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日本の“行き場を失った技術”がイノベーションの種に~開発マネジャーに聞く、JINS MEMEを作った本当の理由

タグ : IoT, JINS MEME, ウエアラブル, ジェイアイエヌ, 井上一鷹 公開

 
今回話を聞いたJINS MEME開発マネジャーの井上一鷹氏(装着しているのはJINS MEME)

JINS MEME開発マネジャーの井上一鷹氏(装着しているのはJINS MEME)

2014年5月に発表された、メガネ型ウエアラブルデバイス『JINS MEME(ジンズ・ミーム)』。その名前から分かる通り、メガネ販売店JINSを運営する株式会社ジェイアイエヌが開発を行っているということで話題を呼んでいる。

三点式眼電位センサーが搭載されたJINS MEMEの裏側

三点式眼電位センサが搭載されたJINS MEMEの裏側

JINS MEMEは、装着時に肌と接する鼻パッドと眉間部分に仕込ませた三点式眼電位センサにより、目の動きや変化を感知。その情報をスマホに転送し、装着者が眠気や疲れといった自分の状態を把握するライフログツールとしての活用が期待されている。

「我々がJINS MEMEの開発を行う背景の1つに、日本の電子部品技術の行き場がなくなりつつある現状があります」

そう語るのは、今回取材を行ったジェイアイエヌの井上一鷹氏(JINS MEME開発マネジャー)だ。

「非IT企業」であるジェイアイエヌは、なぜウエアラブルデバイスの開発を行っているのか。そして、どのようにして開発を成功させたのか。その裏側を探る。

異業種との連携で大切なのは「素直さ」

メガネメーカーが作ったウエアラブルデバイスということで、多くのニュースサイトに取り上げられ話題になったJINS MEME。

本格的な開発は、半信半疑の状態から始まったという。

「JINS MEMEの開発は、東北大学の川島隆太教授と社長の田中仁が、『眼電位検出技術を使って何かできないか?』と話をしていたことから端を発します。それが4年程前で、しばらくは手作りレベルの小さな開発を行っていました。その後、社内にR&D室が新設されたことをきっかけに、新規事業の一環として商品化に向けた開発が始動。その時は、三点式眼電位センサの実装に対して、誰もが半信半疑でしたね」

商品化を実現するため、某電機メーカーに三点式眼電位センサの開発を依頼したジェイアイエヌ。異業種の会社とのコミュニケーションはどのように行ったのだろうか。

「単純な話かもしれませんが、パートナーとなる開発会社の人たちに、一般の方でも分かる言葉で説明をしてもらうようにお願いをしました。パートナーにはストレスだったかもしれませんが、事業開発の段階から我々がユーザー目線で理解・議論することが何よりも大切だと思ったのです」

デザインの詳細や使用イメージはJINS MEMEのサイトで見ることができる

デザインの詳細や使用イメージはJINS MEMEのサイトで見ることができる

電機メーカーの努力もあり、三点式眼電位センサは実装レベルにまで開発が進行。次にとりかかったのはメガネのデザインだった。

「初期のころは配線が丸見えで、とても日常的に装着できるものではありませんでした。三点式眼電位センサ実装の目処が立ったところで、『Audi A6』などを手掛けるプロダクトデザイナーの和田智氏にデザインを依頼。メガネメーカーとして最低限担保してほしいデザイン性と、プロダクトデザインとしての機能設計を、何度もすり合わせながら作っていきました」

ジェイアイエヌから見て「専門外」の外部開発会社と上手く連携を取るコツは、素直さにあると井上氏は語る。

「知らない分野だからこそ、素直に分からないと伝える。そして、メガネメーカーとして譲れない部分の要望をする。そうした外部とのコミュニケーションは、ひいては既成概念にとらわれないプロダクトの開発にもつながります。川島教授も、今では『眼電位センサをメガネに実装できるとは思わなかった』と驚いていますからね」

日本には行き場を失った、高い精度の軽薄短小化技術が多くある

2年前、ジェイアイエヌに入社する前は大手電機メーカーのコンサルティングに携わっていたという井上氏。当時の電子部品開発の様子や、今回のパートナーとのコミュニケーションを通して、日本の技術開発の「悩み」が浮き彫りになってきたと明かす。

「日本の技術開発はガラケーの普及と進歩に合わせ、部品を『軽薄短小化』していくことに精力を注いできました。しかし、スマホの普及により筐体が大きくなったことで、そうした技術の必要性が薄れてしまった。つまり、精度の高い技術が行き場を失っている状態なのです」

そうした日本の技術メーカーの悩みを、非IT企業こそが解消できるのでは、と井上氏は感じたそうだ。

「ウエアラブルデバイスが盛んに叫ばれるようになってきた背景には、そうした軽薄短小化技術の行き先を失った現状もある。我々のような“技術を持たない企業”は、技術ありきの商品開発ではなく、シンプルにユーザー目線に立って市場ニーズに合わせて必要な技術を使います。そうすることで、デジタル系のプロダクト開発に乗り出すことができたのです」

メガネメーカーが目のウエアラブルデバイスを作るのは至極当然、と井上氏は語る

メガネメーカーがメガネ型デバイスを作るのは至極当然、と井上氏は語る

さらに、ウエアラブルデバイスの開発は早い者勝ちの世界でもある、と井上氏。それは、市場の先取りとはまた違った意味合いがあるという。

「ウエアラブルデバイスは、人間の体のどこかに装着して意味をなすもの。しかし、人体のパーツには限界がある。今後ウエアラブルデバイスが普及すれば、陣地取りのように人体のパーツを取り合うことになります。我々はメガネメーカーとして、目の周辺を取られるわけにはいきませんからね。JINS MEMEにはそうした思いも込められています」

持たざる経営の先にあるイノベーション

今回、β版であるにもかかわらず、早いタイミングで発表を行った理由はどこにあったのか。

「答えはソフトウエアデベロッパーの力を借りるためです。搭載するアプリによって、JINS MEMEのキャラクターも変わりますからね。眼電位と同じく、アプリに関しても我々は素人です。一時期流行った経営論で言う『持たざる経営』を地でいく手法です」

発表後の反響は想定以上に大きく、国内外含め多くのデベロッパーから声が掛かっているという。その中には、想像もできなかった発想のアプリもあったようだ。

「JINS MEMEに対して多くのデベロッパーが可能性を感じてくれている証拠。デベロッパーの人たちにも、その技術力とアイデアを活かす場としてJINS MEMEを使ってほしいと思っています」

今後の展開としては、消費者向けアプリの開発を進めながら、BtoB領域での可能性も探っていきたいとのこと。

余った技術を活かし、持たざる経営で異分野への挑戦を続けるJINS MEME。その先にはどのようなイノベーションが待ち構えているのか。今後の動向から目が離せない。

取材・文/長瀬光弘(東京ピストル) 撮影/赤松洋太




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