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今の就活は不幸を生むだけ~ドワンゴ「新卒採用に受験料」導入の真相を、川上量生氏に直撃

タグ : ドワンゴ, リクナビ, 入社試験, 受験料, 川上量生, 新卒採用 公開

 

「そもそも、就職活動で100社も同時にエントリーできる今の仕組みっておかしいと思いません? リクナビの一括エントリーボタンとか最悪ですよ、最悪。このままだと、就活生も企業もどんどん不幸になっていくんです」

そうまくし立てるのは、ドワンゴ会長兼CTOの川上量生氏。就職活動が解禁となった今年12月1日、同社の新卒入社試験にて受験料を取ると発表し(※受験料は全額寄付とも発表)、賛否両論を呼んだ張本人である。

「受験料制度」について説明する特設ページはこちら

ドワンゴの発表は発表直後からYahoo!ニュースや各TV番組で取り上げられ、「ユニークだ」、「応募者を絞り込む良い取り組み」などと好意的な声が上がる一方、「他社も受験料を取るようになったら学生側の負担が増える」、「2525円(ニコニコにちなんでいるそう)なんてふざけた金額で、ヘタなPR戦略だ」といった批判も巻き起こった。

だが、その真意を川上氏に直撃したところ、「受験料はあえて適当に決めた」と一言。本当の狙いは受験料で儲けようとしているわけではなく、世の中への問題提起として一石を投じたいというものだったからだ。

今年3月から指摘していた「一括エントリーシステム」の問題点

現在の就職活動が抱える問題を、「リクナビ一括エントリー問題」と呼ぶ川上量生氏

川上氏が問題視しているのは、「学生の大量エントリー→採用側も大量な候補者を一括で足切りしながら選考」という現在の就活の仕組みだ。

冒頭の発言で「就活生も企業も不幸になる」と述べた理由を、多くの会社がSPIや学歴など同じような基準で選考を行う以上、受からない学生は100社に応募しても受からないし、企業側も人的・資金的に多大なコストがかかってしまうからと説明する。

実は今年3月に内閣府が行った「第2回 若者・女性活躍推進フォーラム」 でも同様の問題提起を行っており、今回の「受験料の導入」が思い付きのPR戦略ではないことを示している。

このフォーラムの議事録(PDF)には、川上氏の発言がこのように記されている。

今、就職に関して、企業のほうも、そして、学生のほうも疲弊している現状があると思うのですけれども、問題はすごくシンプルだと思うのです。それは、「学生たちに夢を持って、自分のやりたいことをやれ」というようなことを教える茶番をいつまでやるのだという話です。そのことを信じて不幸になっている子たちが一体どれだけいるのかということだと思います。

若い子たちは素直だから、「自分のやりたいことをやれ」という言葉を信じて、一生懸命、自分のやりたいことができる企業を探すわけです。そして、撃沈して、傷ついていくという構造があります。その構造の真ん中に何があるのかというと、企業に対するエントリーの仕組みです。

つまり、就職における応募窓口となっているリクナビのような求人情報サイトが、「便利さ」という大義の下で採用している一括エントリーシステムが、「不幸な学生をもっと不幸にする」と考えたわけだ。

どんな採用方法でやっても、学生の能力は見抜けない

川上氏がこうした思いを強くしたのは、現場に任せていた自社採用の結果に疑問を持つようになったからだという。

「ドワンゴが創業したころは、知名度がないのでいわゆる『優秀な人たち』が応募してくれなかった。だから、中卒、高卒だけどプログラミングしかやってませんでしたというような人を採用して、彼らの良いところを探しながら“働いてもらっていた”んです」

それゆえ以前の組織構成は、エンジニアなら上位の管理職ほど中卒>高卒>大卒というバランスで、学歴が低くなる傾向があったという。「若い時からプログラミングの経験を積んでいるので、エンジニアとしての能力も中卒>高卒>大卒の順で高いと感じていた」そうだ。

それが、ドワンゴが成長していくにつれて大卒エンジニアが増えるようになり、他社と同じように「選考では大量な応募をさばく目的でSPIや学歴で足切りするようになっていた」と明かす。

本来、就職試験や短い面接時間で人の優劣を判断できるはずがないという持論を持つ川上氏は、この自社内の変化に違和感を持つようになっていったという。

「どんな採用基準で新卒採用をしたって、新入社員が思い通りに成長するかどうかは予想できないもの。語弊を恐れずに言うなら、『ガチャ』を引くようなものです。

でも、 SPIや学歴で足切りされると『ガチャ』も引いてもらえない学生が大量に発生します。本当はその中にも当たりの学生はいるはずなんです。なのに、ドワンゴも他社同様『学生を不幸にする就活の仕組み』に乗っかっているのはダメだということで、受験料を取る試みを始めました」

From Dick Johnson
「皆が同じように」就職活動を行う日本の習慣には、以前から疑問の声が上がっていた

これをきっかけに他社にも望むのは、就活の選考方法の多様化だ。

「今回の取り組みで一つだけ伝えたいのは、新卒採用が“買い手市場”だから強気に出た、というわけでは決してないということ。受験料制度がベストなやり方だとも思っていません。採用の多様性を作るという意味で、受験料を取るやり方は必ず批判が起きると思っていたので、他社がやらなそうだからドワンゴがやっただけ。僕らは批判されるのに慣れているので(笑)。

でも、僕ら1社だけでは求人情報サイトが作り上げた悪しき就活の仕組みを変えられないので、各社が試行錯誤しながらいろんな採用方法を試してほしいと思っています。採用方法がたくさんあればあるほど、どこでも落とされる不幸な学生が減るでしょう」

そして、学生側にも考え方の転換を求めている。

「ネットサービスもそうなんですが、『数打ちゃ当たる』のやり方って、市場が黎明期にある時しか通用しないんですよ。Webサービスやiモード、最近だとソーシャルゲームなんかでも、初期には『数打ちゃ当たる』、『数が一番大事なんだ』という人が必ず出てくる。本当に何人も出てくるんです。

でも、そういったところは長続きはしない。マーケットが確立され、競争が激しくなってくると、質を伴わない数だけの戦略は全滅するだけです。就活もこれと同じで、結局は数を絞って一生懸命にやった方が、成功率は高くなります」

今回、受験料制度導入の真意を聞きに行ったはずの取材陣だったが、取材の冒頭で川上氏から「あなた方は今の就活の仕組みについてどう思っているのか聞かせてくださいよ」と逆質問された。

ドワンゴの取り組みは、この川上氏の言葉を世の中全般に投げかけるためのものなのだ。

取材・文/伊藤健吾、根本愛美(ともに編集部)


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