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データドリブンで「ネットのテレビ化」と向き合う~Gunosy創業陣に聞く、開発スタイルの進化とこれから

タグ : Gunosy, スタートアップ, データ解析, ニュースアプリ, 開発チーム 公開

 

(写真左から)Gunosy共同創業者の吉田宏司氏と関喜史氏、代表取締役最高経営責任者の福島良典氏

Gunosy(グノシー)が今、話題を振りまいている。

2011年10月、ソーシャルメディアへの投稿内容や日々のつぶやきからパーソナライズされた情報を自動で配信するWebサービスとして登場したGunosyは、その後のiOS/Androidアプリのリリースに始まり、機能とUIを全面刷新したメジャーアップデート、大型資金調達やTVCMの開始を経て、2014年8月末には総ダウンロード500万突破を発表。

わずか2年半で国産ニュースアプリとして押しも押されぬ存在となり、経営面での動向がYahoo!トピックスに取り上げられるまでになった。

だが、急激な成長と変化の渦中で、変わっていないことが一つある。「自分たちが欲しいサービスを作る」とGonosyを生み出した福島良典氏、関喜史氏、吉田宏司氏の創業メンバー3人が、今なおサービス開発の陣頭指揮を執っていることだ。

リリース時、まだ東大の大学院生としてデータマイニングを研究していた彼らは、いかにして日本有数のニュースキュレーションアプリを育ててきたのか。

改めて3人に、Gunosy開発のこれまでとこれからを聞いた。

「価値のテスト」に重きを置くスタイルに

まず、500万DLを超えた現在のユーザー動向を尋ねると、男女比が57%:43%とのこと。年齢も若年層から上は60代まで広がっており、文字通り老若男女がGunosyを利用している。

>> Gunosyのユーザーリサーチデータはこちら(PDF)

2014年9月2日にGunosyが発表したユーザーリサーチデータの一部

ユーザーの地域分布は出ていないが、地方でも積極的にTVCMを打ってきたことから、全国に広がっていると推察される。

その過程で、開発スタンスとして最も変わったのは、「Gunosyが『僕らの欲しかったもの』から『幅広いユーザーに情報を届けるもの』になった点だ」と代表の福島氏は言う。現在プロダクトの全体統括を行っている福島氏はもちろん、開発チームの2トップである関氏と吉田氏の役割も大きく変化した。

以前は関氏が主に独自キュレーションエンジンのアルゴリズム設計を、吉田氏がアプリ開発を中心に行っていたが、開発チームが約20人に増えた今、2人はユーザーの行動分析とキュレーションロジックの改善に注力。Gunosyが最重要視しているKPIである

【1】 ユーザー満足の指標として見続けているDAU(デイリーアクティブユーザー)数
【2】 長く使い続けてもらうための指標として追っているN日後継続率

を向上させるため、分析・テストを2人が行い、実装はアプリ開発チームに任せるという分業体制を敷いている。

「開発はトップダウンのプロデューサー型ではなく、メンバーそれぞれが起案して進められる形になっています。ただし、現在ユーザーが急増する中で『価値検証』の品質を高めるため、分析作業についてはチーム全体での分業を推進しているんです」(関氏)

ユーザー層が広がれば、追うべき数値やデータ項目が飛躍的に増えるのは自明の理。膨大なログ情報からユーザーのアプリ内行動を詳細に分析し、スピード重視で利便性を高めていくため、分業スタイルを選んだわけだ。

「例えば、さまざまなジャンルの記事が読まれることがDAU向上につながるという仮説に基づいて、スワイプの回数を増やす施策を計画したとします。その結果DAUの向上につながらなかった場合、施策が悪かったのかそもそも仮説が間違っていたのかは、やはり検証しなくては分かりません。だから僕らは、提供しているサービス上でA/Bテストをまず実行、データを何項目にもわたって分析し、数字で価値を判断する文化を作ってきました」(関氏)

ポイントは、正式リリース後の反応を見て改善を行うのではなく、原則として一部抽出ユーザーへの小さなテストを重ねている点だ。

機能追加やUI変更前のA/Bテストを担っている吉田氏も、「施策の是非はユーザーにその価値を決めてもらうべきだ」と説明する。

「テストの内容にもよりますが、基本的には新規ユーザーの中から属性ごとに一定数のグループを抽出し、彼ら彼女らの利用動向を分析して施策の有効性をチェックするようにしています。新規ユーザーを中心にテストを行うのは、変化そのものに対するネガティブな反応を排除した上で施策の価値を計測するため。分析と検証のやり方は、狙いと状況に応じて最適な手法を採るようにしています」(吉田氏)

