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Kaizen須藤氏×ビズリーチ丹野氏が明晰回答。プロダクトマネジメントとは何かを浮き彫りにする7つの質問

タグ : KAIZEN Platform, ビズリーチ, プロダクトマネジャー 公開

 

良い開発体制を作れば、それだけで良いプロダクトができるわけではない。“正しく製品を作る”だけでなく、“正しい製品を作る”ことを考えなければならない——。

伊藤直也氏によるこうした問題提起に端を発し、弊誌では前回の記事で、伊藤氏に「プロダクトマネジャーの役割と適性」について語ってもらった。

しかし伊藤氏も指摘している通り、国内においてはプロダクトマネジャーという役割の認知度はまだまだ低く、ベストプラクティスがあるわけではない。そうした職能に実際に就いている人であっても、日々悩みながら暗中模索しているというのが現状だろう。

こうした中、Webサービスの事業を牽引するプロダクトマネジャーのあり方について議論するセミナーが10月9日、ビズリーチ本社で行われた。

登壇したのは、Kaizen Platform, Inc.CEOの須藤憲司氏と、ビズリーチのサービス企画本部本部長の丹野瑞紀氏。しばらくCEO業に専念していた須藤氏は、サービスのさらなる飛躍を自ら牽引すべくこのほど、再びプロダクトマネジャーを兼務する立場となった。一方の丹野氏はビズリーチで複数のプロダクトを扱うプロダクトマネジャーであり、自身のブログ『小さなごちそう』でも熱心にプロダクトマネジメント論を展開している。

ここでは、セミナー後半のトークセッションで参加者から寄せられた質問と、それに対する2人の回答を基に、サービスの規模や性質、それぞれの出自も異なる2人の考えるプロダクトマネジャー論を紹介する。

PMはドラクエの勇者。全てのスキルが必要だが、100点でなくていい

エンジニアとしてのバックボーンを持つことから「技術者目線でのプロダクトマネジメント」を語ったビズリーチ丹野瑞紀氏

エンジニアとしての経験を活かし、「技術者目線でのプロダクトマネジメント」を語ったビズリーチ丹野瑞紀氏

【質問-1】 現状、営業・企画と技術・開発との間の調整ばかりで板挟みになっている。マーケッターにもエンジニアにもデザイナーにもそれぞれの分野では劣っていて、まるでドラクエの勇者みたい。プロダクトマネジャーにしかできないこととは?

須藤 板挟みになるというのは「あるある」ですが、プロダクトマネジャーのキャリアの積み方は大きく分けてビジネス畑からかエンジニア畑からかに分類できると思います。まずは自分が理解しやすい方を押さえにいき、その上であまり得意でない方にどう対応していくかを考えるのが良いと思う。

丹野 プロダクトマネジャーはディレクションする立場なので、マーケッターともエンジニアとも言葉が通じないといけない。それぞれのスキルは50点でも60点でもいいんです。どれも何となく分かるというのは、むしろ強みになる。プロダクトマネジャーに固有のスキルがあるとすれば、いろんな立場の人がいる中で、どうにか一つの解へと導いていくファシリテーションの能力と言えるのでは?

須藤 去年のIVSで行った対談の中で、プロダクトマネジャーにはビジネスもテクノロジーもデザインも分かることが求められるという結論に至ったんです。難しいのは承知ですが、顧客体験を生み出すための全てのことをできなくてはプロダクトマネジャーは務まらない。

そうなるためには、それぞれの職種をローテーションさせて、ちょっとずつスキルセットを身につけていくのが良いのではないでしょうか。ドラクエの勇者に例えるなら、速くレベルを上げてロトの武器を身に付けろということです。

僕自身はマーケッターの出自で、開発に足を踏み入れたのはプロダクトマネジメントをやるようになってから。最初はエンジニアの言うことが分からないのでシステム開発の本を読みまくりました。今はデザインの本をいっぱい読んでいるけれど、全然身に付いていません(笑)。でもそれでいいと思っているんです。会話さえできれば事足りるから。

【質問-2】 経営陣はユーザー数や機能面で先行する競合に並ぶことばかり考えていて、ビジョンやターゲット設定がないがしろになっていると感じる。このままで良いのだろうか?

