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スマホゲームにヒットの方程式はある?ヤフーのグループ会社GameBankのCOOが見据える「3周遅れ」からの勝機

タグ : GameBank, オンラインゲーム, スマデバファースト, ヤフー, 椎野真光 公開

 

2012年4月に宮坂学氏が新CEOに就任して以来、「スマデバファースト」を掲げてきたヤフー。今回、その新しい一手として発表されたのが、ゲームパブリッシング事業への参入だ。今年1月、モバイルオンラインゲームの開発などを手掛ける「GameBank株式会社」を新たに設立した。

しかし、このタイミングでの新会社設立に違和感を感じた人も少なくないはずだ。スマホゲームの領域では、すでにガンホーやmixi、コロプラなどが大ヒット作を世に生み出している。この牙城を崩すことは、国内インターネット業界の“巨人”、ヤフーといえども簡単なことではないだろう。

今回話を聞くことができたGameBankのCOO椎野真光氏の認識も、「正直、3周遅れ以上の出遅れ」というもの。にもかかわらず、その遅れに対し、「爆速」をも越える事業成長での逆転に、強い自信を見せている。

椎野氏といえば、前職のセガネットワークス時代に本格スマホRPG『Kingdom Conquest』のプロデューサーを務めた人物だ。同作は2011年のApp Store無料ランキングで138日間1位を記録。フランス、イタリア、台湾など様々な国でも支持を集めるなど、世界的なヒットを記録した。

こうした経験を基に、椎野氏はこう考えている。博打のように捉えられがちなスマホオンラインゲームの世界だが、「ヒットの方程式」は存在する、と。

分社化により“弱点”を克服。ヤフーの強みを最大限に活かす

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「セガではオンラインと名のつくもの全てを経験してきた」と語るように、椎野氏は1998年に発売された家庭用ゲーム機ドリームキャストや、アーケードのネットワークゲームに始まり、モバイル登場後の2000年台には、人気ゲーム『J.LEAGUE プロサッカークラブをつくろう!MOBILE』のプロデューサーも務めた。

そんな「オンラインの伝道師」ともいうべき椎野氏が新天地として選んだのが、スマデバ戦略の一環として水面下でゲームパブリッシング事業を進めていたヤフーだった。

「ヤフーで新しいオンラインゲームビジネスを立ち上げて欲しい。これが、私に投げられたボールでした」

新たな挑戦に着手した椎野氏は、手始めに会社の内側からヤフーについて調べ尽くした。その結果、ゲーム業界で勝つためには致命的な2つの“弱点”を見つけたという。

「まず、大企業ゆえの承認レイヤーの多さがスピード感のある開発の障害になると感じました。また、ヤフーは広告ビジネスで拡大した組織ですから、ハイリスクハイリターンのゲームビジネスに不慣れな点も感じました。そのため、当初はヤフー本体の中で事業を展開する予定でしたが、かつてセガがセガネットワークを切り出したように、分社化して新会社を作ることを進言しました。入社して4、5カ月目くらいのことです」

しかし、そうした“弱点”を認識しつつも、椎野氏は同時に、ヤフーであれば自身が考える「ヒットの方程式」を体現できるとも感じていた。

「カジュアル系のゲームをヒットさせるには確かに運が必要ですが、MMO系のゲームにはヒットのセオリーがあります。もちろん、質の高いゲームをつくること、マネタイズの仕組みやタイミングを間違えないことは前提。その上で、『送客で全てが決まる』と言っていい。

ただし、この『送客』こそが最も難しい。TVCMなどの露出が必要ですし、大規模な広告費がネックになる。しかしその点、ヤフーは国内最大のポータルサイトをマスメディアとして最大限に活用することができる。これが何よりも強い武器になるのです」

スマホ時代、日本が再びオンラインで勝つチャンスがやってくる

歴史的に見て、日本は韓国や中国などに比べて、オンラインゲームの分野で出遅れてきた。韓国や中国では据え置きゲーム機が輸入できず、PCオンラインゲームが主流となっていったのに対し、日本では『ドラゴンクエスト』や『ファイナル・ファンタジー』などの据え置き機のゲーム文化が十分に根付いていたためだ。

しかし、スマホが普及したことにより、その勢力図が変わる可能性があると椎野氏は言う。

「2013年にスマホで『剣と魔法のログレス』がリリースされて、初めてMMORPGに触れたという人がたくさんいます。GameBankとしてやるべきことは、こうした新しいゲームユーザーを増やす仕組みを考えることなんです。

