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MITメディアラボの伊藤穰一氏が語る、技術がもたらす「ピープル・パワー」の行く末

タグ : MITメディアラボ, メディア, 伊藤穰一 公開

 

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少し古い話になるが、1996年12月~1997年4月に起こった在ペルー日本大使公邸占拠事件を覚えているだろうか。

テロリズムに対する平和的解決と武力行使との間でさまざまな意見が飛び交い、解決まで長期間を要したこの事件。結果的に、刻一刻と変わる状況の中で人質救出作戦が敢行され、人質72人のうち71人が救われた一件を引き合いに出しながら、MITメディアラボ所長の伊藤穰一氏はこう語った。

「あの当時に日本両政府が行った対応や、先の3.11大震災でのさまざまな動きを鑑みると、日本人は予期できない状況でジャストインタイムのアジャイルな対応をするのが得意なんじゃないかと。逆に、プランを固め過ぎて動くとダメっぽい」

これは、今月3日、朝日新聞がMITメディアラボとともに行ったシンポジウム『メディアが未来にできること』での発言だ。

当日は朝日新聞と、同社が日本版に出資するハフィントンポスト、そしてMITメディアラボの関係者たちが政治や報道の今後を議論する場となったが、伊藤氏は「テクノロジーが変えるピープル・パワー」の考察として日本の持つ可能性を示唆した。

伊藤氏の前に登壇したMITメディアラボの市民メディア研究家イーサン・ザッカーマン氏は、福島第一原発の放射能汚染状況を自作のガイガーカウンタで測定し、放射線量の測定値をWeb上の地図に集約する民間プロジェクト『Safecast』について言及。この動きを例に、「政府が公の問題解決を主導していた時代から、個人の力が集結して問題解決に当たる時代が到来している」と話していた。

同プロジェクトにかかわっていた伊藤氏はこの話に同調し、「個人の力の集結」においてテクノロジーの民主主義化が重要なカギを握っていると続けた。

日本人がいまだ「先進的な事例」を生み出す可能性を秘める理由

MITメディアラボでさまざまな国のイノベーションを見聞きしている伊藤氏は、いくつかの事例を挙げて「テクノロジーの民主主義化」について説明する。

例えばアメリカでは、The John S. and James L. Knight Foundationという財団が市町村に若いエンジニアを派遣し、公共システムの構築やオープンデータの促進をサポートするような動きがあるという。

「これは、以前ならば大手SIerやITベンダーしかできなかった公共システムの開発を、市民が行うようになってきたことの現れでしょう」

また、より市民レベルでの動きとして、中国で起きる副業ブームについても興味深い事例を挙げた。

「中華料理店の息子さんが、小遣い稼ぎとして『海賊版ケータイ電話』を作っているという話も聞きます。今までは消費者だった側の人間が、製造者、デザイナーに変わっているという端的な例です」

形は違っても、このようなうねりが日本にもやってくれば、「ジャストインタイムのアジャイルな対応」が得意な日本人はあらゆる物事において突然変異的な先進事例を生むポテンシャルを秘めていると伊藤氏は主張する。

「ネットやSNSを通じて誰もがアジャイルに情報をPullできる今の時代は、ボトムアップでの変化が生まれやすい。先の3.11後の動きしかり、国民が現場レベルのコラボレーションで公的な問題を解決できるという片鱗を見せた日本人は、世界に先駆けて新しいメディアや民主主義の形を示せるかもしれない」

今後もっと必要な「Co-Design」の取り組み

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伊藤氏が「Co-Design」の事例として紹介したMITメディアラボ×デトロイト市民の取り組み

ただし、外的な環境変化だけで、このような展開が生じるわけでは決してないと伊藤氏は続ける。

「SNSが誕生した当初は政治や民主主義のあり方を根本から変えると言われたが、客観的に見て、現状はそこまで大きなインパクトを残していません。しかも、日本は歴史上一度も『国民が起こした革命』がない」

この事実を踏まえた上で、今後必要だと話したのが、「Co-Design=共に世界をデザインする」取り組みだ。

その事例として、伊藤氏はMITメディアラボと米デトロイトの子どもたちが共同プロジェクトとして行った「街灯増加プロジェクト」のいきさつを話す。同市が財政難で街灯の修理費を削減する中、「街頭を作る技術をMITの学生が子どもたちに教えることで、住民自身が街灯の修理や増設に動き出している」と示唆。

「これまでテクノロジーのユーザーだった人たちと、技術の分かる人たちがCo-Designすることで、街をデザインし直すこともできるのです」

シンポジウムでは朝日新聞×ハフィントンポスト×伊藤氏のパネルディスカッションでデータジャーナリズムについて議論する場面もあったが、これを具現化するには「ソフトウエアを書いて分析するデータサイエンティストが報道の世界に入ってくることが大事」と伊藤氏は言う。

これらの話をより大きな視点でとらえれば、「技術の分かる人たち」が融合することでイノベーションが加速する領域は多々あり、テクノロジーの民主主義化によって“開発者”の母数が増えている今は変化が起こる確率も上がっているということだろう。

公的な意味で、テクノロジーを理解する人たちの存在価値は高まっている。社会をよりよくしていくには、もはや「どう動くか」だけの問題なのだ。

取材・文/伊藤健吾(編集部)




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