須藤 競合に勝つのは勝った方がいいに決まっているけれど、問題は勝ち方。どうやって勝っていくのかが十分に議論されていないというのが一番の問題ではないでしょうか。

機能が全てそろったら勝てるのならそれでいいが、大抵の場合はそうではない。芯を食ったキラーファンクションのようなものが最初のカスタマーを呼び、伸びてきたらカスタマーが重視するポイントを上から順に押さえていくというのが一般的では?

丹野 競合はもちろん参考にしますが、パクろうとしてもパクりきれないのが常。表面だけマネると、自社の製品を選んでもらう理由がなくなってしまうから筋が悪い。

そういう時は、「自社の製品がなくて競合の製品だけしかなかったら誰が困るのか」という問いを立ててみると良い。それで誰も困らないというのだったら、他の製品を作った方がいいのではないでしょうか。

【質問-3】 事業責任者の下で小さいプロジェクトを任されているが、ミッションといくつかのKPI目標はあるものの、お金に関することがほとんど分からない。プロダクトマネジャーは事業責任も負った方がいいのだろうか?

丹野 与えられたミッションやKPIが正しければ良いですが、プロダクトマネジャーは前提を疑うことでイノベーションを起こしていくもの。事業責任や売り上げ構造も把握した上でプロダクトを開発していく必要があるのではないかと思います。

須藤 事業責任を負っていないのではプロダクトマネジャーとは言えないのではないかとまで思いますね。プロダクトマネジャーに求められるのはプロダクトが結果として伸びるために必要なこと全て。

与えられたミッションの中でやるのではやれることが限られるし、コストが分かっていないとやはりやれることが少ない。プロダクトをマネジメントしていこうと思ったら、ミッションもKPIも自分で作っていないときついと思います。

組織拡大には痛みが付きもの。優先して押さえるべきはUI設計

最近、CEOであるKaizen の須藤憲司氏が「あらためてプロダクトマネジャーの職に就いた理由」とは?

最近、CEOであるKaizenの須藤憲司氏が「あらためてプロダクトマネジャーの職に就いた理由」とは?

【質問-4】 プロダクトやマーケットが変化していくのに伴い、組織はどう変化していくものか?そこにプロダクトマネジャーはどのような形で関わるものか?

須藤 Kaizenは現在従業員数100人で、そのうちプロダクト部門は30人くらい。常にだいたい従業員数の3~4割をプロダクト部門が占めてきました。早い段階でプロダクトマネジャーとエンジニアが組むチーム制を導入したんですが、工夫したのはチーム内にセールスやカスタマーサクセスの人間も入れたこと。そのことで、本来めんどくさい部門間の調整がスムーズになっています。

丹野 ビズリーチでは以前はプロダクトごと、事業ごとにチームが構成され、企画を担うプロデューサーもその中にいたのですが、社員数が500人を超え、この8月からはサービス企画本部の下にプロダクトマネジャー部を置き、プロダクトマネジャーを職能として育成する体制に切り替えました。製品が増えて複雑性が増し、ステークホルダー間の調整も増えたためです。

もちろん完全に職能ごとに分かれてしまうのもダメなので、プロジェクト単位でエンジニア、デザイナーらとともにプロダクトマネジャーもアサインする、マトリックス的な組織になっています。

須藤 僕はCEO兼プロダクトマネジャーなので、プロダクトマネジャーの仕事だけやっていると会社が倒産してしまう。絞りに絞って何をやったらプロダクトの質に効果的に貢献できるのかを考えた結果、どういうテーマをどこにマイルストーンを置いてやっていったらいいかという計画のところと合わせて、UIを見ることを徹底してやっています。

週2回の定例会議などでかなり細かいところまでレビューしてるんですが、そこさえ押さえればかなりの部分をコントロールできるという実感があります。

丹野 私も最近は守備範囲が広くなって大変さが増しているものの、UI/UXは全部見るようにしていますね。ただ、その際に「これでいいですか?」と言われて画面だけ見せられるのではそのまま差し戻さざるを得ない。

多くの製品を見ている立場としては、その画面が解決するユーザーの課題とセットで示してくれるのでなければ対応しきれませんから。

【質問-5】 サービスの拡大期にはどんな痛みがあったのか?

