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35歳定年説をぶっとばせ【連載:えふしん】

タグ : 35歳定年説, えふしん, エンジニア, プログラマー, 家入一真 公開

 
えふしんのWebサービスサバイバル術

藤川真一(えふしん)

FA装置メーカー、Web制作のベンチャーを経て、2006年にpaperboy&co.へ。ショッピングモールサービスにプロデューサーとして携わるかたわら、2007年からモバイル端末向けのTwitterウェブサービス型クライアント『モバツイ』の開発・運営を個人で開始。2010年、想創社(現・マインドスコープ)を設立し、2012年4月30日まで代表取締役社長を務める。その後しばらくフリーランスエンジニアとして活躍し、2012年11月6日に想創社(version2)設立

昨年末。目下、都知事選に立候補中の家入一真さんの誕生日のアラートがFacebookから送られてきた時に、彼が35歳になったということに驚きました。あの「若手起業家」と呼ばれていた家入さんも、もう35歳かぁ、と。

僕がペパボに転職した時には、上司はもちろん、社員もほぼ全員僕より年下でした。自分が「上司」だったころは自分よりも部下が年上だろうと気にしないと思っていましたが、この時ばかりはさすがに意識したのを覚えています。おそらく、実際に経験してみないとこの複雑な気持ちは分からないと思います。解決方法はずばり“慣れ”です。

自分より優秀な人や上司が、自分より年下で、自分が評価される立場に立つというのは、乗り越えなくてはいけない衝撃だったことを覚えています。

インターネットが当然の世代ももう35歳に

by Joi
「インターネットがあたりまえ」の世代ももうアラフォーに

(家入さんもなぜか含まれていた)起業家の当たり年世代と言われる「76世代」の人たちは、もう37歳。アラフォーですよ。

この世代は、大学に入学した時にインターネットビジネスが新興産業としてすでに存在し、新卒採用の就職先として選ぶことができた世代です。新卒からずっと開発を続けているベテランの人たちの中心が、これぐらいの年齢になっているということです。

そうすると、当然気になるのが「プログラマー35歳定年説」という、あの忌々しい言葉です。

気にしないと思っていても、気になるというのが年齢の話。この世の誰もが自分が年をとった未来を予測するのは不可能なので、若い人が発するカジュアルな年上論がグサグサ心に刺さってしまったり、不安につけこむ言説は枚挙にいとまがありません。

僕も気がついたら40歳になってしまったのですが、この世代が、普通にコードを書き、今後も開発を続けていく場合は、この「35歳定年説」を理解し、乗り越えて新しいロールモデルを自分たちで作っていくことが不可欠です。

経験がものを言わない時代、プログラマー35歳定年説は忘れていい

そもそも、プログラマー35歳定年説の根拠には、

●業務が激務すぎて体力が落ちてくるのでついていけなくなる
●記憶力が落ちてきて、新技術の習得についていけなくなる

などがあります。

一方で、プログラミング言語は高級言語として利便性が向上する方向に進化してきました。また、アプリケーションフレームワークも進化し、他人の知識を活用することを前提とし、一つの処理をするために書かなくてはいけないコード量は減り続けています。クラウド技術が進化し、さまざまなものがコードだけでコントロールできるようにもなっています。

つまり、タイピングの量は昔よりも減っているため、以前と比べて、単純な力技よりも知能戦が求められる時代になったと言えるのではないでしょうか。

by Marc Samsom
IT化によって情報取得のスピードや機会が増えたことを、羽生善治氏は「学習の高速道路」と表現した

よく「学習の高速道路」で若い人が高技能を得る時間が短くなっていると言う話がありますが、まったく同じ理由で、年齢を重ねた人も、体力や短期記憶の減衰をカバーできるようになっていると考えられます。「技術を実現するためには長年の経験がないとダメだ」という要素が減ってきているということですね。

一方で、フレームワークやオープンソースを使いこなすための調べ物の数が増えたことから、日常的に開発スキルについて気持ちのコミットができる人には楽園で、そうでない人にとっては、単純に扱う情報が増えて大変な時代なのかもしれません。

経験が豊富だと新技術への不感症スパイラルに

経験を積んできた人の弊害としては、技術の栄枯盛衰の歴史を経験してきたがゆえに、新技術への感度が下がってくることが挙げられます。

例えば、XMLという技術が出てきた時には、ワンソース・マルチユースを実現する素晴らしい技術!ともてはやされていました。SOAPの理想論は、有機的なWebリソースの活用を目指したものだったと思います。

しかし、いかんせん社会は、それを受容するほど成熟していなかったし、そもそも技術が複雑であったことも含め、普及はしませんでした。

その数年後、RESTのようなシンプルな仕組みがスタートアップ側の技術として活用され、自分たちよりも若い世代が、さも新しいものを見つけたが如く「これからはRESTだ!」となったというのが、すこし恨めしいような、そんな気持ち。

これは、XML時代にワクワクし、その喧騒に疲れてしまった人の本音ではないでしょうか!?(偏見入ってますかね!?)

