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「中高生に開発を通じた社会教育を」西郷隆盛の末裔・20歳のエンジニア社長が挑む教育改革【特集:エンジニア育成の本質】

タグ : Far Connection, TECH LOGICS, プログラミング教育, 受託開発, 市來晟弥 公開

 
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Far ConnectionのCEO/CTO市來晟弥氏

大学在学中に中高生を中心としたエンジニア・デザイナーコミュニティの『TECH LOGICS』を発足。Rubyの学生コンテストで入賞を果たした人など全国で約100名のメンバーを集めた後に、2014年11月からはエンジニア兼起業家としての歩みを始めた人物がいる。

それが今回の主人公、Far ConnectionのCEO/CTOを務める市來晟弥氏(@hey_icchiman)だ。

市來氏が起業したFar Connectionのビジネスモデルは、同社が受託したシステム開発プロジェクトを『TECH LOGICS』のメンバーである中高生が開発するというもの。

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2014年11月に設立した『Far Connection

同社はプロジェクトを通じて、学生たちに学校では教わらない“社会”を伝えることを目的としている。

受託開発を行ったことがない学生が、開発に慣れるまでの期間(約3案件程度)は無償。だが、案件を通じてプロジェクトを担うエンジニアに成長すれば、業務委託契約としての契約体制で成果報酬を受け取ることも可能というスタイルになっている。

各プロジェクトの品質担保は市來氏が責任を持ち、参加する学生には実践を通じて「開発」と「仕事」を学ぶ機会を提供するのが狙いだ。

現在までにも8人ほどの学生が意欲的に開発に取り組んだ結果として、報酬を受け取っているという。そして、全てのプロジェクトがリモートで開発されているそうだ。

中高生の学びに対して、親が教育費を支払うのではなく、実際の仕事を通じて、本人のエンジニアスキルや自主性を養う。市来氏は現状、ほぼ全てのプロジェクトの品質を担保するため、徹夜もいとわない覚悟で事業に挑んでいるという。

「中高生が受託開発を行うビジネスを僕が担う場合、10年後に起業したらダメだと考えました。僕と中高生の年齢が離れ過ぎてしまうと、価値観や発想にズレが生まれてしまう。僕が皆の目標と言ってしまうとおこがましいですが、手が届くぐらいの年齢差のうちに、はじめたいと思ったんです。大学はおじいさんになってからでも通えますからね」

なぜ、市來氏は中高生に受託開発を任せる独自のビジネスを興したのか。そして、リモートに限定して開発を行う理由とは何か。彼の言葉に耳を傾けてみると、行動することで新しい学びを自ら生み出すことの大切さが見えてきた。

CAのインターンで武者修行

市來氏は福岡県で生まれ育ち、高校3年生の春に東京の高校へ転校。学生起業を行い、2015年5月に大学を退学した。

「大学に進学したのはよかったのですが、僕は研究者になるつもりもなかったので、とにかく学校が退屈だったんです」と大学入学時を振り返る。

何か自分の情熱を燃やせるものはないか。そこで、趣味として中学時代に書いていたHTMLを思い出したという。

「当時、アフィリエイトが流行ってたので、キュレーションサービスを作りたいと考えました。僕が好きなものを保存していくようなサイトです」

サイトの制作期間は約3カ月間で、月間1000PVを記録した。市來氏は誰にも教わらず、ひたすらググるだけでJavaScriptを習得し、キュレーションサイトを作り上げたという。その傍ら、趣味のサイト制作だけではなくプログラミングのアルバイトも始めた。

アルバイトとサイト運営。プログラミングに精を出しているうちに、「同じ志を持つ友人がほしい」と思うようになったという。

だが、市來氏が進学したのは、経営工学科だった。周囲にプログラミングを学んでいる者はいなかったという。校内を探してみても、プログラミングサークルは見当たらなかった。

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市來氏が発足したクリエイターコミュニティ『TECH LOGICS

そこで、大学2年生の4月にクリエイターコミュニティである『TECH LOGICS』を立ち上げる。大学内では人の集まりが芳しくなかったため、Twitterでコミュニティを立ち上げたことを発信してみると、中高生からも参加希望の声が集まったそうだ。

「高専を除けば地方の学生でプログラミングに興味を持ったとしても、仲間とつながる機会は決して多くないですよね? 振り返って考えると、僕自身、中学や高校時代に『TECH LOGICS』のようなコミュニティがあれば、所属していたと思うんです。でも、そうした存在が見つからなかった。僕が学生時代に欲してたものを自分が実現していると後から気付きました」

スマホネイティブと称される世代の市來氏であっても、東京と福岡では情報の格差があったと振り返る。東京に出てみて、自身が大学生になった時に起こした行動は、過去の自分が欲していた場所づくりだった。

そして、このコミュニティ活動と並行し、サイバーエージェントのサマーインターンシップであるフロントエンドCAMPに参加することに。その理由はこうだ。

「立ち上げたものの、まだまだ小さいエンジニアコミュニティだったので、僕と同世代や少し上の層と自分を比較した時にどれほど実力があるのか、確かめてみたくなったんです」

大手企業のインターンシップに参加すれば、同世代で凄腕のエンジニアと触れ合うことができる。この考えの下で参加したフロントエンドCAMPで、市來氏は3位に入賞を果たした。

「参加者の中で僕だけが大学2年生という状況。他の参加者の方は4年生や大学院生でした。自分とは違った世界で生きてきた人たちと1週間のCAMPをやってみて、いろいろな気付きがあったと同時に、入賞を果たしたことで、自分が同世代の中でも戦うことのできる力は持っていると実感することができました」

