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欲しい情報を自動で超深掘るメディア『Kamelio』を生んだのは、“超個性派”の開発チーム

タグ : Kamelio, SmartNews, アプリ, スマートフォン, 伊藤祐輔, 柴田暁, 渡辺賢智, 白ヤギコーポレーション 公開

 
(写真左から)『Kamelio』開発の中心メンバーである伊藤祐輔氏、柴田暁氏、渡辺賢智氏

(写真左から)『Kamelio』開発の中心メンバーである伊藤祐輔氏、シバタアキラ氏、渡辺賢智氏

ユーザーが趣味や興味、関心のあることを登録しておけば自動的に関連するニュースやネット上の情報をピックアップしてくれるキュレーションサービス。弊誌でも『Gunosy』の開発陣に取材した記事をはじめ、『Antenna』『vingow』といったニュースアプリの現状と将来性について紹介してきた。

ベータ版を経て、正式リリースされた『Kamelio』。ただのキュレーションサービスではない

ベータ版を経て、正式リリースされた『Kamelio』。ただのキュレーションサービスではない

『SmartNews』が急速にDL数を伸ばすなど、2014年が勝負と言われるこの分野だが、キュレーションよりも「フォロー度」が高く、さらにきめ細かく幅広い情報を「深追い」できる新しいアプリ『Kamelio(カメリオ)』が2月18日に正式リリースされた。

開発したのは、昨年5月に設立されたばかりのスタートアップ、白ヤギコーポレーション。社名もユニークだが、創業メンバーであるシバタアキラ氏、渡辺賢智氏の経歴もかなり異色だ。

シバタ氏は物理学博士の学位を持ち、ニューヨーク大学の研究員として“神の素粒子”と呼ばれるヒッグスボゾンに関する研究に従事していた。一方の渡辺氏は、パナソニックで中国の事業立て直しや大型の買収案件を担当するなど国際ビジネスの最前線で活躍し、その後、コロンビア大学でMBAを取得した経歴を持つ。

ニューヨークに滞在していた時期が重なるという2人だが、その出会いは2人がボストン・コンサルティング・グループ(BCG)へと転職して以降。ともに「起業する」という意欲と熱意で意気投合、同社を立ち上げたのだという。

彼らが既存の「ニュースサービス」、「キュレーションサービス」とはまったく違うと強調する『Kamelio』。その違いと開発までの経緯について話を聞いた。

個々のユーザーが求める情報だけを“広く”、“深く”再構築して表示

『Kamelio』も、まずはユーザーがフォローしたいカテゴリーを選んだり、キーワードを登録するところから始まる。ほかのアプリやサービスと最も異なるのは、その細かさだ。

例えば、具体的な会社名や人名などでもテーマ設定ができるため、ビジネスユースの可能性も秘めている。

記事内に直接的な単語がなかったとしても関連する単語があればそのカテゴリの記事として認識できる、と渡辺氏

記事内に直接的な単語がなかったとしても、関連する単語があればそのカテゴリの記事として認識できる、と渡辺氏

「例えば『家電』というキーワード1つとっても、それを情報の収集と表示にどう反映するかという点を幅広く、きめ細かくしています。さらに、ピックアップしたものに共通するキーワードや内容を解析して、表示するといった仕組みですね」(渡辺氏)

利用していくにしたがって、特定の分野やジャンルから特定の物事や人物などに対象が絞られ、さらに関連する記事や情報をその経緯までさかのぼって表示するといった具合で、ユーザーが興味・関心を持つ事柄についてネット上の関連事項をほぼ無制限に収集してくれるのだ。

「設計の根本にあるのは『コーパス』ですね。キーワードになり得る言葉を言語レベルにまでデータ化して、検索した際に何がどれくらいヒットするかを計測しました。その結果をサービスとしてモデル化していくことに時間をかけましたね」(シバタ氏)

個々のキーワードと関連する情報を収集して表示するだけでは、従来のキュレーションサービスと変わらない。『Kamelio』がほかのサービスと異なるのは、キーワードとその関連事項を言語レベルにまで分析・解析した上で、その“関連度”を独自のアルゴリズムとレコメンドエンジンでユーザーに提示する点だ。

「どんな人も、興味や関心を持ったことについて、きっとその背景や経緯も含めてもっと深く詳しく知りたいはずなんですよ。それこそオタクレベルで。やろうと思えば、いろんなことについて誰よりも深く詳しく知ることができるサービスを目指しましたね」(シバタ氏)

古代インドの神話で宇宙を背中に乗せていたカメ。2014年には知識という宇宙をその背中に携える

by moonlightbulb
古代インドの神話で宇宙を背中に乗せていたカメ。2014年には知識という宇宙をその背中に携える

例えて言えば、ネット上で調べものをする際、特定のキーワードから関連するキーワードへリンク先に進んでいくことで、より幅広く深く情報を蓄えていく。それが1つのアプリで可能になるという設計思想と言えるだろう。