このようなことは、もっと過去も含めて、たびたび起こっています。既存技術を踏み台にした技術が出てきて、元の哲学のサブセット的だったとしても、実用化されるまでに数年のラグがあることはよくあります。さらに、それが自分たちがいる世界とは別の世界で普及し始めてしまうと、疎外感を持つこともあるでしょう。

ファーストペンギンとして走ってきた人よりも、後の人たちがネイティブに活用し出すのを何度も見ていると、新しい技術が出てきても「どうせ普及しないよ」と期待度がどんどん下がり、不感症、不寛容のようになってしまうことはないでしょうか。

この姿勢の変化が実は大きな罠で、「技術が普及してから参加すればいいや」という受け身の姿勢は、結果として技術に対する関心が落ちてしまうことにつながります。その結果として、技術にコミットするよりも、それを活用する側=マネジメント側の方が楽しくなってしまうのは自然なことだと思います。

マネジメントに行くのは一つの選択肢ですが、あくまでも技術者として前に立っていたいなら、新しい技術にチャレンジし続けることは、35歳定年説を壊す上でとても大切な要素です。

若いチームで働くには「自分を認めてもらう」工夫が大事

僕の見立てでは、現時点で、僕が名前を知らない年上の人の中から、ネットをテーマに起業する人はおそらく出てこないだろう、と踏んでいます。つまり、自分が年齢的にはピークだと。ネットビジネスで人に仕える場合、自分より年下の社長の会社に出会う確率の方が高いわけです。

こちらの方が、僕個人は重要な変化だと思っています。

20代の社長が普通に活躍しているネット業界では、やっぱり40歳というスペックは、20代の人たちから見たら、相当の年上です。ヘタすれば親の世代ですし、親の年齢層を上回ってしまう日もそう遠くはありません。

かたやプログラマーという職業は、独立して外注扱いでなければ、チームの一員として働くことになります。企業の内製志向はどんどん高まっているわけですから、自分よりも10歳も20歳も若い上司の下で、彼らにチームの一員として評価されないと、輪の中に入れてもらうことはできません。

彼らは彼らで、自分よりも年上の人たちがどういう人なのかは想像がつかないわけですから、履歴書だけでは判断するのが難しいです。しかし、それは履歴書の段階で弾かれる可能性も高いということであり、そうすると自分がどういう人かを知ってもらう機会が得られない可能性もあります。

業務に没頭するあまり、内向的になりがちなプログラマーだからこそ対外アピールは意識すべき

by illustir
業務に没頭するあまり、内向的になりがちなプログラマーだからこそ対外アピールは意識すべき

これを解決する方法としては、年齢よりも前に自分を知ってもらう努力をすることしかないと思います。

特定の事業にコミットするだけでなく、そのことをしっかりブログを書いて伝える努力をしたり、オープンソースなどの外の人とのつながりを忘れないことなどもあります。

そこで大切なのは、

●若い人とうまくやっていくことに慣れること
●自分より年下が上司の世界に慣れること
●そして若いチームに評価してもらうこと

ということでしょう。

うまくチームが折り合えば経験があることは、双方にとってメリットがあります。チームがスムーズに機能するため、評価されることと、出会いの機会を増やすことへの努力はとても重要です。

なお、僕もあんまり分かってないですが、地味に体臭とか口臭とか、身だしなみはちゃんとする努力をしておかないと、ボディブローのように評価に影響するような気もしています。要するに、常に若くあれということだと思います。

いずれにせよ常に前を向く姿勢を

人は、資産を持つとどうしても保守的になります。資産とは、貯金や家などの財産はもちろんですが、会社での立場や家族や子どもというのもも意味しています。

若い人の起業論の1つに、「若いうちは失敗してもリカバーできるから」という言葉がありますが、資産を持ってないがゆえに、次のチャレンジにも必死になれるという意味も含んでいると思います。

資産を持っている人が、その資産を大切にすべく、人生の優先順位を守りの方向に変えていくのは良いのですが、35歳定年説のように、世のすべての35歳に当てはめられたんじゃたまったものではありません。

そうではなく、常に前にチャレンジする姿勢を持ちながら、残りの社会人のキャリアである20~30年を、常に変化しながら楽しむ選択も取れるようにあるべきです。

僕は会社を辞める時に、家などの資産をホイホイ捨ててきてしまいました。この先、生き残れるかどうか分かりませんし、もしかしたら、どこかでホームレスになっているかもしれません。でも、常に技術にワクワクし続けて、人が幸せになる世界に技術をベースにかかわり続けたいものです。

「インターネットがあればそれができるハズ!」という希望は、今の僕にとって、この世で楽しく生き続ける肝の部分なんです。同時に、その希望を常に持ち続けられるように、世界は平和であってほしいなと思います。

つまり、この世が幸せだからチャレンジできるんだということを意識しながら、ぜひ、チャレンジしてみてほしいと思います。大げさに聞こえるかもしれませんが、「社会はこうあるべき」というのを心に持ちながら、自分が一番高いモチベーションを得られるテーマにかかわるという人生をデザインしてみてください。

>>えふしん(藤川真一)氏の全記事はこちら




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