アド事業の展開でも、売上がサービスのKPIより優先されることはない

Gunosy が新たに展開するネイティブアド商品『Gunosy Native Ads』

2013年11月から開始したスポンサー広告の掲出や、今年10月に開始するという独自のネイティブアド商品『Gunosy Native Ads』に関しても、こうした緻密な行動分析と検証をベースに適切な表示法を模索していると3人は言う。

一連の広告提供に関する戦略は、Gunosyが企業として存続していく上で生命線になるが、「DAUが下がるような売上の上げ方はしない」、「ユーザーの離脱率が急激に上がるような広告露出は避ける」という価値基準は崩さずに分析・検証を続けてきた。

「価値って、つまりユーザーに使われるかどうかだと思うんです」(福島氏)

この観点で開発を推し進めていく過程で、用いるツール類や情報共有のやり方も、より使いやすいシンプル・イズ・ベストな方向に変わってきたと関氏は話す。

「僕らはデータ解析の基盤にAmazon Redshiftを使っており、データの可視化についてはPythonを使うことで実現しています。でも、本当に重要なのは『誰でも見られる』ことではなく、『誰もがデータを加工、検証できる』ことで、そのためには案外Googleスプレットシートに書き出した方がよかったりする。作り込み過ぎて誰も使わなくなるツールには価値がないんです」(関氏)

ほかにも、抽出したデータから異常を探知しHipChatにbotとして投稿したり、Qiita:Team上にクエリを乗せておき誰でも再実行できるようにしておく場合もあるという。大事なのは、分析から施策立案までの時間を短くすること。たくさんデータを出しても、見られなければ意味がない。

「だからなるべく手間を掛けず、チームの生産性が最も高くなる方法でデータを分析・共有できるようにしています」(福島氏)

さらに、以前は社員数が増えたことで開発陣とビジネス側のチームが別々に行っていた進捗確認ミーティングも、「3か月前からそれぞれの発表内容を5分に簡略化して毎朝全員で行うようにした」(福島氏)そうだ。

非常にアナログなやり方ではあるが、先に挙げたGunosyのKPIを全員で共有するにはこれが最もシンプルな方法だと実感している。

「ネットのテレビ化」は、Webの常識を過去のものにする

「自分たちが欲しかったもの」として作ったGunosyが、日本全国の人に使われるようになったことを「驚きだった」と話す3人

こうして開発、組織運営の両面で工夫を積み重ねながらGunosyが目指すのは、スマートフォンの普及で「ネットユーザー」という言葉が指すもの自体が変容した時代をサバイブしていくことだ。

「黎明期のGunosyを使ってくださっていたユーザーを、FacebookやTwitterをアクティブに使いこなす『ネットに詳しい人たち』だとすると、今のGunosyを使ってくださっているユーザーの多くは、それほどITに慣れ親しんでこなかった『普通の人たち』と言えるでしょう。だからこそ、”Web開発者”の常識で物事を判断しても、正しい答えは導けないと思っています」(関氏)

福島氏は、こうした傾向を「ネットのテレビ化」と表現する。

「スマホの登場後、ネットコンテンツへの接し方は明らかに変化しています。PCでの検索による能動的な情報取得から、SNSを中心とした受動的な情報取得になっているのもその一つ。人々がコンテンツという形で直接欲しい情報に出会うようになっている時代に、『つなぎ役』としての役割を担うことが、今後のGunosyの進む先だと考えています」(福島氏)

メジャーアップデートや広告露出の決断をした際は、以前のGunosyのサービス内容とギャップがあり過ぎるのではないかという意見が社内からも出ていたそう。だからこそ、大きな方針転換の場合であっても、小さなテストによる検証を欠かさなかった。

その結果を基に、「Gunosyがやるべきことは今の時代にあった形でより多くのユーザーに情報を届けること」(福島氏)というポリシーで、彼らは“変えること”を選んできた。

「やるべきかどうか悩むより、まず小さくやって検証してから全体の意思決定をするのが僕らのやり方。ユーザーの行動にどんな変化を与えたかを詳しく分析し、その結果DAUや継続利用率にどれだけ貢献したかを徹底的に検証することで、チーム全体の成功確率を高めていく。こうして、共通言語としての『数字で判断する文化』を大事にすることで、社員数が増えてもそれぞれが適切な判断をできるチームでいられると思っています」(関氏)

Gunosyは今年度中に、現在の社員数30名から倍以上となる80名体制への移行を目指して採用を進めている。「数字が公用語」、「データドリブンな開発姿勢」を標榜する彼らの方法論が、今後どのような形で継承され発展していくのか。興味は尽きない。

取材・文/武田敏則(グレタケ) 撮影/伊藤健吾(編集部)




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