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「大切なことは、“動機”を持てるかどうか」糸井重里イズムを受け継いだ、『ほぼ日』宇宙部の仕事論

タグ : ほぼ日, エンジニア採用, 宇宙部, 糸井重里, 開発 公開

 

―― インタビュー前編では、1日140万PVを記録する『ほぼ日』を支える宇宙部の開発体制についていろいろとお伺いしました。今回は、皆さんの仕事論について伺ってみたいと思います。まずお聞きしたいのが、『ほぼ日』で働くことのユニークさについてです。

佐藤 そうですね。おそらく、システム開発や運営の仕事をしていると、読者やユーザーにはどんな仕事をしているか、ほとんど伝わらないのが普通だと思うんです。

それが『ほぼ日』では、裏方である僕たちがコンテンツに登場することがあるので、読者の方々から僕たち宛てに応援メールが届いたりするんですよ。『ほぼ日』で作っているコンテンツに対して、「宇宙部の人が頑張って作ったんだな」と思ってくれる読者さんがいるというのは、ほかのWebサービスとの大きな違いだと思います。

社内・外の両方から声をもらえるというのは、僕がこの職場に惹かれているポイントでもありますね。

川本 僕もそれは感じます。仕事の内容そのものは、これまでにいた会社や世間一般と大きな差があるわけではないんです。それでも、読者の皆さんが宇宙部の存在を知っていて、応援してくださっている。それがダイレクトに僕たちに届くのはすごく魅力的ですね。

―― 確かに『ほぼ日』で宇宙部の皆さんが登場するコンテンツを時折見掛けます。そのおかげもあってか、ちゃんと宇宙部の3人が作っているんだぞと、作り手の顔が見えるWebサービスというイメージがありますね。

「プロジェクトを進行する時も、明確な目的があるから迷わない」と柳沢氏

沢柳 僕が転職してきて感じたのは、『ほぼ日』の乗組員はみんなやりたいことが明確だということ。受託開発をしていたころは、クライアントとのやりとりがうまくいかず大小さまざまなトラブルがあったりしましたが、『ほぼ日』ではみんな明確に相談してくれるから、こっちも提案しやすいんですよね。やりたいことに対する強い動機を持って相談しにきてくれるため、信頼もできますし。

大高(同席していた「読み物チーム」の乗組員) 宇宙部の3人は、すごく相談しやすいんですよね。わたしたちのやりたいことに対しても「面白いね」と興味を持って新しい視点を提案してくれたりして。面白いという感覚が近いのかな……。

佐藤 いや、むしろ面白さの感覚はみんなちょっとズレてるんじゃないかなぁ。

川本 個性がそれぞれあって、ほどよいバラつきはあるんじゃないですかね。でも、コンテンツを作る時には全員が読者の方向を向いて作っている。読者にどうやって喜んでもらうかというところで議論をしているから、芯の部分で持っている意識が一緒なんでしょうね。

「作って終わり」じゃないから技術的な挑戦が大切

―― チームが違っても組織の中で共通の意識を持つのはすごく大切ですね。ところで、宇宙部が読み物チーム(※編集部注:コンテンツを企画・編集するチーム)に「もっとこうした方がいいんじゃない?」という提案をすることってあるんですか?

佐藤 ありますね。『ほぼ日』では時々USTREAMでライブを配信していて、最後にエンドロールを流しているんですけど、そのエンドロールにTwitterでつぶやいてくれた人たちのIDを流す、ということを始めたんです。Tweetを集める仕組みは作ってあったので。今では定番化しています。

大高 つぶやく人が多いから、すごい長くなっちゃったんですよね、エンドロール(笑)。

一同 爆笑

川本 初めて導入した時は1時間近くエンドロールを流すことになってしまったので、その次からは速度調節機能を入れたりして、少しずつアップデートしているんですよ。

―― 作って終わりではなく、作った後に細かい部分の改善を行っているんですね。

佐藤 あと、これはなかなか分かってもらえないんですが、『ほぼ日』って実は技術的な挑戦もしているんですよ。動きのあるコンテンツが多かったり、裏では凝った仕組みにしたりしていて。

