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ザッカーバーグのようなスゴいエンジニア社長が日本に少ないワケを、日本が誇るエンジニア社長に聞いてみた【村上福之×田中邦裕】

タグ : さくらインターネット, キャリア, 村上福之, 田中邦裕 公開

 

村上福之のキャラ立ちエンジニアへの道

株式会社クレイジーワークス 代表取締役 総裁
村上福之(@fukuyuki

ケータイを中心としたソリューションとシステム開発会社を運営。歯に衣着せぬ物言いで、インターネットというバーチャル空間で注目を集める。時々、マジなのかネタなのかが紙一重な発言でネットの住民たちを驚かせてくれるプログラマーだ

普段、エンジニアtypeでは「キャラ立ちエンジニアへの道」という連載を書いているんですが、今回は僕の話を書くんじゃなく、日本で“キャラ立ち”しているIT業界のすごい人たちと対談してみたいということで、編集部にお願いしてみました。

で、今回お話を伺ったのは、日本を代表するクラウドサービスを提供している、さくらインターネットの田中邦裕さん。技術者でありながら創業社長としてインターネット黎明期から業界を支えてきた田中さんに僕が聞きたかったのは、

「海外には元Microsoftのビル・ゲイツやGoogleのサーゲイ・ブリン&ラリー・ペイジ、Facebookのマーク・ザッカーバーグのような技術者出身のスーパースター社長がいるのに、なぜ日本ではなかなか生まれないのか」

ということ。いろいろとお話を伺っていくうちに、世界的IT企業の成功の理由と日本を代表するモノづくり企業との共通点が浮かび上がってきました。

キャラ立ちエンジニアゲスト

さくらインターネット株式会社 代表取締役社長
田中邦裕氏

1978年生まれ。高等専門学校在学中の1996年にさくらインターネットを設立し、レンタルサーバ事業を開始。99年に株式会社化し、日本全国へとビジネスを広げる。設立から6年後の2005年に東証マザーズ上場を実現

働くための「必要条件」は会社が充実させるべき

村上 今回田中さんにお会いしたいと思ったのは、ズバリ「なぜ日本にはエンジニア出身の社長が少ないのか?」を単刀直入に聞きたかったからです。どちらかというと技術系じゃなくて、営業系の創業者や社長がすごく目立っていると思うんですよね。

田中 僕自身の実感としては、仕事上でお付き合いのある方々の中に技術系出身の経営者が何人もいますので、特に少ないという印象は抱いていないですけど。ただし、確かに有名な会社さんの創業者や経営トップは、どちらかというと営業系出身の方が目立ちます(笑)。

村上 アメリカだと、MicrosoftをはじめGoogle、Facebookといったメガカンパニーのファウンダーは皆エンジニア出身です。日本でそうなっていない理由として、日本特有の課題があるのかもしれないな、と。まずは、エンジニア出身者が経営トップを務めることのメリット、デメリットについてお話しいただけますか?

田中 (Google会長の)エリック・シュミットとジョナサン・ローゼンバーグの書いた『How Google Works』を読んだのですが、あの本の中にも、エンジニアリングと経営についてものすごく苦労したことがいくつか出てきます。

村上 僕も読みました。あれはすごく参考になることが書いてありますよね。

田中 結局、個々のエンジニアが高いモチベーションを持って働ける環境をどうやって作るか? ということに尽きると思うんですよね。

村上 そうは言っても、どの会社にもクソみたいなエンジニアは居て(笑)、そういうのに限って、アタマが良いから技術もスキルも高いのに組織に埋もれてクサッているパターンが多いじゃないですか?

田中 「パレートの法則」から派生した、「2-6-2の法則」っていうのがあるじゃないですか?

村上 組織のトップ2割が優秀で6割が普通、残り2割がダメっていうやつですね。

田中 ええ。だから「上2割の比率を上げよう」とか、「下2割を減らそう」という話になるんですが、僕は違う考えを持っているんです。

村上 へぇ、どんなものですか?

