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仕事にのめりこめないプログラマーは、いろんな言語を試してみればいい【対談:法林浩之×角谷信太郎】

タグ : Ruby, RubyKaigi, 法林浩之, 角谷信太郎 公開

 
お酒を片手に「一流エンジニアの人生論」を紐解くトークイベント『TechLION』のファシリテーター・法林浩之氏が旬のエンジニアを招き、ゲストの「オン(仕事)とオフ(プライベート)の考え方」からキャリア形成のヒントを掘り起こす連載企画。今回は『RubyKaigi』のオーガナイザーを務める角谷信太郎氏をゲストに招き、プログラミングとの出会いや、自身がエンジニアとしてブレイクスルーした転機などを聞いた。
法林浩之のトップエンジニア交遊録

法林浩之

大阪大学大学院修士課程修了後、1992年、ソニーに入社。社内ネットワークの管理などを担当。同時に、日本UNIX ユーザ会の中心メンバーとして勉強会・イベントの運営に携わった。ソニー退社後、インターネット総合研究所を経て、2008年に独立。現在は、フリーランスエンジニアとしての活動と並行して、多彩なITイベントの企画・運営も行っている

法林浩之のトップエンジニア交遊録

角谷信太郎氏

立命館大学法学部卒業後、独立系SIベンダにてSEとしての勤務を経て、2003年、永和システムマネジメントに入社、現在はフェローに就任。2007年から日本Rubyの会(当時)理事に就任し、RubyKaigiの運営にも携わる。『リーン開発の現場 カンバンによる大規模プロジェクトの運営』『アジャイルサムライ−達人開発者への道−』などの翻訳も手がける。2014年6月の『TechLION vol.17』にも登壇予定

RubyKaigi実行委員長の角谷氏が相手ということで、過去のRubyKaigiのTシャツを着て対談に臨む法林氏

RubyKaigi実行委員長の角谷氏が相手ということで、 『Learning Ruby』(オライリー)のTシャツを着て対談に臨む法林氏

法林 角谷さんのコンピュータとの出会いっていつなんですか?

角谷 どっから話せばいいですかね……。そもそもは、小学校の時に、アマチュア無線とかをやっているギークな叔父が、いらなくなったPCを送ってきてくれた時からです。着払いで(笑)。

法林 着払い(笑)。

角谷 それ以前に、夏休みとかに叔父の家に行くと、離れみたいなところにPCが置いてあって、それをガチャガチャやっていたので、「PCが欲しいのだろう」と思ったみたいです。PC-98の無印だったかな。

法林 使えました?

角谷 いやいや、英語分かんないし、叔父のサポートもないしで。一応、べーマガ(マイコンBASICマガジン)を見て打ち込んでみるんですけど、やっぱり分かんないしで使えませんでした。高校に入ってから新しいのを買ってもらっても、ワープロとかゲームにしか使ってなくて、大学生になってインターネットブームになって、14.4Kbpsのモデムを買ってつないで……そんな感じですね。

法林 ということは、コードを書くようになったのは、社会に出てから?

角谷 そうです。法学部を卒業して、1998年にSEとして就職してからです。

法林 当時はプログラミングの未経験者でも、適性があればSEとして採用する企業が多かったからね。角谷さんも、学生時代からバリバリに書いていたのかと思ってました。

角谷氏のプログラミングとの出会いは意外にも就職後

角谷氏のプログラミングとの出会いは意外にも就職後

角谷 学生時代は、CGIを使ったホームページとか、Perlのスクリプトで書かれた掲示板とか、カッコいいからあこがれてやってみようと思うんですけど、よく分かんなかったですね。周りにも、PCに詳しい人はいたけど、プログラミングに詳しい人はいなかった。

法林 就職して、研修では最初に何を教わったんですか。

角谷 一通り書いて、デバッグして、と。デバッガーって便利だなと思ったり。コンパイラはMF COBOLでした。

法林 COBOLですか。それは貴重な経験をしてますね。

角谷 業務アプリの会社だったので、それまでの新入社員研修ではCをベースにしていたんですけど、素人が入ってくるからと、WindowsでCOBOLで、ロジックだけでも教えようとしたみたいです。

法林 確かに、いきなりCのメモリ管理とか教えられないからね。Rubyと出会ったのはいつごろ?