ちなみに、サービス名の『Kamelio』は、古代インドの時代、カメの上にゾウがいて地球を支えていたという宇宙観に基づいたものだとか。

シバタ氏いわく、「あなたの宇宙を『Kamelio』に乗っけてください」という思いから名づけたそうだ。

スペシャリストたちが集結して実現した、まったく新しいサービス

起業して当然の雰囲気だった、と回顧する創業メンバーの二人

起業して当然の雰囲気だった、と当時を回顧する創業メンバーの2人

物理学とビジネス、それぞれの分野の第一線で活躍していた2人が出会ったことで起業に至った白ヤギコーポレーション。シバタ氏、渡辺氏がニューヨークに滞在していた時期、アメリカでは意欲を持つ若手であれば「起業するのがあたりまえ」という雰囲気に満ちあふれていたという。

「とにかく普通に企業に就職するのは考えられないという感じでしたね」(渡辺氏)

2人はまず、起業を目指しMOVIDA Schoolの4期生として準備を開始。このプログラムのシェアオフィスでアプリ開発を始めた。シバタ氏がアプリの概念と設計思想を突き詰め、渡辺氏がサービスとして普及させていくための視点から意見を交わすという体制だ。

アプリとしての完成度を高めるためエンジニアを募集していくうち、シェアオフィスの中でも一番の大所帯となったため、独立・開業へと進んだ。

「幸いにも高いスキルを持ったエンジニアが集まってくれたので、僕たちが考えたモノが確実にサービスとして世に出せるという確信を持てましたね」(シバタ氏)

『Kamelio』をアプリとしてリリースする方針が決まったのは昨年半ば。その開発に取り組む中で、強力なエンジニアとしてジョインしたのが伊藤祐輔氏だ。

高専卒業後、フリーランスのプログラマーとして複数のスタートアップでCTOとしてキャリアを積み重ねてきた伊藤氏の加入によって、アプリの開発は飛躍的にスピードアップしたという。

取材時24歳ながらその技術で有名ITベンチャーを渡り歩いてきた伊藤氏。高専時代にはロボットサッカーの大会で世界選手権3位入賞の経験も

取材時24歳ながらその技術で有名ITベンチャーを経験している伊藤氏。高専時代にはロボットサッカーの大会で世界選手権3位入賞の経験も

「話を聞いて、DBを含めたバックエンドやUI/UXの部分も含め、新しいモノを作りたいというエンジニアとしての好奇心が刺激されました」(伊藤氏)

実は伊藤氏、2012年に6月に設立されたばかりのゴクロ(現・スマートニュース)に在籍していたことがあり、ここでもCTO兼エンジニアとして『SmartNews』の設計・開発に取り組んでいた。

「まったく違うアプリですが、検索方法や検索結果の表示方法などを経験していたことは今回の開発に役立っていますね」

シバタ氏はエンジニアではないが、科学者としては計算物理学と統計解析を専門としており、プログラマーとして1000人上の国際チームでの開発プロジェクトに携わっていた経験を持つ。ヒッグスボゾン発見に使われた統計モデリングアルゴリズムも、彼がC++とPythonで開発したものだ。

「現在はプログラミングする時間が減りつつありますが、分析のアルゴリズムやビッグデータ解析の技術的な統括をしています。言語解析分野での経験は浅いですが、近年の自然言語処理においては統計解析を使ったアプローチが主流になっており、方法論は素粒子の研究からも応用できることが多くあります。

例えば素粒子の研究においては、どれだけ予期していないデータが観測されたかを計測していましたが、今は逆に、求めるテーマにどれだけマッチした記事が来たのかの計算をしています」(シバタ氏)

今、『Kamelio』のさらなるブラッシュアップに取り組んでいる同社では、常時エンジニアを募っている。PythonもしくはNode.jsでのプログラミング経験を必須とすることで、すぐれた人材確保に役立っているという。

「読んで満足」ではなく「人を動かす」メディアに

こうして正式ローンチを迎えた『Kamelio』だが、目標とするDL数や獲得ユーザー数よりも、使ったユーザーに新たなアクションにつながるような体験をしてほしいと柴田氏は言う。

「既存のニュースアプリやキュレーションアプリよりもこだわっているのが、特定の物事や事柄をより幅広く深く知ることで、何か“次の行動”に結びつくようなアプリであってほしいということですね。ただ好奇心を満たすだけじゃなくて、“深く掘り下げる”『Kamelio』だからこそ、好きなカテゴリへの行動を促せると思っています。『Kamelio』によって使う人の人生を豊かにしたいですね」

物理学の専門家として長く基礎研究に携わってきた経験を持つシバタ氏。BCGでも研究開発部門に在籍していたが、渡辺氏と語り合う中で自身の研究成果をもっと世の中で役に立つものに反映させたいと思ったのが起業を志すきっかけになったとも話す。

一方、起業からわずか半年余りながら、これまでアプリ開発で培ってきた技術開発力とノウハウを、さらなるビジネスの創造へとつなげていくために「AIAL研究所」も立ち上げた。

同社では業務の拡大により、エンジニアの募集も積極的に行なっているという

同社では業務の拡大により、エンジニアの募集も積極的に行っている

「MOVIDA Schoolで学んでシェアオフィスに在籍したことで、さまざまな人たちと人脈を築くことができました。高いスキルを持ったエンジニアもたくさんいますから、いろんな人たちのスキルを集めて新しいビジネスを生み出したいと考えています」(渡辺氏)

正式ローンチが始まった『Kamelio』。今、最もヒートアップしているニュースサービス/キュレーションサービスの分野で、新たなニーズを掘り起こす起爆剤になるかどうか、今後の動向に要注目だ。

取材・文/浦野孝嗣 撮影/竹井俊晴




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