田中 どの会社にもあてはまるとすると、組織全体でモチベーションや生産性が低いB社の上位2割って、モチベーションの高いA社に居る下2割の人たちレベルだと思うんですよ。

村上 なるほど。

田中 だから、組織全体がレベルアップしていけば、自動的にスタッフのレベルも向上していくと思っているんです。

村上 日本では、特にエンジニアへの待遇、処遇が低いのが原因ですかね?

田中 それは感じますね。そもそも給料が安いんですよ(笑)。ウチの会社でも、例えば欧米のトップ企業などに比べるとエンジニアの平均年収は高いとはいえません。なので、2割程度は上げたいなと考えています。

村上 それはすごいですね。

田中 エンジニアに限らず、働くモチベーションの基本に「必要条件」と「十分条件」があるとするなら、給料は必要条件で、仕事のやりがいは十分条件になります。十分条件は、組織や1人1人が見出していけるものですが、必要条件に関しては会社の側が整備していくべきだと思いますね。

エンジニアの満足度を高めるためには何が必要か?

お互いに「エンジニア社長」としての悩みや経験談を語る

村上 さっきのクソみたいなエンジニアの話じゃないですけど、日本の組織、会社ってユニークな技術やスキル、センスを持った人材を活用するのがヘタクソなような気がします。

田中 それは感じますね。特に大手企業には優秀な人材が数多くいるはずなんですが、それが組織に埋もれたままになっていて、なかなかクローズアップされないですよね。

村上 で、引き続きクソみたいなエンジニアの話ですけど(笑)、そういう人っていつのまにかCFセンターとか○○新規開拓みたいなナゾの部署に飛ばされちゃったりして、ますますイジケるっていう……。

田中 ただ、最近は大手企業からスピンアウトしてベンチャーを立ち上げたりして、若手の人材が少しずつ意欲的な姿勢を見せていると思いますけどね。

村上 でも、まだまだレアケースだと思うんですよ。何年も続くようなおっきなプロジェクトに入っちゃうと、ポジションも年収も上がらないし、転職もできないというのが現実。それに、オフショアとかの兼ね合いで人件費は安く見積もられる方向に進んでますし。

田中 うーん、なかなか難しい問題ですけど、一つ言えるのは、「コストが安い」って理由だけで地方に企業を誘致するのはやめた方がいいってことです。

村上 そういえば、さくらインターネットは北海道の石狩にデータセンターを設けましたよね。

2011年11月にスタートしていた、北海道・石狩市の「石狩データセンター」

田中 ちょうど3年になりますが、人件費や維持費が安いという理由だけで石狩に進出したわけじゃないんです。

村上 それは興味深いですね。

田中 実は北海道って大学や高専が数多くあって、技術系の人材を確保できる環境が整っているんです。

村上 そうなんですか。

田中 ですから、北海道の石狩だから給料が安いというのではなくて、東京と同じ水準の報酬で雇用しています。こういう動きが当社だけではなくて、他の企業にも広がっていけば、エンジニアのモチベーションや満足度をさらに高めていけると思いますね。

村上 ただ、エンジニアのモチベーションって難しいですよね。若い時はギラギラしていても、結婚して家庭を持ったりすると……。

田中 そう。家族で幸せに暮らしていくっていうのがモチベーションになっちゃう。だから、わざわざ地方から東京へ出てきて働くのではなくて、地元で就職してエンジニアとして活躍しながら幸せな家庭も築けるっていう環境を整えたいですよね。そうすれば会社の所在地に関係なく、優秀な人材も集められると思うんです。

村上 確かに、何事も二律背反じゃないもんですしね。

企業としての目標を誤ると組織は危うい環境になる?

村上 今、創業社長としての田中さんと、さくらインターネットという組織は良い関係にあるようですけど、こうなるにはいろいろあったんでしょ?

