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相手の要求を英語で理解して、アウトプットできる力を身に付けよう~ICANNで働く大久保智史氏の提言

タグ : ICANN, 学習, 就職, 海外, 英語 公開

 

エンジニアが仕事で使える英語のtipsをご紹介する本連載。リニューアル第2弾となる今回は、IPアドレスやドメイン名などを世界的に調整・管理する、アメリカの民間非営利法人ICANNで働く大久保智史氏に話を聞いた。

帰国子女でもともと英語力には自信があったという大久保氏。それでも、英語を使って仕事をするにあたって苦労した部分もあるという。アメリカで5年以上働く経験から得られた「海外でエンジニアが働くのに本当に必要な英語力」とは――。

プロフィール

非営利法人ICANN

大久保 智史氏

2004年に法政大学文学部を卒業後、旧日本ベリサイン(現シマンテック)在職中に独学でPKIおよび情報セキュリティを学び、米国ベリサイン転籍にともない渡米。2009年にキーマネジメントセキュリティのエキスパートとしてルートDNSSECデザインチームに参加。物理、論理セキュリティのデザインにおいて重要な役割を果たす。2010年よりICANN勤務。ルート鍵署名鍵の運用セキュリティ全般、Internet Assigned Numbers Authority (IANA)のセキュリティを統括。現在は、SSRチームの一員としてIdentifier Systems Analytics Managerとして研究職に従事する

≪日本にいた時の英語力レベル≫
2~8歳までニュージーランドで生活。幼少時に培った英語力のおかげで、日常会話はそつなくこなせるレベル。中学生の時に英検2級を取得したが、それ以外の語学試験はまったく受験したことがない。大学時代は英文学科だったこともあり、英語に触れる機会は多かった。

≪現在の英語レベル≫
2009年1月に渡米。日本人同士のコミュニケーションと変わらないレベルで、社内外の人と十分に英語を使って仕事ができる。英語でのプレゼンもこなす。発音もネイティブと遜色なく、「電話で話すと日本人と思われることはほとんどない」という。

ただし、アメリカ人からは「アメリカの発音ではない」と言われ、幼少時に暮らしたニュージーランドの発音とも少し異なるそうなので、自身の英語は「いろんな英語の発音が混ざった感じ」とのこと。

≪勉強法≫
速いスピードのリスニングに慣れるために、TVで現地ニュースを観る。ほかにも、海外ドラマを字幕なしで観ながら、日常会話の表現を覚える。

「技術を学ぶ」つもりで英語に触れていた

USで撮影した一枚

―― 初めて英語に触れたのは、かなり早いとうかがいましたが。

そうですね。親の仕事の都合で2~8歳までニュージーランドで過ごしました。

一般的に幼児期に言語の能力がある程度形成されると言われますが、自分もこの時の経験が今の英語力の基礎になっているのは確かです。特に、リスニング力やネイティブと同じ発音で話すことができるスピーキング力といった部分で助けられていると思いますね。

―― 英語ができることを活かして、海外で働こうと思い始めたのはいつごろですか。

いつからということもないですが、漠然と「いつかは海外に出よう」とずっと思っていました。

―― 将来海外で働くための準備として、英語の資格試験など何か勉強はされていたのでしょうか。

TOEICやTOFELなどの試験を受けるといったことはまったくしていなかったです。8歳までしか海外にいなかったわけですが、それでも人並み以上に英語はできるという自負もありましたから。

しかし、日本の英語教育の中では何とかなったとしても、8歳レベルの英語ではやはり海外で仕事をするには不十分すぎます。総合的な英語力をもっと向上させる必要があるとは思っていました。

大学は英文学科だったので、卒論は英語で書きました。ライティング力はそこでだいぶ鍛えられたような気がします。それ以外には、海外ドラマのDVDもよく観ていましたね。字幕なしで『プリズン・ブレイク』や『ロスト』を見て、日常的なコミュニケーションで使えそうな言い回しなどを覚えたりはしました。

―― 中でも、今の仕事に役に立ったという勉強法は何ですか。

日本ベリサインに勤めていたころの話です。PKI(Public Key Infrastructure、公開鍵基盤)に関する技術を学ぶ必要があって、独学するため日本語の書籍を探したのですがいいものがなくて……。仕方なく「IETF(The Internet Engineering Task Force)」という技術スペックを無料で公開している海外の団体のサイトから学ぶことにしました。

この時は「英語を学ぶ」というより、「技術を学ぶ」つもりで英語に触れていたわけです。それが結果として、仕事で使える語彙や表現などを学ぶことにつながったと思います。

―― そうやって英語力もレベルアップしていたのであれば、アメリカに渡ってから英語で戸惑ったことはほとんどなかったのでは?

