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ネットが「みんなのもの」になって、開発は何が変わったのか【Geek Shift:えふしん×増井雄一郎×大場光一郎】

タグ : 35歳限界説, BASE, Geek Shift, えふしん, クラウドワークス, ツイキャス, トレタ, 増井雄一郎, 大場光一郎 公開

 

スマホやタブレット端末の急速な普及や通信技術の発展に支えられ、Webはいよいよ「みんなのもの」になった。さまざまなジャンルのビジネスで、ネットやアプリが事業の中軸となりつつあり、これまで非IT領域と思われていた領域にも浸透し始めている。

そんな潮流の中で、これからの開発者にはどのような力が求められるのだろうか?

こんなテーマで1月18日に弊誌が開催したトークイベント「Geek Shift~新しい開発者のキャリアを考える」では、三部構成で今後のエンジニアリングについて議論した。

第一部の【ネットが「みんなのもの」になって、開発はどう変わっていくのか会議】では、弊誌寄稿陣の1人で『BASE』、『ツイキャス』の技術顧問を務めている藤川真一(えふしん)氏と、最近はトレタで飲食店の予約システム改革に挑戦している増井雄一郎氏、そして今年1月にクラウドワークスの新CTOに就任したばかりの大場光一郎氏が登壇。

長年Webサービス/各種ツール開発に携わってきた3人に、何がシフトしているのかを縦横無尽に語ってもらった。当日の模様をダイジェストでお伝えしよう。

パネラー

藤川真一氏(えふしん)

FA装置メーカー、Web制作のベンチャーを経て、2006年にpaperboy&co.へ。ショッピングモールサービスにプロデューサーとして携わるかたわら、2007年からモバイル端末向けのTwitterウェブサービス型クライアント『モバツイ』の開発・運営を個人で開始。2010年、想創社(現・マインドスコープ)を設立し、2012年4月30日まで代表取締役社長を務める。その後しばらくフリーランスエンジニアとして活躍し、2012年11月6日に想創社(version2)設立

パネラー
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株式会社トレタ 最高技術責任者/ミイル株式会社 最高技術責任者
増井 雄一郎氏

大学時代に起業し、2003年にフリーランスへ。Ajax、Ruby on Railsなどを使ったWebアプリやOSS開発、執筆活動などを行う。2008年に渡米、中島聡氏とともにアプリ開発会社を起業。2010年に帰国し、Titanium Mobileの伝道師として活躍。2012年秋から現職に就き、「食とIT」の架け橋となる各種サービスを展開。ブログ『@masuidrive blog』でも情報発信を行う

パネラー

株式会社クラウドワークス 執行役員CTO
大場 光一郎氏

2014年1月に、クラウドソーシング大手『クラウドワークス』の新CTOに就任したプログラマー。伊藤忠テクノソリューションズを経て2011年に転職したグリーでは、開発本部インフラストラクチャ統括部に所属。オープンソースコミュニティでも活躍し、RubyおよびJRubyの発展に貢献。共著に『たのしい開発 スタートアップRuby』、『Ruby on Rails逆引きクイックリファレンス 』がある

Webで既存産業を変えるのは“これまでの技術者”だけでは難しい

ネットが「あたりまえ」な時代の変化について議論する3人

【トークテーマ1】
「Webがあたりまえ」の時代になって、サービス開発はどうシフトしているのか?

えふしん まず、一つのサービスに対するトラフィックの集まり方がすごく変わりましたよね。SNS経由で爆発的にトラフィックが増えるサービスと、そうでもないサービスとの差が広がっているというか。採用面接でも、例えばPHPやRailsでの開発経験は評価できても、大規模トラフィックをさばいた経験がなくて二の足を踏んでしまうケースが出てきたと聞きます。

―― トラフィックの処理でいうと、ガラケーからの利用者も少なくなかった『モバツイ』と、スマホユーザーが主体の『BASE』、『ツイキャス』とでは、ずいぶん違うものですか?

えふしん スマホアプリのTwitterクライアントだとクライアントサイドでTwitter APIに直接アクセスできますが、『モバツイ』はすべてのリクエストがいったんモバツイのサーバを通るようにしていたので、「あけおめツイート」や「バルス」のように瞬間的に負荷がかかるタイミングでは、サーバ増設などの対応をする必要がありました。

とはいえ、『ツイキャス』なんかと比べれば、それもたいしたトラフィックじゃない。動画のライブ配信サービスは、テキストコミュニケーションよりもはるかに大きな負荷がかかりますから。自社サーバとクラウドサーバのハイブリッド運用など、新旧のテクノロジーが必要になっています。

大場 大規模なトラフィックをさばく知識が必要になっているのは間違いないと思いますが、それだと、伸びてるサービスに携わったことがないエンジニアには先がないということになっちゃいませんか?

