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「人工知能を悪魔にしてはいけない」Evernoteが始めた“AIデザイン”という仕事が面白い

タグ : AI, Evernote, IoT, デザイン, 中島大土ランツ, 人工知能 公開

 

「AI(人工知能)によって、我々は悪魔を呼び出そうとしている」

米テスラモーターズのイーロン・マスクがこう発言したというニュースが出回るなど、過度に進化することが人間にとっての脅威になるという文脈で語られがちな人工知能。だが、こうした議論に異なるメッセージを投げかけるセミナーが、11月14日、Apple Store銀座で行われた。

登壇したのは、EvernoteのPrincipal Designerで、以前はAppleでデザインの仕事に携わっていた中島大土ランツ氏。11月10日にEvernoteが発表した日本経済新聞社との資本・業務提携(Evernoteの新機能「コンテキスト」との連携など)の会見に合わせて来日していた同氏は、この新機能の開発にもかかわっていた人物だ。

「コンテキスト」機能とは、Evernote上でユーザーがノートを作成して文章を打つと、入力されたキーワードや文脈に関係のある記事を自動的にピックアップし、Evernote上に配信するというもの。この機能にもAIが使われているが、中島氏は開発時の話を引用しながら「Evernoteの考えるAI」についてこう語った。

「一般的に、AIは“Artificial Intelligence”の略とされています。でも我々は、“Augmented Intelligence”だと解釈しています。知能を増幅させるもの、つまり人間の能力を拡張していくものなのです。Evernoteの『コンテキスト』機能も、仕事をする人々の判断をサポートし、創造性や思考を拡張するという目的で開発しました」

EvernoteのAI利用哲学でもある、“Augmented Intelligence”という考え方

実際のところ、冒頭で紹介したイーロン・マスクの発言も、「下手をすれば~」という前置きがあったとされている(参照元はこちら)。「悪魔発言」は一般化し始めたAI活用への警鐘であり、正しく利用すれば中島氏の言う「人間の能力を拡張していくもの」になるということなのだろう。

そこでEvernoteでは、デザイナーの何人かに“AIデザイナー”という役割を与えているという。AIの持つ力を活かしつつ、人間にとっての脅威にならないようにするには「デザイン」が必要不可欠だという考えからだ。

中島氏がこの日話したAIデザインの要点と、これからのモノづくりについて、講演内容をダイジェストで紹介しよう。

Evernoteが独自に掲げている「AI 三原則」とは?

もともとApple Store銀座で働いていた中島氏のキャリアストーリーはコチラ

「AIに対してネガティブな感情が生まれるのは、そもそも人間は『知らない未来』に対して不安を抱くものだから。Evernoteもそれは理解しています。だから僕らは、ユーザーのプライバシーを最優先にしながら、未来をどうデザインしていくべきか議論を重ねてきました」

講演冒頭でそう語った中島氏は、Evernote社内で独自に掲げているという【AI 三原則】を披露した。それは

【1】IT IMPROVES YOUR WORK.=AIは、あなたの仕事をよりよくする
【2】IT IS ABOUT DESIGN.=AI活用の本質はデザイン(設計)にある
【3】IT BENEFITS YOU, NOT US.=AIの力を享受するのはユーザーであり、我々ではない

というものだ。【1】【2】の背景にある思想は前述した通り。注目すべきは【3】だろう。

「Evernoteの『コンテキスト』機能で説明すると、AIを駆使すればユーザーが欲しいであろうニュース記事とは異なる内容のPR記事を無理やり配信することもできます。しかし、こういった営利重視のAI活用は『悪の使い方』で、絶対にやってはいけないことだと社内に周知しています」

この線引きを司るのがAIデザイナーの責務だ、と中島氏は続ける。そして、この三原則を踏まえた上で、まだ見ぬ未来を設計していくのが腕の見せどころとなる。

その一例として、いまや多くの人が常用しているスマートフォンや、普及期に入ろうとしているウエアラブル・デバイスとAIとの関係についてこう語る。

「今、スマートフォンは、持ち主の生活に最も密着しているコンピュータになっています。にもかかわらず、なぜ『あなた』の嗜好や行動を理解していないのか? そういう視点で現状をとらえれば、AIにできることはたくさんあるはずです」

