレーターへと渡されていく

「われわれが調べた限り、『Dr.Wallet』のレシートのフィードバックシステムには、前例がありません。何とか形にできたのは、あらゆる会社や大学の先輩技術者へ相談したことが大きかった。身近な先輩はもちろん、AmazonやKDDIなどの大企業もメールをすると、いろんなノウハウを教えてくれたり、直接会ってくれるんです」(西平氏)

自分たちよりも多くの知見を持つ人から、ノウハウを引き出し、技術力を向上させたBearTail開発陣。国内の知見でも補えない場合は、Webを活用し、海外から知見を収集したという。

「端末を変更した際にデータを同期する技術が分からず、ネットで検索しても出ないことがありました。その時は、プログラミング技術のQ&Aサイト『Stack Overflow』に質問を投稿し、海外の技術者から知見を得ました」(西平氏)

開発陣が持つ、先輩達に真正面からぶつかる実直さと、国をまたいでまで知見を得ようというどん欲さ。そうした熱意を堅実に技術力の向上に結び付けたことが、『Dr.Wallet』の独自システムという形で結実した。

サービスPRのためにオウンドメディアを立ちあげたローコスト戦略

意識的なWebの活用は、技術面のみに留まらない。

「スタートアップにとっては常に悩ましい問題である人材獲得に関しても、Webを駆使している」と黒崎氏は語る。

「自分たちの持っているものを上手く活用してチームを回しています」(黒崎氏)

「プログラミングコンテストなどでの受賞経験を持つエンジニアたちをひたすら検索して探しています。そして、気になった人にFacebookなどを使って積極的にアプローチ。地域や年齢にこだわらず、実力ある技術者だけで、開発チームを編成できた結果、開発スピードの向上につながりました」(黒崎氏)

こうした徹底的な人材確保が功を奏し、BearTailは2013年4月の開発スタートからわずか4カ月後の8月に公開という短期開発を実現している。

総務や経理関係の仕事は極力アウトソースを使い、社員たちが本来の業務に集中できるようにしているという徹底ぶりだ。

さらに、BearTailはサービスのPR活動においても趣向を凝らしたWebの活用を行っている。

「『Dr.Wallet』への導入口として、節約にまつわるライフハックを集めた自社媒体『節約ZINE』を立ち上げました。オウンドメディアを運営することで、潜在層を囲い込むのが狙いです。『節約ZINE』を立ち上げて以降、アプリのダウンロード数も増加しました」(黒崎氏)

実は、起業以前から複数の雑誌やWebメディアのライティングや制作にかかわっていた黒崎氏。その経験を活かし、コンテンツの制作は黒崎氏を中心に、インターン生で組織されたチームで行っており、制作コストはほぼかかっていない。

「駆け出しのスタートアップには、広告にお金を使う余裕はありません。自分の持つスキルを最大限に活かしつつ、アプリを周知させる方法として、オウンドメディアが最適でした。コンテンツを作るスキルは、PRにもつながるので、持っていて良かったですね」(黒崎氏)

サービスの前進速度を速める為に、投資家に説明し1億円の増資を実行

「ランニングコストを回収し、開発のスピードを加速させるための増資です」(宮田氏)

記事冒頭で紹介した通り、サービス公開から4カ月後の2013年12月に、1億円の資金調達に成功した彼ら。一体なぜ増資を実行したのか。

「人が目で見て、ユーザーの代わりにレシートをデータ化するということは、ランニングコストがかかるということ。また競争環境がある中で、サービスの前進速度を上げなければ、多くのユーザーに価値は提供できない。一方で、サービスが拡大するまではマネタイズは難しい。そのため増資を行いました」(宮田氏)

投資家にはどのように説明したのだろうか。

「一つは、企業としての前進速度をうまく訴えること。われわれは、日々のPDCAやトライ&エラーを記録に残し、前進速度を可視化していきました。そうすることで、サービスの成長性をアピールできます」(原澤氏)

撮影フローの見直したことによるDAU当たりのレシート撮影枚数の増加率や、社内に新しい開発ツールを入れたことで開発効率が数%アップしたこと……など、小さな成長と業務改善の積み重ねを記録化していくことがポイントということだ。

また二つ目について、西平氏はこう話す。

「そもそもなぜ開発しているサービスが世の中に必要なのかを説明できるようにすること。『Dr.Wallet』でいえば、類似サービスよりも正確にレシートをデータ化できる点と、ユーザーの消費行動のビッグデータを蓄積できる点で、利用ユーザーにとってプラスアルファの価値をもたらすことができると説明しました。こうした『理由付け』をすることは、当たり前といえば当たり前なんですが、いざ聞かれた時に答えられるようにしておくことが大事だと思います」(西平氏)

成長性を提示し、サービスの存在理由を言語化する。サービス成長に対して増資の必要性を投資家に丁寧に説明したことが今回の増資へとつながったといえる。

順調そうに思えるBearTailだが、今後の課題は何なのだろうか?

「近々の課題はマネタイズ。そのために、企業からPR費をいただき、『Dr.Wallet』ユーザーの購買行動にマッチした、ユーザーがお得に生活できるクーポンなどを配布するサービスを始めました」(黒崎氏)

2014年1月24日から、その第一弾となるカンロ、コクヨ、森永製菓などの大手消費財メーカーとのタイアップでマストバイキャンペーンを開始。家計簿を付けるだけでおトクな買い物ができる取り組みゆえ、マネタイズのみならず、ユーザー数の増加も見込める。

協力企業としても、対象ユーザーにターゲティングしてキャンペーンを配信することができれば、より無駄な費用を使わない綿密なマーケティング戦略、プロモーション活動を行うことができるだろう。

「使うほど得する、日本初の家計簿にし、生活になくてはならないサービスにしたい」(黒崎氏)

「家計簿」を切り口に、自社・アプリユーザー(消費者)・企業の三者を有機的につなげようと邁進するBearTail。実現できれば、“お金回りのGoogle”になる日も近いかもしれない。

取材・文/白方はるか 編集/桜井祐(ともに東京ピストル) 撮影/竹井俊晴

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