―― そういうサービスの開発に携わる機会は、皆にあるわけではないと。

大場 現実的にはそうだと思います。それと、話が逸れるのですが、前にえふしんさんが「Webがあたりまえの時代になると、エンジニアには“違う筋肉が必要になる」って(エンジニアtype連載に)書いていたじゃないですか。

えふしん ええ。

大場 個人的に、あれが腑に落ちなくって。今日、真意を聞きたかったんですよ(笑)。僕、エンジニアって知的労働者だと思うんですね。だから、「Webがあたりまえの時代」になったのは同意できても、脳みそを”筋肉”って表現するのはちょっと違うんじゃないかと。なんで“筋肉”と表現されたんですか?

今後必要となるであろう“違う筋肉”の意味を説明するえふしん氏

えふしん えっと、あの記事、どんな文脈で書いたんでしたっけ(笑)?

―― 企業にとって、かつてのインターネットは「広報・宣伝目的」で使うケースが多かったけれど、今は本業そのものに直結した形で利用が進んでいるから、今後エンジニアもビジネスの本丸にかかわっていかざるを得なくなる、という流れの中で出てきた表現でした。

えふしん そうでした(笑)。あの記事で“筋肉”という表現を使ったのは、ちょっとした煽りというか。エンジニアはもう、技術のことだけを見ていればいいという考え方ではダメなんじゃないかという持論を、強調して伝えたかったんです。

大場 なるほど。Webがビジネスの本丸と直結するようになっているのは、その通りですね。

えふしん (Geek Shiftの第二部に登場した)日交データサービスさんが提供する『全国タクシー配車』などは、その典型例だと思うんですよ。電話しなくてもタクシーが呼べる便利なアプリですが(編集部注:全国タクシー配車の開発秘話はこちら)、仮に誰かがあの成功を再現しようと思っても、“これまでの技術者”だけで実現するのは難しいと思うんです。

ああいったアプリを既存産業の中に上手く取り入れるには、ビジョンを説明できる優秀な経営者だったり、ビジネスサイドとの調整を行う人たちが必要です。もし、スタートアップとかでそういう役回りの人が別にいなければ、CTOなりエンジニア自身がやるしかない。

―― 増井さんはどうですか? 2012年まで『Titanium Mobile』のように“エンジニアのための開発”をやっていたのに、今はトレタで飲食店向けサービスの開発を手掛けていらっしゃいます。変わった点も多々あると思うのですが。

増井 ええ、『Titanium Mobile』はオープンソースコミュニティを通じてテクニカルな部分で貢献をしているうちに、「ウチに来ないか」と誘われたんですね。一方でトレタの場合は、『豚組』などのレストランオーナーでもある代表の中村(仁氏)が日常感じている、効率化への要望や問題意識に応えながら、皆に使ってもらえるサービスにするための技術的な刷り合わせ役として入りました。

あらゆる飲食店の予約をタブレット1台で行えるようにと開発された『TORETA

えふしん 入社の経緯も役割も、ずいぶん違いますね。仕事のやり方は、具体的にどう変わりました?

増井 今話した中村との刷り合わせ、つまり代表がやりたいことを技術的に可能かどうか“翻訳”しながらチームで機能開発を行うなど、コードを書く以外の仕事が増えましたね。

ただ、そういう役割をするようになった理由の一つには、同じプログラムを組むのに、以前より少ない労力で済むようになったことも関係していると思っています。

大場 というと?

増井 今はクラウドサーバがあって、ネット上にいろんなフレームワークもそろっているので、開発の難易度自体がすごく下がっているじゃないですか。1人でできることが増えて、プロジェクトにかかわる人数も少なくて済むようになると、プログラマーには(事業についての理解を含む)幅広い知識や、ビジネスサイドへ最適なモノを提案する能力も求められるようになると思うんです。

フルスタックなエンジニアになるための方法論あれこれ

増井氏は、開発環境そのものの変化がサービス開発にもたらした違いを示唆

―― その文脈に合わせて質問すると、去年あたりから「フルスタック」なんて言葉もバズワード的に使われ始めていますね。

増井 クラウドサーバや各種フレームワークを使いこなすのを前提に考えれば、サービスの正常稼働時に要求される技術的なハードルが下がっているのは間違いない。そういう意味で、フルスタックが可能になったという一面は多分にあると感じています。

大場 とはいえ、最近はシステム開発の抽象度が非常に高くなっていますよね。

えふしん 手掛けるサービスの哲学的な話から、システムの下回り話まで、幅広く把握して開発しないとダメというか。

大場 そうなんです。だから、今まで一機能の開発を担当してきたエンジニアが、すぐにフルスタックになるのはやっぱり難しいだろうと思います。

―― じゃあ、現実的にはどうすれば?
(次ページへ続く)


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