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ゲームを作るだけではなく、遊ぶユーザーを増やすと語る椎野氏

今、日本にはオンラインゲームの開発者が少ないという課題がありますが、この状況を解決するには、多くの人に子どものころからオンラインゲームに触れ、その楽しさを感じてもらう必要がある。そうした地道な努力が、オンラインゲームの未来の作り手を増やし、PCオンラインゲームでは韓国や中国に水をあけられた日本が、スマホオンラインゲームで巻き返す礎になると考えているんです」

こうした壮大な構想の下に、GameBankは今後、2段階の施策を実施していくという。

「まずは、ヤフーの送客をフルに活用し、『すでにオンラインで遊んでいる層』に向けて、今あるゲームの0.5歩先を行くような、ハードコア系のコンテンツをリリースします。独自で開発するものと同時に、海外ゲームのライセンスを取得し、日本向けにアレンジして提供します。ヤフーの知名度は、海外作品を預かる面でも優位に働くでしょう。

その次の段階として、『まだオンラインゲームで遊んだことがない層』にリーチします。この層にGameBankが提供するコアなゲームが受け入れられるのかというのは、もちろんチャレンジングな領域です。ここでヒット作が生まれた時が、GameBankがスケールする時だとにらんでいます」

ゲーム業界に漂うネガティブな空気を変える

この2月に創業したばかりのGameBankだが、すでにゲーム業界の経験者約30人の採用に成功しているという。開発部門は主にコンシューマーゲームの開発経験者、運営はPCオンラインゲーム出身者で固められている。

ゲーム業界経験者が、ここまでGameBankに集う理由は2つあると椎野氏は考えている。

「日本でGameBankのようにオンラインゲーム専門のパブリッシングを行っている総合ゲーム会社は、数えるほどしかありません。海外から預かるタイトルだけでなく、自社作品の開発にも携われる環境は魅力的に映るようです。

また、GameBank発のアプリのユーザーは、母体となるヤフーのユーザー全てが対象になります。おそらく、ゲーム開発に携わる全ての人は、自分の作ったゲームをより多くの人に楽しんでもらいたいと思っているはず。GameBankが、それを実現できる可能性を秘めた会社であることは確かでしょう」

長くゲーム業界に身を置いてきた椎野氏には、国産コンシューマーゲームの不振や「コンプリートガチャ規制問題」など、ゲーム業界全体を包むネガティブな空気を変えたいという思いがあるという。

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ゲーム開発環境を変化させ、スマホオンラインゲームで世界展開を目指すとのことだ

「近年、ソーシャルゲームが流行した時代がありましたが、SAP(ソーシャル・アプリ・プロバイダー)出身のゲーム関係者に対して思うところもあります。一つは、(本来は総合芸術としての側面もある)ゲームをビジネスとして捉えすぎていること。もう一つは、少人数でゲームを作ることに慣れすぎていて、10億円規模のゲームを大人数で作ることに不慣れであるということです」

世界を舞台に日本の巻き返しまで視野に入れている椎野氏が、近年は不遇を囲っていた感もあるコンシューマーゲームの開発経験者を重用しているのは、そのためだ。開発体制に関しても、海外で通用するオンラインゲーム作りという観点から、日本によくある一人のスーパークリエイターに依存した体制ではなく、ハリウッド式と呼ばれる専門特化型の分業体制を構想している。

「GameBankは『スマデバファースト』の一環として生まれましたが、将来的にはそこに留まるつもりはありません。スマホアプリでのオンラインゲームからスタートしつつ、ゆくゆくは総合的にゲームをリリースしていく予定です。また、技術者を集めてゲーム開発のノウハウを取り入れるだけでなく、ゲームが本当に好きでチャレンジしたい人に、我々のノウハウを伝えていきたいとも思っています。いい仲間たちと、他社が真似できないような、ハードコアでやりこみ要素の高いゲームを量産していきたいですね」

もちろん、ここに語られたことはまだ、構想に過ぎない。現時点で、GameBankの成功を信じられない人も多いことだろう。

だが、『パズル&ドラゴンズ』の山本大介氏、『モンスターストライク』の岡本吉起氏のように、3000万以上のDLを記録したスマホゲームは、いずれもコンシューマーゲーム業界出身者の手により、生み出されてきた。

今後、椎野氏の手によってGameBankはどのように飛躍するのか。まずは、2015年春に予定されるという第1弾タイトルのリリースを待ちたい。

取材・文/川野優希(編集部) 撮影/赤松洋太




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