いや、一つだけありました。本格的にアメリカでの仕事が始まる前に、トレーニングで3週間だけ渡米した時のことです。

ホテルでTVを付けて現地のニュース番組を観たところ、キャスターが話すスピードがとても速かったんです。早口だから聞き取りにくいし、全然理解できない。リスニングはもともと自信があっただけにショックでしたね。

「これじゃヤバイ」と思って、耳を慣らすためにも毎日ニュースを見るようにしました。

幸いにも、自分のトレーナーはドイツ人で会話が丁寧だったので、トレーニング自体はまったく問題ありませんでした。まるで速聴トレーニングみたいな感じで、速いスピードのニュースを見た後に日常会話程度のスピードでトレーニングを受けると理解しやすかったのを覚えています。

―― アメリカで実際に働き始めてから「ここで十分やっていける」と思った瞬間を教えてください。

2009年に渡米して、仕事を1年以上続けられた時ですかね。

渡米したものの、クビになるかもしれないし、どうなるか分からないという不安も多少なりともありましたから。

だから、きちんと給料をもらえて、実績も評価されて査定が良かった時に自信が付きました。自分の培った能力や技術がきちんと発揮され、周囲とのコミュニケーションがうまくできたという証ですからね。

「英語ができれば働ける」という勘違いに、意外と気付かない

日本で「インターネットの父」と言われる村井純氏が理事を務めていたこともあるICANN

―― なるほど。となると、渡米してから5年が経った今ではほとんど英語で苦労することはないのでは?

普通の仕事をする上では何の苦労もないです。ただ、プレゼンなどの場で気の利いた言い回しをするのが難しいですね。

アメリカ人やイギリス人は、英語の適切な表現でユニークなことを言って場を盛り上げることが多いのですが、自分にはなかなかできない。ジョークやユーモアなどは文化の違いもあるので、日本人として苦労する部分ではあります。

また日常生活だと、病院に行った時に医療用語などが分からなくて困ることはありますね。仕事では臓器や病気の話はほとんどしませんからね(笑)。

―― 現在の職場はいろんな国籍の方と働いているとうかがいましたが、コミュニケーションで困ることはないのでしょうか。

今の職場には、インド、チリ、プエルトリコ、中国、台湾など、本当にいろんな国籍の人がいます。ただ、その割にはきれいな英語を話す人が多いです。英語が下手で、表現があいまいで齟齬があったりすると、当然ながらコミュニケーションに支障をきたしてしまうので、母国語が英語でなくてもネイティブレベルで話せるレベルを求められていると思います。

―― どのくらいの英語力があれば、アメリカで働けると思いますか。

職種やポジションにもよります。例えば、プログラマーの場合、相手の要件を聞き取ってそれをプロダクトとしてアウトプットできるのであれば、そんなに高度な英語力は求められません。相手の言うことが理解できて、なおかつ、下手でもいいから自分の言いたいことを伝えられるというレベルの英語力があれば、やっていけると思います。

プロジェクトマネジャーなどプレゼンの機会や折衝などが多いポジションであれば、言いたいことをまとめられるスキルなども求められます。特に社外の人とのやり取りが多い場合は、会社の方針やメッセージなどが齟齬なく伝えることができる能力が必要です。

今ではUSでの生活になじんでいる大久保氏だが、米国就職の際には苦労も

―― では最後に、ご自身の経験をふまえて、「いつか海外で働きたい」と思っているエンジニアの皆さんに伝えたいことはありますか。

日本人は「英検やTOEICなどの資格があれば、外国で採用してもらえる」と勘違いしている人が多い気がします。

例えば、TOEICで990点満点をとったところで、まったく技術力がなかったら採用されないわけです。逆に言うと、そういった資格を持っていなくても、高い技術力があれば海外で十分通用すると思います。

とはいえ、先にも述べた通り、必要最低限の英語力は必要です。その程度の英語力を身に付けたいのであれば、資格試験に費やすよりも、いっそのことワーキング・ホリデー制度を利用するなどして、実際に海外に行った方がいい。

「昨日何してた?」、「今日何食べる?」といった他愛もない会話でも構わないので、ネイティブの人たちとたくさんの時間を過ごすことが大事だと思いますね。

もう一つ、アメリカで働きたいと思っている人にぜひ覚えておいてほしいことがあります。それは、英語が話せることは何のアドバンテージにならないということ。英語ができるから雇われるわけではなく、英語プラスアルファの技術力や能力で評価されるからです。

自分はH-1Bというビザを持っていますが、このビザは特殊技能職のビザで、大学の卒業資格と特殊技能がないと取得できません。

そもそも、英語ができるだけでは労働許可が下りないのです。英語を話せる人が大部分の国ですから、当たり前と言えば当たり前なのですが、日本にいるとついこの事実を忘れてしまいがちです。

英語ができて、なおかつエンジニアとしてウリがなければ、アメリカで働けません。そこのことはぜひ肝に銘じておいてほしいですね。

―― 本日は貴重な体験をお聞かせいただきありがとうございました。

取材・文/大井 あゆみ(『シンガポール経済新聞』運営Diversolutions.Ptd.Ltd代表取締役)
編集協力/岡 徳之(Noriyuki Oka Tokyo




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