大学生にならないと経験できないなんて、もったいない

フロントエンドCAMPで知見を広げ、自信を得た市來氏は、以前から構想していた計画を実行に移す。2014年11月11日、Far Connectionを起業したのだ。これは、コミュニティ発足から約半年後の出来事だ。

この起業には2つの思いがある。まず、中高生が社会に貢献できる場を作りたいと考えたこと。次に、学校教育だけでなく、市來氏がエンジニアのアルバイト経験で感じた、社会での学びを伝えたいという点だ。

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自分が社会で学んだことを中高生に伝えたい、と市來氏

「コミュニテイの人数が増えて行くにつれ、高校生で応用技術の資格の取得したメンバーやRubyの学生大会で入賞を果たしたメンバーが集まってきました。

彼らは純粋な欲求として、自分が覚えた技術で社会に貢献したいという考えを持っていたんです。その考えを実行に移せる場さえあれば、仕事の中でもっと良い経験を積むことができると思いました」

次に、社会での学びについてはこうだ。

「僕は大学に入ってはじめて趣味ではなく、仕事のプログラミングに触れた時に多くことのことを学びました。実際、仕事のコードを見てみると、最初は全然読めなかったんですね(笑)。でも、コードの1部分を見れば理解できるところもありました。

この体験をコミュニティにいる中高生にも早く届けたいと思ったんです。大学生や社会に出てから学ぶよりも、早い段階から仕事のコードに慣れてほしいと考えました。

1人で黙々と作るのではなく、チームでの開発やクライアントの要求に応えられる技術力を習得してほしい。これは、社会に出なければ、身につけることが難しいことです。クライアントを喜ばせることができる技術力の習得は、将来につながる学びがあると思います」

一般論にはなるが、学生が開発することには企業側に多少の不安が伴うだろう。その課題について市來氏は、「最終的には僕が成し遂げる」という、意思を持っていると語った。

「何かあれば、『いっちがやってくれるんでしょ?』というくらいの関係性ができているクライアントも多く、僕たちの考えに共感して仕事を任せていただいていますので、学生が開発を担うという点での問題は特にありません。

もちろん僕を含めて、会社もコミュニティも全員がエンジニアですから、営業についてはゼロからのスタート。交渉を含めて、僕が覚えているのが現状です。これもやってみて分かることがたくさんあります。課題があるとすれば、中高生にリモートで開発を任せているので、その点になります」

「受け身の中高生たちを変えたい」

「中高生の多くが技術力を持っていても、言われたことしかできない人間になってしまっています。そもそも中学、高校での教育に問題があると僕は感じています。例えば、受験勉強のために勉強をする、本当に必要なのかを考えず、資格を取るために勉強をするなどですね。

中高生の多くが、誰かが考えたレールに沿うために、動いているような印象すら受けてます。その道から外れた段階で、対応ができない人間になりつつある。そういった受け身な姿勢を変えたいと僕は考えています」

受け身な姿勢になってしまっている中高生の意識を変える。まるで教師のような言葉だが、市來氏は本気だ。

Far Connectionが開発を全てリモートで行っているのも、積極的な姿勢を引き出すためだという。リモート開発では、中高生が開発過程で分からないことがあっても、傍で顔色や様子を伺って「大丈夫?」と声を掛けてくれる先輩はいない。開発進捗に関しても、全て中高生側が報告するのがルールだ。

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ソースコードはGitHub、GitLabで全員が共有出来る状態になっているという

「中高生たちが、自分自身でメッセージを発信しなければ、相手に伝わらない環境。これが受け身な姿勢を改善する第一歩になるのだと感じています。僕の会社での仕事を通じて、中高生たちには、些細なことでもいいので、自ら情報を発する自主性や主体性を養って欲しいんです。そのために、敢えて開発を全てリモートにしました」

誰かが側について開発する環境を作ることもできた。だが、それでは開発スキルは伸びても主体性を伸ばすことができない。

市來氏の目的は中高生たちの技術力向上だけではなく、自主性や自主性を伸ばす点にあるためだ。

「学ぶ」とは誰かのマネをすることから始まる

クリエイターコミュニティ発足から、半年後には起業家の道を歩んだ市來氏。中高生に機会を与えるだけではなく、自分自身の成長にも貪欲な姿勢を見せている。

最近では出向という形式で、動画マガジン『MINE』のフロントエンドを担当。また、2015年6月には、学生企業ZealsのCTOに就任した。

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市來氏がフロントエンドを担当した『MINE

自分自身が常に新しいことに挑む姿勢を見て、中高生たちに主体性を持って行動することの意義を問い続けている。

そんな市來氏に、特集テーマである、エンジニア育成の本質について聞いてみた。

「僕は学校教育の中ではなく、人と人とのつながりの中で、主体性を持って動くことの大切さを学びました。学校の教育と社会の教育では全く話が違う。優れたエンジニアは社会教育の中では生まれると思いますが、今の日本の学校教育では生まれることは難しいと思います。

これは、僕の意見ですが、些細なことでもいいから、人のプログラミングをいろいろと真似てみることが大切だと思います。他人の良いところを見つけて、取り入れてみること。誰かに教わるのではなく、自分で自分を教育することが、大切なんじゃないかと思っています。そういった癖をつけることで、エンジニアであり、1人の人間として成長していくのではないでしょうか」

中高生の主体性を伸ばして、優れたエンジニアを1人でも多く輩出したい。華奢に見える市來氏だが、その高い志は先祖である西郷隆盛と全く同じに見えた。日本の学校教育が変化する夜明けは、近いのかもしれない。

取材・文・撮影/川野優希(編集部)




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