一年ほど前の話ですが、3人でほぼ日ストアのコードをイチから書き換えて全面リニューアルしました。毎年9月に『ほぼ日手帳』の販売を開始すると、販売初日に1時間で4000件の予約があるほどで。手帳以外のページにもたくさんの読者がアクセスしているので、トランザクションやアクセス数がものすごいんです。その状況でページが開きづらくなるのをなくすために、全面リニューアルに踏み切りました。

―― それはすごいですね。少し話は変わりますが、宇宙部の皆さんは普段どんな風にコミュニケーションを取っていらっしゃるんですか?

佐藤 僕たちは、短いMTGが多いですね。朝会と夕会と言って、それぞれ15分くらい話をしています。

―― そこではどんなお話をされているんですか?

沢柳 前日やったことの問題点や今日やること、あとは最近興味があることなどを話しています。

川本 最近盛り上がったのはRaspberry Piの話題です。ドライブレコーダーとかいろいろ作れるのはすごいと。。

佐藤 値段も手頃で、秋葉原に中古のパソコンを買いに行ってたころを思い出しました(笑)。自宅用に一つ買って、今はFAXサーバとして使っています。

沢柳 Raspberry Piもそうですが、仕事の空き時間に技術の動向をチェックしたりして、3人でシェアしています。とにかく会話の量は多いかもしれないですね。

―― そうなんですね。

佐藤 HipChatというチャットアプリを使って情報共有するだけでなく、デプロイの通知を出したり、GitHubでプルリクエストを出したりして、オンラインでのコミュニケーションも取っています。

「動機・実行・集合」を回すのが、『ほぼ日』流のシゴト

―― ちなみに席は皆さん固まっていらっしゃいますよね?

開発チームでも席が1つのエリアに固まっているわけではない。それもほぼ日流の開発体制だという佐藤氏

佐藤 いや、席はチームに関係なく年に2~3度くじ引きで決めているんですよ。

―― ということは、宇宙部はバラバラに座ってるんですか!?

佐藤 そうですね。たまたま一緒になることはあるんですけど。

大高 宇宙部の人たちが遠いところにいるとわたしたちも相談しづらかったりするんですけど、近くに誰かいるので、ちょっとしたことでも声を掛けやすいんですよね。

沢柳 そうですね。声を掛けてくれて、すぐ解決できそうな相談だったらそのままお手伝いしますし、ちょっと時間が掛かりそうだったら、「宇宙の窓口」担当に回したりして、けっこう柔軟に対応しています。

―― 一つのフロアにいながら開発チームが物理的に遠い距離にいるのは面白いですね。あと、ユニークさという点で一つ挙げるとするなら、社長があの糸井重里さんというのは外から見ていて興味深いのですが、やはり糸井さんの影響力は大きいですか?

佐藤 そうですね。冒頭で川本も言っていましたが、一つ一つの仕事を見ていくと特別なことをしているわけではなくて、今のトレンドにあったやり方で開発しています。違いを挙げるとすれば、糸井がいつも言う「動機を持ってやれるかどうか」ということをみんなが大事にしている、ということですかね。

受託でただ仕事をこなすのではなく、人が出したアイデアに対して、「それに自分たちのこのアイデアを乗っけてみよう」といった風に自分がその仕事をやる動機を作るようにはしています。これをウチの会社では「動機・実行・集合」を回すと言っています。

―― なるほど。では、例えば読み物チームから仕事の相談が来て、「面白いね」となればそこから動機が生まれるということですか?