須藤 例えばスピードを優先するのかクオリティを優先するのかというジレンマは常につきまといます。Kaizenの場合はQAのクオリティがなかなか上がらず、リリースするたびにバグが出るという状況が続きました。その時には一端、新規の開発を全て止めて、ドキュメントを書くとかテストの自動化プロセスを書くとかに1カ月丸々を費やして対応しました。

また、初期のフェーズであれば全員がプロダクト全体を把握できるんですが、プロダクトが大きくなってくると、全体を把握せずにある部分しか分からないという人が必ず増えてくる。

開発チームでいえば、自分が書いたのではないコードに触らなければならなかったり、逆に自分が書いたコードを知らない人が触ったりするシチュエーションが多発するということです。

その難しさは開発者なら分かると思いますが、サービスの品質に大きな影響をもたらします。コミュニケーションツールを充実させるなどの手はもちろんありますが、万能の解決策はないと思っています。失敗もある程度許容しながら、フェーズに合わせてチームで乗り越えるしかないのではないでしょうか。

【質問-6】 初期のフェーズであれば直接ユーザーと接する機会も多いからプロダクトが「芯を食っている」かどうかを肌で感じられるが、徐々にチームが大きくなって、セールスチームなどからの声しか接しなくなると不安が芽生える。マーケットにフィットしているかどうかの感覚を保つにはどうしたらいいのか?

須藤 お客さんのところに行くのは重要で、僕は今でもやっています。同時に、誤解を恐れずに言えば、そのユーザーが正しいユーザーなのかどうかも評価できなければならないのではないでしょうか。

ターゲットとはズレていたり、この人の言うことを聞いてもしょうがないという人に時間をかけてもプロダクトは良くならない。その感覚を養う意味でも、やはりたくさんのカスタマーに会うことは大事だろうと思います。

丹野 ある程度データで見ていく必要もあるでしょうね。ただ、いろいろな施策を打ってもKPIが全く動かなくなってくると、確かに手応えが感じられなくなるかもしれない。買って使ってくれたユーザーだけでなく、買わなかった人の意見を聞くのも一つの手ではないでしょうか。

須藤 手応えがなくなってきたのは、大きいと思っていた市場が案外小さかったからかもしれない。それは必ずしも悪いことではないんですよ。市場が思ったより小さかったのであれば、ではどうするかという方向に問いが変わるから。案外小さかった仮説のすぐ隣にデカいチャンスが転がっているというのが、僕自身の経験則です。

そうなったら、疑う先を多少広げてみるというのもアリではないでしょうか。ニーズそのものをまだ感じていない人のニーズを掘り起こせれば、ものすごいパラダイムシフトを起こせる。手応えがなくなってきたら、むしろそれはチャンスなのかもしれないですよ。

四六時中プロダクトに向き合える情熱としつこさを持てるか

非常に難易度の高い技能が求められるプロダクトマネジャーの仕事に「向いている人」の傾向を話す2人

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【質問-7】 ビジネスサイド出身の須藤さん、エンジニアサイド出身の丹野さんから見て、プロダクトマネジャーに向いている人って?

須藤 つまらない答えになってしまいますが、パッションがないとダメ。取り組んでいるプロダクトが実現したい世界観や解決したいテーマに情熱が向いていないとしんどいと思います。

なぜならプロダクトマネジャーは四六時中プロダクトのことを考える必要があるし、仮に全然関係のない場面でいいアイデアに遭遇した時、すぐに反応できるのは結局、そのプロダクトが好きだからこそだと思う。

丹野 出自どうこうではなく、しつこさではないかと思いますね。問題というものは一見シンプルに見えても簡単には解決できない。それでも絶対に解決可能だと信じ切れる信念を持てるかどうか。企画書を書いて終わりではなく、泥臭い実行フェーズをやり続ける覚悟があるかどうかだと思います。

須藤 プロダクトマネジャーは他人の領域に土足で踏み込むような仕事だから、時には嫌われることもある。目的を達成するためにはありとあらゆることをするという粘り強さは確かに大切です。後は周りの人に助けてもらえる人は有利だとも思います。僕自身は欠陥人間ですが、その点に関しては自信があるんです(笑)。

取材・文/鈴木陸夫 撮影/伊藤健吾(ともに編集部)




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