田中 まぁ、そうですね、順風満帆できたわけではないです(笑)。1996年に創業して、99年から本格的に事業を始めたんですが、最初はホントに技術指向の会社だったんです。ところがネットバブルがやってきまして、社内でいつしか「上場すること」が目的になっちゃったんですね。

村上 あのバブルに直面すればそうなるのもムリないと思いますよ。

田中 社内で軋轢も出てきて、いつの間にか自由で働きやすいっていう雰囲気がなくなっちゃったんです。

村上 技術やサービスよりも、おカネを集めることが目的になっちゃった?

田中 確かに、「資金調達して大規模なデータセンターを設ける」っていうのがビジョンになってしまった時期がありました。

村上 なるほど。

田中 ちょっとラフな格好で出勤してきたスタッフがひんしゅくを買ったり、組織としてグダグダになった。そういうことがありながらも、無事に2005年に上場はできたんですけど、会社として組織として自由で働きやすい雰囲気を取り戻すっていうのが僕自身にとっての努力目標になりましたね。

村上 若手が目標とする先輩がいたりして、お互いに切磋琢磨していくような雰囲気がないと、組織が腐っていきますよね?

田中 そうですね。でもその逆に、優秀な人と働いていると、自分も成長していけるじゃないですか?

村上 うん、僕も昔やりましたよ。あの人のコードをコピーして、どうしたらすごいコードが書けるのかって勉強したり。

田中 振り返ってみると、たとえ上場できたとしても、組織としてつまんない会社になってしまったら意味がないと思いましたね。ですから、対外的に面倒なことは僕が全部引き受けて、組織、社内の雰囲気が少しでもよくなるように心掛けてきましたね。

村上 とはいっても、事業やビジネスが順調で組織も成長させ続けるって難しいと思うんです。その辺は、どんな心構えで取り組んでいるんですか?

田中 僕自身の考えですが、「成長のための3要素」というのを基準にしていますね。

日本の技術者は、「つくる」「ささえる」「うる」のバランス感覚が悪い?

「エンジニア×経営」で大事な3要素を語る田中氏

田中 「つくる」「ささえる」「うる」が3要素なんですが、これとは別に、モノを売る会社って3パターンあると思うんですよ。

村上 それも3つですか?(笑)

田中 【1】価値のないモノを強い営業力で売る、【2】モノはいんだけど営業力がない、【3】良いモノを作っていて営業力も高い。この【3】を達成できている企業はトヨタ自動車とか村田製作所などがあります。トヨタや村田製作所は、1円でもコストを下げて、1分でも早く製造して、部品の数を1個でも減らし、0.1%でも不良品率を下げようという努力を日々しているわけです。こういうところは見習うべきですね。

村上 スタジオジブリの『天空の城ラピュタ』に、「鳥とともに春を歌おう」というフレーズが出てきますが、「工場とともに伸びよう」という雰囲気なんでしょうね、きっと。エンジニアが陥りがちだけど、良いモノさえ作っていればいいわけではなくて、「ささえる」「うる」も重視すべきだと?

田中 ええ。「つくる」「ささえる」「うる」がそれぞれ1/3くらいのバランスが理想ですね。そして、これが冒頭の福之さんの質問に対する答えにもなるんだと思うのですが、この3つをバランスよく持てる人が、おそらく日本の技術者にはほとんどいない。特に、「うる」の部分が軽んじられてしまうがために、会社の規模もなかなかスケールしないんじゃないでしょうか。

村上 なるほど。

田中 エンジニア出身だからこそ、スタッフが陥りがちなジレンマも分かりますし、どんなことがモチベーションアップにつながるかも理解しているつもりです。そういう意味ではエンジニア出身で良かったと思うことは多いですが、他方で経営者としては、それ以上に「うる」部分の責任を負わなければいけない。

村上 日本の技術者社長がみんな田中さんのような感覚を持っていたら、世の中のエンジニアがもっと幸せになりそうです。今日は貴重なお話をありがとうございました。

文/ 浦野孝嗣 撮影/小禄卓也


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