角谷 このあと2、3年経ってからです。

自分に“合う”言語との出会いでプログラミングが楽しくなる

法林 僕はRubyとの出会いは良く覚えていて、99年くらいに、Perl Conferenceの基調講演でまつもとゆきひろさんが話しているのを聞きました。

角谷 僕もそのころで、YARPCの前か後くらいでしたね。

法林 あのころは、YARPC19101とかいって、RubyとPerlは共同でカンファレンスを開いていました。19101というのは、当時、「2000年問題」が話題になっていたからこういう名前になっているんですよね。2000年問題に対応していないと、1999の次は19100、次は19101となると言われていた。そのころは、もうRubyに触ってましたか?

角谷 いいえ、Perlには触ってました。仕事でほかの人が書いたスクリプトを見たり、ちょっと触ったり。けど、「難しいな」と。

法林 Perlはなぜ動いているのかが分かりにくい部分があるよね。

角谷 そのころ、オブジェクト指向という概念も出てきて、ますます難しくなって、そこにRubyってのもあるらしいとなりまして。で、ダウンロードしてインストールして触ったら、オブジェクト指向ってどういうものなのか、初めて分かった気がしたんです。

ある言語との出会いによってプログラミング観が変わる、という共通の話題で盛り上がる

ある言語との出会いによってプログラミング観が変わる、という共通の話題で盛り上がる2人

法林 Perlでは分からなかったのに?

角谷 少なくても僕は分かった気になったし、面白いと思いました。Perlがダメという話ではなく、です。

法林 就職して3年くらい経ってますよね。Rubyと出会って、仕事に変化はありましたか?

角谷 それまでもいろいろとコードを読んだり書いたりしてましたけど、結局よく分かってなくて。上司から言われたことをなんとかやってる感じだったんですが、Rubyを知って「俺にも書けるかも」と思いました。

法林 角谷さんにとってのRubyが、僕の場合はshellだったな。大学3年生の時の実習で出会って、これは便利で、これまでと違うと思った。プログラマーには、そういう出会いを経験してる人が多いんじゃないかな。

コミュニティは楽しまないと意味がない

法林 それで、Rubyコミュニティにはすぐに入ったんですか?

角谷 すぐじゃないですね。興味を持ったし、メーリングリストも日本語だったので入ってみたんだけど、仕事が忙しくなると未読がすごく溜って、それで退会して、また入って……みたいなことを繰り返してました。

法林 投稿せず、読むだけ?

角谷 そうです。だけど、2006年に日本Rubyカンファレンス(当時)があるっていうので、押しかけました。

法林 応募したのではなく?

角谷 そうです。卜部(昌平)さんのWeb日記に書いてあるのを見て、これなら手伝えるなと思いました。コードを書くことでは全然貢献できなくても、イベント開催については、会社で経験もあったからです。たぶん、みんなまだそこは上手じゃないだろうから、これなら貢献できると思った。それで、Developers Summitで未踏の追い込みに入ってる笹田(耕一)さんのところへ行って「やらせてください」と。どうやって頼んだらいいかも分からなかったんですよ。でも、メールよりは直接の方がいいかなと。

法林 確かにそうだよね。僕自身が参加したのは、2011年の旧体制の日本Ruby会議(当時)の最終回だけなんだけど、あれだけたくさんの人が楽しんでいるのはいろんな意味ですごいなと思ったのをよく覚えてます。角谷さんは、運営だけじゃなくて発表もしてましたよね。

角谷 そうですね。

角谷氏のプレゼンを初めて見たときのインパクトが鮮明に残っていると話す法林氏

角谷氏のプレゼンを初めて見た時のインパクトが鮮明に残っていると話す法林氏

法林 内容は全然覚えてないんだけど、すごいなと思った。新鮮で、感銘を受けました。そうそう、角谷さんはそれ以前に、2004年のLL WeekendでもGroovyを紹介するという発表していて、それもすごくインパクトがあった。

角谷 あの時は、電通大の竹内(郁雄)先生とかと同列に無名な自分が入っていて、すごくナーバスになってたんですよ。「ヤバい、何とかしなきゃ」と思って、マンガキャラを使ったスライドのビジュアルを作りました。