例えばスマホで通話中、AIが通話相手との過去のメールのやり取りを自動で抽出してウエアラブル・デバイスに表示してくれたら便利じゃないか? そんな仮説から、AIを使った情報導線をデザインしていくのだ。

「デバイス間で情報を送り合い、表示させること自体は、Bluetoothなどの技術を使えば今すぐできます。しかし、通話中に何を表示すればユーザーにとって便利なのかを適宜判断するのは、AIがなければ難しい。GoogleでAndroidのデザイン責任者を務めるマティアス・デュアルテ氏も、『AIがデザインの未来になる』と話しています。AIを、人々の生活をよりスマートにするための技術として活かすには、やはりデザインが大切なのです」

新技術で未来を作る上で欠かせない「デザインの作法」

中島氏の考える“Future of Product Design”とは?

とはいえ、デザインとは抽象的な概念を形に落とし込み、ユーザーに「新しい体験」を提供するところまで設計しなければならない。まだ見ぬ未来をデザインしていくには、具体的に何を行わなければならないのか。

中島氏は、業務上気を付けているポイントとして、以下の4つを挙げる。

【1】「問題」を探して、解決しようとしない

「何かを改善することと、新しい体験を作ることは、似ているようで違います。AIを用いたデザインでいうと、AIを使うために新たな課題を見つけるのはナンセンス。あくまで『現在のユーザー経験を高めていく』目的でデザインするべきだと考えています」

【2】デザインは「エモーショナルエクスペリエンス(感情面での体験)」のためにある

Evernoteのプロダクト開発では、「セレンディピティ感を作ろう」というキーワードが頻繁に出てくるという。

「セレンディピティとは、偶然がもたらす幸福のこと。(Evernote代表の)フィル・リービンも、よく『我々はセレンディピティボタンを作りたいわけではない』と言っています。これは、何かが欲しい時にユーザーにボタンを押してもらうという行為は、良いデザインではないという意味です。

AIをうまく活用すれば、ボタンを押さずに自然とユーザーが喜ぶ体験を提供できるようになります。それによってどんなエモーショナルエクスペリエンスを生み出すかを考えるのが、AIデザインの最初の一歩となるわけです」

【3】AIデザインで重要な「ストーリー」は、画面を作るだけでは生まれない

【2】で挙げたような体験を生み出すには、ユーザーにとっての「ストーリー」を先に設計しなければならない。その具現化のためには、まず社内のエンジニアにストーリーを伝え、理解してもらう必要がある。

「その際に用いるツールは、今、多くのデザイナーが使っている『Adobe Photoshop』や『Illustrator』、『InDesign』だけでは難しい。画面だけを作っても、ストーリーまで理解してもらえないからです。デザイナーがプロトタイプを作る際も、リアルタイムビジュアルを作成できる『Quartzコンポーザー』など動的に表現できるツールを勉強しなければならなくなっています」

【4】チームで議論する際は“What’s Missing?”を合い言葉に

「What’s Missing? とはつまり、『今、何が足りていないのか』を考えるということ。ユーザーの1日の中で、プロダクトがどうやって使われるかを考えながら設計していくには、チーム全員でこの視点を共有し、何度もストーリーボードを描いてみることが大事です。もちろん、その結果出てきたアイデアを実装すればすべて成功するわけではないので、ABテストは重要なソリューションになります」

これらのポイントは、AIを用いたデザインのみならず、あらゆるプロダクトデザインに必要とされるものだ。言い換えれば、原理原則を忠実にこなすことこそが、未来をデザインすることにつながるのだろう。

中島氏も、“PCの父”と呼ばれるアラン・ケイの言葉を引用しながらこう話す。

「未来を予測する最良の方法は、自ら作り出すことであるとアラン・ケイは言っています。確かに、未来のプロダクトをデザインするには、ログなどを見て分析するだけでは絶対にできません。AIデザインとは、すなわち未来のモノづくりなのです」

取材・文・撮影/伊藤健吾(編集部)




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