佐藤 最初から面白いと思えれば、もうそこで動機は生まれているんですけど、やっぱり、すべてがそう思える仕事というわけではなくて(笑)。それってどうなの? と思う依頼が来た場合は、「もっとこうした方が面白くなるんじゃない?」と自分なりのアイデアを提案してみたり、新しい技術を試す場にしてみたりすることで、自ら動機を作っています。

極端な話ですが、社内で完結しているコンテンツだと、「迷惑を掛けても社内だから」という思いでチャレンジができますね。

川本 チームで仕事をする時には「いかに一緒に読者を喜ばせられるか」を考えることが僕の動機になっていますね。繰り返しになりますが、読者の方々に喜んでもらえるようなモノを作るのがやっぱり大切だと思うので。

相手がいるのが仕事で、相手を喜ばせるのが働くということ

―― 一つ、抽象的な質問をしてもいいですか? 『ほぼ日』は、先日まで渋谷パルコで「はたらきたい展。」を開催するなど、「はたらく」ということについて真剣に向き合っていらっしゃるんだろうなと思っているのですが、宇宙部の皆さんが働く上で大切にしていることって何ですか?

佐藤 難しいですね……。僕は役に立つことができればいいかなと思っていて。極端な話、それはエンジニアとは関係ないことでも僕はいいと思っているんです。自分にできることがあれば何でもやりますよ、というスタンスですね。

沢柳 僕はバランスが重要なんじゃないかなぁと最近思っています。面白いと思えることと、やらなければいけないこと、どっちかが多過ぎてもあまり良くないかなと思うんです。言葉で表現するのは難しいんですけどね。

川本 僕にとって大切なことは、一緒に仕事をするパートナーとの信頼感が大切なんじゃないかなぁと思います。例えば、お客さまに喜んでもらえるようなコンテンツを作るために、ガチガチのスクラムを組むわけじゃなく、お互いの専門領域を信頼した上でモノづくりを進める。それが結果的に良いモノを作るためのスパイスになって、動機にもなるんじゃないでしょうか。

―― 皆さんお話されている内容は違いますが、根底にはお客さんがいらっしゃって、そのお客さんが喜んでもらえるために何ができるかを考えていらっしゃるように感じられますね。そこも共通認識な気がします。それでは最後に、皆さんが考える『ほぼ日』の改善点や、これからやってみたいことについて伺わせてください。

「やりたいことも、やることもたくさんある(一同)」ため、今年の後半に新しいメンバーの募集を行う予定だという

一同 いっぱいあり過ぎてどこから手を付けたらいいか……(笑)

佐藤 各連載のCMSがまだ整っていないため、『ほぼ日』のコンテンツって今は毎回デザイナーがHTMLを書いてくれているんですよ。だから、まずはCMSを作ってデザイナーの負担を減らしてあげたいですね。

あとは、もっと自分たちが技術的に遊べる時間を作りたいと思っています。Ustを埋め込んだページにYouTubeの表示を切り替える機能をつけておいて、Ust配信しながら、DJのようにYouTubeの動画を見せる中継がたまにあるんですが、今後はWebSocketを使ってタイムラグがない操作をできるようにするとか、もっといろんな仕掛けを作っていきたいですね。

川本 僕は、ほぼ日ストアのシステムリニューアルは無事に終えたので、次は読み物コンテンツをより良くするための開発をしたいですね。このところスマートフォンからのアクセスが明らかに増えてきているので、『ほぼ日』もスマートフォンページのデザイン強化をしたいですよね。システム改善を通してコンテンツ全体をレベルアップ、グレードアップさせたいという思いは強いです。

―― 沢柳さんはいかがですか?

沢柳 そうですね。サイトには、佐藤が大学生のころに書いたコードが一部残っていたりするので(笑)、それらをまず直したいです。あとは、コンテンツなのかWebサービスなのかは分かりませんが、そろそろ宇宙部発信で何か作りたいなぁと思っています。

―― それはすごく楽しみですね。

佐藤 はい。そのためにも今年の後半には宇宙部のメンバーを増やそうと思っています。できることもどんどん増やしていきたいですね。

―― 貴重なお話をありがとうございました!

一同 こちらこそ、ありがとうございました。

取材・文/小禄卓也(編集部) 撮影/竹井俊晴




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