法林 それが今の、特にRubyの人たちの凝ったプレゼンの流れになってると思うんだけど、話を2011年の日本Ruby会議(当時)に戻すと、“ぼっちランチ”対策みたいなのもしてましたよね。1人で参加する人をグループにして、昼食に送り出すという。

角谷 若い人のアイデアだったんですよ。やっぱり、3日間とか参加して、声を出さないで帰るのはもったいないですよね。ただ、これは去年はやらなかった。もう、大丈夫だろうと。

「仕事でRuby」も今では一般的に

法林 最初はメーリングリストにも出たり入ったりだった角谷さんが、コミュニティの発展について思うことってどんなことですか。

角谷 みんな、動機があって、やりたいことがあって参加するんだと思うんですよ。でも、そこに敷居はある。

法林 角谷さん自身が感じてきたことだよね。

角谷 ええ、僕も通ってきた道です。でも、身構えなくていいところもあるし、興味を持って来てくれる人が参加しやすい、また来たいと思う環境をつくる手伝いができればと思っています。

法林 参加すれば、絶対に発見や刺激があるしね。あと、Rubyは地域コミュニティも盛んですよね。Rubyプログラマーの数は増えていると思います?

角谷 それは実感します。

法林 そこは僕も同意見。LLイベントを12年やっている中で一番変わったことが、仕事でRubyを使っている人が増えたことです。

角谷 そうですね。今は、「気にくわないのに仕事でRubyで書かされてる」人もいると思いますよ。

法林 でも、それってどの言語で仕事をしていたとしても不幸だよね。Rubyみたいな良くできた言語にそういうことを思っている人がいるなら、「もっと大変なのあるよ!」って言いたくなる(笑)。

角谷 言っちゃうとアレなので、さすがに言わないですけど(笑)。

法林 でも、何かの言語を好きになるには、いろいろな言語を触った方がいいよね。

角谷 そう思います。

法林 もちろん、個人個人で合う合わないはあるけど、いろいろ知っておいていいと思う。

Railsの普及で、良いものはとりあえず使ってみるという風潮に

Railsの登場によって普及が加速したRuby。このような普及の仕方はどの言語でも起こりうる

From noplans
Railsの登場によって普及が加速したRuby。このような普及の仕方はどの言語でも起こり得る

法林 ところで、角谷さんがRubyに触るようになってから、実際に仕事で使うようになるまでってどれくらい時間がかかりましたか?

角谷 だいぶかかりました。

法林 当時、Rubyは良い言語だけど、仕事では使われないという話もありましたよね。LLイベントでも、仕事にするにはどうしたらいいかというセッションもあったくらい。会場からアンケートを採ったとき、「仕事で使っている言語」と「好きな言語」の回答の差が一番大きかったのは、Rubyだった。

角谷 当時は、あえて仕事でRubyを使う理由がなかったんですよ。PerlやPHPに比べると、遅いし、実績もないし。だから、よほど好きじゃないとやってなかったでしょう。それが、Railsが大ブレイクしたことで、今みたいに広まった。

法林 以前に比べると、言語選択の自由度は上がった?

角谷 と、思いますね。これはChad Fowlerが言ってたことなんですけど、Railsの登場によって得られた効果の一つに、「実績がないからダメ」じゃなくて、「良さそうなものなら実際に使ってみよう」という風潮が出てきたと思うんです。実績や流行とは別に、いろんなツールが使われるようになってきてるのかなとも感じます。

法林 それはプログラマーにとってはありがたいことだよね。

角谷 逆に、「Rubyだけやってればいい」というのでは、これからやってくのは大変だなあと思ってます。

法林 Rubyでコードを書く人って、言語に対する愛情からか、何でもRubyで作る傾向にありませんか?フレームワークならRails、というようにいろんなツールでRuby版がありますし。

角谷 「いろんなことをRubyでやれるようにしたい」というのは、Rubyistの傾向として確かにありますね。

法林 LLイベントやってると、こういう言語毎の特性が垣間見えておもしろいんですよね。

取材・文/片瀬京子 撮影/佐藤健太(編集部)

>> 法林氏、角谷氏が登壇するトークライブ『TechLION vol.17』はこちら
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